長く放置した実家への対応の始め方|安全確保から名義・土地の調査までの順番

親が亡くなってから、あるいは施設に入ってから何年も空けたままの実家は、名義も建物の傷みも家の中の物も、分からないことが重なりがちです。

ただ、手をつける順番を間違えると、他人への賠償を負ったり、相続放棄ができなくなったりと、後から取り戻せない損失につながります。

安全確保、書類探し、名義人と相続人の調査、土地と建物の調査の4段階で進めると、期限に追われずに次の判断へ進めます。

長く放置した実家は何から手をつける?倒壊・火災の防止と手続きの期限で決まる優先順位

長く放置した実家は、取り返しのつかない損失が大きいものから順に手をつけると、遠回りせずに済みます。

「名義は誰のままだろう」「屋根や塀は傷んでいないだろうか」。何年も空けたままの実家には、分からないことがいくつも重なっています。順番と期限、そして自分の状況による違いを押さえておくと、最初の一手が決めやすくなります。

安全確保・書類探し・名義人と相続人の調査・土地と建物の調査の順にする理由

先に手をつける作業ほど、他人への損害や相続放棄の失敗といった、後から取り戻せない損失を防げます。

順番やること先にする理由詳しい説明がある章
1安全確保屋根や塀が崩れて他人にけがをさせると、持ち主の責任になる安全確保の章
2家の中で書類を探して持ち帰る家財を先に処分すると、相続放棄ができなくなるおそれがある。次の調査の材料にもなる書類探しの章
3名義人と相続人の調査名義が古いほど時間がかかる名義人と相続人の章
4土地と建物の調査決める人がはっきりしてから使う材料になる土地と建物の章

安全確保が1番目なのは、他人に損害を与えたときの責任が重いからです。瓦が飛んで通行人に当たった、ブロック塀が倒れて隣の車を傷つけた。そんな事故では、名義が親のままでも、相続した人が責任を問われることがあります。

権利関係が分からない段階でも、安全確保なら手をつけられます。

2番目を「片付け」ではなく「書類探し」にしているのにも、理由があります。親に借金があれば、相続放棄という方法で借金を引き継がずに済ませられます。ところが、その前に家財を売ったり捨てたりすると、相続を受け入れたとみなされ、放棄できなくなるおそれがあります。

最初の訪問は、遺言書や借金の書類、固定資産税の通知などを探して持ち帰るところまでにしておきましょう。

3番目の名義人と相続人の調査は、4つの中でいちばん時間がかかりやすい作業です。登記簿を取ってみたら、名義が祖父のままだった。そんな家では相続人が十数人に増えていることもあり、戸籍を集めるだけで数か月かかります。

4番目の土地と建物の調査は、売る・貸す・残す・解体するのどれを選ぶかを決める材料になります。決める人、つまり相続人がはっきりしてから使う情報なので、最後に置いています。

「売るかを先に決める」と話が止まりやすい例

不動産会社に売却を相談した段階で、次のような問題が見つかり、手続きが止まる例があります。

  • 名義が祖父母のままで、相続人全員の同意を集め直す必要があった
  • 前の道が法律上の道路にあたらず、建て替えができない土地だった
  • 隣の土地との境界が決まっていなかった
  • 増築した部分が登記されていなかった

どれも、自分で調べれば早い段階で分かる問題です。後から見つかると、手続きが数か月から年単位で遅れることもあります。調べるのを先にして、決めるのを後に回すと、こうした足止めを避けられます。

4つの段階は、少しずつ重ねて進められます。登記簿・戸籍・名寄帳(その市区町村にある不動産を持ち主ごとにまとめた一覧)は、郵送やオンラインでも取り寄せられます。実家が遠い人は、行く前に取り寄せておくと、1回の訪問で確かめられる範囲が広がります。

相談先を選ぶときは、全体の順番を自分で把握しておくと迷いにくくなります。司法書士は登記、不動産会社は査定、片付け業者は片付けと、専門家はそれぞれ自分の仕事から話を始めることが多いからです。

兄弟・姉妹がいる場合は、最初に窓口役を1人決めておくと話が進みやすくなります。交通費や証明書の手数料など、立て替えたお金も記録しておきましょう。後で精算するときの揉めごとを防げます。

出典: e-Gov法令検索「民法」

放置期間が長い人ほど確かめたい相続登記・相続放棄・空き家の3,000万円控除の期限

長く放置した実家には、すでに数え始めている期限が4つあります。

自分に関係する期限がないか、表で見ておきましょう。

手続きいつまで数え始め過ぎるとどうなるか詳しい説明がある章
相続登記(不動産の名義を相続人に変える登記)2024年4月1日より前に相続したことを知った不動産は、2027年3月31日まで。それ以後は3年以内相続で不動産を取得したことを知った日正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になる名義人と相続人の章
相続放棄3か月以内自分が相続人になったと知った時原則として、借金も含めて相続を受け入れたことになる書類探しの章
空き家についての役所の勧告勧告を受けたまま1月1日を迎えるまで役所からの勧告土地の固定資産税の軽減(住宅用地特例)が外れ、税額が上がる安全確保の章
空き家の3,000万円控除(相続した実家を売ったときの税の特例)相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却親が亡くなった日特例を使えず、売ったときの税金が重くなる土地と建物の章

相続放棄の3か月は、親が亡くなった日ではなく、自分が相続人になったと知った時から数えます。親と疎遠で、亡くなったことを後から知った場合は、知った時が数え始めになります。

「親には財産が何もない」と信じていた人については、最高裁判所が1984年(昭和59年)4月27日の判決で、別の考え方を示しています。

そう信じたことに相当な理由があれば、財産があると知った時(または普通なら知ることができた時)から3か月を数える、という考え方です。

ただ、実家という財産があると知っていた人には、そのまま当てはまりにくい点に注意が必要です。

後から借金が見つかったときの扱いは、事情によって判断が分かれます。「もう3か月を過ぎたから無理」と自分で決めず、見つかった時点で家庭裁判所や弁護士・司法書士に相談しておきましょう。

空き家の3,000万円控除は、親がひとりで暮らしていた家を相続して売ったとき、売って得た利益から最大3,000万円を差し引ける特例です。2024年1月1日以後の売却では、相続人が3人以上なら、1人あたり最大2,000万円になります。制度そのものは、2027年12月31日までの売却が対象です。

親が亡くなって3年近くたつ人にとっては、この期限が調査を早める理由になります。使える条件は細かく決まっているので、売ることを考え始めた段階で、税務署か税理士に確かめてみてください。

相続税の申告(亡くなってから10か月以内)は、長く放置した人の多くはすでに期限を過ぎているか、そもそも相続税がかからないケースです。先に見ておきたいのは、表の4つの期限のほうです。

出典: 法務省「相続登記の申請義務化について」、e-Gov法令検索「民法」、国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、東京都主税局「特定空家等・管理不全空家等の敷地に対する住宅用地特例の適用除外」

親が存命か・名義人が誰か・役所から通知が来ているかで変わる優先順位

親が存命か、名義が誰か、役所から通知が来ているかによって、先に手をつける作業が入れ替わります。

当てはまる行があれば、右の列のとおりに順番を組み替えてみてください。

当てはまる状況順番の組み替え方
親が存命で、施設に入っている、または入院している家の持ち主は親本人で、相続放棄や相続登記はまだ先の手続きになる。親の判断能力が衰えていると、家を売る・大きく直す契約に成年後見などが必要になることがある。まず親の意思と判断能力を確かめる
登記簿の名義が祖父母以前のまま戸籍集めに数か月かかるため、名義人と相続人の調査を前倒しし、安全確保と並行して始める
役所からの文書や近所からの苦情が来ている勧告まで進むと固定資産税が上がるため、安全確保と役所への連絡を最優先にする
役所からも近所からも連絡が来ていない安全確保は応急処置で済ませ、名義人と相続人の調査へ早めに移る
自分のほかにも相続人がいる窓口役と連絡の取り方を最初に決め、書類を持ち帰る前にほかの相続人へ一言伝えておく

自分がどの行に当てはまるかが分かれば、最初に向かう先が決まります。

長く放置した実家の安全を確保する手順

安全確保は、家をきれいに直すためではなく、他人に損害を出さないために行います。

現地に行くと、屋根や壁、庭の荒れが一度に目に入ります。リフォーム会社や解体業者、片付け業者、空き家の管理会社が、それぞれの工事やサービスを勧めてくることもあるでしょう。

この段階は、応急処置までにとどめておくとお金を無駄にせずに済みます。売るか、残すか、解体するかが決まる前に高い修繕費をかけると、解体を選んだときにその費用が生きなくなるからです。

現地に行く前に役所からの通知・火災保険・鍵を確かめる

役所からの通知、火災保険の契約、鍵の在りかの3つを行く前に押さえておくと、1回の訪問でこなせる作業が増えます。

実家の郵便受けや、固定資産税の通知が届く宛先に、市区町村からの文書が届いていることがあります。届いていたら、行く前に担当の窓口へ電話して、何を指摘されているかを聞いておきましょう。指摘された箇所を、1回の訪問でまとめて直せます。

長く放置した家で火災保険が役立つのは、自分の家の損害より、隣の家や通行人に損害を与えたときの賠償です。保険会社に電話して、次の3点を聞いてみてください。

  • 契約が続いているか(親の口座の引き落としが止まり、切れていることがある)
  • 空き家になったことを保険会社に伝えてあるか
  • 他人への賠償の補償が付いているか

人が住まなくなった家は住宅以外の建物として扱われ、保険料や補償の条件が変わるのが一般的です。

空き家になったことを伝えずにいると、火事になったときに補償を受けられないおそれがあります。伝えておけば、保険料が変わったとしても、いざという時に補償を受けられる状態を保てます。

証券が手元になければ、書類探しのときに一緒に探しておきましょう。

鍵は、親族の誰が持っているかを先に聞いておくと安心です。見つからないときや、錠が錆びて開かないときは鍵屋に頼めます。その家の関係者だと分かる書類(親や自分の戸籍など)を求められることがあるので、用意しておくと手間が省けます。

最初の訪問には、次の物があると便利です。

  • 懐中電灯(電気が止まっていることが多い)
  • 軍手・マスク・長靴(ほこり、カビ、動物のふんへの備え)
  • スマートフォン(傷みを写真で残す)
  • ごみ袋と段ボール箱(書類を持ち帰る)

屋根・外壁・ブロック塀・庭木を外から確かめて応急処置する

長く放置した家では、建物が倒れるより先に、屋根材や塀が「飛ぶ・落ちる・崩れる」事故が起きやすくなります。

家に入る前に外回りを一周し、道路や隣の家に面した場所から見ていきましょう。

見る場所見る状態
屋根瓦のずれ・割れ、トタンのめくれ
外壁・雨どい剥がれ、浮き、外れかけ
ブロック塀傾き、ひび、高さ、控え壁の有無
庭木隣の敷地や道路への枝のはみ出し
軒下・庭ハチの巣、ごみの不法投棄
窓・勝手口ガラスの割れ、こじ開けた跡

ブロック塀については、国土交通省が点検の目安を出しています。

  • 高さは地面から2.2m以下
  • 高さが1.2mを超える塀は、3.4m以内の間隔で控え壁(塀を支える短い壁)がある
  • 傾きやひびがない

古い塀にはこの目安に合わない塀も多く、撤去の費用を補助している自治体もあります。

ここで知っておきたいのが、家の持ち主が負う責任です。民法では、建物や塀の欠陥で他人に損害を与えたとき、まず住んでいる人などが責任を負い、その人が十分に注意していた場合は持ち主が責任を負うと決めています。

空き家には住んでいる人がいないので、責任は持ち主にかかります。持ち主の責任は「注意していた」と説明しても免れられず、名義が親のままでも、相続した人が問われる可能性があります。

つまり、空き家の塀が倒れて誰かがけがをすれば、相続した人が賠償を求められることもある、ということです。

庭木のはみ出しにも気を配っておきましょう。2023年4月の民法改正で、隣の人が「切ってほしい」と頼んだのに持ち主がしばらく切らない場合や、持ち主が分からない場合には、隣の人が自分で枝を切れるようになりました。

切った費用を請求されることもあるため、はみ出した枝は早めに自分で切っておくと揉めごとを防げます。

見つけた危険は、次のような応急処置で手当てできます。

  • 外れかけたトタンや雨どいを固定する
  • はみ出した枝を切り、草を刈る
  • ハチの巣は専門の業者に頼む

草刈りや見回りは、自治体の空き家窓口やシルバー人材センターに頼むと、費用を抑えられることがあります。

親の借金が心配で相続放棄を考えている人も、こうした応急処置はできます。財産の価値を守るための行為(保存行為)は、相続を受け入れたことにはならないと民法に定められているからです。処分にあたる行為は、書類探しの章の冒頭の表にまとめています。

傷んでいる箇所は、スマートフォンで写真に残しておきましょう。兄弟・姉妹への説明や保険の請求、業者の見積もりを比べるときに、そのまま使えます。

親が存命の場合も、家族として応急処置ができます。ただし、大きな修繕や解体の契約は、持ち主である親本人の意思が前提になります。

出典: e-Gov法令検索「民法」、国土交通省「ブロック塀の点検のチェックポイント」

電気・ガス・水道は点検してから再開する

長く止めていた電気・ガス・水道は、点検を通してから使うと事故を防げます。

長く使っていない家では、次のような事故が起きやすくなっています。

  • 電気は、ネズミがかじった配線や雨漏りで湿った分電盤から、通電した瞬間に火が出ることがある
  • ガスは、古いガス管や機器から漏れたり、不完全燃焼を起こしたりすることがある
  • 水道は、冬に凍って割れた管から、元栓を開けた途端に水が漏れ出すことがある

電気は、分電盤のブレーカーを切ったまま、電力会社や電気工事店に点検を頼んでから使い始めましょう。ガスは、長く止めていた場合、ガス会社の係員が立ち会って安全を確かめてから使えるようにするのが一般的です。古いガス機器は、使わずに置いておくほうが安全です。

水道は、元栓を少しずつ開け、床や壁に水が漏れていないかを見ながら開けていくと、被害を小さくできます。

最初の訪問の目的が外回りの確認と書類探しなら、電気・ガス・水道は止めたままでも困りにくいでしょう。懐中電灯があれば、家の中を見て回れます。冬に訪ねるときは、水道管の凍結に特に気をつけておきましょう。

役所から空き家の通知が届いたら勧告の前に窓口へ相談する

指導の段階で役所に連絡して対応すれば、勧告による固定資産税の上昇を防げます。

役所が空き家の持ち主に働きかけるときは、空き家の区分ごとに段階を踏みます。

空き家の区分役所の働きかけの段階
管理不全空家(このまま放置すると危ない状態になるおそれがある空き家)指導 → 勧告
特定空家(倒れるおそれがあるなど、周りに大きな悪影響がある空き家)助言・指導 → 勧告 → 命令 → 代執行(役所が代わりに解体などを行い、費用を持ち主に請求する)

住宅が建っている土地には、固定資産税を軽くする住宅用地特例があります。土地の広さに応じて、税額のもとになる金額が6分の1や3分の1に下がる仕組みです。

勧告を受けると、この軽減が外れます。勧告を受けたまま1月1日を迎えると、その年の固定資産税から軽減を受けられなくなります。

以前は、勧告で軽減が外れるのは特定空家に限られていました。2023年12月の法改正で、その一歩手前の管理不全空家も、勧告を受けると軽減が外れるようになりました。

つまり、指導の段階で手を打てば、税金が上がる前に止められるということです。役所が見ているのは、屋根や外壁の傷み、伸びた雑草や庭木、ごみ、動物のすみつきなど、外から見える状態が中心です。外回りの応急処置で、多くの指摘に手当てできます。

通知が届いたら、文書を手元に置いて窓口に電話し、次のことを聞いておきましょう。

  • 指摘されている箇所と状態
  • いつまでに、どこまで対応すればよいか
  • 使える補助金、相談できる専門家、草刈りなどの依頼先

役所の目的は、持ち主に空き家を直してもらうことです。早めに連絡した人ほど、補助金や依頼先の紹介といった支援につながりやすくなります。通知が届いていない人も、この仕組みを知っておくと、勧告の前に手を打てます。

出典: e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」、国土交通省「空き家対策」、東京都主税局「特定空家等・管理不全空家等の敷地に対する住宅用地特例の適用除外」

次の訪問まで侵入と放火を防ぐ戸締まりと見回り

帰る前の戸締まりと片付けで、空き家をねらった侵入や放火を防ぎやすくなります。

  • 窓・勝手口・雨戸の戸締まりを確かめる
  • 郵便受けを空にする
  • 燃えやすいごみや枯れ草を家の周りに残さない
  • 排水口に水を流しておく

あふれた郵便受けは、住む人がいないことを外に知らせる目印になります。排水口に水を流すのは、排水管の中の水が乾くと、においや虫が上がってくるからです。

いちばん効果が大きいのは、近所の人へのあいさつと連絡先の手渡しです。連絡先を伝えておくと、何かあったときに、役所より先に自分へ連絡が来るようになります。窓が割れている、知らない人が出入りしている、といった異変も教えてもらえます。

実家が遠い人は、次に訪ねるまで誰に様子を見てもらうかを、最初の訪問のうちに決めておきましょう。

頼む先こんな人におすすめ
近所の人・親戚近くに頼れる人がいて、異変の連絡を頼みたい人
空き家管理サービス定期的な見回り・換気・報告を任せたい人(月ごとの費用がかかる)
シルバー人材センター草刈りや庭木の手入れを、費用を抑えて頼みたい人

次の訪問のめどが立たないままだと、また放置に戻りがちです。見回りを頼む先まで決まれば、安全確保はひと区切りです。

家財を片付ける前に実家で探して持ち帰る書類

家の中で最初にやるのは片付けではなく、書類を探して持ち帰る作業です。

理由は相続放棄にあります。民法では、相続人が親の財産を処分すると、相続を受け入れた(単純承認した)とみなすと決めています。親の借金が後から分かっても、そのときには相続放棄ができなくなっているおそれがあります。

一方で、財産の価値を守るための保存行為は、処分とは別の扱いです。

処分にあたるおそれがある行為処分にあたらない行為
家財や車を売る書類を探して持ち帰り、保管する
価値のある品物を形見分けとして配る戸締まり・草刈りなどの応急処置
まとめて業者に処分を頼む傷みや中の様子を写真で記録する
親の預金を引き出して自分のために使う

借金がないと分かるまでは、表の左側の行為を控えておくと安全です。形見分けがどこまで許されるかは、品物の価値などによって判断が分かれます。迷ったら、相続放棄を扱う弁護士や司法書士に相談してみてください。

2023年4月の民法改正で、相続放棄をした人が家を保存する義務は、放棄した時にその家を実際に占有している場合に限られると定められました。占有とは、自分で使ったり管理したりしている状態を指します。

長く放置して実家を使っていない人にとっては、放棄を考えるときの判断材料になります。占有にあたるかは事情によって変わるため、放棄を考えるなら専門家に確かめておきましょう。

片付け業者や遺品整理業者は、まとめて処分する前提で見積もりを出すのが一般的です。仕分けを任せると、大事な書類がただの紙として捨てられることがあります。書類探しは、自分の手で進めておくと安心です。

書類は、家のあちこちに分かれてしまわれていることがほとんどです。

  • 仏壇の引き出し
  • 金庫・手提げ金庫
  • タンスの上の段や小引き出し
  • 本棚に挟まった封筒
  • 台所や電話台の引き出し
  • 押し入れの中の箱や缶

見つけた書類は、その場で読み込まずに段ボール箱へまとめて持ち帰ると、自宅で落ち着いて読めます。どこから何を持ち出したかは、写真とメモで残しておきましょう。

写真とリストで記録し、自分が保管していることをほかの相続人に伝えておきましょう。黙って持ち帰ると、兄弟・姉妹の間で揉めるもとになります。売ったり配ったりすると、表の左側の「処分」にあたるおそれもあります。

親が存命の場合、書類はすべて親本人の財産です。持ち出す前に、親本人の了解を得ておきましょう。

出典: e-Gov法令検索「民法」

遺言書と遺産分割協議書

最初に探したいのは、誰が何を相続するかを決める遺言書と遺産分割協議書です。

遺言書が見つかったら、封がしてあっても、その場では開けずにおきましょう。

自分で書いた遺言書(自筆証書遺言)は、家庭裁判所で検認という手続きを受ける必要があります。封のある遺言書は、家庭裁判所で相続人などが立ち会って開ける決まりで、勝手に開けると5万円以下の過料の対象になります。

家で見つからなくても、ほかの場所に預けてある場合があります。

  • 法務局(2020年から、自分で書いた遺言書を預ける制度がある)
  • 公証役場(公証人に作ってもらう公正証書遺言を保管している)

相続人であれば、全国どこの法務局でも遺言書保管事実証明書(1通800円)を請求でき、預けられた遺言書があるかを確かめられます。

公証役場では、1989年(平成元年)以降に作られた公正証書遺言を無料で検索できます。親の死亡が分かる戸籍、自分が相続人だと分かる戸籍、本人確認書類を持って行くと手続きできます。

長く放置した家では、遺産分割協議書も探しておきましょう。親が亡くなった後に兄弟・姉妹で話し合って作った協議書が、名義変更をしないまま残っていることがあります。見つかれば、その内容をもとに相続登記を進められる場合があります。

協議書と一緒に、各自の印鑑証明書が保管されていないかも見てみてください。作った後に相続人の誰かが亡くなっているときは、そのまま使えないこともあるので、司法書士に確認しておくと手戻りを防げます。

出典: e-Gov法令検索「民法」、東京法務局「遺言者が亡くなられた後に行う手続」、日本公証人連合会「遺言検索システム」

借金と連帯保証が分かる督促状・契約書

相続放棄をするかを決める材料として、借金と連帯保証の書類を探しておきましょう。

探すのは、借入やローンの契約書、返済の予定表、督促状などです。消費者金融やカード会社、銀行からの封筒は、開けて中身を確かめておくと見落としを防げます。

特に見落としやすいのが、親が誰かの連帯保証人になっていたケースです。連帯保証人の義務も、相続で引き継がれます。保証の契約書はお金を借りた人や貸した側が持つことが多く、保証人の手元には控えが残りにくい書類です。

親戚や知人の借金、親が昔関わっていた会社の借入などに心当たりがあれば、その相手に確かめてみてください。

家に書類がなくても、借金を調べる手段があります。お金の貸し借りの記録を集める信用情報機関に、相続人として開示を請求できます。

信用情報機関主に登録している貸し手
CIC(シー・アイ・シー)クレジットカード会社、信販会社など
JICC(日本信用情報機構)消費者金融など
全国銀行個人信用情報センター銀行、信用金庫、農協など

CICの場合、亡くなった人の情報の開示を申し込めるのは法定相続人に限られ、申し込みは郵送です。主に次の書類と手数料が必要です。

  • 法定相続人用の申込書
  • 相続人だと分かる戸籍、または法定相続情報一覧図
  • 亡くなったことが分かる書類
  • 本人確認書類
  • 手数料(1,500円から)

全国銀行個人信用情報センターも、相続人からの開示の申し込みを受け付けています。JICCを含め、細かい手続きは各機関の案内で確かめておきましょう。

借金が見つかったら、相続放棄の期限(自分が相続人になったと知った時から3か月)と照らし合わせてみてください。期限の考え方は、優先順位の章の期限の表にまとめています。

出典: CIC「郵送で開示する方法」、全国銀行個人信用情報センター「開示の手続き」

不動産を特定する固定資産税の納税通知書と権利証

何を相続するのかは、固定資産税の納税通知書と権利証から手がかりが得られます。

いちばん役に立つのが、毎年春ごろに届く固定資産税の納税通知書と、一緒に入っている課税明細書です。課税明細書には、土地の「地番」と建物の「家屋番号」が書かれています。

地番は、ふだん使う住所(住居表示)とは別に、土地ごとに付けられた番号です。法務局で登記簿を取るときは住所ではなく地番で請求するので、納税通知書があれば名義人の調査をすぐに始められます。

同じ市区町村にある別の土地、たとえば家の前の私道の一部や離れた畑が載っていることもあります。

権利証(2005年の法改正以降、順次「登記識別情報」という書類に切り替わっています)も探しておきましょう。実は、相続登記をするときに、亡くなった親の権利証は原則として必要ありません。

それでも探すのは、親が持っていた不動産の手がかりになるからです。私道の持ち分や遠くの土地など、家族が知らなかった不動産が権利証から見つかることがあります。

地代の領収書や、土地を借りる契約書が出てきたら、実家の土地は親の持ち物ではなく、借りている土地(借地)だったことになります。借地か自分の土地かで、売る・返す・解体するときの前提が大きく変わります。

出典: 東京ブロック管内法務局・地方法務局「相続登記ガイドブック(概要編)」

保険・共済・地代・借入の契約が分かる通帳と郵便物

書類が見つからない契約は、通帳の引き落としの記録と郵便物からたどれます。

通帳の引き落としの記録からは、親が結んでいた次のような契約が分かります。

  • 固定資産税(どの市区町村に不動産があるか)
  • 火災保険や生命保険の保険料
  • 共済の掛け金
  • 借入の返済
  • 地代
  • 電気・ガス・水道の料金

記帳していない通帳も、捨てずに持ち帰っておきましょう。記帳されていない期間の取引は、相続人が金融機関に頼めば、取引の履歴として取り寄せられます。

長く放置した家の郵便受けには、督促状、役所からの通知、保険の更新案内、年金に関する書類などがたまっていることがあります。チラシに紛れていても、まとめて持ち帰ると見落としを防げます。

保険の関係では、火災保険の証券に加えて、共済の証書も探してみてください。JAの建物更生共済のように積み立ての性格を持つ共済には、解約したときに戻るお金や満期金があることがあり、それ自体が相続する財産になる場合があります。

契約が続いているかは、保険会社や共済の窓口に問い合わせると確かめられます。

築年・境界が分かる建築確認の書類・図面・測量図

建築確認の書類や図面、測量図は、土地と建物を調べるときの近道になります。

書類分かること
建築確認済証建てる前に役所の確認を受けた日(古い耐震基準で建てられたかの判断に使う)
検査済証完成した建物が検査に合格したこと
建物の図面間取りや増築の有無
測量図土地の形と面積
隣の土地との境界の確認書境界の位置と、隣の人と合意しているか

これらは築年や境界の調査に使えるほか、後で売ったり解体したりするときの見積もりにも役立ちます。

古い家では、検査済証がそもそも残っていない例もあります。建築確認済証や図面だけでも、見つかれば持ち帰っておきましょう。家で見つからなかったときの役所での調べ方は、土地と建物の章で紹介しています。

実家の名義人と相続人の調べ方(登記簿・所有不動産記録証明・名寄帳・戸籍)

名義人と相続人の調査は、自分で数百円から始められます。

名義が親のままで、相続人が兄弟・姉妹数人なら、調査の多くは自分の手で進められます。司法書士に頼むかは、調べて状況が見えてから決めれば十分です。

登記簿で名義人・共有者・残っている抵当権を確かめる

法務局で土地と建物の登記事項証明書(いわゆる登記簿)を取ると、登記上の名義人が分かります。

取り方手数料(1通、2025年4月1日以降)
法務局の窓口や郵送で請求600円
インターネットで請求し、郵送で受け取る520円
インターネットで請求し、窓口で受け取る490円

証明書として出す必要がなく、中身を見るだけなら、インターネットで登記の内容を確かめられる登記情報提供サービスを使うと、さらに安く済みます。

登記簿は、住所ではなく地番で請求する仕組みです。地番は、固定資産税の納税通知書(課税明細書)に書かれています。通知書が見当たらないときは、管轄の法務局に問い合わせるか、法務局や図書館にある地番入りの住宅地図で調べられます。

土地と建物は登記簿が別々なので、両方取っておきましょう。建物は親の名義でも、土地の名義は他人で、借地だったと分かることもあります。

登記簿が届いたら、次の2か所を見ておきましょう。

見る欄書かれている内容確かめたいこと
権利部(甲区)登記上の名義人と、いつ・どんな理由(相続・売買など)で名義人になったか名義人は誰か。何年前から名義が動いていないか。共有名義になっているか
権利部(乙区)抵当権など、名義人以外の権利昔の借入の抵当権が残っているか

甲区で共有名義になっていたら、それぞれの持ち分と共有者の名前を控えておきましょう。たとえば祖父とおじの共有名義なら、家を売るにはおじやその相続人の同意も必要になります。

乙区には、昔の住宅ローンなどの抵当権が残っていることがよくあります。借金を返し終えても、抵当権を消す登記をしなければ、記録は残り続けます。

売る前には抵当権を消す手続きが必要で、お金を貸した銀行が合併したりなくなったりしていると時間がかかります。今のうちに見つけておくと、売る段階で慌てずに済みます。

親が存命なら、名義人を確かめたところで調査はひと区切りです。相続人を調べるのは、相続が始まってからで十分です。登記簿は誰でも取れます。

出典: 法務省「登記手数料について」

所有不動産記録証明と名寄帳で親名義の不動産を洗い出す

親名義の不動産は、所有不動産記録証明と名寄帳を組み合わせると、漏れを減らして洗い出せます。

相続では、実家だけを選んで引き継ぐことはできません。親名義の不動産がほかにあれば、それも含めて相続します。相続放棄をする場合も、全部まとめて放棄することになります。

2026年2月2日から、所有不動産記録証明制度が始まりました。

法務局に請求すると、亡くなった親が登記上の名義人になっている不動産を、全国分まとめて一覧にした証明書が出てきます。請求できるのは名義人本人と相続人などで、窓口で請求する場合の手数料は1通1,600円です。

注意したいのは、登記簿に書かれた氏名と住所で探す仕組みだという点です。親が引っ越した後に登記簿の住所を変えていなければ、今の住所での検索からは漏れてしまいます。以前住んでいた住所も検索の条件に加えておきましょう(条件を増やすと、その分の手数料がかかります)。

また、登記簿をもとに作る一覧なので、登記されていない建物は一覧の対象外です。

そこで組み合わせたいのが名寄帳です。名寄帳は、市区町村が固定資産税をかけるために、その市区町村にある土地と建物を持ち主ごとにまとめた一覧です。実家のある市区町村の税務の窓口で、相続人として請求できます(必要な書類は市区町村ごとに違います)。

名寄帳には、登記されていない建物でも、固定資産税がかかっていれば載っています。名寄帳と登記簿を並べて、名寄帳にしか載っていない建物を探すと、未登記の建物や増築部分が見つかります。

登記されていない建物は、売ったり解体したりする前に、登記簿に載せる表題登記(土地家屋調査士が扱う手続き)が必要になることがあります。

洗い出してみると、実家のほかに山林や農地、私道の持ち分が見つかることもあります。それらも相続の対象になるため、相続放棄をするかを考えるときの材料にもなります。

出典: 新潟地方法務局「所有不動産記録証明制度について」

戸籍をたどって相続人を確定する

相続人を確定するには、親が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍が必要です。

親が結婚や引っ越しで本籍を移していると、戸籍はいくつかの市区町村に分かれています。家族が知らない子どもがいないかなども、つながった戸籍で確かめられます。

以前は、本籍のあった市区町村ごとに郵送で請求する手間がかかりました。2024年3月1日からは戸籍の広域交付が始まり、最寄りの市区町村の窓口で、ほかの市区町村の戸籍もまとめて請求できます。

できることできないこと
本人・配偶者・父母や祖父母・子や孫の戸籍を請求する兄弟・姉妹やおじ・おばの戸籍を請求する
窓口で、写真付きの本人確認書類を見せて請求する郵送や代理人による請求

コンピュータ化されていない一部の古い戸籍など、広域交付で取れない戸籍もあります。その場合は、本籍のあった市区町村に個別に請求できます。

古い戸籍は手書きで昔の字体のため、読みにくいことがよくあります。分からないところは、窓口で読み方を聞いてみてください。

何十年も会っていないおじ・おばやいとこが相続人に入っていて、連絡先が分からないこともあります。住所の移り変わりを記録した戸籍の附票を請求すると、今の住所を調べられることがあります。

集めた戸籍を法務局に出すと、相続関係を1枚にまとめた法定相続情報一覧図を無料で作ってもらえます。銀行の手続きや相続登記で戸籍の束の代わりに何度も使えるので、作っておくと手続きのたびに戸籍をそろえ直さずに済みます。

調べた結果は、相続関係を図にし、名義人・共有者・相続人の一覧と一緒にまとめておきましょう。兄弟・姉妹や司法書士に説明するときに、そのまま使えます。

出典: 法務省「戸籍証明書等の広域交付について」、法務局「法定相続情報証明制度について」

名義人が祖父母以前のままだったときの調べ方

名義が祖父母以前のままなら、相続人が増えている前提で、戸籍集めを早めに始めておきましょう。

登記簿を取ってみたら、名義が親ではなく祖父母、あるいはもっと前の代のままだった。長く放置した実家では、よくある状況です。

この場合、相続が何回も重なった状態になっています。亡くなった相続人の配偶者や子どもが次々に加わるため、相続人が十数人から数十人に増えていることもあります。

例 祖父の名義のままだった場合(子どもは全員、祖父より後に亡くなったとする)
祖父の子ども今の状態祖父の家の相続人に加わる人
長男亡くなっている長男の妻、長男の子ども2人
次男存命次男本人
長女亡くなっている長女の夫、長女の子ども3人
三男(あなたの親)亡くなっているあなたと兄弟・姉妹(ここでは2人とする)

祖父の子どもは4人でも、相続人は3人+1人+4人+2人で10人に増えます。人数は架空の例なので、実家の戸籍に合わせて数え直してみてください。

誰が相続人かを確定するには、祖父の代から、亡くなった人それぞれの戸籍をたどる必要があります。広域交付では取れないおじ・おばの戸籍も必要になるため、数か月かかる前提で動き出しておくと慌てずに済みます。

次のどれかに当てはまるなら、司法書士への依頼を考えてみてください。

  • 名義が祖父母以前のまま
  • 相続人が多い、または連絡が取れない人がいる
  • 相続人に認知症の人や海外に住んでいる人がいる

名義が親で、相続人が兄弟・姉妹数人なら、名義と相続人の調査までは自分で進め、相続登記の申請から司法書士に頼む方法もあります。

相続人が多くて話し合いがまとまらなくても、相続登記の期限は近づいてきます。そんなときに使えるのが相続人申告登記です。

相続人申告登記は、自分が相続人であることを法務局に申し出るだけの手続きで、申し出た人は相続登記の義務を果たしたとみなされます。

ただし家の名義は変わらないため、家を売るときなどには正式な相続登記が別に必要です。期限の日付は、優先順位の章の期限の表で確かめられます。

出典: 法務省「相続登記の申請義務化について」

実家の土地と建物の築年・接道・境界・用途地域の調べ方

築年・接道・境界・用途地域の4つを調べると、売る・貸す・残す・解体するのどれを選べるかの材料がそろいます。

不動産会社や解体業者から「建て替えができない土地なので安くしか売れない」「古いので解体が前提」と言われる場面があります。不動産会社も査定でこうした点を調べてくれます。自分でも事実を押さえておくと、説明が妥当かを確かめられ、何社かの説明も比べられます。

調べる対象窓口取れる書類・資料
築年法務局、役所の建築の窓口登記簿、建築計画概要書、建築確認の記録の証明
接道役所の道路の窓口道路の種類が分かる図面や台帳
境界法務局公図、地積測量図
用途地域役所の都市計画の窓口都市計画図

窓口の名前は市区町村ごとに違います。役所の総合案内で「建築確認の記録」「道路の種類」「用途地域」を調べたいと伝えると、担当の窓口を案内してもらえます。

多くの市区町村は、都市計画図や道路の種類をインターネットの地図で公開しています。行く前に下調べしておけば、実家が遠くても、法務局と役所を1日で回る段取りが組めます。親が存命でも、これらの資料は誰でも調べられます。

築年と旧耐震かどうかを登記簿と建築確認の記録で調べる

築年を調べるときは、古い耐震基準(旧耐震)で建てられた家にあたるかを確かめておきましょう。

建てられた時期は、建物の登記簿の表題部(建物の場所・構造・床面積・新築した日付などが書かれた欄)で分かります。

今の耐震基準(新耐震)は、1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けた建物に適用されています。建築確認は、家を建てる前に、設計が法律に合っているかを役所などが確かめる手続きです。

旧耐震と新耐震を分けるのは、家が完成した日ではなく、建築確認を受けた日です。たとえば1981年の秋に完成した家でも、建築確認を6月より前に受けていれば、旧耐震で建てられた家になります。

建築確認の日付は、書類探しで見つけた建築確認済証で分かります。見つからないときは、役所の建築の窓口で、建築確認の記録や建築計画概要書(建築確認のときに出された書類の概要)を調べてもらえることがあります。古い家だと、記録が残っていない場合もあります。

登記簿に新築の日付が書かれていない場合や、建物が登記されていない場合は、名寄帳に記録された建築年が手がかりになります。

築年は、使える制度も左右します。

  • 空き家の3,000万円控除は、1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家であることが条件の一つ
  • 多くの市区町村が、旧耐震の木造住宅を対象に、耐震診断や解体の費用を補助している

補助の内容は市区町村ごとに違うので、実家のある市区町村の制度を調べてみてください。

出典: 鳥取県「住宅・建築物の耐震化」、国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

接道を役所で調べて再建築できるかを確かめる

今の家を壊した後に新しく建てられるかは、敷地が法律上の道路に2m以上接しているかで決まります。

建築基準法では、建物を建てる土地は、法律上の「道路」に2m以上接していなければならないと決めています。この条件を満たさない土地は、原則として、今の家を壊すと新しい家を建てられない土地になります。こうした土地は「再建築不可」と呼ばれます。

気をつけたいのは、見た目は道路でも、法律上の道路にあたらない通路があることです。家の前の道が法律上の道路か、どの種類の道路かは、役所の道路の窓口や、インターネットで公開されている地図で確かめられます。

法律上の道路に接していない場合でも、役所の許可を受けて建てられる例外があるので、あわせて聞いておきましょう。

幅が4m未満の古い道に面している家も、確かめておきたいケースです。こうした道は一定の条件で法律上の道路とみなされ(「2項道路」と呼ばれます)、建て替えるときは道の中心から2m下がった線が敷地の境目とみなされます。

つまり、その分だけ家を建てられる敷地が狭くなります。建て替えはできても、今と同じ大きさの家にならないことがあります。

出典: e-Gov法令検索「建築基準法」

境界を公図・地積測量図・境界標で確かめる

隣の土地との境界は、法務局で取れる公図と地積測量図、現地の境界標の3つで確かめられます。

確かめる物内容注意点
公図土地の形と並び方を示した図明治時代の図をもとにしたものもあり、形や長さが正確でないことがある
地積測量図土地を測量した結果の図作られた年代によって精度が違う。古い土地には、そもそもないこともある
境界標現地に打ち込まれたくいや金属のプレート土に埋もれたり、塀の下に隠れたりしていることがある

公図と地積測量図は、法務局で1通500円、インターネットで請求すると受け取り方によって440円か470円で取れます。

現地で境界標が見つからないときは、隣の家の人に聞いてみてください。昔、境界を確かめ合ったいきさつや、塀がどちらの家の物かを知っていることがあります。登記簿に書かれた面積と、実際に測った面積が違っていることもよくあります。

土地を売るときは、隣の土地との境界をはっきりさせる測量(確定測量)を求められることがよくあります。隣の土地の持ち主が亡くなっていたり、住まいが分からなかったりすると、この測量に時間がかかります。

境界について隣の人と意見が合わないときや、隣の持ち主が分からないときは、法務局の筆界特定制度を使えます。登記上の名義人やその相続人が申請すると、法務局の担当者が専門家の意見を聞いたうえで、境界の位置を示してくれる制度です。

手数料は土地の価格で決まり、たとえば申請する土地と隣の土地の価格の合計が4,000万円なら8,000円です(測量が必要なら、その費用が別にかかります)。境界の測量や登記は、土地家屋調査士に頼めます。

今の段階では、境界標と地積測量図があるかを確かめるだけでも、売るときにかかる時間の見通しが立ちます。

出典: 法務省「登記手数料について」、法務省「筆界特定制度」

用途地域・市街化調整区域・地目で土地の使い道を確かめる

土地の使い道は、用途地域・市街化調整区域・地目の3つのルールで決まります。

用途地域は、その地域に建てられる建物の種類や大きさを決めるルールです。住宅地・商業地・工業地など13種類に分かれ、土地の広さに対して建てられる建物の大きさ(建ぺい率・容積率)が決まっています。

古い家の中には、建てた後にルールが変わったり増築したりして、今の上限を超えている家もあります。この場合、建て替えると今より小さな家になることがあります。用途地域は、役所の都市計画の窓口や、インターネットの都市計画図で確かめられます。

実家が市街化調整区域にあるなら、特に注意が必要です。市街化調整区域は、町が広がりすぎないように、建物を建てることを原則として抑えている区域です。建て替えや住宅以外の用途への変更には役所の許可が必要で、買い手も限られます。

登記簿の表題部にある地目も見ておきましょう。地方の実家では、庭や家庭菜園の一部の地目が「田」や「畑」のまま残っていることがよくあります。

地目が田や畑の土地は農地として扱われ、売ったり、住宅など別の用途に変えたりするには、農地法の許可や届出が必要です。相続で農地を引き継いだときは、許可は要らない一方で、相続を知った日から10か月以内に農業委員会への届出が必要になります。

土砂災害警戒区域や浸水が想定される区域にあたるかも、売るときに買い手へ説明する事柄になります。都市計画図を見るついでに、市区町村のハザードマップも確かめておくとよいでしょう。

調べた築年・接道・境界・用途地域は、1枚の表にまとめ、取った書類の写しを添えておきましょう。

調査結果のまとめ表(記入例)

年や道の幅などの値はすべて架空の記入例です。実家で調べた結果に置き換えて使ってみてください。

項目調べた結果もとにした書類・窓口
築年1979年新築、旧耐震登記簿の表題部、建築確認済証
接道幅3mの2項道路に5m接する役所の道路の窓口
境界境界標2か所、地積測量図なし公図、現地で確認
用途地域第一種低層住居専用地域都市計画図

このまとめ表は、兄弟・姉妹への説明にも、不動産会社や土地家屋調査士、市区町村の空き家窓口への相談にも、そのまま使えます。事実を手元にそろえて相談すれば、何社かの説明を比べながら、売る・貸す・残す・解体するを家族で決められます。

出典: e-Gov法令検索「農地法」、千葉市「相続等で農地の権利を取得したときの届出(農地法第3条の3)」

まとめ:長く放置した実家は他人への損害を防ぐ安全確保から始める

長く放置した実家でいちばん先に手を打ちたいのは、屋根や塀、庭木が他人に損害を与えないようにする安全確保です。名義が親のままでも、事故が起きれば相続した人が責任を問われることがあります。

次の一歩として、現地に行く前に役所からの通知と火災保険の契約を確かめておきましょう。ここを飛ばすと、勧告を受けて固定資産税の軽減が外れたり、事故のときに保険の補償を受けられなかったりするおそれがあります。

そのうえで、登記簿を取って、実家の名義が誰のままになっているかを見てみてください。実家と相続の地図帳「つぐーる」では、長く放置した実家で手をつける順番や、片付け前の書類探し、名義人と相続人の調べ方も含めて、相続や実家について悩むあなたに経験に基づいた情報を提供しています。