親が亡くなり、銀行や法務局から「出生から死亡までの戸籍」と「相続人全員の戸籍」を求められて、死亡の記載がある1通を取ったところで手が止まる人は多くいます。
相続人を確かめる戸籍は、亡くなった人の出生から死亡までの分と相続人全員の現在の戸籍の2組で、「誰の・いつからいつまで・何通」を先に押さえておくと、役所への請求を一度にまとめられます。
広域交付で一度に出る頼み方から、古い戸籍の遡り方、古い順に並べて日付のつながりを見る「揃ったか」の判定、取れないときに代わりになる書類まで分かれば、専門家に頼まなくても自分で集め切れます。
相続人確認に必要な戸籍の全体像|誰の戸籍をいつからいつまで
集める戸籍は、亡くなった人の出生から死亡までの分と、相続人全員の現在の戸籍の2組で、この2組で「他に相続人がいないこと」と「今の相続人が誰か」を示します。
窓口で「相続人は誰ですか」と聞いても、役所は戸籍を出すだけで判定には答えない仕組みです。集めた戸籍のどこを読んで相続人を確かめるかまで、集める側が担います。
亡くなった人の出生から死亡までの戸籍と相続人全員の現在の戸籍の2組を集める
相続人を確かめるために集める戸籍は、大きく2組に分かれます。
| 誰の戸籍か | 期間 | 何を示すか | 主な取得先 | 詳しくは |
|---|---|---|---|---|
| ① 亡くなった人 | 出生から死亡までの連続した全部 | 子(認知した子・養子・前の結婚の子を含む)が他にいないこと | 最寄りの市区町村の窓口(広域交付)、または各本籍地へ郵送 | 「取得先と取り方」「遡る手順と確認方法」の章 |
| ② 相続人全員 | 現在の戸籍1通ずつ | 今の相続人が生きていて、亡くなった人との続柄が分かること | 各相続人の本籍地(本人が取るのが早い) | 「取得先と取り方」の章 |
①の「出生から死亡まで」は、亡くなった人が生まれてから亡くなるまでに載っていた戸籍を、途切れなく全部そろえるという意味です。これがそろって初めて「この人の子はこれで全員」と言えます。
②は、相続人1人につき現在の戸籍が1通あれば済みます。亡くなった人の死亡日より後に発行されたものを求められることが多いので、取る時期に気をつけておきましょう。
相続放棄をする予定の人や、遺言で何も受け取らない人の分も要ります。放棄しても遺言があっても、相続人であることは変わらないためです。
住民票の除票や戸籍の附票は、登記簿の住所と亡くなった人をつなぐための書類で、相続人を確かめる目的とは別です。印鑑証明書や遺産分割協議書は、誰が相続人か決まり、分け方を話し合った後に出てくる書類なので、ここでは相続人確認の戸籍だけに絞ります。
提出先によって求める範囲は少し違い、銀行によっては「死亡の記載がある戸籍と相続人の戸籍だけでよい」と言うこともあります。ただ、最初から「出生から死亡まで」をそろえておけば、法務局・銀行・証券会社・税務署のどこにもそのまま出せます。小さく集めて後から追加するより、往復が1回で済みます。
出典: 法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」
最後の戸籍1通で足りない理由|除籍された人は新しい戸籍に載らない
最後の戸籍1通では足りない理由は、戸籍を作り直すときに、既に抜けていた人が新しい戸籍に書き写されない決まりにあります。
「亡くなったときの戸籍に家族が全員載っているなら、それ1通でよいのでは」と思うのは自然です。でも、戸籍の仕組みを知ると、1通では足りない理由が見えてきます。
戸籍は、一生のうちに何度か作り直されます。きっかけは主に3つです。
- 婚姻(結婚すると親の戸籍から抜けて、夫婦で新しい戸籍を作る)
- 転籍(本籍地を別の市区町村へ移すと、移した先で新しい戸籍を作る)
- 改製(法律や様式が変わると、役所が全部の戸籍を新しい様式に書き換える)
作り直すときに書き写されるのは、その時点で戸籍に残っている人だけです。結婚して家を出た子、前の配偶者との間の子、先に亡くなった子の名前は、作り直した後の戸籍から消えます。
つまり、最後の戸籍1通を見ても「他に子がいない」ことは分からないのです。そこで出生まで遡って、途中で抜けた人がいないかを確かめます。提出先が「出生から死亡まで」と求めるのは、形式のためではなく、相続人を見落とさないためです。
通数は3〜8通が目安で、必ず謄本で取る
通数は3〜8通になる人が多く、どの戸籍も「謄本(全部事項証明書)」で取ります。
戸籍の書類には3つの名前が出てきます。どれも同じ人の戸籍の写しで、違いは「どの時点の戸籍か」だけです。
| 名前 | 何か |
|---|---|
| 戸籍全部事項証明書(戸籍謄本) | 今も使われている現在の戸籍 |
| 除籍謄本(除籍全部事項証明書) | 載っていた人が全員抜けたり転籍したりして、閉じられた戸籍 |
| 改製原戸籍謄本 | 様式の改製で作り直す前の、古い様式の戸籍(「はらこせき」と呼ばれることも) |
通数は、次のように数えると見当がつきます。
- 本籍地を一度も動かしていなくても、昭和の改製(昭和32年の法務省令による)と平成の改製(平成6年の法務省令によるコンピュータ化)で2〜3通に分かれる
- 結婚して親の戸籍から出ていれば、親の戸籍の分が1通増える
- 転籍1回ごとに、さらに1通増える
合計すると3〜8通になる人が多く、転籍を繰り返した人や、戦前生まれで家督相続・分家などを経た人は10通を超えることもあります。
取るときは、必ず「謄本(全部事項証明書)」を指定しておきましょう。「抄本(個人事項証明書)」はその戸籍の中の1人分しか載っておらず、他に子がいないことを示せないため、相続人確認に使えるのは謄本に限られます。窓口の申請書で謄本と抄本を選ぶ欄があるので、謄本に印を付けます。
請求には「本籍」と「筆頭者」の2つが要ります。本籍は戸籍を置いている場所で、住所とは別物です。筆頭者は戸籍の最初に書かれている人のことで、亡くなった後も筆頭者のままです。父が筆頭者の戸籍は、父が亡くなった後も「筆頭者=父」で請求します。
費用は「取得先と取り方」の章でまとめます。ここで押さえるのは「3〜8通、謄本で、本籍と筆頭者を控えて」の3点です。
出典: 鹿児島市「よくある質問(改製原戸籍とは)」 / 神戸市「除籍・改製原戸籍謄抄本」
相続人の組み合わせで変わる戸籍の範囲|配偶者と子・親・兄弟姉妹・代襲・数次
追加で要る戸籍は、「誰がいないことを示すか」で決まります。
最初に示した2組(亡くなった人の出生から死亡まで+相続人全員の現在の戸籍)が基本形で、家族構成によって次の考え方で足していきます。
- 亡くなった人に(他の)子がいないことを示す → 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍
- 父母に他の子(異母・異父の兄弟姉妹)がいないことを示す → 父母の出生から死亡までの戸籍
- 先に亡くなった相続人に(他の)子がいないことを示す → その人の出生から死亡までの戸籍
家族構成ごとの追加分を一覧にすると、次のようになります。
| ケース | 亡くなった人の分 | 追加で要る分 | 通数の見当 |
|---|---|---|---|
| 配偶者と子が相続人 | 出生から死亡まで | 結婚して家を出た子の現在の戸籍 | 3〜8通 |
| 子がおらず親が相続人 | 出生から死亡まで | 父母の現在の戸籍(先に亡くなった子がいればその子の出生から死亡まで) | 4〜10通 |
| 子も親もおらず兄弟姉妹が相続人 | 出生から死亡まで | 父母それぞれの出生から死亡まで、祖父母の死亡が分かる戸籍、兄弟姉妹全員の現在の戸籍 | 10〜20通 |
| 先に亡くなった子・兄弟姉妹がいる(代襲) | 出生から死亡まで | 先に亡くなった人の出生から死亡まで、代襲する孫・甥姪の現在の戸籍 | 上の各ケース+2〜5通 |
| 相続が重なった(数次) | 出生から死亡まで | 後から亡くなった相続人の出生から死亡まで、その人の相続人の現在の戸籍 | 上の各ケース+3〜8通 |
誰が相続人になるのか(順位の決まり)は、姉妹記事「実家の相続人の確認方法」で家族関係から整理しているので、ここでは「その場合に要る戸籍」だけを示します。
配偶者と子が相続人|追加で要るのは結婚して出た子の現在の戸籍だけ
いちばん多い形で、基本の2組がそのまま当てはまります。
配偶者と、結婚していない子は、亡くなった人と同じ戸籍に載っています。死亡の記載がある最後の戸籍が、配偶者と未婚の子の「現在の戸籍」も兼ねるので、取り直しは不要です。
追加で要るのは、結婚して親の戸籍から出た子の分です。結婚した子は自分の戸籍を持っているので、その現在の戸籍を1通取ります。本人が自分の本籍地で取るのが早く、頼み方は「他の相続人の現在の戸籍」の節で説明します。
配偶者が分籍などで別の戸籍にいる場合は、配偶者の現在の戸籍も足します。
子がいない場合|親なら父母の現在の戸籍、兄弟姉妹なら父母の出生から死亡までの戸籍まで増える
子がいない人の相続は、誰が相続人になるかで戸籍の範囲が2段階に広がります。
親が相続人になるときは、父母それぞれの現在の戸籍を足します。父母が同じ戸籍にいれば1通で済みます。
子が先に亡くなっていて、その子に子(亡くなった人の孫)もいないなら、先に亡くなった子の出生から死亡までの戸籍も要ります。「孫がいないこと」を示すためです。
兄弟姉妹が相続人になるときは、次の3種類を足します。
- 父母それぞれの出生から死亡までの戸籍
- 祖父母が亡くなっていることが分かる戸籍
- 兄弟姉妹全員の現在の戸籍
1は、父母に亡くなった人以外の子(異母・異父の兄弟姉妹を含む)がいないことを示すためです。父母の前の結婚の子は亡くなった人の戸籍には出てこないため、父母の戸籍まで遡ります。
2は、親の世代(直系尊属)が誰も残っていないことを示すためです。祖父母の年齢から明らかに亡くなっていると言える場合に省略できるかは提出先の運用で異なるので、法務局か銀行に事前に聞いておきましょう。
この形では通数が10〜20通になりやすく、本籍地も父方・母方で分かれるので、請求先の役所が4〜5か所になる例もあります。法務局の法定相続情報証明制度の案内でも、兄弟姉妹が相続人になるときは「被相続人の親等に係る戸除籍謄本」の添付が必要になる場合があると示されています。銀行も同じ範囲を求めるのが一般的です。
出典: e-Gov法令検索「民法」第889条 / 法務省民事局「法定相続情報証明制度について」(PDF)
先に亡くなった子や兄弟姉妹がいる場合|代襲相続でその人の出生から死亡までの戸籍を足す
本来の相続人(子や兄弟姉妹)が亡くなった人より先に亡くなっていると、その人の子が代わりに相続人になり、代襲相続と呼ばれます。
このとき足す戸籍は2種類です。
- 先に亡くなった人の出生から死亡までの戸籍(その人に他に子がいないことを示す)
- 代襲する人(孫、または甥・姪)の現在の戸籍
子の代襲は孫、孫も先に亡くなっていればひ孫へと続きます。一方、兄弟姉妹の代襲は甥・姪までで止まり、甥・姪の子には及ばない決まりです。民法が、兄弟姉妹の相続については子の代襲の規定のうち「1代目」の部分だけを準用しているためです。
甥・姪が先に亡くなっていても、その子の戸籍は不要です。
相続が重なった場合|亡くなった相続人ごとに出生から死亡までの戸籍を1組ずつ足す
実家で多いのが「父が亡くなり、相続登記をしないうちに母も亡くなった」という形で、数次相続と呼ばれます。
父の相続と母の相続が重なっているので、集める戸籍は父の組と母の組に分けて考えます。
- 父の組は、父の出生から死亡までの戸籍+父の相続人(母と子)の現在の戸籍
- 母の組は、母の出生から死亡までの戸籍+母の相続人(子)の現在の戸籍
父と母が結婚してから同じ戸籍にいた期間の分は1通で両方の組に使えるので、重ねて取る必要はなく1通で済みます。ただし提出は組ごと(父の相続分・母の相続分)に求められるので、集める段階から2組に分けて並べておくと、後の提出で迷わずに済みます。
相続人が増えたときの関係図の整理と、誰から話を進めるかは、姉妹記事「相続が重なって相続人が増えた実家の整理」で扱います。
前の結婚の子・認知した子・養子が戸籍に出てきた場合|その人の現在の戸籍を足す
出生から死亡までの戸籍を遡ると、家族が知らなかった子が出てくることがあり、見つかったらその人の現在の戸籍を足します。
前の結婚のときの子、認知した子、養子のいずれも、今の家族の子と同じ第1順位の相続人です。戸籍の身分事項欄に「認知」「養子縁組」の記載があれば、相手の氏名と本籍が書かれているので、そこから追えます。
養子について、よくある誤解を2つ整理します。
- 普通養子として他の家に出た子は、養親の子になると同時に、実の親の子でもあり続けます。「養子に行ったから相続人ではない」は誤りで、実の親の相続人です
- 特別養子は、実の親との親族関係が法律上終わるので、実の親の相続人から外れます。戸籍の記載に「民法817条の2による裁判確定」とあれば特別養子です
離婚した元配偶者は相続人から外れますが、その間に生まれた子は相続人です。離婚して相手が子を引き取っていても同じです。
こうして見つかった相続人の連絡先の探し方や、外国籍の相続人の書類は、姉妹記事「連絡が取れない・海外にいる相続人への対応」で扱います。
戸籍の取得先と取り方の使い分け|広域交付・郵送・本人に取ってもらう
亡くなった親の分は広域交付で最寄りの窓口へ、自分の現在の戸籍は同じ窓口かコンビニで、兄弟姉妹の分は本人に取ってもらい、広域交付で出てこなかった古い戸籍だけ本籍地へ郵送で請求する振り分けが、最も往復が少なくて済みます。
| 誰の戸籍 | 手段 | 条件 | 持ち物 | 日数の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 亡くなった親(直系)の出生から死亡まで | 広域交付(最寄りの窓口) | 本人が窓口へ。コンピュータ化された戸籍のみ | 顔写真付きの本人確認書類、亡くなった人の本籍と筆頭者のメモ | 後日受取で数日〜2週間(自治体で差) |
| 自分の現在の戸籍 | 同じ窓口、またはコンビニ交付 | コンビニは本籍地が対応していること | マイナンバーカード | 当日(コンビニは利用登録に数日) |
| 兄弟姉妹・甥姪の現在の戸籍 | 本人に取ってもらう | 協力が得られること | なし(本人が用意) | 数日 |
| 兄弟姉妹の分で協力が得られない | 第三者請求(本籍地へ) | 相続人であることを示す | 死亡の記載がある戸籍の写しなど | 郵送で1〜2週間 |
| コンピュータ化前の古い戸籍 | 本籍地へ郵送請求 | 本籍と筆頭者が分かること | 請求書、本人確認書類の写し、定額小為替、返信用封筒 | 役所ごとに1〜2週間 |
広域交付|亡くなった親の出生から死亡までの戸籍を最寄りの窓口でまとめて請求する
2024年3月1日に戸籍法の改正で始まった「広域交付」が、亡くなった親の戸籍を集めるときの主力になります。
本籍地が遠くても、最寄りの市区町村の窓口で、他の市区町村にある戸籍を請求できる仕組みです。使える条件は次の4つです。
- 請求できる人は、戸籍に載っている本人・配偶者・直系尊属(父母・祖父母)・直系卑属(子・孫)
- 請求する人が自分で窓口へ行く(郵送・代理人・士業の職務上請求は対象外)
- 顔写真付きの本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど)を提示する
- 取れるのは謄本(全部事項証明書)に限られる
子や孫が親や祖父母の戸籍を取るのは可能なので、亡くなった親の分はここに当たります。健康保険証では請求できません。抄本(個人事項証明書)は対象外ですが、相続人確認で使うのも謄本なので、この条件で困る場面はないといえます。
同じ窓口で、自分(直系の子)の現在の戸籍も一緒に請求できるので、1回の来庁でまとめて頼んでおきましょう。
ここで知っておきたいのが、複数の戸籍を請求すると、多くの自治体で当日には受け取れないことです。職員が他の市区町村のシステムを1件ずつ確認して発行するため、出生から死亡までの一式は後日交付が原則になっています。
たとえば船橋市は「申請日の翌日から起算して5開庁日以降に窓口でお渡し」、文京区は「再来庁まで2週間以上」と案内しています(2026年10月時点の案内。自治体によって差があるので、行く前に最新の案内を確かめておきましょう)。
つまり、最初から2回行く前提で予定を組んでおくと、空振りを防げます。受け取りも郵送ではなく窓口なので、通える窓口を選んでおきましょう。
もう1つ、職員が目で確認してそろえる仕組みなので、1通抜けている「発行漏れ」が起こり得ます。受け取った束は、その場で「揃ったかの判定」の節の基準(編製日と除籍日のつながり)を見て、抜けがあればすぐ伝えましょう。持ち帰ってから気づくと、もう1往復になります。
出典: 法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」 / 船橋市「戸籍証明書の広域交付」 / 文京区「戸籍証明書等の広域交付」
広域交付で取れない戸籍|兄弟姉妹の戸籍・附票・コンピュータ化前の戸籍は本籍地へ請求する
広域交付で取れないものははっきり決まっていて、知らずに窓口へ行くと空振りします。
| 広域交付で取れないもの | 代わりの行き先 |
|---|---|
| 兄弟姉妹・甥姪など、直系でない人の戸籍 | 本人に取ってもらう。協力が得られなければ第三者請求(「他の相続人の現在の戸籍」の節) |
| 抄本(個人事項証明書) | 相続人確認には不要 |
| 戸籍の附票・住民票の除票 | 相続人確認には不要。登記で住所をつなぐときに、本籍地(附票)・最後の住所地(除票)へ |
| コンピュータ化されていない古い戸籍・除籍 | 本籍地の市区町村へ郵送請求(「郵送請求」の節) |
| 郵送・代理人・士業の職務上請求 | 本籍地の市区町村へ郵送請求 |
影響が大きいのは、兄弟姉妹の戸籍と、コンピュータ化前の古い戸籍です。前者は「本人に取ってもらう」で解決し、後者は郵送請求で補います。
出典: 法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」 / 文京区「戸籍証明書等の広域交付」
郵送請求|請求書に「出生から死亡まで」と書き、定額小為替は多めに同封する
広域交付で出てこなかった古い戸籍は、その戸籍がある本籍地の市区町村へ郵送で請求します。
市町村合併で、戸籍に書かれた旧町村名の役所がもう無いときは、現在その地域を管轄している市区町村へ送ります。旧町村の戸籍は、合併後の市区町村に引き継がれています。請求先のホームページで「郵送請求」のページを探すと、申請書と送付先が載っています。
封筒に入れるのは次の4点です。
- 請求書
- 本人確認書類の写し
- 定額小為替
- 返信用封筒
請求書は、市区町村のホームページから印刷します。「出生から死亡までの戸籍すべて」に印を付ける欄や、通数を書く欄があります。使用目的は「相続手続きのため(〇〇銀行・法務局に提出)」、亡くなった人との続柄(長男・長女など)を書き、昼間につながる電話番号も忘れずに書いておきましょう。
本人確認書類の写しは、運転免許証やマイナンバーカードのコピーで、現住所が載っているものにします。亡くなった人との続柄が請求先の戸籍では分からない場合(子の戸籍が別の市にある場合など)は、続柄が分かる戸籍の写しも添えます。
定額小為替は、ゆうちょ銀行・郵便局の貯金窓口で買います。何も書かずにそのまま入れ(指定受取人の欄は記入不要と案内する役所が多い)、支払いは切手や現金ではなく小為替に限られます。
通数が事前に分からないので、小為替は多めに入れます。高砂市のように「出生から死亡までなら3,000〜4,000円程度を目安に」と案内する役所もあり、余った分は小為替で戻ってきます。
返信用封筒は、自分の住所・氏名を書いて切手を貼ります。返送先は請求者の住民登録地に限られ、急ぐなら速達分の切手を足します。
郵送請求で止まる原因の多くは、小為替の不足です。足りないと役所から電話や通知が来て、追送してから発送になるので、往復で2週間ほど遅れます。最初から多めに入れておくと、この往復をまるごと省けます。所要日数は役所ごとに1〜2週間が目安です。
他の相続人の現在の戸籍|本人に取ってもらうか、コンビニ交付・第三者請求で取る
相続人全員の現在の戸籍は1人1通で、最速はそれぞれの本人が自分の本籍地で取ることです。
窓口・郵送・コンビニのどれでも取れますし、本人なら理由の説明も不要です。「相続手続きで必要なので、あなたの現在の戸籍謄本を1通、発行日が〇月〇日(死亡日)より後のもので取ってほしい」と頼みます。
コンビニ交付は、マイナンバーカードがあれば、コンビニのマルチコピー機で現在の戸籍(全部事項証明書)を取れます。ただし条件があります。
- 本籍地と住所地の市区町村が違う場合は、先に本籍地の市区町村へ「利用登録申請」をする。マルチコピー機か、ICカードリーダー付きのパソコンからオンラインで申請でき、審査に5開庁日ほどかかる自治体が多い
- 本籍地がコンビニ交付に対応していない、または利用登録申請を受け付けていない市区町村もある。対応状況は本籍地の市区町村のホームページで確かめる
- 取れるのは現在の戸籍だけで、除籍や改製原戸籍は対象外
協力が得られないときは、自分で請求する方法があります。戸籍法10条の2が定める第三者請求で、「自己の権利を行使するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合」に当たります。相続人が、相続関係を確定するために他の相続人の戸籍を取るのはこの場合に当たり、法務省の戸籍制度のQ&Aにも例として挙がっています。
請求書には、理由を具体的に書きます。
添える書類は、亡くなった人の死亡の記載がある戸籍の写しと、自分がその相続人であることが分かる戸籍の写しです。第三者請求では、その人からの委任状は原則として不要です。ただ、窓口によって委任状を求める運用が残っていることがあるので、郵送する前に請求先の戸籍担当へ電話で確かめておくと、差し戻しを防げます。
連絡が取れない相続人の住所の追い方は、姉妹記事「連絡が取れない・海外にいる相続人への対応」で扱います。
出典: e-Gov法令検索「戸籍法」第10条の2 / 法務省「戸籍法の一部を改正する法律(平成20年5月1日施行)について」Q&A / 地方公共団体情報システム機構「コンビニ交付」 / 横浜市「よくある質問(コンビニ交付の利用登録申請)」
費用と日数|手数料は全国同額、広域交付は後日受取、郵送は役所ごとに1〜2週間
戸籍の手数料は政令で標準額が定められていて、どの市区町村でも同じです。
| 書類 | 1通の手数料 |
|---|---|
| 戸籍全部事項証明書(現在の戸籍) | 450円 |
| 除籍謄本 | 750円 |
| 改製原戸籍謄本 | 750円 |
広域交付で他の市区町村の戸籍を取る場合も、同じ金額です。出生から死亡までの一式は、現在の戸籍が1通で残りが除籍・改製原戸籍になるので、6通なら450円+750円×5=4,200円前後。兄弟姉妹が相続人で15通になれば、1万円前後が実費の見当です。
郵送請求では、定額小為替の発行手数料(1枚200円)と、往復の切手代が上乗せになります。小為替は額面の種類が12種類あるので、750円の小為替を使えば枚数を減らせます。
日数の目安は次のとおりです。
- 広域交付は、後日受取で数日〜2週間程度(自治体で差)
- 郵送請求は、役所ごとに1〜2週間。遡りで請求先が3つあれば、順番に進めると1か月以上
- 本人に頼めば、数日
戸籍の束は、提出先の数だけ取る必要はなく、1セットで済みます。法務局や銀行は、原本を確認した後に返してくれる(原本還付)か、コピーを添えて原本を返す扱いが多いので、それぞれの提出先の案内で確かめておきましょう。
出典: e-Gov法令検索「地方公共団体の手数料の標準に関する政令」 / ゆうちょ銀行「定額小為替」
死亡時の戸籍から出生まで遡る手順と、揃ったかの確認方法
集める順番は、新しい戸籍から古い戸籍へ、です。
死亡の記載がある戸籍を手に入れたら、その戸籍に書かれた「1つ前の戸籍の場所」を読み取って請求し、出生の記載が出てくるまで繰り返します。
“`① 本籍と筆頭者を確かめる(分からなければ本籍入りの住民票の除票)↓② 死亡の記載がある戸籍を取る↓③ 戸籍事項欄の「改製」「転籍」と、本人の欄の「従前戸籍」を読む↓④ 1つ前の戸籍を請求する↓③と④を、出生の記載が出てくるまで繰り返す↓⑤ 揃ったかを3つの基準で判定する“`
戸籍を全文読む必要はなく、遡るために読む欄は「改製」「転籍」「従前戸籍」の3つだけです。それ以外の記載は、最後の判定(⑤)のときに見れば済みます。
本籍が分からないときは本籍入りの住民票の除票から始める
親の本籍を知らないときは、亡くなった人の最後の住所地で住民票の除票を「本籍・筆頭者の記載あり」で請求すると分かります。
戸籍を請求するには本籍と筆頭者が要りますが、親の本籍を正確に知らない人は多くいます。運転免許証には本籍が印字されなくなりましたし、家族でも普段は使わない情報です。
除票は、死亡で住民票から除かれた後の住民票のことで、ここに本籍と筆頭者が載ります。請求先は、亡くなった人の最後の住所地の市区町村です。
注意点は、本籍と筆頭者は何も言わないと省略されることです。申請書に「本籍・筆頭者の記載」を選ぶ欄があればそこに印を付け、窓口なら「本籍と筆頭者を入れてください」と口で添えます。相続人が請求するときは、亡くなった人との関係が分かる戸籍の写しなど、相続人であることを示す書類を求められることがあります。
除票の保存期間は、2019年6月20日の改正で5年から150年に延びました。ただし、改正より前に旧保存期間の5年を過ぎて廃棄された分は残っていないため、亡くなってから年数がたっているなら早めに請求しておきましょう。
除票が取れなければ、亡くなった人の子である自分の戸籍を取ると、父母の氏名と、自分が入籍した当時の親の本籍が記載されているので、そこから親の戸籍を追えます。
本籍と筆頭者が分かったら、その本籍地(または広域交付の窓口)で、死亡の記載がある戸籍を請求します。亡くなった人が最後の1人だった戸籍は除籍、配偶者などが残っていれば現在の戸籍として出てきます。
出典: 目黒区「住民票の除票の写し」 / 川崎市「よくある質問(住民票の除票の保存期間)」 / e-Gov法令検索「住民基本台帳法施行令」第34条
戸籍事項欄に改製の記載があれば、同じ役所の改製原戸籍も一緒に請求する
戸籍事項欄に「改製」の文字があれば、作り直す前の戸籍(改製原戸籍)が同じ役所に残っています。
コンピュータ化された戸籍の1枚目には「戸籍事項」という欄があり、記載はたとえば次の形です。
戸籍改製 【改製日】平成〇年〇月〇日 【改製事由】平成6年法務省令第51号附則第2条第1項による改製
これが平成の改製(コンピュータ化)の印で、改製日より前の記録は平成改製原戸籍の方に載っています。さらに、その平成改製原戸籍の欄外や事項欄に「昭和32年法務省令第27号により改製」といった記載があれば、その前の昭和改製原戸籍も同じ役所にあります。
ここが、取り忘れがいちばん多いところです。窓口で「〇〇の出生から死亡までの戸籍を全部」と頼めば、同じ役所にある改製原戸籍まで一度に出ます。ところが「死亡の戸籍を1通」と頼むと、改製原戸籍抜きの1通だけが出てきます。
1通だけ取って帰り、提出先で「改製前の分が足りません」と言われるのが、よくあるつまずきです。「広域交付」の節の言い方(出生から死亡まで全部、謄本で)を守れば、同じ役所の分は一度でそろいます。
出典: 名古屋市「戸籍用語集」 / 文京区「戸籍のよくある質問」
転籍と従前戸籍の記載から、前の本籍地の役所へ請求する
同じ役所の分がそろったら、その中でいちばん古い戸籍の「転籍」と「従前戸籍」の記載から、前の本籍地の役所を読み取ります。
見る場所は2つです。
1つ目は、戸籍事項欄の「転籍」です。「【転籍日】〇年〇月〇日 【従前の記録】本籍 〇県〇市〇町〇番地」のように、前の本籍が書かれています。この本籍地の役所に、転籍前の戸籍(除籍)があります。
2つ目は、亡くなった人の身分事項欄の「従前戸籍」です。結婚・養子縁組・分籍で新しい戸籍に入ったとき、「【従前戸籍】〇県〇市〇町〇番地 〇〇(筆頭者)」と、それまで入っていた戸籍が書かれます。結婚前の親の戸籍であることが多く、別の役所にある例も多くあります。
次の役所へ請求するときの指定は「本籍・筆頭者・その戸籍に載っている亡くなった人の氏名」の3点です。筆頭者は、親の戸籍なら父(戦前なら祖父など戸主)になります。請求書の「必要な人の氏名」欄には亡くなった人の名前を書き、「出生からその戸籍を抜けるまでの分を全部」と添えます。
古い戸籍は縦書き・手書き・旧字体ですが、地名と氏名の部分だけ拾えれば十分です。読めなければ、窓口で「この戸籍の前の本籍はどこになりますか」と聞いてみてください。役所は相続人の判定はしませんが、戸籍の記載を読み取る手助けはしてくれます。
地名が市町村合併で変わっていれば、現在その地域を管轄する市区町村へ請求します(「郵送請求」の節)。
出典: 文京区「戸籍のよくある質問」
揃ったかの判定|出生の記載まで届き、編製日と除籍日が切れ目なくつながっている
「これで全部か」を自分で判定する基準は3つです。
| 基準 | 見る場所 | 揃っていないときの印 |
|---|---|---|
| ① 出生まで届いている | いちばん古い戸籍に、亡くなった人の出生による入籍の記載がある(または、その戸籍の編製日が出生日より前) | 届いていなければ、さらに前の戸籍がある |
| ② 日付がつながっている | 各戸籍の編製日・改製日・転籍日が、1つ前の戸籍の消除日・除籍日・改製日・転籍日と同じ日付 | 間に空白期間があれば、その期間の戸籍が1通抜けている |
| ③ 知らない相続人がいない | 全戸籍の身分事項欄の「認知」「養子縁組」「離婚」と、同じ戸籍内の知らない子の記載 | 見つかれば「相続人の組み合わせ」の章の追加分を足す |
②の「つながり」は、戸籍を古い順に机に並べて、前の戸籍の終わりの日付と、次の戸籍の始まりの日付を見比べます。
| 戸籍 | 始まりの日付 | 終わりの日付 |
|---|---|---|
| A 昭和改製原戸籍 | 出生による入籍(または編製日が出生日より前) | 昭和〇年〇月〇日 改製により消除 |
| B 平成改製原戸籍 | 昭和〇年〇月〇日 改製(Aの終わりと同じ日付) | 平成〇年〇月〇日 改製により消除 |
| C 現在の戸籍 | 平成〇年〇月〇日 改製(Bの終わりと同じ日付) | 〇年〇月〇日 死亡 |
転籍があれば、転籍前の戸籍の「転籍により消除」の日付と、転籍後の戸籍の「転籍」の日付が一致します。結婚で親の戸籍を出た人は、親の戸籍の「婚姻により除籍」の日付と、夫婦の戸籍の「婚姻により編製」の日付が一致します。どこか1か所、日付が合わずに空白があれば、その間の戸籍が抜けています。
③は、遡りが終わってから全戸籍を見直す作業で、読む場所は身分事項欄に限られます。「認知」「養子縁組」「離婚」の記載、そして同じ戸籍の中に、家族が知らない子の名前がないかを確かめます。見つかれば、その人の現在の戸籍を足します(「相続人の組み合わせ」の章)。
広域交付で束を受け取ったときも、受け取った窓口でその場で①②を見ておきましょう。抜けがあれば、その場で「この戸籍とこの戸籍の間が空いています」と伝えれば、出し直してもらえます。
法定相続情報一覧図の申出で、法務局に戸籍の不足を確かめてもらう
自分で判定してもまだ不安が残るときは、法務局の法定相続情報証明制度が「答え合わせ」に使えます。
集めた戸籍の束と、相続関係を書いた一覧図を法務局に出すと、登記官が戸籍の内容を確認します。足りない戸籍があれば是正を求める連絡が来るので、どこが足りないかがはっきりします。
確認が済むと、認証文の付いた一覧図の写しが無料で交付され、以後の相続手続きでは戸籍の束の代わりにこの写しを出せます。申出は、亡くなった人の本籍地・最後の住所地・申出人の住所地・不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局で、郵送でもできます。
一覧図の作り方、使える手続き、有効期間の扱いは、姉妹記事「法定相続情報一覧図の作成と使い方」で扱います。
相続登記を自分で進める予定なら、法務局の登記手続案内(予約制、1回20分以内が目安)でも、戸籍の不足を見てもらえます。ただし、事前審査や法的判断はしない前提の案内なので、何代にもわたる複雑な相続は申請後の審査で確認されることになります。
出典: 法務局「法定相続情報証明制度について」 / 法務局「登記手続案内」 / 大阪法務局「登記手続案内をご利用の皆様へ」(PDF)
戸籍集めで止まる原因と対処
ここまでの手順で進めても、止まる場面はあります。
症状から原因と次の一手を引けるように、表にまとめます。
| 症状 | 多い原因 | 次の一手 | 聞く先 |
|---|---|---|---|
| 古い戸籍が旧字体で読めない | 昭和改製より前の様式 | 「前の本籍」と「筆頭者」の部分だけ読む。読めなければ窓口で聞く | 受け取った窓口、法務局の登記手続案内 |
| 役所から「廃棄済み・焼失で出せない」と言われた | 旧保存期間の経過、戦災・火災 | 「交付できない旨の証明書」を取り、残りの戸籍と一緒に出す | 本籍地の戸籍担当、提出先の法務局・銀行 |
| 提出先で「足りない」と言われた | 改製原戸籍の取り忘れ、転籍前の1通抜け | 欠けている期間を聞き、該当の本籍地へ追加請求 | 提出先の担当 |
| 兄弟姉妹が戸籍を取ってくれない | 疎遠・連絡不通 | 第三者請求で自分が請求。住所は附票で確かめる | 相手の本籍地の戸籍担当 |
| 広域交付で「出せない」と言われた | コンピュータ化前の戸籍 | 本籍地へ郵送請求(「郵送請求」の節) | 本籍地の戸籍担当 |
| 郵送請求が2週間以上戻らない | 小為替や書類の不足連絡が届いていない | 不在票や郵便を確認し、役所の戸籍担当に電話 | 請求先の戸籍担当 |
古い戸籍が読めない|窓口で前の本籍地を聞き、法務局の登記手続案内も使う
昭和の改製より前の戸籍(明治31年式・大正4年式)は縦書き・手書き・旧字体ですが、読む場所を絞れば遡りは進められます。
戸主を中心に親族が何人も載っているので、初めて見るとどこを読めばよいか迷いやすい様式です。でも、遡りに要るのは「転籍・改製の記載」と「従前戸籍の地名と筆頭者(戸主)」の2か所に限られ、それ以外の記載は読めなくても遡りに影響しない部分です。
地名と氏名が読めないときの頼り先は2つです。
- 受け取った窓口で「この戸籍の前の本籍はどこになりますか」と聞く。戸籍担当は旧字体や古い様式を読み慣れていて、記載を指しながら読み上げてくれる
- 法務局の登記手続案内を予約する。相続登記を予定している本人なら使え、予約制で1回20分以内が目安なので、読んでほしい箇所に付箋を貼って持ち込む
どちらも「相続人が誰か」の判定はしてくれませんが、記載の読み取りは手伝ってくれます。全文を読もうとしないことが、いちばんの近道です。
出典: 法務局「登記手続案内」 / 大阪法務局「登記手続案内をご利用の皆様へ」(PDF)
廃棄や焼失で取れない|市区町村長の交付できない旨の証明書で代える
役所から「保存期間を過ぎて廃棄した」「戦災で焼失した」と言われた戸籍は、市区町村長の「交付できない旨の証明書」で代えます。
古い家系ほど起こりやすい止まり方です。除籍や改製原戸籍の保存期間は現在150年です(戸籍法施行規則5条4項)。この150年は、2010年(平成22年)6月1日施行の戸籍法施行規則の改正で延びたもので、それより前は80年でした。
改正前に80年を過ぎて廃棄された戸籍と、戦災・火災で滅失した戸籍は、どの役所にも残っていない状態です。
取れない戸籍があるときは、本籍地の市区町村長が出す「廃棄(滅失)により除籍等の謄本を交付することができない旨の証明書」を請求します。名称は自治体によって「廃棄証明書」「焼失証明書」「告知書」などさまざまですが、窓口で「相続登記に使うので、交付できない旨の証明書をください」と言えば通じます。これを、残っている戸籍と一緒に提出します。
相続登記については、法務省が2016年3月11日付の通達(法務省民二第219号)で扱いを変えています。それまでは、この証明書に加えて、相続人全員が「他に相続人はいない」と署名して印鑑証明書を付けた証明書(上申書)が必要でした。
通達以降は、戸籍と残っている除籍等の謄本に加えて、市町村長の「交付することができない」旨の証明書があれば、相続登記をして差し支えないとされています(明治5年式戸籍、いわゆる壬申戸籍は除く)。
ただし、法務局によって個別の事情で追加の書類を求められることはあるので、申請前に管轄の法務局へ事前に相談しておきましょう。銀行などの金融機関は登記とは別の運用で、上申書を求めるところもあります。提出先ごとに事前に聞いておくと、出し直しを防げます。
出典: e-Gov法令検索「戸籍法施行規則」第5条第4項 / 法務省「除籍等が滅失等している場合の相続登記について」(平成28年3月11日法務省民二第219号・PDF)
提出先で足りないと言われた|欠けている期間を聞き、改製原戸籍の取り忘れと転籍の抜けを疑う
銀行や法務局で「戸籍が足りません」と言われたら、まず「どの期間が欠けていますか」と具体的に聞いてみてください。
提出先は、戸籍を見て足りない期間を把握しています。「〇年から〇年までの分」「改製前の分」と教えてもらえれば、追加請求は1回で済みます。
多い原因は4つで、それぞれ請求先が決まっています。
| 原因 | 追加の請求先 |
|---|---|
| ① 平成改製原戸籍の取り忘れ(「死亡の戸籍1通」で頼んだとき) | 同じ本籍地の役所 |
| ② 転籍前の1通の抜け | 前の本籍地の役所 |
| ③ 兄弟姉妹が相続人で、父母の出生からの分が無い | 父母それぞれの本籍地 |
| ④ 代襲相続で、先に亡くなった人の分が無い | その人の本籍地 |
①がいちばん多く、「改製の記載」の節で触れたとおり、頼み方が「1通」だったことが原因です。同じ役所に「〇〇の改製原戸籍を」と請求すれば出ます。
提出先に聞く前でも、「揃ったかの判定」の3つの基準(出生まで届いているか・日付がつながっているか・知らない相続人がいないか)を使えば、欠けている場所は自分で特定できます。聞ける相手がいるなら聞くのが早く、いないなら基準で見つける、と使い分けましょう。
兄弟姉妹が戸籍を取ってくれない|第三者請求で自分で請求し、住所は附票で確かめる
兄弟姉妹や甥・姪が疎遠で戸籍を頼めないときも、第三者請求で自分が請求できます。
本人の戸籍は、「他の相続人の現在の戸籍」の節で説明した第三者請求(戸籍法10条の2)で請求します。請求書に「亡き〇〇の相続人として相続関係を確定するため」と理由を書き、亡くなった人の死亡の記載がある戸籍と、自分が相続人であることが分かる戸籍の写しを添えます。
相手の本籍と筆頭者は、亡くなった人の戸籍(親の戸籍)に、兄弟姉妹が結婚で抜けたときの「新本籍」として記載されているので、そこから分かります。ただし、その後に転籍していれば、新本籍の役所で除籍を取り、転籍先を追います。
住所が分からず連絡が取れないときは、相手の本籍地で「戸籍の附票」を第三者請求で取ると、現在の住所が分かります。附票は、戸籍に載っている人の住所の履歴を記録した書類です。
第三者が附票を請求するときは、利用目的(相続手続きのため相続人の住所を確認する)と、相続人であることを示す資料が要り、本籍の記載を求める場合はその理由も書きます。
連絡の取り方、所在が分からないときの手続き、海外在住の相続人の書類は、姉妹記事「連絡が取れない・海外にいる相続人への対応」で扱います。
出典: e-Gov法令検索「戸籍法」第10条の2 / 横浜市「戸籍の附票の写しの郵送請求」 / 柏市「戸籍の附票を取得するとき」
専門家に頼むと省ける作業と省けない作業|報酬の目安と、集めた戸籍を渡す
専門家に頼むなら、頼むと何が省けて何は省けないかを知っておくと、依頼の範囲と見積もりを決めやすくなります。
費用の違いは次のとおりです。自分で集めれば実費だけで済みます(通数×手数料で数千円〜1万円台。「費用と日数」の節)。専門家に頼むと、報酬と実費がかかります。
行政書士に戸籍収集だけを頼むと数万円程度、司法書士は相続登記と一括で見積もることが多く、事務所によって差が大きいので、金額は複数の見積もりで確かめておきましょう。
省ける作業は、次の4つです。
- 旧字体の戸籍の読み取りと、次の請求先の特定
- 請求書の作成と、役所との郵送のやり取り
- 兄弟姉妹の戸籍の第三者請求
- 廃棄・焼失があるときの、法務局との事前調整
省けない作業も、はっきりあります。
- 士業の職務上請求は広域交付の対象外で、各本籍地へ個別に郵送請求するため、日数は自分で広域交付を使うより短くならない場合もある
- 相続人全員の協力(印鑑証明書や分け方の合意)は、頼んでも自分で進めても同じように要る
- 相続人が誰かを最終的に確かめ、納得するのは依頼者自身
頼むなら、「ここまで集めた戸籍の束」と「どこで止まったか」を渡しましょう。読み取りと請求の手数が減る分、報酬と日数が下がる事務所が多く、途中まで自分で集めた分はそのまま見積もりの引き下げにつながります。
頼む価値が高い場面もあります。兄弟姉妹が相続人で通数が10通を超えるとき、廃棄や焼失があって法務局との調整が要るとき、外国籍の相続人がいて日本の戸籍では追えないときです。
依頼先は、戸籍収集だけなら行政書士か司法書士、相続登記まで一括で進めるなら司法書士に頼む形が多く見られます。相続税の申告が要る場合は、税理士が戸籍収集を含めて引き受けることもあります。どの士業も、相続人確認の戸籍を集める部分では同じ戸籍法のルールで動くので、「誰に頼むか」より「どこまで頼むか」で選ぶと決めやすくなります。
出典: 文京区「戸籍証明書等の広域交付」(職務上請求は広域交付の対象外)
まとめ:集める戸籍は「亡くなった人の出生から死亡まで」と「相続人全員の現在の戸籍」の2組
最後の戸籍1通では、結婚や死亡で先に抜けた子が書き写されないため、他に子がいないことを示せません。亡くなった人の戸籍を出生まで途切れなくそろえ、相続人全員の現在の戸籍を1通ずつ足した2組にしておけば、法務局・銀行・証券会社のどこにもそのまま出せます。
次の一歩は、亡くなった人の本籍と筆頭者を控えて最寄りの窓口へ行き、広域交付で「出生から死亡まで全部、謄本で」と頼むことです。「死亡の戸籍を1通」と頼むと同じ役所にある改製原戸籍が抜け、提出先で足りないと言われてもう1往復になります。
受け取った束は古い順に並べ、前の戸籍の除籍日と次の戸籍の編製日が切れ目なくつながっているかを、その場で確かめておきましょう。実家と相続の地図帳「つぐーる」では、相続人確認に必要な戸籍の範囲と取り方も含めて、相続や実家について悩むあなたに経験に基づいた情報を提供しています。

