実家の解体やリフォームの見積もりに「アスベスト事前調査費」の行を見つけて、小さな工事でも要るのか、誰に頼めばいいのかと迷う人もいるでしょう。
2006年9月より前に工事が始まった建物にはアスベスト(石綿)が使われている可能性があり、建物を壊す・直す工事では、工事の大きさに関係なく、ほぼすべてで事前の調査が必要です。
調査は工事を請け負う業者が行うので、施主は自分の役目と補助の申請の順番を押さえておくと、業者の説明を確かめながら、調査や補助で損をせずに進められます。
実家の解体・改修でアスベストの事前調査が必要になる工事の種類
事前調査は、工事の規模や金額に関係なく、建物の解体・改修のほぼすべてで必要です。
大気汚染防止法18条の15と石綿障害予防規則3条が、建物を解体・改修する前の調査を義務にしています。
よく耳にする「床面積80㎡」「税込100万円」は、調査の結果を役所に報告するときの基準です。これを調査そのものの基準と取り違えると、「うちは小さい工事だから調査はいらない」という思い込みにつながります。
調査・報告・届出が要る場面を、実家で起きやすい工事の種類ごとにまとめると次のとおりです。
| 工事の種類 | 事前調査 | 結果の報告(業者または本人が役所へ) | レベル1・2の建材があった場合の発注者の届出 |
|---|---|---|---|
| 建物全体や離れ・物置を解体する工事 | 必要 | 解体する部分の床面積の合計が80㎡以上なら必要 | 必要(作業開始の14日前まで) |
| 屋根・外壁・内装・水回りのリフォーム工事 | 必要 | 請負代金の合計が税込100万円以上なら必要 | 必要(作業開始の14日前まで) |
| 家族が業者に頼まず自分で行う修繕や解体 | 必要(施工する本人が行う) | 解体は床面積80㎡以上、修繕は業者に頼んだ場合の適正な請負代金に置き換えて税込100万円以上なら必要 | 必要(施工する本人が届け出る) |
| 事前調査が不要になる例外の工事 | 不要 | 不要 | ― |
※報告の基準は大気汚染防止法施行規則16条の11と石綿障害予防規則4条の2、届出は大気汚染防止法18条の17によります。「レベル1・2」は吹付け材や保温材などの飛び散りやすい建材のことで、くわしくは「見つかった建材のレベルと除去・処分の方法」で説明します。
アスベストは、2006年(平成18年)9月から製造・輸入・使用などが禁止されました。厚生労働省のリーフレットは、それより前に工事が始まった建物には、防火・保温・断熱などの目的でアスベストが使われている可能性があるとしています。
実家の着工時期を書類で確かめる方法は、「実家の建築時期がわかる書類を探して業者に渡す」で扱います。
建物全体や離れ・物置を解体する工事
母屋を丸ごと壊す工事も、離れや物置だけを壊す工事も、解体工事として事前調査が必要です。
建物を丸ごと壊す「全部解体」に加えて、離れ・物置・車庫・後から付け足した増築部分だけを壊す「一部解体」も対象です。「母屋は残すから」「物置だけだから」という場合も、同じように調査の対象になります。
役所への報告が要るのは、解体する部分の床面積の合計が80㎡以上の場合です。2階建てなら、1階と2階の床面積を足した数字で見ます。
総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、一戸建ての専用住宅(店舗や事務所を兼ねない住宅)の1住宅あたりの延べ面積は、全国平均で約126㎡でした。
80㎡はこれを大きく下回るので、木造2階建ての実家を丸ごと壊す場合は、報告の対象になることが多いと考えておくとよいでしょう。
離れや物置だけを壊すなら80㎡未満のこともありますが、その場合も調査そのものは必要です。
実家で見つかりやすいのは、天井や鉄骨に吹き付けたタイプの建材よりも、板状に固めた「成形板(せいけいばん)」と呼ばれる建材です。厚生労働省のリーフレットでは、国土交通省の資料を引用して、戸建て住宅の使用例として次のものを挙げています。
- 屋根の化粧スレート(薄い板状の屋根材)
- 窯業系サイディング(セメントなどでできた外壁の板)
- けい酸カルシウム板第1種(燃えにくい板状の建材)
- せっこうボード(壁や天井の下地の板)
- ビニル床タイル・ビニル床シート(床に張る材料)
- 壁紙
こうした成形板は、以前は大気汚染防止法の作業規制の対象外でした。2021年4月に施行された改正大気汚染防止法で、成形板などを含むすべての石綿含有建材が規制の対象になっています(神奈川県の解説ページ)。
つまり、「吹付けがないから関係ない」とはいえないのが今のルールです。
出典: e-Gov法令検索「大気汚染防止法施行規則」、総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要」(PDF)、厚生労働省・環境省・国土交通省「お住まいの住宅の解体・改修をご検討の皆さまへ」(PDF)、神奈川県「大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行等について」
屋根・外壁・内装・水回りのリフォーム工事
建物を壊さないリフォーム(法令では「改造・補修」)でも、事前調査は必要です。
実家でよくある工事でいえば、次のものはいずれも調査の対象になります。
- 屋根の葺き替え(古い屋根材をはがして新しくする)
- 外壁の張り替え
- 床・天井・壁をはがして張り替える内装工事
- キッチン・浴室・トイレの交換に合わせて、壁や床を壊したりはがしたりする工事
役所への報告が要るのは、工事全体の請負代金の合計が税込100万円以上の場合です。大阪府や沖縄県の資料では、この金額には消費税と材料費を含み、事前調査の費用は含まないと説明されています。
大阪府は「作業全体の請負代金の合計」としているので、アスベストに関係する部分を切り出した金額ではなく、工事全体の金額で判断します。
工事をいくつかの契約に分けた場合はどうなるのでしょうか。大気汚染防止法施行規則16条の11と石綿障害予防規則4条の2は、同じ業者が2つ以上の契約に分けて請け負う場合も、1つの契約で請け負ったものとみなすと定めています。
契約を分けても、報告の基準を下回ったことにはなりません。
注意したいのが、古い屋根の上に新しい屋根材をかぶせる「カバー工法」のような、はがさない工事です。既存の材料を取り除かず、新しい材料を足すだけの作業は、調査がいらない例として扱われています。
ただ、沖縄県のマニュアルは、電動工具で石綿が使われている可能性のある壁面などに穴をあける作業は事前調査が必要だとしています。
既存の屋根材にビスを打ち込んで固定するような場合はこれに当たる可能性があるので、工事の方法とあわせて業者に確かめておきましょう。
出典: e-Gov法令検索「大気汚染防止法施行規則」、e-Gov法令検索「石綿障害予防規則」、大阪府「石綿事前調査結果報告制度について」、沖縄県「大気汚染防止法に基づく石綿飛散防止手続き・作業マニュアル(Ver.2)」(PDF)
家族が業者に頼まず自分で行う修繕や解体
業者に頼まず家族で手を入れる工事でも、施工する本人に事前調査の義務がかかります。
片付けのついでに、家族で壁紙や床をはがしたり、物置を壊したりしたくなることもあるでしょう。この場合は、施工する本人(法令では「自主施工者」)が調査の義務を負います(大気汚染防止法18条の15第4項)。
調査の記録を作って保存すること、現場に結果を掲示すること、基準を超えれば役所に報告することも、本人の役目になります。
調査をするのは、原則として講習を修了した資格者です。例外として、大気汚染防止法施行規則16条の5は、個人が自分で行う「改造・補修」のうち、粉じんがごく少ない軽微な工事に限って、本人が自分で調査してよいとしています。
沖縄県のマニュアルは、その例として「床・壁・天井などへ家具を固定するための穴あけ」を挙げています。そのうえで、個人であっても石綿ありとみなすか、資格者に調査させることが望ましいとしています。
壁・天井・床をはがす作業は建材そのものを取り外すので、穴あけとは程度が違い、軽微とはいいにくいでしょう。また、この例外は「改造・補修」に限った扱いで、物置などを壊す解体は対象外です。
家族で手を入れたいときは、作業の前に資格者へ調査を頼んでおきましょう。判断に迷ったら、実家のある地域の自治体で大気汚染を担当する窓口にも相談できます(窓口の探し方は「実家のアスベスト調査の相談先」で紹介します)。
出典: e-Gov法令検索「大気汚染防止法」、e-Gov法令検索「大気汚染防止法施行規則」、沖縄県「大気汚染防止法に基づく石綿飛散防止手続き・作業マニュアル(Ver.2)」(PDF)
事前調査が不要になる例外の工事
事前調査がいらないのは、建材を傷めないごく軽い作業に限られます。
沖縄県のマニュアルでは、調査が不要な作業として次のものを挙げています。
- 木材・金属・石・ガラスだけでできた材料や、畳・電球のように石綿を含まないことが明らかなものを、手作業や電動ドライバーで、周りの材料を傷めずに取り外す作業
- 釘を打つ・抜くなど、材料にごく軽い傷しかつけない作業(ただし、電動工具で壁などに穴をあける作業は調査が必要)
- 既存の塗装の上に塗り重ねるなど、今ある材料を取り除かず、新しい材料を足すだけの作業
2006年9月1日以降に工事が始まった建物では、その日付を書類で確かめることが、そのまま調査になります。調査が要らなくなるのではなく、書類で確かめる形の調査になるという扱いです。
業者から「この工事は調査不要です」と言われたら、上のどの例外に当たるのかを聞いてみてください。根拠を答えられる業者なら安心材料になり、答えがあいまいなら別の業者の意見も聞いてみる価値があります。
出典: 沖縄県「大気汚染防止法に基づく石綿飛散防止手続き・作業マニュアル(Ver.2)」(PDF)、e-Gov法令検索「大気汚染防止法施行規則」
実家のアスベスト調査の流れ
アスベストの調査は工事を請け負う業者が行い、施主は資料・費用・立ち会いの面で調査に協力します。
事前調査の義務を負うのは、施主から直接工事を請け負う業者(法令では「元請業者」)です。業者に頼まず自分で工事をする場合は、その本人が義務を負います。
つまり、施主が自分で調査会社を探して手配する必要は、原則としてありません。
そのかわり、施主(法令では「発注者」)には次の役割があります。大気汚染防止法18条の15、石綿障害予防規則8条・9条と、厚生労働省の発注者向けリーフレットに書かれている内容です。
- 設計図書(図面や仕様書)など、アスベストの有無を確かめる手がかりになる資料を業者に渡す
- 調査の費用と、アスベストが見つかった場合の除去の費用を適正に負担する
- 現地への立ち入りや、作業の様子の写真撮影を認めるなど、調査と記録に協力する
- 調査の結果を書面で受け取り、説明を受ける
調査は、「書類で確かめる(書面調査)」→「現地で建材を見て確かめる(目視調査)」→「それでも判断できない建材は、分析するか、含有しているとみなす」という順で進みます。
沖縄県のマニュアルは、2006年9月1日以降の着工が書類で確かめられる場合を除き、書類だけで「石綿なし」と判断することはできないとしています。
施主がすることを工事の順に並べると、次の5段階です。
- 実家の建築時期がわかる書類を探して業者に渡す
- 仮見積もりで、調査費の計上と調査する人の資格を確かめる
- 片付けと立ち会いを段取りして、現地調査を受ける
- 分析またはみなし判定の結果を、書面で説明してもらう
- 役所への報告・現場の掲示・必要な届出と、工事後の作業記録を確かめる
実家の建築時期がわかる書類を探して業者に渡す
最初にするのは、実家の建築時期や使った建材が分かる書類を探すことです。
探したい書類は次のとおりです。
- 建築確認の書類(古い家では「確認通知書」、比較的新しい家では「確認済証」という名前)
- 検査済証(工事が終わったあとの検査に合格した証明)
- 設計図書(図面・仕様書など)
- 増築・改築・リフォームをしたときの図面、契約書、見積書
実家では、仏壇まわりや金庫、たんすの引き出し、押し入れの書類箱、建てた工務店の名前が入った封筒の中などから見つかることがよくあります。
書類が役に立つのは、着工日が分かれば調査を大きく減らせるからです。
石綿障害予防規則3条と大気汚染防止法施行規則16条の5は、新築工事に着手した日が2006年9月1日以降だと書類で確かめられた建物は、その確認をもって調査を終えてよいとしています。
沖縄県のマニュアルでは、この場合は資格者による調査もいらないと説明しています。現地での確認や分析が要らなくなるので、調査の量はぐっと減ります。
ここで知っておくと便利なのが、建築確認は工事より先に行われるという点です。建築基準法6条8項により、工事を始められるのは確認済証を受け取った後です。
そのため、建築確認の日付が2006年9月1日より後なら、工事の着手もそれ以降だという手がかりになります。どの書類で着工日を確かめたことにするかは調査する人が判断するので、見つかった書類は迷わず全部渡しておきましょう。
2006年より前の家でも、図面や仕様書は役に立ちます。沖縄県のマニュアルによると、書面調査では建材の型番や製造年月日も確かめます。どこに何の建材を使ったかが分かれば、現地での確認が進めやすくなります。
書類が見つからない場合は、実家のある市区町村の建築指導の窓口で「建築計画概要書」や「台帳記載事項証明」を取ると、建築確認や検査の年月日が分かることがあります。
ただし、どの年代まで残っているかは自治体によって違います。たとえば名古屋市は、確認や検査の番号・年月日が分かる書類は1992年4月以降に確認を受けたものに限られ、それより前の書類は残っていないと案内しています。
申請には、現在の住所ではなく建築当時の地名地番と、建築当時の建築主の名前(親や祖父母の名前のことも)が必要です。
注意点が2つあります。1つは、登記簿に書かれた「新築」の日付は、工事に着手した日とは別の日付だということです。2006年秋の日付になっていても、着工はそれより前の可能性があります。
もう1つは、増改築を重ねた家は、部分ごとに建てた時期が違うことです。2006年以降の増築部分の書類があっても、元からある部分は通常どおり調査が必要です。
出典: e-Gov法令検索「石綿障害予防規則」、e-Gov法令検索「大気汚染防止法施行規則」、沖縄県「大気汚染防止法に基づく石綿飛散防止手続き・作業マニュアル(Ver.2)」(PDF)、e-Gov法令検索「建築基準法」、名古屋市「建築計画概要書等の閲覧」
仮見積もりで調査費の計上と調査者の資格を確かめる
仮見積もりの段階では、調査費の計上と調査する人の資格の2点を確かめておきましょう。
厚生労働省の住宅向けリーフレットも、適正な業者を選ぶための確認事項として、仮見積もりの段階で次の2点を挙げています。
- アスベストの調査費用が見積もりに計上されているか
- 調査を行う資格(建築物石綿含有建材調査者など)を持っているか
資格を確かめる理由は、2023年10月1日以降に着工する建物の工事では、資格者に事前調査をさせることが義務になっているからです(沖縄県のマニュアル、神奈川県の解説ページ)。
資格にはいくつか種類があり、「一戸建て等石綿含有建材調査者」という、一戸建て住宅や共同住宅の住戸の内部に限って調査できる資格もあります。戸建ての実家なら、この資格の人が調査することもあります。
調査が終わると、業者から施主への書面の説明には、調査した人の氏名と資格を持っていることを示す事項が書かれます(大気汚染防止法施行規則16条の7)。見積もりの段階で資格を聞いておけば、あとで書面と照らし合わせられます。
見積もりの金額の比べ方や内訳の読み方は、「見積もりの内訳と工事中に見つかった場合の追加費用」で説明します。
以前のリフォームで調査をしたことがあり、その結果の記録が残っていれば、それも業者に渡しましょう。厚生労働省のリーフレットでは、同じ箇所の調査は最初の1回だけでよく、2回目以降は前回の調査結果報告書で代えられるとしています。
ただし沖縄県のマニュアルは、前の調査結果を使う場合も、業者は今回の工事の範囲に調査漏れがないかを改めて確かめ、足りない部分は追加で調べる必要があるとしています。
出典: 厚生労働省・環境省・国土交通省「お住まいの住宅の解体・改修をご検討の皆さまへ」(PDF)、e-Gov法令検索「大気汚染防止法施行規則」、沖縄県「大気汚染防止法に基づく石綿飛散防止手続き・作業マニュアル(Ver.2)」(PDF)、神奈川県「大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行等について」
片付けと立ち会いを段取りして現地調査を受ける
現地調査の前に家具や荷物を片付けておくと、見られない場所が減り、工事の途中で作業が止まりにくくなります。
現地での目視調査では、建材に印字された製品名や番号を確かめ、図面と違うところがないかを現場で見ていきます(沖縄県のマニュアル)。家具や荷物(残置物)が残ったままだと、床・壁・押し入れの奥・天井裏などが確かめられないまま残ります。
構造上どうしても見られない場所の建材は、見られる状態になったときに調査することになっています(石綿障害予防規則3条9項)。
沖縄県のマニュアルでは、工事が始まってから調査した箇所は、結果が出るまでその部分を撤去・解体してはいけないとしています。
つまり、事前に見られなかった場所が多いほど、工事の途中で作業が止まったり、追加の分析や除去が必要になったりしやすくなります。
片付けと調査のどちらを先にするかは、業者と最初に決めておきましょう。片付けを別の業者に頼む場合も、調査の日程とぶつからないように調整しておくと、日程の組み直しを防げます。
実家が遠方にあって何度も通えない場合は、最初の打ち合わせで次の点を業者に伝えておくと、段取りが進めやすくなります。
- 鍵の受け渡し方法(郵送するか、近くの親族に預けるか)
- 調査の日に施主の立ち会いが要るか
- 調査や作業の様子を写真に撮ることを認めること(発注者が配慮するよう求められている事項です)
出典: e-Gov法令検索「石綿障害予防規則」、沖縄県「大気汚染防止法に基づく石綿飛散防止手続き・作業マニュアル(Ver.2)」(PDF)、厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「発注者・施主」
分析またはみなし判定の結果を書面で説明してもらう
書類と目視で判断できなかった建材は、分析するか「含有している」とみなすかで扱い、その結果を書面で説明してもらいます。
書類と目視で判断できなかった建材の扱いは、次の2つです(石綿障害予防規則3条5項、大気汚染防止法施行規則16条の5)。
- 分析機関で分析して、含有の有無を確かめる
- 分析をせずに「含有している」とみなして、必要な飛散防止の対策をとる
分析をせずに「含有していない」とみなすことはできません。どちらを選ぶと費用がどう変わるかは、「分析するか「含有あり」とみなすかの選び方」で説明します。
分析は、検体を採って機関に送り、結果が出るまでに日数がかかります。売却の引き渡し日や、更地にする期限が決まっているなら、その日から日数を数えて、早めに調査を始めてもらいましょう。
調査が終わると、元請業者は調査の結果を書面にして施主に渡し、説明する義務があります(大気汚染防止法18条の15)。説明は工事を始める日までに行うことになっています(同法施行規則16条の6)。
書面には、調査の結果に加えて、調査を終えた日、調査の方法、調査した人などが書かれます。アスベストが見つかった場合は、建材の種類・使われている場所と面積、作業の方法や期間も書かれます。
この書面と、業者が作る調査報告書は、受け取って手元に残しておくと役立ちます。
厚生労働省のリーフレットも、調査が終わったら「石綿事前調査結果報告書」の提出を求めるよう勧めています。将来もう一度工事をするとき、前回の調査結果として役立つこともあります。
工事が始まってからでないと調べられなかった場所は、調査できた後すぐに説明することになっています(沖縄県のマニュアル)。工事中に新しく見つかった建材があれば、そのつど書面で説明を受けておくと、追加の作業や費用の理由を後から確かめられます。
出典: e-Gov法令検索「大気汚染防止法」、e-Gov法令検索「大気汚染防止法施行規則」、e-Gov法令検索「石綿障害予防規則」、厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「発注者・施主」、沖縄県「大気汚染防止法に基づく石綿飛散防止手続き・作業マニュアル(Ver.2)」(PDF)
届出・報告・掲示と工事後の作業記録を確かめる
報告と掲示は業者が行いますが、レベル1・2の建材が見つかったときの届出は施主自身が出します。
解体する部分の床面積が80㎡以上、または改修の請負代金が税込100万円以上の工事では、業者が国の電子システム(石綿事前調査結果報告システム)を使って、労働基準監督署と自治体に調査結果を報告します。
アスベストが見つからなかった場合も報告は必要です。
この報告は、2022年4月1日以降に着手する工事から義務になりました。以前のリフォームで報告がなかった実家でも、今回の工事が基準に当たれば報告の対象になります。
工事の大きさに関係なく、調査の結果は工事現場の見やすい場所に掲示されます(大気汚染防止法18条の15第5項、石綿障害予防規則3条8項)。
特に気をつけたいのが、吹付け材(レベル1)や保温材・断熱材など(レベル2)が見つかった場合の届出です。
このときは施主(発注者)自身が「特定粉じん排出等作業実施届出書」を、作業を始める日の14日前までに都道府県など(市が窓口の地域もあります)へ出す必要があります(大気汚染防止法18条の17)。
届出をしなかった場合の罰則もあります(同法34条)。少なくとも14日の待ち時間が生まれるので、工期がその分延びると考えておきましょう。
戸建てでよく見つかるのはレベル3の成形板ですが、石綿総合情報ポータルサイトの届出事項一覧では、レベル2の例に「断熱材(煙突、屋根用折板)」も挙がっています。「うちはレベル3だけのはず」と決めつけず、結果の書面で確かめておくと安心です。
あわせて、厚生労働省の発注者向けリーフレットは、施主が業者に次のものを求めるよう勧めています。
- レベル1・2がある場合は、業者が労働基準監督署に出した計画届の写し
- 工事が終わったあと、飛散防止の対策がきちんととられたことを示す作業の記録(写真を含む)
さらに、アスベストを含む建材(含有とみなした建材を含む)を取り除いた工事では、元請業者は作業が終わったあと、その結果を施主に書面で報告する義務があります(大気汚染防止法18条の23)。
受け取った計画届の写し、作業の記録、完了の報告書は、調査結果の書面と一緒にまとめて保管しておきましょう。
出典: e-Gov法令検索「大気汚染防止法」、e-Gov法令検索「石綿障害予防規則」、厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「石綿事前調査結果報告システムについて」、大阪府「石綿事前調査結果報告制度について」、神奈川県「大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行等について」、厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「各関係法令の届出事項一覧」(PDF)、厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「発注者・施主」
アスベストの調査費と除去費が変わる要因
調査費と除去費は、値切るより、「なぜこの金額になるのか」を業者が説明できるかで比べる費用です。
法令上、調査費と除去費は施主が適正に負担する費用とされています。大気汚染防止法18条の15は、発注者に調査費用を適正に負担するよう求めています。
石綿障害予防規則9条と大気汚染防止法18条の16は、費用や工期について、業者が法令を守れなくなるような条件を付けないよう求めています。金額の理由をきちんと説明してくれる業者を選ぶと、結果的に施主自身も守られます。
国や自治体の資料で確認できたのは費用の項目例までで、戸建ての調査費の相場は、業者の掲示や分析機関の料金表に個別に出ている程度です。建物の状態で金額は大きく変わるので、ここでは何によって金額が変わるのかを説明します。
費用を動かす主な要因は、次の4つです。
- 建築時期と書類の有無で変わる調査の量
- 分析するか、「含有あり」とみなすか
- 見つかった建材のレベルと、除去・処分の方法
- 見積もりの内訳と、工事中に見つかった場合の取り決め
このうち施主が動かせるのは、1の書類探し、2の分析とみなしの選択、4の見積もりの取り決めです。3は建物しだいですが、仕組みを知っていれば見積もりの説明を理解しやすくなります。
国の補助制度は吹付け材などに限られていて、戸建てに多い成形板の除去は自己負担になりやすいのが実情です。補助制度の注意点は「アスベストの調査・除去に補助制度を使うときの注意点」でまとめています。
建築時期と書類の有無で変わる調査の量
着工日を書類で確かめられれば調査は小さく済み、書類がなければ現地での確認と分析が増えます。
新築工事の着手が2006年9月1日以降だと書類で確かめられれば、その確認で調査を終えられます。現地での確認や検体の採取・分析がいらなくなるので、調査費は小さく抑えられます。
反対に、書類がなく建築時期が分からない場合はどうでしょう。石綿障害予防規則3条は、工事をする部分のすべての材料について調査するよう求めています。書類で絞り込めない分、現地で疑わしい建材を広く確認することになり、手間が増えます。
増改築やリフォームを重ねた実家ほど、建てた時期ごとに違う建材が使われていて、建材の種類が多くなりがちです。含有の判断は材料ごとに行って記録するため(石綿障害予防規則3条7項)、判断がつかない材料の種類が多いほど、分析の数も増えます。
逆にいえば、増築したときの図面や、リフォーム時の見積書・仕様書が残っていれば、建材の型番などから判断できる材料が増え、分析を減らせることがあります。書類を探すことが、そのまま費用を下げる行動になります。
出典: e-Gov法令検索「大気汚染防止法施行規則」、e-Gov法令検索「石綿障害予防規則」
分析するか「含有あり」とみなすかの選び方
分析とみなしでは、調査の費用と除去・処分の費用の動き方が正反対になります。
書類と目視で判断できない建材は、分析するか、含有しているとみなして扱います。それぞれの費用の動き方は次のとおりです。
| 選び方 | 調査の費用 | 除去・処分の費用 |
|---|---|---|
| 分析する | 分析費がかかる | 「含有なし」と出れば、その建材は通常の解体・処分で済む |
| 含有しているとみなす | 分析費はかからない | その建材はアスベストを含むものとして、飛散防止の措置をとって除去・処分する |
みなしを選ぶと分析費は浮きますが、その建材は含有しているものとして扱われます。屋根や外壁のように面積の大きい建材ほど、手作業で外す手間や処分の区分けが増え、除去・処分の上乗せが大きくなりやすいといえます。
反対に、面積が小さい建材なら、分析費をかけるより、みなして丁寧に外したほうが早く安く済むこともあります。
総額でどちらが安いかは、建材ごとに違います。
「この建材は、分析した場合とみなした場合で、総額と日数がどう変わるか」を業者に比べてもらいましょう。分析には日数がかかるので、売却や引き渡しの期限がある場合は、日程もあわせて比べておくと判断しやすくなります。
出典: e-Gov法令検索「石綿障害予防規則」、厚生労働省・環境省・国土交通省「お住まいの住宅の解体・改修をご検討の皆さまへ」(PDF)
見つかった建材のレベルと除去・処分の方法
アスベストを含む建材は、飛び散りやすさに応じて3つのレベルに分けて説明されることが多く、レベルによって除去の手間・届出・処分の扱いが変わります。
石綿総合情報ポータルサイトの届出事項一覧、大気汚染防止法施行規則の別表第7、環境省の資料をもとにまとめると次のとおりです。
| レベル | 主な建材の例 | 除去時の主な措置 | 発注者の届出 | 処分の区分 |
|---|---|---|---|---|
| レベル1 | 石綿含有の吹付け材 | 作業場を囲って外と隔離し、内部の空気を外へ漏らさない状態にして、建材を湿らせて除去する | 必要(作業開始の14日前まで) | 廃石綿等(特別管理産業廃棄物) |
| レベル2 | 石綿含有の保温材・耐火被覆材・断熱材(煙突や屋根用折板の断熱材など) | 削ったり砕いたりする場合はレベル1と同様の隔離。そのまま外せる場合は周りを養生(シートで覆う)して湿らせる | 必要(作業開始の14日前まで) | 廃石綿等(特別管理産業廃棄物) |
| レベル3 | スレート板、窯業系サイディング、ビニル床タイル(Pタイル)、けい酸カルシウム板第1種などの成形板 | 割ったり切ったりせず、原形のまま取り外すのが基本。難しい場合は湿らせる | 法令上は不要(条例で届出を求める自治体もある) | 石綿含有産業廃棄物 |
レベル1・2は、隔離などの大がかりな措置と、施主の届出・業者の計画届が必要になります。費用も工期も大きく増えるのが一般的です。
戸建てに多いレベル3では隔離までは求められず、重機でまとめて壊す前に、原形のまま手作業で外すのが基本です。屋根や外壁の板を1枚ずつ外していくため、その分の人手と日数がかかります。
処分も、ほかの解体ごみとは別扱いです。環境省の資料によると、吹付け石綿や保温材などを除去したものは「廃石綿等」として特別管理産業廃棄物に、それ以外の石綿含有建材のごみは「石綿含有産業廃棄物」になります。
どちらも、運ぶときに砕かないこと、ほかのごみと混ぜないことが求められ、許可を受けた処分場での埋め立てや、溶かして無害にする処理に回されます。分別・梱包・運搬・処分の手間が別にかかるので、その分が処分費に上乗せされます。
出典: 厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「各関係法令の届出事項一覧」(PDF)、e-Gov法令検索「大気汚染防止法施行規則」、環境省「廃棄物処理法における廃石綿等の基準等について」
見積もりの内訳と工事中に見つかった場合の追加費用
相見積もりでは、金額を比べる前に、調査費・除去費・処分費がそれぞれ入っているかをそろえておきましょう。
調査費の行が見当たらない見積もりは安く見えますが、「別途」になっているだけのこともあります。入っていなければ、どう扱うのかを業者に聞いてみると、ほかの見積もりと同じ条件で比べられます。
調査費の内訳は、厚生労働省のリーフレットにある「事前調査費用の項目例」と照らし合わせると確かめやすくなります。
- 書面調査
- 現地調査
- 裏面確認調査(建材の裏側を確かめる調査)
- 分析調査
- 総合調査報告書
- 諸経費(交通費など)
見積もりに「アスベスト処理一式」としか書かれていない場合は、「どの建材を、何㎡、分析とみなしのどちらで扱うのか」を聞いてみてください。
業者は調査が終われば、アスベストを含む建材の種類・使われている場所・面積を書面で施主に説明する義務があるので(大気汚染防止法18条の15)、本来答えられるはずの内容です。
もう1つ大事なのが、工事中に新しく含有建材が見つかった場合の扱いです。事前に見られなかった場所は工事が始まってから調べるので、そこで見つかることもあります。
追加費用の計算方法(単価や面積の測り方)と、作業前に施主へ連絡して了承を取るかを、契約書か見積書の条件として書面に残しておきましょう。
極端に安い見積もりにも注意が要ります。必要な措置を省いていれば、都道府県などから作業のやり直しや一時停止を命じられることがあります(大気汚染防止法18条の21)。そうなれば工事が止まり、結局は工期も費用も増えます。
施主自身にも、費用や工期で無理な条件を付けないよう配慮する責任があります。業者を選ぶときは、金額の安さとあわせて、ここまで挙げた内訳と説明がそろっているかを比べてみてください。
出典: 厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「発注者・施主」、e-Gov法令検索「大気汚染防止法」
アスベストの調査・除去に補助制度を使うときの注意点
アスベストの補助で使えるのは、施主が今住んでいる市区町村ではなく、実家のある市区町村の制度です。
補助を取りこぼす原因の多くは、次の4つです。
- 対象になる建材の思い込み(「アスベストなら何でも補助が出る」と考えてしまう)
- 自治体ごとの違い(隣の市で使えた条件が、実家の市では使えない)
- 申請の順番(先に分析や契約をしてしまう)
- 申請者の要件(親の名義のままで、誰が申請できるか分からない)
どれも、業者と契約する前に、実家のある市区町村の窓口に聞くことで防げます。窓口の探し方は「建築時期の記録と補助制度は実家のある市区町村」で紹介しています。
国の補助制度は吹付け材などに限られる
国の補助制度の対象は吹付けアスベストなどに限られ、戸建てに多いスレートやサイディングなどの成形板は対象外です。
国の制度は、国土交通省の「住宅・建築物アスベスト改修事業」です。石綿総合情報ポータルサイトの補助制度のページによると、ポイントは次のとおりです。
- 補助制度を設けている地方公共団体を通じてのみ使える(制度がない自治体もある)
- 対象は、吹付けアスベストと、アスベスト含有吹付けロックウールに限られる
- 含有しているかの調査の補助は、国の限度が原則1棟あたり25万円
- 除去などの補助は、国の補助率が地方公共団体の補助額の2分の1以内、かつ事業全体の3分の1以内
- 建物の解体を伴う場合は、費用全体ではなく、アスベストの除去に要する費用に相当する分だけが対象
成形板の調査や除去に補助があるとしたら、それは市区町村が独自に設けた制度になります。
出典: 厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「補助金制度」
市区町村の助成は対象建材や解体予定の扱いが自治体ごとに違う
市区町村のアスベスト分析調査の助成は、対象の建材も、解体予定の建物の扱いも、自治体ごとにばらばらです。
公式ページで確認できた例を並べると、違いがよく分かります(2026年10月時点の各ページの記載。制度は年度で変わるので、使うときは最新の要綱で確かめておきましょう)。
| 自治体 | 対象の建材 | 助成の額 | 主な条件 |
|---|---|---|---|
| 東京都文京区 | 吹付け材・保温材・断熱材・仕上げ塗材など。スレート板・せっこうボードなどの成形板は除く | 調査費の2分の1(戸建ては上限10万円) | 2006年9月1日より前に建てた建物。分析(試料の採取を含む)は交付決定の日以降に行う。消費税相当額は対象外 |
| 東京都大田区 | すべてのアスベスト建材 | 分析調査費の2分の1(上限10万円) | 1棟につき1回限り。分析した後に事前協議をしても対象外 |
| 東京都杉並区 | 吹付け材・断熱材・仕上塗材・成形板など、含有の可能性があるすべての建材 | 分析機関への支払額の2分の1(上限5万円) | 解体等工事の着手前に行う分析が対象。調査者(一般または特定建築物石綿含有建材調査者)の登録証の写しなどが必要 |
| 滋賀県大津市 | 吹付け建材 | 分析調査費を基本的に全額(1棟あたり25万円が限度) | 解体(除却)や増改築の予定がない建物が対象。建築物石綿含有建材調査者による調査が条件 |
この表から読み取れる違いは3つです。
1つ目は、成形板を対象に含めるかが自治体で分かれることです。文京区は成形板を除き、大田区や杉並区は成形板も対象にしています。
2つ目は、解体予定の建物の扱いが正反対になりうることです。大津市は解体や増改築の予定がない建物を対象にしているのに対し、杉並区は解体等工事の前に行う分析を対象にしています。
「解体するから使える」「解体するから使えない」のどちらになるかは、自治体の要綱で決まります。
3つ目は、調査者の資格を条件にしている例があることです。杉並区は資格の種類まで指定しているので、業者の調査者がどの資格を持っているかも確かめておく必要があります。
出典: 文京区「アスベスト分析調査費の助成について」、大田区「アスベスト分析調査費用の助成」、杉並区「解体等工事に係るアスベスト分析調査費の補助制度」、大津市「民間建築物アスベスト含有調査事業費補助」案内(PDF)
業者との契約や分析を始める前に申請する
補助で一番多い失敗は、申請の順番の間違いです。
文京区は「分析調査(試料採取を含む)は交付決定の日付以降に」と案内し、杉並区も分析の前に申請し、交付決定の後に分析するよう求めています。
大津市の案内では、事前相談→申請→交付決定→契約・調査着手の順になっています。大田区は、分析した後に相談しても対象外としています。
つまり、交付決定の前に分析・契約・着手をすると、補助の対象から外れる自治体があるということです。業者が工事を早く進めようと、気を利かせて先に分析に出してくれることもあります。
見積もりを頼む段階で、「補助を使うつもりなので、交付決定まで分析は待ってほしい」と伝えておきましょう。
申請には業者の協力が要ります。杉並区の例では、分析機関の見積書(2社以上)、調査者の登録証の写し、現況の写真、分析する場所が分かる図面などを申請前にそろえる必要があります。
こうした書類を業者に用意してもらえるかも、最初に相談しておくと準備が進めやすくなります。
年度と予算にも気をつけたいところです。杉並区は令和8年度の受付を2027年2月26日までとし、予算に達した時点で終わるとしています。大津市も予算に達し次第終了で、毎年度の募集期間はおおむね5月〜8月と案内しています。
杉並区のように、分析の後に完了報告を出して額が確定する流れの制度もあります。工事の時期は、年度の予算や締め切りに合わせて考えておきましょう。
出典: 文京区「アスベスト分析調査費の助成について」、杉並区「解体等工事に係るアスベスト分析調査費の補助制度」、大津市「民間建築物アスベスト含有調査事業費補助」案内(PDF)、大田区「アスベスト分析調査費用の助成」
相続登記が済んでいない実家は申請者の要件を確かめる
登記上の名義が亡くなった親のままの実家では、誰が申請できるか、どんな書類が要るかが、自治体や制度によって分かれます。
補助を申請できるのは、原則として建物の所有者などです。公表されている例を並べると、扱いの違いがよく分かります。
| 自治体と制度 | 相続人などが申請するときの扱い |
|---|---|
| 島根県浜田市(吹付けアスベスト除去の補助のQ&A) | 所有者が亡くなり相続人が複数いる場合、相続人の1人が申請できる。相続人の1人であることが分かる戸籍の写しが必要で、ほかの相続人の同意書の添付は不要。ほかの相続人の同意は申請者の責任で取っておく |
| 東京都杉並区(アスベスト分析調査費の補助) | 所有権を証する書面(登記事項証明書など)が必要。共有名義なら、申請者以外の共有者全員の同意書が必要 |
| 群馬県太田市(空き家の除却補助のQ&A) | 遺産分割協議で取得者が決まっていれば、遺産分割協議書の写しで現所有者と認め、ほかの相続人の同意書や戸籍謄本はいらない。共有名義の場合は、ほかの共有者の同意書と印鑑登録証明書が必要 |
| 福島県二本松市(空き家の除却補助) | 相続登記が済んでいない場合は、相続人全員の同意を得ていることが条件 |
同意書だけでよいのか、印鑑登録証明書まで要るのか、遺産分割協議書で代えられるのかによって、準備にかかる時間は大きく変わります。相続人が遠方に散らばっていると、書類を集めるだけでも思った以上に時間がかかります。
申請の前に、親族で誰が申請者になるかを決め、必要な書類を窓口で確かめておきましょう。
出典: 浜田市「吹付けアスベスト除去等補助 Q&A」(PDF)、杉並区「解体等工事に係るアスベスト分析調査費の補助制度」、太田市「空家除却補助事業Q&A」(PDF)、二本松市「令和8年度 空家除却費補助金」案内(PDF)
空き家の解体補助との併用と対象経費を確かめる
空き家の解体補助もあわせて使うときは、アスベストに関わる費用がどちらの補助の対象になるかを確かめておきましょう。
実家を解体する場合、アスベストの補助とは別に、空き家の解体(除却)補助を使えることがあります。
たとえば北海道秩父別町の令和6年度の住宅等除却費補助金の案内では、補助対象の除却費からアスベスト調査費を除いています。
その一方で、石綿の事前調査結果の報告などの必要な手続きをしていないと補助金を交付できないとし、事前調査結果報告の写しを提出書類にしています。
つまり、調査費は自分で負担し、そのうえで調査と報告を済ませていることが、解体の補助を受ける条件になる形です。
アスベストの補助と解体の補助を一緒に使えるかも、自治体しだいです。
島根県浜田市の吹付けアスベスト除去の補助のQ&Aでは、他の同種の補助との併用は原則できないとしつつ、解体の補助の対象額に吹付けアスベストの除去費を含めなければ併用できる(重複しなければよい)としています。
福島県二本松市の空き家の除却補助では、ほかの補助金を受けようとする工事は対象外です。
アスベストの担当と空き家の担当は、市区町村の中でも窓口が別になっていることがあります。両方の窓口で「もう一方の補助と一緒に使えるか」「アスベストの調査費・除去費はどちらの対象か」を聞いておくと、申請のやり直しを防げます。
補助が使えない場合も、書類を探して調査の量を減らすことと、建材ごとに分析とみなしを比べることで、総額を下げられる余地があります(くわしくは「アスベストの調査費と除去費が変わる要因」)。
出典: 秩父別町「令和6年度 秩父別町住宅等除却費補助金」案内(PDF)、浜田市「吹付けアスベスト除去等補助 Q&A」(PDF)、二本松市「令和8年度 空家除却費補助金」案内(PDF)
実家のアスベスト調査の相談先
アスベストの相談先は、聞きたいことによって、業者・大気汚染の担当窓口・労働基準監督署・市区町村・消費生活センターに分かれます。
窓口が分かれているのは、法令ごとに受け持ちが違うからです。
周りの住民への飛び散りを防ぐルール(大気汚染防止法)は都道府県などの環境の担当、作業する人の健康を守るルール(石綿障害予防規則)は労働基準監督署が受け持っています。さらに、建物の記録や補助制度は市区町村が持っています。
聞きたいことごとの相談先と、用意しておくものをまとめると次のとおりです。
| 聞きたいこと | 相談先 | 用意するもの(共通のもの以外) |
|---|---|---|
| 調査を誰がいつ行い、何を受け取れるか | 工事を頼む業者 | 見つかった書類一式、補助を使う予定の有無、立ち会いの可否 |
| 届出・報告・飛散防止のルール、その工事が調査の対象か | 都道府県や市の大気汚染の担当窓口 | 業者から受けた説明の内容 |
| 作業する人の安全対策、計画届 | 労働基準監督署 | 業者名と工事の内容 |
| 建築時期の記録、補助制度 | 実家のある市区町村 | 建築当時の地番と建築主の名前、所有者が分かる書類 |
| 見積もりの金額・追加請求・契約の不満 | 消費生活センター(消費者ホットライン188) | 見積書、契約書、調査結果の書面、追加請求の内容が分かるもの |
どの窓口に相談するときも、次のものを手元にそろえておくと話が早く進みます。
- 実家の所在地
- 建物の構造(木造など)と延べ床面積
- 建築時期の分かる書類(なければ「不明」と伝える)
- 予定している工事の内容と時期
- 見積書(もらっている場合)
国の「石綿総合情報ポータルサイト」には発注者(施主)向けのページがあり、住宅の解体・改修を考えている人向けのリーフレットや、補助制度の概要を見られます。最初に情報を集めるときの入口として使えます。
調査の依頼と段取りは工事を頼む業者
調査を誰が・いつ行い、どんな書面を受け取れるのかは、まず工事を頼む業者に聞きましょう。
調査の義務を負うのは元請業者です。業者が調査を専門の会社に任せることもありますが、その場合も責任は元請業者にあります。
最初の打ち合わせでは、次の点を確認・共有しておくと、後から話が食い違いにくくなります。
- 調査する人の資格(修了証や登録証の写しを見せてもらう)
- 調査結果の書面と報告書をいつ受け取れるか
- 補助を使う予定があること(交付決定まで分析を待ってもらう必要があるため)
- 実家が遠方で立ち会えない、鍵を郵送したいなどの事情
施主が自分で分析機関に依頼する場面は限られます。たとえば杉並区の補助のように、所有者が分析機関に支払った費用を補助する制度で、所有者が分析機関の見積もりを取る必要がある場合などです。
そうした場合も業者の調査者と連携して進めることになるので、まずは業者に相談しておくと手順をそろえやすくなります。
出典: e-Gov法令検索「大気汚染防止法」、沖縄県「大気汚染防止法に基づく石綿飛散防止手続き・作業マニュアル(Ver.2)」(PDF)、杉並区「解体等工事に係るアスベスト分析調査費の補助制度」
届出・報告・飛散防止のルールは都道府県や市の大気汚染の担当窓口
大気汚染防止法のルールに関わる疑問は、都道府県の環境の担当、地域によっては市の担当窓口に聞けます。
事前調査、調査結果の報告、現場の掲示、作業のやり方の基準、レベル1・2の届出は、いずれも大気汚染防止法のルールです。たとえば沖縄県のマニュアルでは、那覇市内の工事は那覇市が報告・届出の窓口です。
実家のある市の名前と「アスベスト」「届出」で調べると、窓口が見つかります。
次のようなときは、この窓口に相談できます。
- その工事が調査の対象になるか、業者と意見が分かれたとき
- レベル1・2の届出の書き方や期限を確かめたいとき
- 解体を始めたら、近所の人から飛び散りの心配を言われたとき
調査結果の報告は、業者が1つの電子システムを使い、労働基準監督署と自治体の両方へまとめて行います。施主が受け持つのは、レベル1・2の建材が見つかったときの作業実施の届出です。
出典: e-Gov法令検索「大気汚染防止法」、沖縄県「大気汚染防止法に基づく石綿飛散防止手続き・作業マニュアル(Ver.2)」(PDF)、厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「石綿事前調査結果報告システムについて」
作業する人の安全対策は労働基準監督署
作業する人がアスベストを吸い込まないためのルール(石綿障害予防規則)の窓口は、労働基準監督署です。
レベル1・2の建材を除去するときに業者が出す計画届も、労働基準監督署に提出されます。
施主が直接相談する場面は限られますが、業者の対応に疑問があるときや、調査の要否の判断に迷ったときには、実家のある地域を受け持つ労働基準監督署に聞くことができます。
石綿総合情報ポータルサイトも、法令や規制についての問い合わせ先として、最寄りの労働基準監督署か自治体を案内しています。
出典: 厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「各関係法令の届出事項一覧」(PDF)、厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「発注者・施主」
建築時期の記録と補助制度は実家のある市区町村
市区町村では、知りたいことによって担当の窓口が分かれます。
| 知りたいこと | 担当の窓口 | 補足 |
|---|---|---|
| 建築の記録 | 建築指導の担当 | 建築計画概要書や台帳記載事項証明で、建築確認や検査の年月日が分かることがある |
| アスベストの分析や除去の助成 | 環境・公害の担当とは限らず、自治体によって違う | 文京区は環境の担当、大田区は防災まちづくりの担当、大津市は建築指導の担当が受け付けている |
| 空き家の解体(除却)補助 | 住宅や空き家対策の担当 | ― |
窓口の名前が分からなければ、代表電話で「実家の解体前にアスベストの助成があるか知りたい」と用件を伝えると、担当につないでもらえます。
聞く先は、施主が今住んでいる市区町村ではなく、実家のある市区町村です。補助については、業者と契約する前に聞いておきましょう。
出典: 名古屋市「建築計画概要書等の閲覧」、文京区「アスベスト分析調査費の助成について」、大田区「アスベスト分析調査費用の助成」、大津市「民間建築物アスベスト含有調査事業費補助」案内(PDF)
見積もりや契約のトラブルは消費生活センター
見積もりの金額、工事中の追加請求、契約の内容に納得できないときは、消費生活センターに相談できます。
都道府県や市の環境の担当が扱うのは、調査・報告・飛散防止といった法令の手続きです。見積もりの金額が妥当か、追加の請求に応じるべきかといった、お金や契約をめぐる相談は、消費生活センターが受け付けています。
全国共通の「消費者ホットライン188」に電話すると、近くの消費生活センターや消費生活相談の窓口を案内してもらえます(消費者庁の案内ページ)。
相談するときは、次のものを用意しておきましょう。
- 見積書(相見積もりを取っていれば、その分も)
- 契約書
- 調査結果の書面
- 追加請求の内容が分かるもの(請求書や、追加の説明を受けたときのメモ)
工事中に見つかった場合の取り決めを書面に残しておくと、こうした場面で話を整理しやすくなります(「見積もりの内訳と工事中に見つかった場合の追加費用」を参照)。
出典: 消費者庁「消費者ホットライン」
まとめ:調査は業者が行い、施主は書類探しと補助の確認から始める
実家を壊す・直す工事では、工事の大きさや金額に関係なく、ほぼすべてでアスベストの事前調査が必要です。「80㎡」「100万円」は役所へ報告するかを決める基準で、調査そのものは小さな工事でも行います。
次の一歩は、建築確認の書類や図面を探して、見積もりを頼む業者に渡すことです。書類を渡さずに進めると、着工日や建材の型番から判断できる材料が減り、現地での確認や分析が増えて、費用も日数もかさみやすくなります。
補助を使うなら、業者と契約する前に、実家のある市区町村で対象の建材と申請の順番を確かめておきましょう。実家と相続の地図帳「つぐーる」では、アスベストの事前調査や補助の申請の進め方も含めて、相続や実家について悩むあなたに経験に基づいた情報を提供しています。

