法定相続情報一覧図の作成と使い方|戸籍の束を出さずに相続手続きを同時に進める

親が亡くなると、銀行・証券会社・年金事務所・法務局・税務署のそれぞれで「出生から死亡までの戸籍」の束を求められ、1か所に出している間はほかの手続きが止まります。

その待ち時間をなくすのが、法務局が無料で発行する法定相続情報一覧図の写しで、必要な通数をそろえて提出先へ同時に出せます。

作る価値があるかの見極め方から、使える手続きと使えない手続き、必要書類、税務署でも通る書き方、申出から再交付までの流れまで、制度の案内には載っていない得をする点とあわせてまとめました。

法定相続情報一覧図を作るメリットと、作る価値があるかの判断基準

法定相続情報一覧図は、亡くなった方(被相続人)と法定相続人の関係を1枚の図にまとめ、法務局の登記官が認証文を付けた写しです。

相続人が戸籍の束と一緒に図を法務局へ出すと、「民法どおりの相続関係である」と確認した認証文付きの写しが無料で交付されます。この写しは、戸籍の束の代わりに相続手続きへ提出できます。

一覧図が証明するのは「誰が相続人か」に限られ、遺産を誰がどう分けるかは別の書類の役目です。この性格が、使える手続きと使えない手続きの分かれ目になります。

作る前に押さえておきたいのは、次の4点です。

  • 一覧図で変わるのは同時提出と写しの枚数
  • 申出が戸籍の揃い具合の無料チェックになる
  • 作る価値は提出先の数と相続人の分担で決まる
  • 自分で作るか専門家に頼むかの目安

一覧図で変わるのは同時提出と写しの枚数

一覧図がなくても、戸籍の束1セットを提出先に順番に回せば、相続手続きは全部終わります。

戸籍の束は提出先に出しても原本を返してもらえるからです。専門家のサイトは「作りましょう」と書きがちですが、一覧図は作る・作らないを自分で選べる書類です。

そのうえで、一覧図を作ると次の3点が変わります。

  • 認証文付きの写しを、必要な通数だけ無料で受け取れる
  • 複数の提出先へ同時に出せる
  • 並行して進めるために、戸籍を複数セット買い足さなくてよい

戸籍の束が1セットだと、銀行から戻るまで証券会社や年金事務所の手続きが順番待ちになります。待たずに進めるには、戸籍をもう1セット買うことになります。

戸籍謄本は1通450円、除籍謄本・改製原戸籍謄本は1通750円が多くの市区町村の手数料です。出生から死亡までの戸籍は数通から十数通になるので、2セット目だけで数千円が消えます。

さらに相続登記では、2024年4月1日から登記申請書に「法定相続情報番号」を書けば、写しの添付そのものを省けるようになりました。

一覧図は法務局に5年間保管され、その間は写しを再交付してもらえます。

経験者の声で一番多いのが、この順番待ちへの不満です。

経験者の声:戸籍を1セットしか持っていないと、提出先ごとに待つことになる

「銀行に戸籍の束を出して戻ってくるまでの間、証券会社と年金事務所の手続きが止まってしまった」(父の相続で一覧図を作らずに進めた方)

なお、戸籍の原本をいつ返すかは金融機関ごとに運用が違います。コピーを取ってその場で返す銀行もあれば、数週間かかる銀行もあります。

出典: 法務局「法定相続情報証明制度」出典: 法務局「よくあるご質問」出典: 法務局「法定相続情報番号の提供による相続登記等における法定相続情報一覧図の写しの添付省略について」出典: e-Gov法令検索「地方公共団体の手数料の標準に関する政令」

申出が戸籍の揃い具合の無料チェックになる

一覧図の申出は、銀行や税務署へ行く前に、法務局が戸籍の揃い具合を無料で点検してくれる工程にもなります。

申出を出すと、登記官が戸籍の束と一覧図を突き合わせ、図の相続関係が民法どおりかを確認します。戸籍が途中で途切れていたり、相続人が1人抜けていたりすると、写しは交付されず法務局から連絡が来ます。

つまり、「戸籍が全部揃っているか」「相続人に漏れがないか」を、本番の窓口より先に法務局が見てくれるということです。銀行の窓口で「戸籍が1通足りない」と言われて出直すより、法務局で先に指摘を受ける方がずっと楽でしょう。

相続手続きを専門にする人たちが一覧図を勧める理由の一つは、ここにあります。

ただし、戸籍を揃える手間そのものは、一覧図を作っても残ります。戸籍を揃えるのは申出の前提で、戸籍の範囲や取り方は別の記事「相続人確認に必要な戸籍の集め方」で扱います。

出典: 法務局「法定相続情報証明制度」

作る価値は提出先の数と相続人の分担で決まる

戸籍を出す先が1か所なら作らず、2か所以上なら作る価値がある、というのが判断の基準です。

専門家の案内でも、相続税申告・不動産登記・年金・金融機関・保険・自動車のうち2件以上の手続きをする人に利用を勧め、提出先が法務局だけなら制度を使わなくてよい、という目安が示されています。

判断材料は4つです。

  1. 提出先の数。 法務局(相続登記)・銀行・証券会社・年金事務所・税務署・保険会社が数える対象です。使える手続きの一覧表で数え直せます。
  2. 同時並行の必要。 相続税の申告期限は死亡を知った日の翌日から10か月です。期限が近いほど、提出先を並行して進める価値が上がります。
  3. 相続人の分担。 写しは申出人以外の相続人も使えます。長男が登記、母が遺族年金、妹が預金と手分けするなら、1枚ずつ渡して同時に動けます。
  4. 提出先が1か所のとき。 登記所だけ、銀行1行だけなら、申出から交付までの1〜2週間が上積みになり、戸籍を直接出す方が早く終わります。2か所でも「銀行の後に年金で十分」という順番なら差は小さいです。

迷ったときの材料をもう一つ。提出先は最初に数え切れないことが多く、後から「父名義の証券口座があった」「保険の受取に戸籍が要った」と増えていきます。

経験者の声:提出先は後から増える

「必要か分からず作らなかったら、あとから証券口座と保険が見つかって、戸籍をもう1セット買い足すことになった」(父の相続で手続きを担当した方)

一覧図は申出から5年間は再交付できるので、迷ったら作る側に倒しても、損はごくわずかにとどまります。申出は無料で、かかるのは戸籍の取得費と1〜2週間の時間です。

出典: 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」出典: 法務局「よくあるご質問」

自分で作るか専門家に頼むかの目安

戸籍が揃っていれば、申出書と一覧図を作って法務局に出すだけなので、自分で作れます。

申出は無料で、一覧図は法務局の様式(Excel)に家族の氏名と生年月日を入れる作業です。様式の選び方は書き方の章にまとめました。

専門家に頼む場合の費用は、戸籍の取得も含めて3〜5万円程度が目安とされています。民間の目安で、事務所によって異なります。

一つだけ確認しておきたい点があります。相続登記を司法書士に頼むなら、司法書士は登記のために戸籍を集め、相続関係を図にする作業をどのみち行います。

そのため一覧図の申出も一緒に引き受けてくれることが多いのですが、「一覧図は別料金か、登記の報酬に含まれるか」は事務所ごとに違います。見積もりの段階で一言聞いておくと、同じ戸籍で二重に費用を払わずに済みます。

遠方の実家の相続でも、申出は自分の住所地の法務局で行え、郵送でも完結します。申出先と提出方法は、申出から受け取りまでの章で詳しく触れます。

出典: 法務局「よくあるご質問」出典: 法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」

法定相続情報一覧図が使える手続き・使えない手続きと提出先ごとの出し方

一覧図の写しが使えるのは「被相続人の死亡に起因する相続手続及び年金等手続」と定められています。

銀行・証券会社・税務署・年金事務所・保険会社・運輸支局・家庭裁判所と、提出先ごとに出し方と追加の条件が少しずつ違います。

戸籍の代わりに写しを出せる相続手続きの一覧

主な提出先を一覧にすると、自分の提出先が1か所か2か所以上かを数え直せます。

手続き出し方写しは戻るか追加の条件使えるようになった時期・根拠
相続登記(法務局)写しを添付、または申請書に法定相続情報番号を書く番号を書けば写し自体を出さない番号は不動産登記のみ制度開始の2017年5月から。番号は2024年4月1日から(法務局)
預貯金の払戻し・名義変更(銀行・信用金庫・ゆうちょ)写しを窓口に提出戻らない前提。コピーを取って返す金融機関もあり、運用はまちまち遺産分割協議書・印鑑証明書・所定の相続届は別に要る制度開始から(法務局「法定相続情報証明制度」)
証券・投資信託の相続写しを提出戻らない前提証券会社所定の書類は別に要る申出書の利用目的「その他」に「株式の相続手続」と書く例あり(法務局「申出書の記入例」)
相続税の申告(税務署)申告書に添付。写しのコピーでもよい原本を出す必要がないので手元に残せる図形式で、子の続柄が実子か養子か分かる記載2018年4月1日以後に提出する申告書から(国税庁リーフレット)
遺族年金・未支給年金・死亡一時金(年金事務所)写しを提出戻らない前提死亡に起因する請求に限る2020年10月26日から(日本年金機構リーフレット)
生命保険金・共済金の請求写しを提出戻らない前提受取人指定の確認など会社ごとの書類は別保険会社ごとに案内が異なるため事前に確認
自動車の名義変更(運輸支局)写しを提出戻らない前提遺産分割協議書・印鑑証明書などは別関東運輸局の案内では「法定相続情報証明書の場合は戸籍謄本等は不要」(関東運輸局)。軽自動車は軽自動車検査協会で別の扱い
遺言書情報証明書の交付請求(自筆証書遺言書保管制度)写しを提出戻らない前提住所を載せた一覧図なら住民票の提出が不要になることがある法務局「よくあるご質問」
遺産分割調停(家庭裁判所)写しを提出裁判所の扱いによる裁判所ごとに運用が違う。神戸家裁は戸籍の束に代えて一覧図の提出を求め、本籍・住所の記載と図形式を指定(神戸家庭裁判所)申立先の家庭裁判所に確認

表に使えるようになった時期を添えたのは、古い情報が今も検索に残っているからです。制度ができた2017年当時は「税務署では使えない」「年金では使えない」という情報が正しく、税務署は2018年4月、年金は2020年10月に対応済みです。

表で一番見落とされているのが、相続税申告の行です。国税庁は「法定相続情報一覧図の写しをコピー機で複写したもの」の添付も認めています(国税庁リーフレットの③)。

つまり税務署には写しの原本を渡す必要がなく、1通をコピーして使えます。通数を決めるとき、税務署の分は数に入れなくて済みます。

もう一つ、窓口で「これは原本ですか」と聞かれることがあります。法務局が交付する認証文付きの「写し」が、提出先にとっての原本です。

「写し」という名前のせいでコピーと誤解されますが、偽造防止の用紙に登記官の職印が押された証明書です。「はい、法務局が発行した原本です」と答えれば通ります。

出典: 法務局「法定相続情報証明制度」出典: 法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」出典: 法務局「法定相続情報番号の提供による相続登記等における法定相続情報一覧図の写しの添付省略について」出典: 法務局「申出書の記入例」出典: 法務局「よくあるご質問」出典: 国税庁「平成30年度税制改正により相続税の申告書の添付書類の範囲が広がりました」出典: 日本年金機構「『法定相続情報一覧図の写し』が年金手続きの添付書類として使用できるようになりました」出典: 関東運輸局「単独相続(相続人のうち一人が相続する場合)」出典: 神戸家庭裁判所「法定相続情報一覧図の提出について」

相続登記は番号の記載で写しの添付を省ける

2024年4月1日から、相続登記の申請書に法定相続情報番号を書けば、一覧図の写しの添付を省略できます。

それまでは、一覧図を作っていても、相続登記の申請書には写しの原本を添付する必要がありました。2024年3月以前の案内を読んで「登記には写しが要る」と覚えている人は、今は番号だけで済むと読み替えておきましょう。

書く形は、申請書の添付情報欄に「登記原因証明情報(法定相続情報番号(○○○○-○○-○○○○○))」と入れるだけで、番号は写しの右肩に印字されています。

番号で代えられるのは不動産登記の申請に限られます。銀行や税務署に番号だけを伝えても使えません。また、保管の申出から5年以上たつと番号が使えない場合があります。

実家の相続で意外と助かるのが、不動産が複数の法務局の管轄にまたがる場合です。実家の土地建物と、別の市にある父名義の畑や山林があると、登記は管轄ごとに申請します。

戸籍の束だと管轄の数だけ束を回すことになりますが、番号なら申請書に書くだけで、束も写しも付けずに済みます。

相続登記をすぐにしない場合の「相続人申告登記」でも、申出人の現在の住所が載った一覧図の写しを出すか、番号を申出書に書けば、戸籍と住所証明情報の添付に代えられます。

登記申請の手順そのものは別の記事「実家の相続登記の進め方」で扱います。

出典: 法務局「法定相続情報番号の提供による相続登記等における法定相続情報一覧図の写しの添付省略について」出典: 法務省「相続人申告登記について」

相続税申告と年金で使うときの条件

税務署では図形式と戸籍どおりの続柄、年金事務所では死亡に起因する請求であることが、写しを使う条件です。

税務署(相続税申告)。 2018年4月1日以後に提出する申告書から、戸籍謄本の代わりに一覧図の写しを添付できます。条件は3つです。

  1. 図形式であること。 相続人を箇条書きにする「列挙形式」は、法定相続分が確認できない場合があるため、添付の対象から外れています。
  2. 子の続柄が実子か養子か分かる記載であること。 「長男」「長女」「養子」のように、戸籍どおりの記載が必要です。「子」とだけ書いた図は、実子か養子かが分からないため対象外です。
  3. 養子がいる場合は、その養子の戸籍の謄本(抄本)も添付すること。

法務局の案内でも、続柄を「子」と記載した場合は「相続税の申告等、これを利用することができない手続」があると注意しています。

この条件は一覧図を書く段階で決まってしまうので、書き方は「後の手続きで困らない書き方」の章に回します。

年金事務所。 2020年10月26日から、遺族年金・未支給年金・死亡一時金など、被相続人の死亡に起因する請求で、死亡した方との身分関係を証明する添付書類の一つとして使えます。

年金の請求者には法定相続人以外の人もなれるため、申出書の年金の欄にも「給付対象者は法定相続人に限られません」と注記があります。

出典: 国税庁「平成30年度税制改正により相続税の申告書の添付書類の範囲が広がりました」出典: 法務局「よくあるご質問」出典: 日本年金機構「『法定相続情報一覧図の写し』が年金手続きの添付書類として使用できるようになりました」出典: 法務局「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書(別記第1号様式)」

一覧図が使えない手続きと代わりにならない書類

一覧図の限界は、「この手続きには使えない」と「この書類の代わりにはならない」の2種類です。

使えない手続き

  • 寡婦年金の請求。婚姻期間の確認が必要で、一覧図では証明できない部分があるためです。
  • 死亡に起因しない請求。たとえば残された配偶者自身の老齢基礎年金の請求は対象外です。
  • 別の被相続人の手続き。父の一覧図は母の相続には使えず、被相続人ごとに別の図になります。

代わりにならない書類

一覧図が代わりになるのは戸籍の束に限られ、それ以外の書類は、一覧図があってもなくても同じように必要です。

  • 相続放棄申述受理証明書(通知書)。相続放棄をした人も、一覧図には相続人として載ります。放棄の事実は図に表れないため、銀行や登記で放棄者を除いて手続きするには、放棄の証明書を別に出します。
  • 遺産分割協議書、遺言書、相続人全員の印鑑証明書、銀行所定の相続届。一覧図は「誰が相続人か」を示す書類で、「誰が何を取るか」は別の書類が示します。

神戸家庭裁判所も「法定相続情報一覧図には、相続放棄は反映されません」として、放棄で順位が変わった場合は別途戸籍の提出を求めています。

写しの下部にも「相続放棄に関しては、本書面に記載されない」と印字されています。

「一覧図さえあれば銀行の手続きは終わる」と思っていた、という声はよく聞きます。

経験者の声:一覧図は戸籍の代わりであって、他の書類の代わりではない

「相続放棄した弟も一覧図に載っていて、銀行では放棄の証明書を別に求められた」(母の相続で預金の払戻しをした方)「一覧図を作ったのに、結局は印鑑証明書と遺産分割協議書を全員分そろえることになって二度手間に感じた」(父の相続で手続きを担当した方)

一覧図がなければ、戸籍の束に加えて同じ書類を出していたはずです。減ったのは戸籍の分で、他は元から必要だった書類だと整理すると納得しやすいでしょう。

外国籍の相続人がいる場合や生前の申出など、そもそも一覧図を作れない相続は、必要書類の章で扱います。

出典: 日本年金機構「『法定相続情報一覧図の写し』が年金手続きの添付書類として使用できるようになりました」出典: 神戸家庭裁判所「法定相続情報一覧図の提出について」出典: 国税庁「平成30年度税制改正により相続税の申告書の添付書類の範囲が広がりました」

窓口で戸籍を求められたときの対処

支店の窓口で一覧図を知らない担当者に当たっても、法務局の案内ページを示すか、本部の相続担当に確認してもらえば通ります。

制度ができて数年たちますが、金融機関の支店窓口の担当者が一覧図を知らず、戸籍を出すようにと言われることがまだあります。対処は2つです。

  1. 法務局の制度案内ページ(法務局「法定相続情報証明制度」)を印刷して一緒に出す。法務局のページには「預金の払戻し手続」に利用できると明記されています。
  2. 窓口の担当者に、上席者か本部の相続専門部署(相続センターなど)へ確認してもらう。支店で知らなくても、本部の相続担当は制度を知っています。
経験者の声:支店で断られても本部に確認してもらえば通る

「支店の窓口で戸籍を求められたけれど、相続センターに電話で確認してもらったら一覧図の写しで通った」(父の相続で地方銀行の手続きをした方)

もう一つ、金融機関によっては「発行後◯か月以内の写し」を求めることがあります。制度上、写しそのものに有効期限は設けられておらず、決まっているのは法務局での保管期間5年です。

ただ、戸籍や印鑑証明書に「3か月以内」を求める感覚で、写しにも期限を付ける金融機関はあります。言われたら争わず、手続きの直前に無料で再交付を受けるのが早道です。再交付の手順は、申出から受け取りまでの章で説明します。

出典: 法務局「法定相続情報証明制度」出典: 法務局「よくあるご質問」

法定相続情報一覧図の申出に必要な書類

申出に必要な書類は法務局が公表している一覧「必ず用意する書類/必要となる場合がある書類」のとおりで、戸籍集めが済んでいれば追加で取る書類はわずかです。

「一覧図を作るなら書類が倍になる」と思われがちですが、相続手続きのために戸籍集めが済んでいれば、一覧図のために追加で取るのは、被相続人の住民票の除票・自分の本人確認書類のコピー・(住所を載せるなら)相続人の住民票くらいです。しかも除票や住民票は、銀行や登記でどのみち使う書類です。

戸籍の範囲や取り方、本籍地以外の役所で取れる広域交付については、別の記事「相続人確認に必要な戸籍の集め方」で扱います。

必ず用意する4種類の書類

必ず用意するのは、被相続人の戸籍・住民票の除票・相続人全員の戸籍・申出人の本人確認書類の4種類です。

書類取得先申出後に戻るか
①被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本被相続人の本籍地の市区町村役場写しの交付時に返却
②被相続人の住民票の除票(廃棄されて取れない場合は戸籍の附票)被相続人の最後の住所地の市区町村役場(附票は本籍地)写しの交付時に返却
③相続人全員の現在の戸籍謄本または抄本各相続人の本籍地の市区町村役場写しの交付時に返却
④申出人の氏名・住所を確認できる公的書類(運転免許証の表裏コピー、マイナンバーカードの表面コピー、住民票の写しなど)―コピーは原則返却されない

①〜③は原本の提出が必要で、コピーは受け付けてもらえない書類です。登記官が内容を確認した後、写しの交付と一緒に返してもらえます。

④のコピーには、余白に「原本と相違がない」と書き、申出人(代理人が出すなら代理人)が記名する決まりです(法務局「必ず用意する書類」の※2)。この一筆の書き忘れは、差し戻しの定番です。

経験者の声:免許証のコピーに一筆を書き忘れて止まった

「免許証のコピーを付けただけで出したら、『原本と相違ない』と書いて名前を入れるようにと法務局から連絡が来た」(母の相続で一覧図を申し出た方)

次に、場合によって要る書類です。

書類いつ要るか
⑤各相続人の住民票の写し(印鑑証明書・戸籍の附票で代用可)一覧図に相続人の住所を載せるとき
⑥委任状。親族が代理するなら申出人との親族関係が分かる戸籍(①③で分かれば不要)。資格者が代理するなら所属団体の身分証明書の写し代理人が申出するとき
⑦被相続人の戸籍の附票②の除票が廃棄などで取れないとき

申出人になれるのは、被相続人の相続人(またはその相続人)に限られます。代理を頼めるのは、申出人の親族か、弁護士・司法書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・行政書士の8士業です。

友人や知人は代理人の範囲外です。

このほかに申出書と一覧図そのものを一緒に出します。一覧図の書き方と申出書の書き方は、それぞれの章で説明します。

出典: 法務局「必ず用意する書類/必要となる場合がある書類」出典: 法務局「よくあるご質問」出典: 法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」

相続人の戸籍は死亡日より後に取ったものに限る

③の相続人の戸籍は、「被相続人が死亡した日以後の証明日のもの」に限られます。

理由は単純で、死亡した時点で相続人が生きていたことを証明する必要があるからです。親の生前に家族でまとめて取っておいた戸籍は、証明日が死亡日より前なので使えず、取り直しになります。

経験者の声:生前に取っておいた自分の戸籍が使えなかった

「母の入院中に自分の戸籍を取っておいたのに、証明日が母の死亡日より前だから使えないと言われて取り直した」(母の相続で一覧図を申し出た方)

銀行や登記でも同じ条件を求められるので、相続人の戸籍は死亡後に取っておきましょう。

出典: 法務局「必ず用意する書類/必要となる場合がある書類」

住所を載せる場合に追加で要る書類

一覧図に相続人の住所を載せるなら、各相続人の住民票の写しが要ります。

住所を載せるかは任意です。住民票の写しは、印鑑証明書か戸籍の附票でも代用できます(法務局「必ず用意する書類」の⑤)。

ここに小さな得があります。銀行の払戻しや相続登記(遺産分割の場合)では、相続人全員の印鑑証明書を求められます。

この印鑑証明書を一覧図の住所証明として先に法務局に出しても、写しの交付時に返却されます。発行後の期限内なら、戻ってきた印鑑証明書をそのまま銀行に回せるので、住民票を別に取らずに済みます。

住所を載せるかの判断と、載せるときの書き方は、「住所は載せた方が後の手続きが減る」で説明します。

出典: 法務局「必ず用意する書類/必要となる場合がある書類」出典: 法務局「よくあるご質問」

兄弟姉妹相続と数次相続で追加になる戸籍

家族構成によっては、①〜④に加えて戸籍が増えます。

兄弟姉妹が相続人になるとき。 被相続人に子も孫もおらず、親も亡くなっている場合、兄弟姉妹が相続人です。このとき、被相続人の①の戸籍に加えて、被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍も必要になります(法務局「必ず用意する書類」の注)。

父母の戸籍を全部たどって初めて、ほかに兄弟・姉妹(異母・異父の兄弟・姉妹を含む)がいないことを確認できるからです。

経験者の声:兄弟相続では親の戸籍まで要る

「兄の相続で一覧図を出したら、両親の出生からの戸籍が足りないと法務局から連絡が来た」(兄の相続で手続きをした方)

数次相続のとき。 父が亡くなった後、手続きの途中で母も亡くなるような場合です。一覧図は被相続人ごとに別の申出になり、父の図と母の図を2つ作ります。

ただし、同じ申出人が同じ法務局に同時に出すなら、両方に共通する書類(たとえば子の戸籍)は1通でよいとされています(同注)。

代襲相続のとき。 被相続人より先に子が亡くなり、孫が相続人になる場合は、亡くなった子の出生から死亡までの戸籍も必要になるのが通常です。法務局の一覧では「法定相続人の確認のために」追加の戸籍が要る場合として「など」に含まれているので、申出先の法務局に確認しておきましょう。

誰が相続人になるかの判定そのものは、別の記事「実家の相続人の確認方法」で扱います。

出典: 法務局「必ず用意する書類/必要となる場合がある書類」

一覧図を作れない相続

被相続人や相続人に日本国籍がない場合と、生前の申出は、制度の入口で使えない相続です。

提出先で使えない手続きとは別の話で、申出そのものができないケースです。

被相続人や相続人に日本国籍がない場合。 この制度は、戸籍の束を法務局に出し、登記官が戸籍で相続関係を確認する仕組みです。

戸籍で示せない人がいると確認ができないため、「被相続人や相続人が日本国籍を有しないなどの理由で戸除籍謄抄本を提出できない場合は、本制度を利用できません」とされています。

相続人のうち1人でも外国籍の人がいれば同じで、従来どおり戸籍と本国の身分証明書類を提出先ごとに出すことになります。

生前に作ることはできない。 相続人は死亡の時点で初めて確定するため、申出は死亡後に限られます。元気なうちに作っておきたいと考える人もいますが、被相続人の死亡の記載がある戸籍と、死亡日以後の相続人の戸籍が必要書類になっていることからも、生前の申出は制度の対象外です。

出典: 法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」出典: 法務局「必ず用意する書類/必要となる場合がある書類」

後の手続きで困らない法定相続情報一覧図の書き方

法務局で通る最低限の書き方と、後の手続きで損をしない書き方は別物です。

法務局の案内には「住所の記載は任意」「続柄は『子』でも可」と書かれています。案内どおり最低限で作っても一覧図は交付されますが、その図を税務署や登記で使おうとした段階で、住民票の追加提出や一覧図の作り直しになることがあります。

この章では、「後の手続きで損をしない書き方」に絞ります。

法務局の様式を家族構成で選ぶ

一覧図は一から作らず、法務局が公開している家族構成ごとのExcel様式と記載例から、自分の家族に近いものを選ぶのが一番早い作り方です。

家族構成用意されている様式
配偶者と子子1〜4人まで対応/嫡出でない子がいる場合/子が多数で複数枚になる場合
子のみ子1〜4人まで対応
配偶者と親親1名(父または母)/親2名
配偶者と兄弟姉妹兄弟姉妹1〜3人まで対応/父母の一方だけが同じ兄弟姉妹がいる場合
代襲相続子の代襲/再代襲で複数枚になる場合
配偶者と子(養子を含む)実子2人・養子1人の例
旧民法下の相続家督相続など
列挙形式図ではなく箇条書きにする様式。相続税の申告には使えない

様式を選んだら、氏名と日付を自分の家族のものに書き換えるだけで形になります。

用紙と筆記具。 A4縦の白い紙を使い、下から約5cmの範囲は法務局が認証文を付けるので空けておきます。手書きなら黒インクか黒のボールペンで楷書ではっきりと書き、こすると消えるペンや鉛筆は不可です。

紙は長期保存できる丈夫なものが指定されています(法務局の記載例の注記)。手書きでも通りますが、様式がExcelで配られている以上、パソコン入力が現実的でしょう。

記載する項目。 被相続人の欄は、氏名・最後の住所・生年月日・死亡年月日の4つです。最後の本籍は任意ですが、住民票の除票が廃棄されて取れないときは、最後の住所の代わりに最後の本籍が必須になります。

相続人の欄は氏名・生年月日・続柄で、住所は任意です。申出人になる相続人の氏名の横に「(申出人)」を添え、図の末尾に作成日と作成者の住所・氏名を入れる決まりです(法務局の記載例)。

一つ注意があります。相続登記で戸籍の原本を返してもらうために自分で作る「相続関係説明図」と、法定相続情報一覧図は別の書類です。

見た目は似ていますが、相続関係説明図には法務局の認証がなく、銀行や税務署では戸籍の代わりとして通らない書類です。説明図を作ってあっても一覧図には流用できず、法務局の様式に合わせて作り直すことになります。

出典: 法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」

相続税申告でも使える図形式と続柄の書き方

後の手続きで一番差が出るのは、図形式で作ることと、続柄を戸籍どおりに書くことの2点です。

図形式で作る。 法務局の様式には、家系図のように関係を結んで示す「図形式」と、相続人を箇条書きにする「列挙形式」があります。

列挙形式は法定相続分が確認できない場合があるため、相続税の申告書には添付できない形式です。

法務局の列挙形式の様式にも、父母の一方だけが同じ兄弟姉妹がいるかが分からないため、提出先から「再度戸除籍謄本を求められることとなる」と注記があります。列挙形式を選ぶ理由はほぼないので、図形式で作っておきましょう。

続柄は戸籍どおりに書く。 子の続柄は「長男」「長女」「二男」「養子」のように、戸籍に記載されたとおりが基本です。

法務局は申出人の選択で「子」と書くことも認めていますが、「子」と書いた一覧図は、実子か養子かが分からないため相続税の申告には使えない図になります。

養子がいる場合は、戸籍どおり「養子」と書いたうえで、申告時に養子の戸籍も添付します。

ここで知っておきたいのが、申出の時点では相続税の申告をするつもりがなかった人の話です。

相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除があり、これを超えなければ申告は不要です。ところが実家の土地の評価額を出してみたら思ったより高く、預金と合わせて基礎控除を超えた、と後から分かる例もあります。

そのとき一覧図が「子」で作ってあると、相続税の申告のためだけに作り直しになります。

経験者の声:「子」で作った一覧図は税理士に作り直しを言われた

「法務局で『子でも通ります』と言われて『子』で作ったら、相続税の申告を頼んだ税理士から戸籍どおりに作り直すようにと言われた」(父の相続で一覧図を作った方)

申告の予定があってもなくても、最初から税務署で使える書き方(図形式・戸籍どおりの続柄)にしておくと、手間は同じまま作り直しを防げます。

氏名は申出時点の戸籍のとおりです。戸籍に旧字や特殊な字体で載っている場合の扱いは、法務局で確認しておきましょう。

出典: 国税庁「平成30年度税制改正により相続税の申告書の添付書類の範囲が広がりました」出典: 法務局「よくあるご質問」出典: 法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」出典: 国税庁「No.4152 相続税の計算」

住所は載せた方が後の手続きが減る

相続人の住所は任意の項目ですが、載せておくと相続登記などで各相続人の住民票の写しを出さずに済むことがあります。

法務局自身が、住所を載せた一覧図があると「相続登記等の申請、遺言書情報証明書の交付の請求等」で各相続人の住民票の写しの提出が不要になることがあると案内しています。

相続人申告登記でも、申出人の現在の住所が載った一覧図の写しか番号で、住所証明情報の添付に代えられます。

載せるときに守るのは2つです。

  • 住民票の写しのとおりに書く。 「一丁目2番3号」を「1-2-3」と略すと、住民票と一致せず差し戻しになります。法務局の記載例にも「住民票の写し等にあるとおり記載する」とあります。
  • 申出時点の住所を正確に書く。 写しの交付を受けた後は、住所が変わったことを理由にした再申出ができない決まりです。引っ越しの予定がある相続人がいるなら、申出のタイミングを考えておきましょう。

住所を載せるための書類(住民票・印鑑証明書・戸籍の附票のいずれか)は、必要書類の章で説明したとおりです。

経験者の声:住所の書き方と「載せない」判断で手間が増えた

「住所をハイフンで略して書いたら、住民票どおりに直すようにと差し戻された」(母の相続で一覧図を作った方)「住所を載せずに作ったら、相続登記のときに相続人全員の住民票を求められて、結局集め直した」(父の相続で登記まで自分で進めた方)

出典: 法務局「よくあるご質問」出典: 法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」出典: 法務省「相続人申告登記について」

載せる相続人は被相続人の死亡時点で決める

一覧図に載せるのは被相続人が亡くなった時点の法定相続人で、ここを間違えると差し戻しになります。

原則を押さえたうえで、迷いやすいケースを整理します。

  • 元配偶者は載せない。 離婚した元の妻・夫は相続人の範囲外です。元配偶者との間の子は相続人なので、載せる対象です。
  • 相続放棄をした人は載せる。 一覧図は戸籍から分かる相続関係を示す図で、放棄の事実は反映されない仕組みです。放棄した人も氏名・生年月日・続柄を載せ、「放棄」の文字は書かない決まりです(放棄の証明は別の書類で行います)。
  • 相続人の廃除を受けた人は載せない。 廃除は戸籍に記載されるので、戸籍で確認できます。
  • 代襲相続は、亡くなった子を載せたうえで、その下に孫を載せる。 法務局の記載例では、先に亡くなった子を「被代襲者」として氏名と死亡年月日を書き、その下に「(孫・代襲者)」として代襲者を載せています(法務局の代襲相続の記載例)。
  • 数次相続は、亡くなった人ごとに別の図にする。 父の相続の手続き中に母も亡くなった場合、父の図には父の死亡時点の相続人(母と子)、母の図には母の死亡時点の相続人(子)が載ります。母の図に父は載せません。神戸家庭裁判所も「亡くなった方ごとに順次」作成するよう案内しています。
  • 同時死亡も、それぞれの図を作る。 事故などで親子が同時に亡くなった場合、互いに相続人にはならず、それぞれを被相続人とする図を別に作ります。
経験者の声:放棄した相続人を外して出すと戻される

「相続放棄した弟はもう関係ないと思って載せずに出したら、載せるようにと法務局から連絡が来た」(母の相続で一覧図を作った方)

相続人の順位の判定は、別の記事「実家の相続人の確認方法」に譲ります。

出典: 法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」出典: 神戸家庭裁判所「法定相続情報一覧図の提出について」

差し戻しになりやすい書き方

申出の前に自分で確認しておきたい点を、ここまでの章から1か所に集めました。

確認する点通る形
書き損じの直し方訂正印で直さず、新しい用紙に書き直す(長期保存される原本のため。迷ったら法務局に確認)
筆記具黒インク・黒ボールペン・パソコン入力。鉛筆や消えるペンは不可
下から約5cmの余白認証文の欄として空けておく
住所の書き方住民票どおり。略記・ハイフンは不可
続柄戸籍どおり(長男・長女・養子)。「子」は税務署で使えない
形式図形式。列挙形式は使わない
相続人の戸籍の証明日被相続人の死亡日以後(必要書類の章)
本人確認書類のコピー「原本と相違がない」の一筆と記名(必要書類の章)
申出人の表示申出人になる相続人の横に「(申出人)」
作成者欄作成日・作成者の住所・氏名

もう一つ、申出する側で使える手段があります。法務局によっては、登記相談(予約制)の枠で申出前の一覧図の下書きを見てもらえることがあります。

対応は法務局ごとに異なるので、申出先の法務局に「一覧図の下書きを相談できますか」と電話で聞いてみてください。

経験者の声:下書きを先に見てもらうと一度で通る

「申出の前に登記相談で下書きを見てもらったら、住所の書き方を1か所直しただけで、申出は一発で通った」(父の相続で一覧図を作った方)

出典: 法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」出典: 法務局「必ず用意する書類/必要となる場合がある書類」

法務局への申出から写しの受け取り・再交付までの流れ

書類と一覧図ができたら、「申出先を決める→申出書を書く→出す→受け取る→保管中に足りなければ再交付」の順に進みます。

それぞれの段階で決めるのは、どこで・何通・どの方法で・誰を申出人にするか、の4つです。

申出先の法務局は4つの候補から選べる

申出先は、次の4つの地のどれかを管轄する法務局(登記所)から、1つ選べます。

  1. 被相続人の本籍地(死亡時の本籍)
  2. 被相続人の最後の住所地
  3. 申出人の住所地
  4. 被相続人名義の不動産の所在地

実家の相続で助かるのが3番目です。実家が遠方でも、自分が住んでいる地域の法務局で申出できます。

戸籍は本籍地から郵送や広域交付で取り寄せ、一覧図の申出は近所の法務局で済ませる、という組み合わせが成り立ちます。

経験者の声:実家が遠くても自分の住所地で出せる

「実家は九州で自分は東京。東京の法務局に出せると知らずに、帰省のついでに出すつもりで何か月も先延ばしにしていた」(父の相続で一覧図を作った方)

選び方の目安は2つです。相続登記も自分で続けるなら、不動産所在地の法務局に出すと、一覧図の受け取りと登記申請を同じ窓口で進められます。登記を司法書士に頼むなど、法務局へ行く用事が一覧図だけなら、申出人の住所地が一番楽です。

なお、4番目を選ぶときは、申出書に書く不動産がその法務局の管轄内にある必要があります。

出典: 法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」出典: 法務局「申出書の記入例」

申出書で決める利用目的と写しの通数

申出書で一番大事な判断は写しの通数で、無料なので提出先の数に予備を足した通数にしておくと後が楽です。

申出書は法務局の様式「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」を使います。書く内容は次のとおりです。

欄書くこと
被相続人の表示氏名・最後の住所・生年月日・死亡年月日
申出人の表示住所・氏名・連絡先・被相続人との続柄
代理人の表示代理で出す場合のみ。法定代理人か委任による代理人かにチェック
利用目的不動産登記/預貯金の払戻し/相続税の申告/年金等手続/その他、にチェック(複数可)
必要な写しの通数・交付方法通数と、窓口で受取か郵送か
被相続人名義の不動産の有無有なら不動産の所在か不動産番号を1つ書く
申出先登記所の種別申出先の4つの候補のうちどれで選んだかにチェック

利用目的は複数にチェックできます。「その他」に書くときは、「相続手続」より「株式の相続手続」のように具体的に書く形です。目的にチェックしなかった手続きで写しが使えなくなることはなく、分かる範囲で書けば十分です。

写しの通数の数え方は次のとおりです。

  • 提出先の数を数える(使える手続きの一覧表)。銀行・証券会社・年金事務所・保険会社は写しが戻らない前提で1通ずつ。
  • 税務署の分は数えなくてよい(コピーで済む)。
  • 相続登記は番号で済ませるなら不要。写しを付けるなら1通。
  • そのうえで予備を2〜3通足す。

足りなければ再交付できますが、法務局との往復がもう一度増えます。最初に多めに取っておく方がずっと楽です。

経験者の声:通数をけちると再交付に行くことになる

「2通しか申し出なかったら、証券会社と保険会社の分が足りなくなって、再交付のために法務局にもう一度行った」(母の相続で一覧図を作った方)

出典: 法務局「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書(別記第1号様式)」出典: 法務局「申出書の記入例」

窓口か郵送で提出する

提出方法は窓口と郵送の2つで、どちらも無料です。

窓口。 申出書・一覧図・必要書類をそろえて、申出先の法務局の窓口に出します。多くの法務局では申出そのものに予約は要りませんが、登記相談は予約制なので別物です。

写しを窓口で受け取るときは、申出書に書いた住所・氏名と同じものが載った本人確認書類(運転免許証など)が要ります。

郵送。 申出も、写しの交付と戸籍の返却も郵送でできます。郵送で受け取るには、申出書の交付方法で「郵送」にチェックし、返信用の封筒と郵便切手を同封します。

郵送料は自己負担です。戸籍の原本が往復するので、追跡できる書留やレターパックにしておくと安心です。

郵送の場合、法務局に書類が届いた日が申出年月日になります。到着から返送までの分、窓口より数日は長くかかるので、相続税の申告期限が迫っているなら窓口の方が早く済みます。

代理人(親族または8士業)が出す場合も流れは同じで、委任状を添えます。父と母の分を同じ法務局に同時に出すなら、共通する書類は1通でよいとされています。

経験者の声:郵送でも10日ほどで戻ってきた

「平日に法務局へ行く時間がなくて郵送にしたら、出してから10日ほどで写しと戸籍がまとめて届いた」(父の相続で一覧図を作った方)

出典: 法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」出典: 法務局「申出書の記入例」出典: 法務局「よくあるご質問」

交付までの日数と不備があったときの連絡

交付までの日数は法務局の混み具合と時期で変わり、民間の目安では申出から約7〜14日です。

法務局は日数を公表していないので、この日数は目安にとどめ、急ぐなら申出先の法務局に確認しておきましょう。年度末や大型連休の前後は延びることがあるので、相続税の申告期限に間に合わせるなら2〜3週間は見ておくと安全です。

登記官の確認で戸籍の不足や一覧図の誤りが見つかると、法務局から連絡が来ます。電話で来ることが多いので、申出書の連絡先には日中につながる番号を書いておきましょう。連絡に気づくのが遅れると、そのぶん交付も遅れます。

経験者の声:不備の連絡に気づくのが遅れた

「知らない番号からの着信に出なかったら法務局で、戸籍が1通足りないという連絡だった。気づくのに1週間かかった」(母の相続で一覧図を作った方)

交付時には、写しと一緒に提出した戸籍・除票・住民票などが返却されます。本人確認書類のコピーは返却の対象外です。

申出の日から3か月以内に写しと返却書類を受け取らないと廃棄されることがあるので(申出書の注記)、窓口受取にした場合は忘れずに取りに行きましょう。

出典: 法務局「よくあるご質問」出典: 法務局「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書(別記第1号様式)」

5年間の再交付と再申出できない変更

一覧図の原本は法務局で5年間保管され、その間は何度でも無料で写しの再交付を受けられます。

再交付は再交付用の様式「法定相続情報一覧図の再交付の申出書」に、被相続人の情報・申出人の情報・利用目的・通数・受取方法を書いて、当初の申出をした法務局に出します。郵送でもできます。

ここで知っておきたいのが、再交付を申し出られるのは、当初の申出で申出人になった人に限られる点です。他の相続人は、同じ一覧図の再交付を自分の名前では申し出られない仕組みです。

そのため、申出人は「この先5年、一番動きやすい相続人」にしておきましょう。海外在住の兄や高齢の母を申出人にすると、写しが足りなくなるたびにその人に動いてもらうことになります。

実際に手続きを回す人が申出人になるのが、後で一番困らない選び方です。

経験者の声:申出人が遠くに行くと再交付のたびに頼むことになる

「申出人だった兄が転勤で遠方に行ってしまい、写しが足りなくなるたびに兄に再交付をお願いすることになった」(父の相続で手続きを分担した方)

再申出できない変更・できる変更。 相続人の住所が変わったことを理由にした再申出はできない決まりです。

一方で、死亡後に子の認知があった、死亡時に胎児だった子が生まれた、といった理由で相続人の範囲そのものが変わった場合は、当初の申出人が改めて申出をするとされています。

こちらは民間の解説による目安なので、該当する場合は申出先の法務局に確認しておきましょう。

5年を超えたとき。 保管期間の5年を過ぎると再交付は受けられず、相続登記で法定相続情報番号が使えない場合もあります。

手元に残っている写しの原本は、5年を過ぎても登記の添付書類として使えます。

相続登記を後回しにしている実家なら、「一覧図の申出から5年以内に登記まで終える」が一つの区切りになります。相続登記は2024年4月から義務化され、相続を知ってから3年以内の申請が求められているので、どのみち5年より前に動くことになります。

出典: 法務局「よくあるご質問」出典: 法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」出典: 法務局「法定相続情報一覧図の再交付の申出書(別記第2号様式)」出典: 法務局「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」出典: 法務局「法定相続情報番号の提供による相続登記等における法定相続情報一覧図の写しの添付省略について」出典: 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

まとめ:提出先が2か所以上なら一覧図を作り、税務署でも通る書き方で申し出る

法定相続情報一覧図は戸籍の束の代わりになる書類で、作らなくても相続手続きは終わります。作る価値を決めるのは提出先の数で、銀行・証券会社・年金事務所・税務署・法務局のうち2か所以上に出すなら、無料の写しを同時に出せて、戸籍の買い足しも順番待ちもなくなります。

次の一歩は、図形式・戸籍どおりの続柄(長男・長女・養子)・住民票どおりの住所で一覧図を作り、実際に手続きを回す人を申出人にして、提出先の数に予備2〜3通を足した通数で申し出ることです。ここを飛ばして「子」で作ると相続税の申告で作り直しになり、住所を略すと差し戻され、遠方の人を申出人にすると再交付のたびにその人へ頼むことになります。

まず確かめておきたいのは、自分の提出先が何か所あるかと、出生から死亡までの戸籍が途切れずに揃っているかの2つです。実家と相続の地図帳「つぐーる」では、法定相続情報一覧図の作り方と使える手続きも含めて、相続や実家について悩むあなたに経験に基づいた情報を提供しています。