実家の相続に必要な資料の集め方|戸籍・名寄帳・登記の順番と取り方

実家の相続を考え始めても、親の戸籍や権利証、固定資産税の書類が手元になければ、話し合いも手続きも止まったままになります。

必要な資料は、役所や法務局で取れる戸籍・名寄帳・登記事項証明書などと、実家の中にしか残っていない売買契約書などに分けられます。

戸籍から始める順番と窓口での取り方が分かれば、相続人・権利・不動産・税の確認に必要な資料を、無駄なく集め始められます。

実家の相続で集める資料の全体像と順番

実家の相続で集める資料は4種類あり、戸籍から順に集めると二度手間を防げます。

手元に書類が何もない状態からでも、役所と法務局をまわれば必要な資料はそろえられます。

まずは資料の種類と、集める順番を押さえておきましょう。

集める資料は相続人・不動産・評価額・実家に残る書類の4種類

集める資料は、何を確かめるための資料かで分けると4種類になります。

確かめること主な書類取る場所詳しい説明
誰が相続人か親の出生から死亡までの戸籍、住民票の除票、相続人の戸籍市区町村の役所相続人を確かめる戸籍の集め方
実家の土地と建物は何で、誰の名義か名寄帳、所有不動産記録証明書、登記事項証明書、公図などの図面市区町村の税の窓口、法務局実家の土地と建物を洗い出し、名義と範囲を確かめる手順
相続税の上でいくらになるか固定資産評価証明書、路線価図・評価倍率表市区町村の税の窓口、国税庁のホームページ実家の評価額の調べ方
売るときなどに使う、親が持っていた書類売買契約書、領収書、境界確認書、建築確認済証など実家の中売買契約書や境界確認書を実家の片付け前に探す理由

インターネットで見かける「相続の必要書類一覧」は、銀行・相続登記・相続税の申告など、提出先ごとに書類を並べたものが中心です。同じ戸籍が何度も出てくるので、何をそろえればよいのか迷いやすくなります。

確かめる目的で分ければ、書類の重なりはなくなります。この4種類がそろうと、相続人・権利・不動産・税の状況が一通り見えてきます。

上の3種類は役所や法務局で取る書類なので、なくしても後から取り直せます。一方、4種類目の実家に残る書類は親が個人で持っていたもので、捨てると二度と手に入らないため、実は最も急ぎたい書類です。

税理士や司法書士への相談は、資料を集めたあとでもできます。資料が手元にあれば、相談もそのぶん早く進みます。

戸籍から集め始める理由と二度手間を防ぐ順番

戸籍を最初に集めておくと、そのあとの名寄帳や登記事項証明書の請求がスムーズに進みます。

資料は、次の順番で集めると二度手間になりにくくなります。

  1. 実家の中で、固定資産税の納税通知書と親の契約書などを確保する
  2. 戸籍を集める
  3. 名寄帳と固定資産評価証明書を、同じ市区町村の窓口でまとめて請求する
  4. 所有不動産記録証明書と登記事項証明書を法務局で取る
  5. 評価額を計算して、相続税がかかりそうかの見当を付ける

最初に実家の中を見ておくのは、片付けや遺品整理が始まると、大事な書類が捨てられてしまうおそれがあるからです。遺品整理業者に頼む前に、家族で「この書類は残す」と決めておきましょう。

親あての郵便物は、しばらく届くままにしておくと手がかりを逃さずに済みます。毎年春ごろに届く固定資産税の納税通知書には、実家の土地の番号(地番)が書かれています。

戸籍を早めに集めるのは、ほかの書類を請求するときに戸籍を求められるからです。親が亡くなったあとに相続人が名寄帳や固定資産評価証明書を請求すると、多くの市区町村で「相続人であることが分かる戸籍」の提出を求められます。

戸籍を後回しにすると、窓口で出直す手間が増えます。

法務局の登記事項証明書は、住所ではなく地番で請求する仕組みです。地番は名寄帳に載っているので、名寄帳を先に取っておくと、地番を調べ直す手間が省けます。

所有不動産記録証明書で親の昔の住所も検索するときは、住所の移り変わりが分かる戸籍の附票が役立ちます。

期限のある手続きも、順番を急ぐ理由の1つです。

手続き期限
相続放棄(借金なども含めて相続しない手続き)自分が相続人になったと知ったときから3か月以内
相続税の申告親が亡くなったと知った日の翌日から10か月以内
相続登記不動産を相続したと知った日から3年以内(2024年4月1日から義務)

いちばん短い期限は、相続放棄の3か月です。最初の3か月で「相続人は誰か」と「実家にどんな不動産があるか」の見当を付けておけば、相続放棄を考えるときの判断材料がそろいます。

兄弟・姉妹がいる場合は、資料を取りまとめる人を1人決めておくと、同じ戸籍をそれぞれが取ってしまう二度手間を防げます。

出典: 裁判所「相続の放棄の申述」、国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」、法務省「相続登記の申請義務化について」、甲府市「固定資産課税台帳の閲覧(PDF)」、福島地方法務局「よくある質問(登記事項証明書)」

親の存命中と亡くなった後で変わる、書類を請求できる人

書類を請求できる人は、親の存命中と亡くなった後とで変わります。

書類親の存命中に子が請求するとき親が亡くなった後に相続人が請求するとき
親の戸籍子は直系の家族なので、自分で請求できる同じく自分で請求できる
登記事項証明書・公図誰でも請求できる(親の同意はいらない)誰でも請求できる
名寄帳・固定資産評価証明書親本人の委任状が必要なことが多い相続人であることが分かる戸籍などが必要
所有不動産記録証明書親本人の委任状が必要相続人であることが分かる戸籍などが必要

大きく分けると、登記事項証明書は誰でも取れる書類です。名寄帳・固定資産評価証明書・所有不動産記録証明書は、本人と相続人(委任を受けた人を含む)に限られます。

名寄帳を請求できる人や持ち物は、市区町村ごとに少しずつ違います。同じ世帯の家族なら委任状を省ける市区町村もあれば、相続人を対象として書いていない市区町村もあります。

請求の前に実家のある市区町村のホームページで確かめておくと、窓口での出直しを防げます。

親が存命なら、家を買ったときの契約書や隣の家との境界の書類がどこにあるかを、本人に直接聞けます。亡くなったあとに家じゅうを探すより、ずっと早く見つかります。

出典: 法務省「戸籍証明書等の広域交付について」、法務省「所有不動産記録証明制度について」、名古屋市「固定資産課税台帳の閲覧」、北九州市「固定資産課税台帳の閲覧」、鹿児島市「よくある質問(固定資産税)」

相続人を確かめる戸籍の集め方

相続人が誰かは、親の出生から死亡までの戸籍で確かめます。

「うちは兄弟2人だけだから分かっている」と思っていても、相続の手続きでは戸籍での証明を求められます。

戸籍は、広域交付と郵送を使い分けると効率よく集められます。

親の出生から死亡までの戸籍・住民票の除票・相続人の戸籍を集める

集める書類は、親の戸籍・住民票の除票・相続人の戸籍の3種類です。

書類何を示すための書類か取る場所
親の出生から死亡までの戸籍親の子どもが誰なのか、ほかに相続人がいないか親の本籍地だった市区町村(広域交付なら最寄りの役所)
住民票の除票・戸籍の附票親の最後の住所と、住所の移り変わり親の最後の住所地、本籍地の市区町村
相続人の現在の戸籍相続人が今も生きていること、親との関係それぞれの相続人の本籍地の市区町村

親の戸籍は、たいてい何通かに分かれています。戸籍は、結婚したとき、本籍を移したとき、法律が変わって作り直されたときなどに新しくなるからです。作り直す前の戸籍は「改製原戸籍」と呼ばれます。

出生まで遡るのは、「ほかに相続人がいないこと」を示すためです。親が若いころに別の人との間に子どもをもうけていれば、その子も相続人になります。生まれたときからの記録がそろって、はじめてそれを確かめられます。

住民票の除票は亡くなった人の住民票、戸籍の附票は住所の移り変わりの記録です。法務局に記録された親の住所と亡くなったときの住所が違うとき、この2つで同じ人だと示せます。

住民票の除票と戸籍の附票の保存期間は、2019年6月20日から150年に延びました。それより前に保存期間(5年)が過ぎて廃棄されたものは、今から請求しても交付の対象外です。親が亡くなってから年数がたっている場合や、引っ越しが多かった場合は、早めに役所へ問い合わせておきましょう。

出典: 総務省「住民基本台帳法施行令等の一部を改正する政令(案)等に対する意見募集」、横浜市「よくある質問(住民票の除票の保存期間)」

広域交付で親の戸籍を最寄りの役所からまとめて取る

広域交付を使えば、本籍地が遠くても最寄りの市区町村の窓口で、親の戸籍をまとめて請求できます。

2024年3月1日に始まった制度で、正式には「戸籍証明書等の広域交付」といいます。それまでは、遠くの本籍地に郵送で請求し、届いた戸籍を見て次の本籍地にまた請求する、という往復が必要でした。

項目内容
請求できる人本人、配偶者、父母や祖父母、子や孫
持っていくものマイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど顔写真付きの本人確認書類
手数料(一般的な例)戸籍全部事項証明書は1通450円、除籍・改製原戸籍は1通750円

親の戸籍なら、子であるあなたが自分で請求できます。親1人分でも何通かになるため、合計で数千円かかる場合があります。

窓口での頼み方

「相続の手続きに使うので、父(母)の出生から死亡までの戸籍をすべてください」書類の名前が分からなくても、この一言で窓口の人に用件が伝わります。

ほかの市区町村に問い合わせて取り寄せるため、受け取りが後日になることもあります。時間に余裕を持って出かけてみてください。

相続人自身の今の戸籍は、マイナンバーカードを使ってコンビニで取れる場合があります。ただし、本籍地の市区町村がこのサービスに対応していることが条件で、取れるのは今の戸籍に限られます。

出典: 法務省「戸籍証明書等の広域交付について」、名古屋市「戸籍証明書等の広域交付」、法務省「戸籍証明書のコンビニ交付に関する資料(PDF)」、目黒区「戸籍の証明書をコンビニ交付サービスで取得するとき」

広域交付で取れない戸籍は本籍地の役所へ郵送で請求する

広域交付の対象外になる戸籍は、本籍地の市区町村へ郵送で請求できます。

広域交付の対象外になるのは、次のような場合です。

  • 兄弟・姉妹など、自分から見て直系ではない人の戸籍
  • コンピュータ化されていない一部の古い戸籍・除籍
  • 代理人による請求や、郵送での請求(広域交付は本人が窓口へ行く仕組み)

郵送で請求するときは、一般的に次のものを同じ封筒に入れて送ります。

  • 請求書(市区町村のホームページから印刷できることが多い)
  • 本人確認書類のコピー
  • 手数料分の定額小為替(郵便局で購入)
  • 切手を貼った返信用封筒

ほかの相続人の今の戸籍は、その本人に取ってもらうのがいちばん早い方法です。

古い戸籍は手書きで読みにくく、どこの役所の戸籍に続くのか分かりにくいことがあります。そのときは、戸籍を出してくれた窓口で「この続きはどこの役所ですか」と聞いてみましょう。

戦災や災害で古い戸籍が失われている場合は、市区町村から「滅失していて交付できない」旨の証明書を出してもらえます。法務省の通達により、相続登記ではこの証明書があれば手続きを進められる扱いです。

出典: 法務省「戸籍証明書等の広域交付について」、法務省「除籍等が滅失等している場合の相続登記について(通達・PDF)」

戸籍で見落としやすい相続人|前の結婚の子・養子・代襲相続

家族の誰も知らなかった相続人が、戸籍で初めて見つかることがあります。

戸籍を読むときは、結婚・離婚・認知・養子縁組・死亡の記録に注目してみてください。見落としやすいのは、次のような相続人です。

見落としやすい相続人相続人になる理由
前の結婚での子親が以前の結婚相手との間にもうけた子も、親の子として相続人になる
認知した子結婚していない相手との子でも、親が認知していれば相続人になる
養子養子は実の子と同じく相続人になる
代襲相続で相続人になる孫親より先に亡くなった兄弟・姉妹がいると、その子が代わりに相続人になる

代襲相続の場合は、先に亡くなった兄弟・姉妹の出生から死亡までの戸籍も追加で必要になります。

知らなかった相続人がいると、実家をどうするかを話し合う相手が増えます。会ったことのない人へ連絡を取る場面も出てくるため、戸籍を早く集めておくほど、連絡や話し合いの準備に早く取りかかれます。

親が存命なら、戸籍で確かめたうえで、事情を本人に聞くこともできます。

出典: e-Gov法令検索「民法」

法定相続情報一覧図で戸籍の取り直しを減らす

法定相続情報一覧図を作っておけば、戸籍の束を何度も出し直す手間を減らせます。

集めた戸籍の束は、銀行・法務局・税務署など、相続の手続きのたびに提出を求められます。原本を出すと、返ってくるまで次の手続きが止まってしまいます。

法定相続情報一覧図は、相続人の関係を1枚にまとめた図です。戸籍の束と一緒に法務局へ出すと、法務局が内容を確かめ、証明の文を付けた写しを無料で交付してくれます。つまり、多くの手続きで、この写しを戸籍の束の代わりに使えるようになります。

一覧図の写しには、次の利点があります。

  • 必要な枚数を無料でもらえ、銀行や法務局へ同時に出せる
  • 法務局が5年間保管し、その間はもう一度交付を受けられる

申し出る先は、次のいずれかを担当する法務局です。

  • 親の本籍地
  • 親の最後の住所地
  • 申し出る相続人の住所地
  • 親の名義の不動産がある場所

写しは窓口で受け取るほか、郵送で送ってもらうこともできます。一覧図は家系図のような簡単な図で、法務局のホームページにある記載例をまねれば、相続人が自分で作れます。必要な戸籍が全部そろったところで申し出ると、やり直しを防げます。

出典: 法務局「法定相続情報証明制度について」、高松法務局「法定相続情報証明制度」、千葉地方法務局「法定相続情報証明制度の案内(PDF)」

実家の土地と建物を洗い出し、名義と範囲を確かめる手順

実家の不動産は、名寄帳などで何があるかを洗い出してから、登記事項証明書と図面で名義と範囲を確かめる順に調べると、取り漏れを防げます。

名寄帳で土地の番号(地番)を先に知っておくと、法務局で登記事項証明書を迷わず請求できます。

名寄帳で実家のある市区町村の土地と建物を洗い出す

名寄帳を取ると、実家のある市区町村にある親名義の土地と建物を一覧で確かめられます。

最初の手がかりは、毎年春ごろに親あてに届く固定資産税の納税通知書です。同封の課税明細書に、土地の地番・建物の家屋番号・所在する市区町村が書かれています。

ただし、課税明細書に載るのは、固定資産税がかかっている土地と建物です。次のような土地や建物は、明細に載らない場合があります。

  • 固定資産税がかからない私道など(みんなが通る道として非課税になっている土地)
  • 免税点未満の土地や建物

免税点とは、同じ市区町村の中で同じ人が持つ土地や建物の合計額がこれを下回ると、固定資産税がかからなくなる金額です。2026年度分は土地30万円・家屋20万円で、2027年度分からは家屋も30万円になります。

そこで役立つのが名寄帳です。名寄帳は、その市区町村にある親名義の土地と建物を、所有者ごとにまとめた一覧です。課税明細書に載らない土地を確かめる方法として、名寄帳を案内している市区町村もあります。

請求先は実家のある市区町村の税の窓口で、東京23区では都税事務所が窓口です。

請求のときに添えたい一言

「共有名義の分も含めてください」親がほかの人と共有名義で持っている土地(たとえば近所の家と共有名義の私道)が名寄帳でどう扱われるかは、市区町村によって違います。ひと言添えておくと、共有名義の土地の見落としを防げます。

名寄帳や課税明細書で、家屋番号の欄が空いていたり「未登記」と書かれていたりする建物は、法務局に登記されていない可能性があります。

登記されていない建物は登記事項証明書を取れないため、この段階で気づいておくと、後の手続きの準備を早めに始められます。

納税通知書が見つからない場合も、実家のある市区町村に名寄帳を請求すれば、洗い出しを始められます。

出典: 総務省「固定資産税の概要」、名古屋市「よくある質問 課税明細書に関すること」、神戸市「固定資産税の証明(登記申請用など)」、東京都主税局「固定資産 証明・閲覧とは」、さいたま市「課税明細書の見方(家屋)(PDF)」

所有不動産記録証明書で他の市区町村の親名義の不動産を探す

所有不動産記録証明書を使うと、全国の登記の記録から、親名義の不動産を一覧にしてもらえます。

名寄帳に載るのは、その市区町村の中にある不動産に限られます。親が昔、別の地域で土地を買っていた場合、その土地は実家のある市区町村の名寄帳には出てこないため、別の方法で探す必要があります。

所有不動産記録証明書は、2026年2月2日に始まった制度です。

項目内容
請求できる人本人、相続人(代理人への依頼も可能)
請求先全国どこの法務局でも可(郵送・オンラインも可)
手数料(検索条件1件につき)書面請求は1,600円、オンライン請求は1,470円〜1,500円

便利な一方で、一覧に出てこない不動産もあります。登記に記録された氏名や住所と、検索に使う氏名や住所が合っていない不動産は、一覧から漏れる仕組みです。

親が引っ越していて、登記の住所が昔のままになっている例はよくあります。昔の住所でも検索できるよう、戸籍の附票で住所の移り変わりを確かめておきましょう。検索条件ごとに手数料がかかる点にも注意が必要です。

登記されていない建物や、登記の記録がコンピュータ化されていない不動産も、一覧の対象外です。名寄帳と組み合わせて使うと、漏れを減らせます。

出典: 法務省「所有不動産記録証明制度について」、新潟地方法務局「所有不動産記録証明制度」

登記事項証明書で名義・持分・抵当権を確かめる

登記事項証明書を取ると、実家の登記上の名義人・持分・抵当権の有無が分かります。

登記事項証明書は誰でも請求でき、親が存命のうちに確かめておくこともできます。

請求には住所(住居表示)ではなく地番が必要で、地番と住所は違うことがよくあります。地番が分からないときは、次の方法で調べられます。

  • 名寄帳や課税明細書を見る
  • 実家の場所を担当する法務局に問い合わせる
  • 法務局にある「ブルーマップ」(住所と地番を書き込んだ地図)を見る

手数料は、2025年4月1日から次のとおりです。

請求のしかた1通の手数料
窓口・郵送で請求600円
オンラインで請求し、郵送で受け取る520円
オンラインで請求し、窓口で受け取る490円

証明書が届いたら、甲区と乙区の2か所を見ると、名義と担保の状態が分かります。

欄書かれていること
甲区(こうく)登記上の名義人と持分(何分のいくつを持っているか)
乙区(おつく)お金を借りたときの担保(抵当権)など

ここで、思わぬ状態が見つかる場合があります。

  • 実家の土地が祖父母の名義のまま
  • 親と親以外の人との共有名義
  • ローンを払い終えたはずなのに、抵当権が残っている
  • 登記上の親の住所が、亡くなったときの住所と違う

祖父母の名義のままなら、祖父母の相続人の戸籍も必要になり、手続きが大きくなります。早く気づくほど、そのぶん早く準備を始められます。

住所が違う場合は、住民票の除票や戸籍の附票で同じ人だと示せます。

権利証が見つからないとき

相続登記の申請に、権利証(登記済証・登記識別情報)は必要ありません。家じゅうを探し回るより、先に登記事項証明書を取るほうが早く進みます。一方で、権利証には地番が書かれていて、手がかりになります。登記の住所と親の最後の住所が附票などでつながらないとき、同じ人であることを示す書類の1つとして使える場合もあります(扱いは法務局に確かめておきましょう)。見つかったら、捨てずに保管しておくと安心です。

出典: 法務省「登記手数料について」、福島地方法務局「よくある質問(登記事項証明書)」、e-Gov法令検索「不動産登記法」

公図・地積測量図・建物図面で土地の範囲と建物を確かめる

公図・地積測量図・建物図面を見ると、どこからどこまでが実家の土地かを確かめられます。

図面分かること
公図土地のおおまかな位置と形、隣の土地との並び
地積測量図土地の面積と、境界の測量の結果
建物図面建物が土地のどこに建っているか、各階の形

どれも法務局の窓口・郵送・オンラインで請求でき、書面請求の手数料は1件500円です(2025年4月1日から)。

公図を見ると、実家の前の道が私道として別の地番になっていて、親がその一部を持っている、といった状態に気づけます。名寄帳で見落とした私道がないか、公図と名寄帳を照らし合わせてみてください。

地積測量図は、土地を分けたり面積を測り直したりしたことがない土地には、作られていない場合があります。公図も、地域によっては実際の形とずれていることがあります。

法務局に図面がない場合や古くて当てにならない場合は、親が持っていた境界の書類が手がかりになります。探し方は「売買契約書や境界確認書を実家の片付け前に探す理由」にまとめています。

出典: 法務省「登記手数料について」

実家の評価額の調べ方|相続税がかかるかの見当を付ける

固定資産評価証明書と路線価図があれば、相続税がかかりそうかの見当を自分で付けられます。

見当が付けば、税理士に相談するかを考える材料になります。

正確な税額の計算や申告については、税理士が相談先になります。

固定資産評価証明書で建物の評価額を確かめる

建物の相続税評価額には、固定資産評価証明書に書かれた「価格」がそのまま使えます。

固定資産評価証明書は、市区町村が決めた土地と建物の値段(固定資産税評価額)を証明する書類です。実家のある市区町村の税の窓口で取れ、東京23区では都税事務所が窓口です。名寄帳と同じ窓口なので、一緒に請求すると1回で済みます。

郵送で請求できる市区町村もあります。評価証明書は年度ごとに発行され、使い道によって必要な年度が変わる場合があるため、提出先に年度を確かめてから請求しておきましょう。

評価証明書や課税明細書には、金額の欄が2つ並んでいます。

欄意味
価格(評価額)市区町村が決めた、その土地や建物の値段
課税標準額固定資産税を計算するための金額。家が建つ土地は特例で、200㎡までの部分が価格の6分の1になっている

相続税の見当に使うのは「価格」です。課税標準額で計算すると土地の値段を何分の1にも小さく見積もり、「相続税はかからない」と思い込む原因になります。

建物の相続税評価額は「固定資産税評価額×1.0」で計算します。つまり、評価証明書に書かれた建物の価格が、そのまま相続税の上での建物の値段になります。

評価証明書に書かれた土地の価格は、倍率方式の地域で土地の評価額を出すときに使います。

出典: 国税庁「No.4602 土地家屋の評価」、総務省「固定資産税の概要」、名古屋市「よくある質問 土地に関する質問」、東京都主税局「固定資産 証明・閲覧とは」

路線価図と評価倍率表で土地の評価額を出す

土地の評価額は、実家の場所に応じて、路線価方式と倍率方式のどちらかで出す決まりです。

どちらの方式になるかは、国税庁のホームページ「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で実家のある場所を探すと分かります。路線価は毎年7月1日ごろに公表されるため、親が亡くなった年の分を見ておきましょう。

路線価方式(市街地に多い)

路線価は、道路に面する土地の1㎡あたりの値段です。路線価図には千円単位で書かれていて、「200」なら1㎡あたり20万円を表します。

見当を付けるときは、実家の土地が面している道路の路線価に、土地の面積を掛けます。面積は登記事項証明書で確かめられます。本来は土地の形や奥行きに応じた補正をかけますが、見当を付ける段階では省いて計算できます。

計算例(路線価方式の見当)

次の数字は、計算のしかたを示すための仮の数字です。

入力する値仮の数字
路線価図の数字200(1㎡あたり20万円)
土地の面積150㎡
  1. 路線価図の数字に1,000円を掛けて、1㎡あたりの金額にする(200×1,000円=20万円)
  2. 1㎡あたりの金額に土地の面積を掛ける(20万円×150㎡=3,000万円)

自分の実家では「路線価図の数字×1,000円×登記事項証明書の面積」で見当を付けられます。実際の評価額は形や奥行きの補正を入れて計算するため、国税庁の案内や税理士に確かめておきましょう。

倍率方式(路線価が決まっていない地域)

固定資産評価証明書に書かれた土地の価格に、評価倍率表の倍率を掛けて出します。

実家がマンションの場合は、2024年1月1日以後の相続から評価のしかたが見直されています。ここでの計算は大まかな目安にとどめ、詳しい評価額は税理士に確かめてみてください。

出典: 国税庁「No.4602 土地家屋の評価」、国税庁「令和8年分の路線価等について」、国税庁「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」

基礎控除と小規模宅地等の特例で相続税がかかるかを見極める

建物と土地の評価額の合計を基礎控除と比べると、相続税がかかりそうかの見当が付きます。

基礎控除は、この金額までなら相続税がかからない、という額です。

基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数

法定相続人の数は、集めた戸籍で確かめられます。たとえば相続人が子ども2人なら、3,000万円+600万円×2人=4,200万円です。

相続税は、実家に預貯金など親のほかの財産も合わせて計算します。実家の評価額が基礎控除より小さくても、ほかの財産と合わせると超える場合があります。

実家の評価額が基礎控除を超えそうなときは、「小規模宅地等の特例」が使えるかを見ておきましょう。親が住んでいた土地を、配偶者や親と同居していた子など一定の条件を満たす人が相続すると、330㎡までの部分の評価額が80%下がります。

仮に、330㎡以内で評価額5,000万円の土地なら、5,000万円×(1-80%)=1,000万円として計算でき、見当が大きく変わります。

この特例を使うには、相続税の申告が必要です。特例で税額が0円になる場合でも、申告をしないと特例は使えません。申告期限は、親が亡くなったと知った日の翌日から10か月以内です。特例を使えそうなときは、早めに税理士へ相談しておくと、申告の準備に早く取りかかれます。

評価額は相続税を計算するための金額で、実家が実際に売れる値段とは別物です。路線価も、土地取引の目安となる価格の8割程度を目安に決められています。

兄弟・姉妹で実家の分け方を話し合うとき、評価額をそのまま「実家の値段」として使うと、売ったときの金額とずれて話がこじれる原因になります。

出典: 国税庁「No.4152 相続税の計算」、国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」、国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」、国税庁「令和8年分の路線価等について」

売買契約書や境界確認書を実家の片付け前に探す理由

親が個人で持っていた売買契約書や境界確認書は、捨てると取り戻すのが難しいため、片付けの前に抜き出しておきましょう。

戸籍や登記事項証明書は、役所や法務局で後からいつでも取り直せます。

親が持っていた書類は、なくすと取り戻せないか、取り戻すのに大きな手間がかかります。

実家を売るかまだ決めていない段階でも、片付けや遺品整理業者への依頼の前に、次の書類を手元に移しておくと後の手続きで役立ちます。

書類使う場面なくしたときの代わり
土地・建物の売買契約書、重要事項説明書実家を売るときの税の計算購入した不動産会社に控えがないか問い合わせる
建築の請負契約書・領収書実家を売るときの税の計算建てたハウスメーカーや工務店に控えがないか問い合わせる
リフォームや増築の領収書実家を売るときの税の計算工事をした会社に控えがないか問い合わせる
境界確認書・測量図売るときに隣の土地との境目を示す測量をした土地家屋調査士に控えがないか問い合わせる
建築確認済証・検査済証建物が決まりどおりに建てられたことを示す役所で台帳記載事項証明書を取る
電気・ガス・水道の使用中止や解約の書類空き家を売るときの特例の申請電力会社・ガス会社・水道局に問い合わせる
ローンを払い終えたときの書類登記に残った抵当権を消す手続きローンを借りた金融機関に相談する

家の中では、金庫、仏壇の引き出し、たんすの上の段、書類箱、家を買ったときの封筒やファイルなどを探してみてください。銀行の貸金庫に預けている場合もあります。

親が存命なら、「家を買ったとき・建てたときの書類と、お隣との境界の書類はどこにある?」と本人に聞くのがいちばんの近道です。

売買契約書が無いと売却時の税が重くなりやすい

親の売買契約書が残っていれば、実家を売ったときの税金を、親が実際に払った金額をもとに計算できます。

実家を売ってもうけが出ると、譲渡所得税がかかります。もうけの計算は、ざっくり言うと次のとおりです。

もうけ=売った値段-取得費(買ったときや建てたときの費用)-売るためにかかった費用

相続した実家の取得費は、親が土地や建物を買ったときの代金や手数料などをもとに計算します。つまり、親が持っていた売買契約書が、子どもが払う税金の額を左右します。

建物は、持っていた期間に古くなった分の価値(減価償却)を取得費から差し引きます。リフォームや増築の費用も、取得費に含められる場合があります。

取得費が分からない場合は、売った値段の5%を取得費として計算します(概算取得費)。

計算例(取得費が分からない場合)

次の数字は、計算のしかたを示すための仮の数字です。売るためにかかった費用は0円と仮定しています。

入力する値仮の数字
売った値段3,000万円
売るためにかかった費用0円(仮定)
  1. 取得費を出す(3,000万円×5%=150万円)
  2. もうけを出す(3,000万円-150万円-0円=2,850万円)

自分の実家では「売った値段-売った値段×5%-売るためにかかった費用」で計算できます。特例が使えるか、実際の税額がいくらになるかは、税務署や税理士に確かめておきましょう。

昔に買った実家ほど、実際に払った金額は売った値段の5%より大きい場合が多く、書類の有無で税金が大きく変わります。

残しておきたい書類は、次のとおりです。

  • 土地と建物の売買契約書(重要事項説明書などと同じ封筒に入っていることが多い)
  • 家を建てたときの請負契約書と領収書
  • リフォームや増築の契約書と領収書

見つからないときは、家を買った不動産会社や、建てたハウスメーカー・工務店に控えが残っていないか問い合わせてみましょう。

通帳の記録などで費用を示せる場合もあります。認められるかは税務署の判断になるため、税理士に相談しておくと、使える資料を見極めてもらえます。

出典: 国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」、国税庁「No.3252 取得費となるもの」、国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」

境界確認書が無いと売却前の測量に費用と時間がかかる

境界確認書が残っていれば、売却のときに隣の土地との境目を示す手間を減らせます。

実家の土地を売るときは、隣の土地との境目をはっきりさせるよう、買う人から求められることがよくあります。

境界確認書は、隣の土地の持ち主と境目を確かめ、お互いに署名した書類です。境界確認書や確定測量図が残っていれば、それを使える場合があります。

書類がなければ、土地家屋調査士に測量を頼み、隣の土地の持ち主に立ち会ってもらって、境目を確定し直すことになります。費用は数十万円、期間は数か月かかる例があります。

隣の家も代替わりしていて、持ち主の連絡先が分からない場合は、さらに長引きます。

法務局に地積測量図がない土地では、親が持っていた境界の書類が、境目を示す数少ない手がかりになります。見つからないときは、昔測量を頼んだ土地家屋調査士や、購入したときの不動産会社に控えがないか聞いてみてください。

電気・ガス・水道の解約書類が無いと空き家の特例の申請で証明しにくい

電気・ガス・水道の解約の書類は、空き家を売るときの特例で、空き家だった期間を示す証拠になります。

親が1人で暮らしていた家を相続し、空き家のまま売る場合などに、売ったもうけから最大3,000万円を差し引ける特例があります(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除)。

2024年1月1日以後に売った場合で相続人が3人以上のときは、上限が2,000万円になります。

この特例を使うには、家がある市区町村から「被相続人居住用家屋等確認書」を受け取る必要があります。

申請では、相続から売るまで空き家だったことを示す書類として、電気・ガス・水道のいずれかの使用中止日(閉栓日や契約を終えた日)が分かる書類などを求められます。

使用中止日は、親が亡くなった日以降の日付である必要があります。

特例の主な条件は、次のとおりです。

  • 昭和56年5月31日以前に建てられた家
  • 相続の直前に、親以外に住んでいた人がいなかった
  • 相続した日から3年がたつ日の年の12月31日までに売る
  • 2027年12月31日までに売る

細かい条件はほかにもあるため、使えそうなときは国税庁や市区町村の案内で確かめておきましょう。

解約したときの通知や最後の検針票は、捨てずに残しておくと申請で役立ちます。捨ててしまった場合は、電力会社・ガス会社・水道局に、使用中止日を証明してもらえるか問い合わせてみてください。

証明を出していない会社もあり、代わりになる書類(「現況空き家」と書かれた不動産会社の売買広告など)は、申請先の市区町村の手引きで案内されています。

出典: 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、新潟市「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除 手引き(PDF)」、さいたま市「被相続人居住用家屋等確認書 申請チェックシート(PDF)」

建築確認済証と検査済証は再発行できない

建築確認済証と検査済証は、なくすと再発行を受けられない書類です。

建築確認済証は「この計画で建ててよい」と確認を受けた証明、検査済証は「完成した建物が検査に合格した」証明です。実家を売るときや建て替えるときは、建物が決まりどおりに建てられたかを、買う人や金融機関から確かめられる場合があります。

なくした場合は、役所の建築指導を担当する課で「台帳記載事項証明書」を取れる場合があります。確認や検査を受けた日付や番号など、役所の台帳に残っている記録を証明する書類です。

検査の記録が台帳に載っていない場合や、台帳そのものが残っていない場合もあります。申請には、建てた当時の地番や建築主の名前が必要になることがあります。

建築確認済証や検査済証は、家を建てたときの図面と一緒にしまわれていることが多いため、図面の束が出てきたら中を確かめておきましょう。

出典: 東京都都市整備局「台帳記載事項証明書」

まとめ:戸籍から集め始め、実家に残る書類は片付けの前に確保する

役所や法務局の書類は後からいつでも取り直せる一方、親が持っていた売買契約書や境界確認書は、捨てると二度と手に入らない書類です。片付けや遺品整理を始める前に抜き出しておけば、実家を売るときの税金や境界の確認で困る場面を減らせます。

次の一歩は、最寄りの市区町村の窓口で、広域交付を使って親の出生から死亡までの戸籍を請求することです。戸籍を後回しにすると、名寄帳や固定資産評価証明書の請求で窓口に出直すことになり、知らなかった相続人に気づくのも遅れます。

戸籍がそろったら、実家のある市区町村の名寄帳と法務局の登記事項証明書で、実家の名義と範囲を確かめてみてください。実家と相続の地図帳「つぐーる」では、戸籍や名寄帳、登記事項証明書の集め方と、片付けの前に探しておきたい書類も含めて、相続や実家について悩むあなたに経験に基づいた情報を提供しています。