久しぶりに帰った実家で天井のしみや閉まりにくい戸に気づくと、「急いで直すべき? 誰に見てもらえばいい?」と迷うことがあります。
家族の役目は、家の安全を判定することより、異変に気づいて専門家に渡す記録を残すことです。
頼む順番を間違えて表面だけ直す失敗を防げるよう、症状ごとの頼み先と、床の傾き6/1000や基礎のひび幅0.5mmといった国の目安、無料の耐震診断をまとめました。
古い実家の劣化を放置するリスク
放置して困るのは、水の入り込みと構造(家を支える骨組み)の傷みの2つです。
外壁の色あせや、手でこすると白い粉がつく状態(塗装が古くなったサイン)、壁紙のはがれは、それだけなら骨組みや雨漏りに直結しないことが多いといえます。
水の入り込みと構造の傷みは、待つあいだにも進みます。遅れるほど、直す範囲も、かかるお金も、周りへの責任も広がります。
雨漏りから腐朽・シロアリへ劣化が連鎖する
雨漏りがこわいのは、天井のしみそのものより、その先で木材の腐れやシロアリへと傷みがつながっていく点です。
よくある流れは次のとおりです。
- 屋根・外壁・窓のサッシのまわりのすき間から雨水が入る
- 濡れた木材に、木を腐らせるカビの仲間(木材腐朽菌)が広がる
- 湿って柔らかくなった木材にシロアリが寄ってくる
- 土台・柱・梁(はり。屋根や床を支える横向きの木材)が弱くなる
- 地震や大雪のときに、傷みが一気に表に出る
東京都のシロアリの解説は、予防には床下の換気をよくし、雨漏りや水漏れを放置しないなど湿気を減らすことが大切だとしています。
国土交通省住宅局が監修した「誰でもできるわが家の耐震診断」も、台所・浴室の近くや北側の土台まわりのように湿りやすい場所は早く腐ると注意を促しています。
最初の段階で止められれば、ずれた屋根材の部分的な補修や、すき間を埋めるゴム状の充てん材(コーキング)の打ち直し程度で済みます。土台や柱の交換、屋根全体のふき替えまで進むと、工事の規模がまったく変わります。
もう一つ知っておきたいのは、古くなったことによる傷み(経年劣化)の修理は、火災保険の対象にならない点です。
国民生活センターも、経年劣化によって生じた損害は保険金の支払い対象にならないと説明しています。つまり、劣化の修理は基本的に自己負担です。
傷みが軽いうちなら、「直して住む」「直して貸す」「そのまま手放す」など、実家の行き先を選べます。構造まで傷むと、選べる行き先そのものが減っていきます。
出典: 東京都保健医療局「シロアリ」、山梨県「誰でもできるわが家の耐震診断」(日本建築防災協会編集・国土交通省住宅局監修)、国民生活センター「保険金で住宅修理ができると勧誘する事業者に注意!」
人が住んでいない実家は傷みが早く進む
親が施設に入った、亡くなったなどで空き家になった実家は、人が住んでいる家より傷みが早く進みます。
主な理由は次の4つです。
- 窓を開けないので湿気がこもる
- 排水口から臭いや虫が上がる
- 雨漏りに気づく人がいない
- 台風・大雪・地震のあとに誰も見に行かない
空気が入れ替わらない家では、床下・押入れ・北側の部屋からカビや腐れが進みます。
排水口の奥には、水をためて下水の臭いや虫をふさぐしくみ(トラップ)があります。熱海市の下水道の案内にもあるとおり、長く留守にするとこの水が蒸発し、臭いが部屋に入るおそれがあります。
住んでいれば天井のしみにすぐ気づきますが、空き家では次に訪れるまで何か月も濡れたままになります。瓦のずれや雨どいの外れも、直されないまま次の嵐にさらされます。
遠方の実家では、近所の人からの電話で初めて「瓦が落ちていた」「外壁がはがれていた」と知ることもあります。
年に数回しか行けないなら、訪れたときに、「古い実家の劣化を自分で安全に確かめる方法」で挙げる確認をまとめて済ませておきましょう。
瓦や外壁の落下で所有者が賠償責任を負う
傷んだ家が原因で他人にけがをさせたり物を壊したりすると、所有者が賠償責任を負うことがあります。
民法717条は、建物などの「土地の工作物」の設置や保存に欠陥があって他人に損害を与えたとき、まずその建物を使っている人(占有者)が賠償すると定めています。占有者が損害を防ぐのに必要な注意をしていた場合は、所有者が賠償する決まりです。
大事なのは、所有者には「注意していたから責任はない」という逃げ道の規定がない点です。過失がなくても責任を負うため、一般に「無過失責任」と呼ばれます。
空き家は使っている人がいないことが多いため、相続した家族が所有者として責任を問われやすくなります。
岡山市の空き家の案内でも、空き家が原因で通行人などにけがを負わせた場合、所有者や管理者(相続人)が賠償責任を負うと説明しています。
たとえば、次のような場面が考えられます。
- 台風で飛んだ瓦が、通行人や隣の家の車に当たる
- 古くなった外壁の破片が道路に落ちる
- 壊れた雨どいから、隣の敷地に雨水が流れ込み続ける
相続人が複数いて、遺産分割(誰が何を受け継ぐかの話し合い)が終わっていない場合も、相続人全員に関わる問題になります。民法898条により、遺産分割が終わるまで相続財産は相続人みんなの共有になるからです。
あわせて、実家にかけている火災保険や家族の個人賠償責任保険の補償の範囲を、保険証券で確かめておきましょう。他人への賠償まで含まれていれば、万一のときの備えになります。
出典: e-Gov法令検索「民法」第717条・第898条、岡山市「空き家に関する相談窓口について」
管理不全空家として勧告されると固定資産税の特例が外れる
実家が空き家なら、傷みの放置が固定資産税の増額につながることがあります。
2023年12月13日に施行された改正空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)で、「管理不全空家(かんりふぜんあきや)」という区分ができました。放置すれば、倒壊などの危険がある「特定空家」になるおそれのある空き家のことです。
市区町村は管理不全空家の所有者を指導でき、それでも改善されなければ勧告できます(同法13条)。
勧告を受けると、その土地は固定資産税・都市計画税の「住宅用地の特例」から外れます(地方税法349条の3の2)。
この特例は、住宅が建っている土地の税金を軽くするしくみです。総務省の説明では、200㎡以下の部分は課税標準(税額を計算するもとの額)が6分の1に、200㎡を超える部分は3分の1になります。特例が外れれば、この軽減がなくなります。
さらに危険な状態の「特定空家」になると、勧告のあとに命令、最後は行政代執行(市区町村が代わりに解体などを行い、費用を所有者に請求すること)まで進むことがあります(同法22条)。
国土交通省の指針は、管理不全空家と判断されやすい建物の状態として、次のような例を挙げています。
- 屋根の変形、外壁などの外装材のはがれ・落下
- 柱や土台など構造部材の破損・腐れ・シロアリの害
- 雨水が入った痕跡
雨漏りや構造の傷みを放置すれば、そのまま判断の材料になるということです。
国土交通省の調査では、2025年3月末までに、管理不全空家への勧告がすでに378件(40市区町村)行われています。
出典: e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」、e-Gov法令検索「地方税法」第349条の3の2、総務省「地方税制度 固定資産税」、柏市「空家等の管理」、国土交通省「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針」、国土交通省 報道発表「令和5年改正空家法に基づく取組が広がる(令和7年3月31日時点調査)」
親が住む実家では地震と踏み抜きの危険が高まる
親が今も実家に住んでいるなら、劣化は親の安全に直結します。
特に気をつけたい危険は、次の3つです。
- 床が抜ける・沈む
- 大地震で家が倒れる
- カビと湿気で体調を崩す
床下の木材が腐ったりシロアリに食べられたりすると、床が沈んだり、踏み抜いたりします。高齢の親にとっては、転倒やけがにつながります。
1981年6月に建築基準法が改正され、耐震の基準が強くなりました。「誰でもできるわが家の耐震診断」でも、阪神・淡路大震災では1981年以降に建てられた建物の被害が少なかったと報告されたことが紹介されています。
それより前の基準で建てられた木造住宅に、腐れやシロアリの傷みが重なれば、地震への強さはさらに下がります。
雨漏りの続く部屋ではカビが増え、住む人の体調を崩すもとになります。
高齢の親は少しずつ進む異変に慣れ、「昔からこうだった」と気にとめなくなることがあります。親が自分で屋根に上ったり、脚立に乗って雨どいを掃除したりして転落する危険もあります。
耐震性の確かめ方は、「1981年5月以前に建築確認を受けた木造住宅」と「市区町村の耐震診断で建築士の派遣を受ける」にまとめています。
出典: 山梨県「誰でもできるわが家の耐震診断」(日本建築防災協会編集・国土交通省住宅局監修)
古い実家の劣化を自分で安全に確かめる方法
家族が自分で確かめるのは、異変に気づいて、専門家に渡す材料を集めるためです。
床下や屋根の上まで行かなくても、室内と地上から見られることはたくさんあります。
見る順番は、室内、床の傾きの計測、外回り、点検口からのぞく、記録を残す、の順がおすすめです。
見つけた症状を誰に頼めばよいかは、「専門調査が必要な症状と依頼先」に症状ごとにまとめています。
天井・壁・建具で雨漏りと傾きの兆候を探す
室内では、雨漏り、傾き、シロアリや腐れの兆候を、それぞれ見る場所を変えて探してみてください。
雨漏りの兆候
- 天井や壁の輪のようなしみ(輪じみ)
- 天井板のたわみ、浮き
- 押入れや北側の部屋のカビ臭さ
- 窓のサッシまわりの木の枠の黒ずみ
- 2階の窓の下の壁、1階の天井の角(上の階からの水が伝わりやすい場所)
見る日は、雨の日か雨の翌日がおすすめです。晴れが続いた日には乾いて分からないしみも、雨のあとなら色が濃くなったり、触ると湿っていたりします。
傾きの兆候
- 戸・ふすま・窓の開け閉めが重い、勝手に動く
- 閉めたとき、上だけ(または下だけ)にすき間ができる
- 壁と柱、壁と床の間にすき間がある
- 壁紙に斜めのしわやひびが入っている
シロアリや腐れの兆候
- 歩くと床がふかふかする、沈む
- 敷居や柱を軽くたたくと、中が空っぽのような音がする
- 玄関・浴室・台所まわりの木の部分が傷んでいる
実家の片付けで家具を動かすときは、ふだん見えない壁や床を見られる機会です。たんすの裏の壁にカビやしみがないか、ついでに確かめておきましょう。
床の傾きを水平器で測って記録する
床の傾きは、「なんとなく傾いている気がする」で終わらせず、数字で残しておきましょう。
数字があれば専門家に状況が早く伝わり、次に訪れたときに傾きが進んでいるかも比べられます。
よく聞く「ビー玉を転がす」方法は、床板の一部のたわみや、仕上げの小さな凹凸でも転がります。家全体が傾いているのか、床の一部がへこんでいるのかを区別しにくい方法です。
おすすめは、水平器(気泡の位置で水平を見る道具)やレーザー水平器(壁に水平な光の線を映す道具)を使う方法です。
- 同じ部屋の床で、3mくらい以上離れた2点を決める
- レーザー水平器の光の線から床までの高さを、2点それぞれでメジャーで測る
- 2点の高さの差を、2点の間の距離で割り、「1mあたり何mm」に直す
たとえば、4m離れた2点の高さの差が12mmなら、12÷4=1mあたり3mmです。これを「3/1000(1000分の3)」と書きます。1mあたり6mmなら6/1000です。
スマートフォンの傾斜計アプリは手軽ですが、精度が粗いので目安にとどめましょう。
測ったら、どの部屋のどの方向を測ったのかを、簡単な間取り図にメモしておきます。次に訪れたときに同じ場所で測り直せば、数字の変化から傾きが進んでいるかが分かります。
この数字が専門家に見てもらう目安に届いているかは、「6/1000以上の床の傾きと建具の不具合」で確かめられます。
基礎・外壁・屋根を地上から点検する
外回りは、はしごを使わず、地上から見て回りましょう。
見る場所と見るポイントは、次のとおりです。
| 見る場所 | 見るポイント |
|---|---|
| 基礎(家の下のコンクリート) | ひびの幅、ひびから出る茶色いさびの汁、表面をはう土の筋(蟻道〈ぎどう〉=シロアリの通り道) |
| 外壁 | ひび、浮き、はがれ。板状の外壁材(サイディング)の反り、板と板の継ぎ目のゴム材の切れ |
| 雨どい | 外れ、傾き、落ち葉などの詰まり |
| 屋根 | 瓦のずれ・割れ、屋根のてっぺん(棟〈むね〉)のゆがみ、金属の板の浮き |
基礎のひびは、幅が大事です。ひびの幅を測る目盛り(クラックスケール)がなければ、名刺の厚さやシャープペンの芯の太さなど、太さの分かる物を並べて写真を撮ると、あとで専門家に伝わりやすくなります。
屋根は、地上や2階の窓から、双眼鏡やスマートフォンのズームで見てみてください。
台風・大雪・地震のあとは、室内より先に外回りを見ておくと、落ちそうな物に早く気づけて、周りの人の安全を守れます。
床下と屋根裏は点検口から覗くだけにする
床下や屋根裏は、点検口から顔を入れてのぞき、写真を撮るところまでにしておきましょう。
多くの家では、押入れの天井板の一部、台所の床下収納、洗面所の床にあるふたなどが点検口になっています。床下収納は、収納の箱を持ち上げると床下が見える家が多くあります。
点検口から顔と懐中電灯(またはスマートフォン)だけを入れて、次のものを撮っておくと、専門家に状態を伝えられます。
床下
- 木材の湿りや黒ずみ
- 水たまりやその跡
- 基礎や木材の表面の蟻道
- 垂れ下がった断熱材
屋根裏
- 木材の雨じみ
- 屋根の下地の板(野地板〈のじいた〉)の黒ずみ
体ごと潜るのは避けましょう。理由は3つあります。
- 床下は狭く、釘や木の破片、カビでけがをしやすい
- 水道管や断熱材を踏んで壊すおそれがある
- 何が異常なのかを見分けるのは、慣れていない人には難しい
国が定めた「既存住宅状況調査(建物状況調査)」の方法の解説でも、床下は主に顔や上半身の一部を点検口に入れる程度の調査を想定しています。床下に入って細かく確かめる作業は、専門家に任せる前提で考えておくと安全です。
写真と聞き取りで劣化の経緯を残す
専門家が最初に知りたいのは、その症状が今も進んでいるかです。
進み続けているなら急いで直し、止まっているなら様子を見られることもあります。その判断の材料になるのが、写真と経緯の記録です。
写真の撮り方
- 同じ場所を、同じ角度で撮る
- 日付が分かるようにする(スマートフォンなら撮影日が残ります)
- しみやひびは、近くと少し離れた位置の両方から撮る
親に聞いておくこと
- その症状はいつからか
- 雨の日だけか、いつもか
- 前に直したことはあるか(いつ・どこを・どの業者で)
- シロアリの消毒(防除)をいつしたか
探しておく書類
- 確認済証(建築確認通知書)
- 増築や改築をした時期が分かる書類
- 過去の修理の見積書や領収書
- シロアリ防除の保証書
確認済証を見れば、建てる前に役所などの確認を受けた日が分かります。シロアリ防除の保証書には、保証期間が書いてあります。
いつから症状が出たか、前にどこを直したかは、親が元気なうちに聞いておかないと、あとから誰にも分からなくなる情報です。
ここで集めた写真や書類は、専門家に調査を頼むときにも、見積を比べるときにも、そのまま使えます。
自分でしてはいけない確認と応急処置
善意でやったことが、かえって危険を招いたり、調査を難しくしたりすることがあります。
次の5つは避けておきましょう。
- 屋根に上る(脚立に乗っての雨どい掃除も含む)
- 床下に潜る
- 雨漏りの場所を自分でコーキングやテープでふさぐ
- 羽アリに殺虫剤をかける
- 確かめるために壁や天井をはがしたり、削ったりする
屋根からは転落の危険があります。親にも、屋根や脚立には上らないよう伝えておきましょう。床下に潜ると、けがや設備の破損のもとになります。
雨漏りの場所をふさぐと、水の入り口が分からなくなり、原因を突き止める調査が難しくなります。水は思わぬ場所から入って、離れた場所に出てくることが多いからです。
羽アリに殺虫剤をかけると、羽アリが散らばって、どこから出てきたのか分からなくなります。数匹をポリ袋などに入れて残し、出てきた場所を写真に撮っておくと、業者が発生源を調べやすくなります。
壁や天井をはがしたり削ったりすると、傷みを広げたり、元に戻せなくなったりします。
家族ができる応急処置は、雨漏りの下にバケツやシートを置く、落ちそうな物の下に人が近づかないようにする、といった範囲にとどめます。そのうえで、症状に合った専門家に相談しましょう。
専門調査が必要な症状と依頼先
頼み先は、症状の原因がはっきりしているかで変わります。
- 原因がはっきりした単独の症状(割れた瓦、外れた雨どいなど)は、それを直す専門業者に直接頼める
- 原因が分からない、症状がいくつもあるときは、先に建築士に建物全体を見てもらう
この順番で頼めば、「原因が違うのに表面だけ直す」「必要のない工事まで頼む」といった失敗をかなり防げます。
雨のたびに広がる天井や壁のしみ
雨のたびに広がるしみは、屋根や外壁のどこかから水が入り続けているサインです。
専門家に見てもらう症状
- 雨が降るたびに、しみが広がる・濃くなる
- しみを触ると湿っている
- 天井板がたわんでいる、落ちてきそう
考えられる原因
屋根材の下に敷いてある防水シート(ルーフィング)の傷み、外壁のひびや継ぎ目の切れ、ベランダの防水の傷み、窓のサッシまわりのすき間などです。
雨漏りのやっかいな点は、水の入り口と、しみが出る場所がずれていることが多い点です。
そのため専門家は、怪しい場所に水をかけて雨漏りを再現する「散水調査」や、温度の違いで湿った場所を映す赤外線カメラなどを使って、入り口を探します。
頼む先
雨漏りの診断を行っている屋根・防水の専門業者か、建築士による住宅診断です。
床下が湿っているのに雨と関係がなさそうなら、水道管からの水漏れも疑えます。
家じゅうの蛇口を閉めた状態で、水道メーターの中の小さな部品(パイロット)が回っていれば、どこかで漏れている可能性があります。三郷市など多くの自治体の水道の案内にある確かめ方です。漏れていたら、市区町村が指定する水道工事の業者(指定給水装置工事事業者)に修理を頼めます。
急ぐ度合い
すぐに相談しましょう。濡れたままの木材は、腐れとシロアリを呼び込むからです。
出典: 三郷市「水道メーターで漏水を確認することができます。」
6/1000以上の床の傾きと建具の不具合
床の傾きが6/1000以上なら、建築士に見てもらう目安になります。
この目安のもとになっているのが、国土交通省の告示「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」です。住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)70条に基づく基準です。
告示は、3mくらい以上離れた2点を結ぶ床の傾きについて、骨組みなど構造の大事な部分に欠陥(瑕疵〈かし〉)がある可能性を、次の3段階で示しています。
| 床の傾き | 構造の大事な部分に欠陥がある可能性 |
|---|---|
| 3/1000未満 | 低い |
| 3/1000以上 6/1000未満 | 一定程度ある |
| 6/1000以上 | 高い |
この基準には限界があります。本来は、新築のときに「建設住宅性能評価書」という書類が交付された住宅で、完成から10年以内に起きた不具合をめぐる争いの参考にするための基準です。
告示自体も、基準に当てはまることで欠陥の有無が決まるわけではないと断っています。古い実家に当てはめて「欠陥だ」と決めつけることはできません。
それでも、目安としては役に立ちます。国が定めた中古住宅の調査(既存住宅状況調査)の方法でも、6/1000以上の床の傾きは調べるべき劣化の一つに挙げられています。
次のどちらかに当てはまるなら、専門家に見てもらいましょう。
- 6/1000以上の傾きがある
- 3/1000以上の傾きがあり、戸の開け閉めが悪くなったり、壁のひびが増えたりしている
考えられる原因
地盤が場所によって違う沈み方をしている(不同沈下)、土台や柱が腐ったりシロアリに食べられたりしている、などです。
頼む先
建築士による住宅診断です。調べた結果、地盤が原因かもしれないと言われたら、次は地盤調査や基礎の工事の専門業者に相談します。
急ぐ度合い
前に測った数字と比べ、測り直すたびに大きくなっている(進んでいる)なら急ぎましょう。何年も変わらないなら、急ぐ度合いは下がります。
出典: 国土交通省「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」、国土交通省「既存住宅状況調査方法基準の解説」
蟻道や室内から出る羽アリ
蟻道や、室内から出てくる羽アリは、シロアリの被害を疑うサインです。
専門家に見てもらう症状
- 基礎や床下の柱(束〈つか〉)に、土の筋(蟻道)がある
- 羽アリが、外からではなく室内(床、敷居、浴室まわりなど)から出てくる
- 木の部分をたたくと空っぽの音がする、床がふかふかする
羽アリの出る時期は、シロアリの種類で違います。東京都の解説では、次のとおりです。
| 種類 | 羽アリが飛ぶ時期と時間帯 |
|---|---|
| ヤマトシロアリ | 主に4〜5月。雨上がりで晴れた風のある日の昼間 |
| イエシロアリ | 主に6〜7月ごろ。夕方に多く、夜にも飛ぶ |
知っておきたいこと
古い家では、昔の蟻道や食べられた跡だけが残っていて、今はシロアリがいないこともあります。今も活動しているか、もういないかで、急ぐ度合いはまったく違います。
跡を見つけても慌てず、今も活動しているかを専門家に確かめてもらいましょう。
頼む先
シロアリ防除(駆除と予防)の専門業者です。
業者を選ぶ目安の一つに、公益社団法人日本しろあり対策協会の「しろあり防除施工士」があります。協会が1964年(昭和39年)に作った、シロアリ防除の技術者の資格制度です。
被害が土台や柱にまで及んでいるなら、薬で防ぐこととは別に、傷んだ木材の補修が要ります。こちらは建築士や工務店に見てもらいます。
過去に防除をしていたら、保証書で保証期間を確かめてみてください。
日本しろあり対策協会は、協会が認定する薬剤の効果の期間を5年としており、保証も5年のものが多くなっています。保証期間内なら、まずその業者に連絡しましょう。
急ぐ度合い
室内から羽アリが出た、今も活動している、と分かったら急ぎましょう。
シロアリは湿気を好むので、雨漏りや床下の湿気と一緒に見つかることがよくあります。雨漏りとあわせて見てもらうと、原因まで一度にたどれます。
出典: 東京都保健医療局「シロアリ」、日本しろあり対策協会「しろあり防除施工士」、日本しろあり対策協会「保証は5年となっていますが、なぜなのですか。」
幅0.5mm以上の基礎のひびと屋根・外壁の破損
基礎のひびは幅0.5mm以上かさびの汁が出ているとき、屋根や外壁は浮きや落下があるときが、専門家を呼ぶ目安です。
基礎のひびの目安
基礎のひびにも、床の傾きと同じ国の技術的基準に目安があります。コンクリートの表面がそのまま出ている基礎の場合は、次のとおりです。
| 基礎のひび | 構造の大事な部分に欠陥がある可能性 |
|---|---|
| 幅0.3mm未満 | 低い |
| 幅0.3mm以上 0.5mm未満 | 一定程度ある |
| 幅0.5mm以上、またはさびの汁が出ている | 高い |
さびの汁は、中の鉄筋がさびているサインです。
床の傾きと同じく、古い家に当てはめて欠陥と決めつけることはできませんが、既存住宅状況調査でも、幅0.5mm以上のひびとさびの汁を伴うひびは調べるべき劣化に入っています。
一方、髪の毛ほどの細いひび(ヘアクラック)は、コンクリートが乾いて縮むときなどにもでき、上の表でも「低い」の区分です。それだけなら急がず、写真で記録して、広がっていないかを次回見比べましょう。
屋根・外壁の破損
瓦のずれ・割れ・落下、屋根のてっぺん(棟)のゆがみ、外壁の浮きやはがれがあれば急ぎます。通行人や隣の家に当たれば、所有者が賠償責任を負うおそれがあるからです。
国土交通省の空き家の指針も、すでに外装材などがはがれ落ちている場合は、ほかの部分も落ちる可能性が高いと考えられるとしています。1か所落ちていたら、ほかの場所もあわせて点検してもらいましょう。
頼む先
| 症状 | 頼む先 |
|---|---|
| 幅の広いひび、さびの汁が出るひび | 建築士(構造の診断) |
| 瓦・屋根の破損 | 屋根の工事業者 |
| 外壁の浮き・はがれ | 外壁など外装の専門業者 |
落ちそうな物があるときは、調査より先に、ネットをかける・落ちそうな部分を外すといった応急の処置を頼むと、落下の事故を防げます。
出典: 国土交通省「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」、国土交通省「既存住宅状況調査方法基準の解説」、国土交通省「管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針」
1981年5月以前に建築確認を受けた木造住宅
目立つ症状がなくても、1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた木造住宅は、耐震の面から調査を考えたい実家です。
建築確認は、建てる前に、計画が法律に合っているかを役所などが確かめる手続きです。
1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物には、今の耐震基準(新耐震基準)が使われています。それより前の古い基準(旧耐震基準)の家は、今の基準を満たしていない可能性が高いといえます。
登記の「新築年」と建築確認の日はずれる
古い基準か新しい基準かは、建築確認を受けた日で決まります。登記簿に書かれた新築の日付は家が完成した時期なので、確認の日より後になります。ここが見落としやすい点です。
国土交通省の長期優良住宅化リフォーム推進事業の案内でも、確認済証がない場合に登記で判断するなら、戸建ては表題登記の日付が1982年(昭和57年)1月1日以降のものを、1981年6月1日以降に工事を始めた住宅とみなすとしています。
つまり、1981年の後半に登記された家は、古い基準で確認を受けていることがあります。
確認済証(建築確認通知書)を見れば、確認を受けた日が分かります。
なくしていても、役所に残る台帳をもとに「台帳記載事項証明書」を出してもらえることがあります。東京都の案内では、建築当時の地名地番(住居表示ではない番地)や建築主の名前が必要とされています。確認済証そのものの再発行とは別の書類です。
頼む先
耐震診断を行う建築士です。たとえばさいたま市の制度では、一般財団法人日本建築防災協会の「一般診断法」という方法で診断すると案内しています。
多くの市区町村に、無料や一部負担で建築士を派遣してもらえる制度があります。まずはその制度から当たってみてください(「市区町村の耐震診断で建築士の派遣を受ける」で説明します)。
1981年6月〜2000年5月の家も確かめる価値がある
1981年6月以降の木造住宅でも、2000年(平成12年)に柱と土台などのつなぎ目(接合部)の基準がはっきり定められる前の家は、つなぎ目の弱さが心配されます。
国土交通省は、日本建築防災協会がまとめた「新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法」を紹介し、リフォームなどの機会に接合部の状況を確かめることをすすめています。さいたま市のように、2000年5月31日以前に工事を始めた木造住宅まで無料診断の対象にしている自治体もあります。
古い基準の家に腐れやシロアリの傷みが重なれば、地震への強さはさらに下がります。症状がいくつもある古い家ほど、耐震の面からも一度見てもらう意味があります。
出典: 国土交通省 長期優良住宅化リフォーム推進事業「Q&A」、東京都都市整備局「台帳記載事項証明書の発行」、さいたま市「無料でできる耐震診断(木造住宅耐震診断員派遣事業)」、国土交通省 報道発表「新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法の公表について」
複数の症状があり原因が分からない実家
症状がいくつもあって原因が分からないときは、建築士による住宅診断で、建物全体を一度に見てもらいましょう。
しみ、傾き、ひびが重なっている。住むか、貸すか、手放すかを決める前に、家全体の状態を知りたい。そんなときも、全体を見てもらえば、どこから直すかの順番を決められます。
選択肢は主に2つです。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 建物状況調査(既存住宅状況調査) | 国の登録を受けた機関の講習を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)が、柱や基礎など構造の大事な部分と、屋根や外壁など雨水の入り込みを防ぐ部分を、目で見る・測る・壊さずに調べる |
| 民間の住宅診断(ホームインスペクション) | 調べる範囲や方法は、頼む相手や契約によって違う |
国土交通省の手引きでは、建物状況調査にかかる時間は1〜3時間程度です。費用は物件の規模や調査する人によって違うものの、6万円程度からが目安とされています。
床下や屋根裏に入って調べる、雨漏りの散水調査をする、といった追加の調査は別料金になることがあります。
調査の限界も知っておきましょう。国土交通省は、建物状況調査は欠陥(瑕疵)の有無を判定するものではないと明記しています。
国の調査方法の基準では、動かすのが難しい家具で隠れた部分や、点検口がなくて見られない部分は調べなくてよく、「調査できない」として扱われます。
つまり、同じ「調査」でも、どこまで見てもらえるかは頼み方で変わります。範囲の決め方は、「調査の範囲と報告書の形を先に決める」にまとめています。
出典: 国土交通省「建物状況調査(インスペクション)活用の手引き」、国土交通省「既存住宅流通について(建物状況調査(インスペクション)活用に向けて)」、国土交通省「既存住宅状況調査方法基準の解説」
費用をかける前に使える公的な診断と相談窓口
民間の業者にお金を払う前に、国・自治体・公益法人の無料または安い窓口で、調査が要るか、誰に頼めばよいかを相談できます。
公的な窓口は工事を請け負わないため、工事の受注とは切り離した意見を聞けます。
一方で、電話の相談は写真や説明をもとにした助言です。家の状態の最終的な判断は、現地を見た専門家に任せましょう。
誰でもできるわが家の耐震診断で自己採点する
業者に頼む前の手軽な確認として、「誰でもできるわが家の耐震診断」で実家の耐震性を自己採点できます。
一般財団法人日本建築防災協会が作り、国土交通省住宅局が監修した自己診断で、千葉市や山梨県など自治体のホームページでも紹介されています。
対象は、1〜2階建ての一戸建ての木造住宅(柱と梁で組む在来工法や、ツーバイフォー工法など)で、店舗などと一緒になった住宅も含みます。10の質問に答え、当てはまれば1点、当てはまらなければ0点をつけます。
| 質問 | 1点になるのは |
|---|---|
| 1 建てた時期 | 1981年6月以降に建てた |
| 2 大きな災害の経験 | 浸水・火災・大地震などに遭ったことがない |
| 3 増築 | 増築していない、または必要な手続きをして増築した |
| 4 傷み具合 | 傷んだところがない、またはその都度直している |
| 5 建物の形 | 1階の形が長方形に近い |
| 6 吹き抜け | 一辺4m以上の大きな吹き抜けがない |
| 7 1階と2階の壁 | 2階の外壁の真下に1階の壁がある、または平屋 |
| 8 壁の配置 | 1階の東西南北どの面にも壁がある |
| 9 屋根と壁 | 屋根が軽い材料、または瓦でも1階に壁が多い |
| 10 基礎 | 鉄筋コンクリートの基礎 |
合計点の判定は次のとおりです。
| 合計 | 判定 |
|---|---|
| 10点 | ひとまず安心だが、念のため専門家に診てもらう |
| 8〜9点 | 専門家に診てもらう |
| 7点以下 | 心配なので、早めに専門家に診てもらう |
実家で使うときは、親と一緒に答えてみてください。どの質問も「よく分からない」は0点になり、建てた時期や増築の有無、過去の災害などは、親に聞かないと分からない項目が多いからです。
この診断は建物だけを採点するもので、地盤は対象外です。
浸水や火災、大地震に遭った家は、外見では分からない傷みがたまっている可能性があり、その場合は専門家の詳しい調査が必要だと、リーフレット自体が書いています。
点数が低かったら、その結果を市区町村の耐震診断の申し込みや相談のときに見せると、話が早く進みます。
出典: 千葉市「わが家の危機管理マニュアル:地震対策」、山梨県「誰でもできるわが家の耐震診断」(日本建築防災協会編集・国土交通省住宅局監修)
市区町村の耐震診断で建築士の派遣を受ける
多くの市区町村が、古い木造住宅を対象に、建築士(耐震診断員)を無料または一部負担で派遣して耐震診断をする制度を持っています。
たとえば静岡市は、1981年5月31日以前に建てられた(または建築中だった)2階建て以下の木造住宅に、無料で専門家を派遣しています。札幌市も、診断の費用を市が負担しています。
この制度を使うときに知っておくと得をする点が、4つあります。
1. 申し込むのは「実家がある」市区町村
制度は、その市区町村の中にある住宅が対象です。自分が住んでいる市区町村ではなく、実家の所在地の窓口に問い合わせましょう。
2. 空き家や、所有者でない家族が申し込むときは条件を確かめる
対象の条件は自治体ごとに違います。たとえば静岡市は、空き家の場合は「診断後に住宅として使う予定があること」を条件にしています。札幌市は、申し込める人を住宅の所有者としています。
親名義の家を子が申し込めるか、相続の手続き中でも使えるかは、窓口で確かめておくと手戻りを防げます。
3. 年度の途中で受付が終わることがある
募集の枠や受付期間も自治体ごとです。さいたま市は「定員になり次第終了」としており、2026年度分はすでに定員に達したと案内しています。札幌市も2026年度の受付を終えています。
使うと決めたら、年度の早い時期に申し込むと枠に入りやすくなります。
4. 診断を受けると、補強や解体の補助を申し込める自治体がある
診断の結果、倒壊のおそれがあると出ると、耐震補強や解体の補助を受けられる自治体があります。札幌市の木造住宅の解体の補助は、市の診断員派遣などで「上部構造評点(建物の地震への強さを表す点数)が1.0未満」と診断された住宅が対象です。
注意したいのは、申請して交付の決定を受ける前に工事の契約や着工をすると、補助の対象外になる制度が多いことです。札幌市の解体の補助も、交付決定の前に契約・着手してはいけないと定めています。
業者と契約する前に窓口へ相談しておけば、補助を受け損なわずに済みます。
窓口は、市区町村の建築指導課や住宅課などです。「(市区町村名) 木造住宅 耐震診断」と検索すると見つかります。
出典: 静岡市「わが家の専門家診断事業(木造住宅の無料耐震診断)」、札幌市「木造住宅の無料耐震診断」、札幌市「木造住宅の除却工事(解体工事)の費用補助」、さいたま市「無料でできる耐震診断(木造住宅耐震診断員派遣事業)」
住まいるダイヤルや建築士会の無料相談を使う
調査が要る症状か、どの専門家に頼めばよいかは、住まいるダイヤルに電話で相談できます。
住まいるダイヤルは、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターが運営する、国土交通大臣から指定を受けた住まいの相談窓口です。建築士の相談員が電話で答えてくれます。
- 電話番号 03-3556-5147
- 受付時間 10時〜17時(土日・祝日・年末年始を除く)
電話するときは、撮っておいた写真や測った床の傾き、親から聞いた経緯を手元に置いておくと、話が具体的になります。
住まいるダイヤルには、見積を比べるときに役立つサービスもあります。
| サービス | 内容 |
|---|---|
| リフォーム見積チェック | 契約前・工事前のリフォームの見積書(1〜2通)を送ると、建築士の相談員が内容を確認し、電話で助言してくれる。無料 |
| 専門家相談 | 各地の弁護士会で、弁護士と建築士に対面で相談できる。1時間で原則無料。リフォーム工事を頼む予定の人も利用できる |
見積チェックは、業者とすでにトラブルになっている場合や、解体工事、メンテナンスなどの見積は対象外です。使う前に条件を確かめておきましょう。
このほか、都道府県の建築士会や建築士事務所協会が、市区町村と組んで無料の住宅相談を開いていることがあります。
たとえば船橋市では、千葉県建築士会と千葉県建築士事務所協会の各船橋支部が、耐震診断や改修、リフォームの対面相談を無料で受けています。
ただし船橋市の対面相談は「現在住んでいる住宅」が対象で、こうした条件も地域ごとに違います。開催の有無と条件は、実家のある市区町村の住宅の窓口に問い合わせてみてください。
出典: 住まいるダイヤル「電話相談サービスのご案内」、住まいるダイヤル「リフォームの見積書に関する相談」、住まいるダイヤル「専門家相談」、船橋市「令和8年度建築住宅相談について」
実家がある市区町村の空き家相談窓口を使う
実家が遠方の空き家なら、実家のある市区町村の空き家相談窓口に相談できます。
あわせて知っておきたいのが、2023年12月の改正空家法でできた「空家等管理活用支援法人」です。
市区町村長が指定するNPO法人や一般社団法人などの団体で、法律では次のような仕事をすると定められています(同法23条・24条)。
- 空き家の所有者への情報の提供や相談
- 所有者から頼まれて、定期的に空き家の状態を確かめる
- 所有者から頼まれて、活用のための改修などを行う
指定のある地域は、まだ限られています。国土交通省の調査では、2025年3月末の時点で指定されていたのは95法人(64市町村)です。
実家のある市区町村が指定しているかは、市区町村の空き家の窓口で確かめてみてください。
地元の団体は、その地域の事情や使える制度、地元の相談先をよく知っているので、遠方に住む相続人にとって心強い相談相手になります。
出典: e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」、国土交通省 報道発表「令和5年改正空家法に基づく取組が広がる(令和7年3月31日時点調査)」
調査や工事を専門業者に頼むときの注意点
損をしないために大事なのは、相手を自分で選ぶこと、頼む順番、書面に残すことの3つです。
屋根、外壁、シロアリ、雨漏り。どの劣化も、最後に直してくれるのは専門業者です。
気をつけたいのは業者全般ではなく、突然訪ねてくる勧誘や、契約を急がせる頼み方です。
突然訪ねてくる無料点検はその場で受けない
突然訪ねてくる業者の無料点検は、点検の段階で断っておきましょう。
突然訪ねてきて無料で点検し、不安をあおって、その場で工事の契約を迫る手口は「点検商法」と呼ばれます。国民生活センターや自治体の消費生活センターが、繰り返し注意を呼びかけています。
よくある流れは次のとおりです。
- 「近所で工事をするのであいさつに来た」「屋根瓦がずれているので点検してあげる」などと訪ねてくる。市の委託業者を名乗った例もある
- 屋根・床下・外壁・シロアリなどを無料で点検する
- 「このままだと瓦が飛んで近所に迷惑がかかる」「床下がシロアリでぼろぼろ」などと不安をあおる
- 「今日契約すれば安くする」と、その場での契約を迫る
屋根の上や床下は、家族が自分で確かめにくい場所です。悪質な業者は、言われたことの真偽を家族が確かめられない点につけ込みます。
国民生活センターによると、屋根工事の点検商法の相談は、2018年度の923件から2022年度は2,885件に増えました。契約した人の8割超が60歳以上です。
親が一人で住む実家は、狙われやすい家といえます。
対処法
- 突然来た業者には、無料でも点検させない。点検させると、断りにくくなる
- その場で契約しない
- 本当に心配なら、自分で選んだ相手に改めて点検を頼む
契約してしまったら
訪問販売で契約した場合は、契約の書面を受け取った日から8日以内なら、クーリング・オフ(無条件の取り消し)ができます(特定商取引法9条)。
知っておくと心強いのが、この条文にある、工事がすでに始まっていても使える定めです。
- 業者は、すでに行った工事の代金を請求できない
- 受け取ったお金は、すぐに返さなければならない
- 工事で家の状態が変わっていれば、元に戻すよう無料で求められる
「もう工事を始めたから取り消せない」と言われても、うのみにせず、消費者ホットライン「188(いやや)」に電話してみてください。近くの消費生活センターにつながります。
親と決めておくこと
親が一人で住んでいるなら、「点検の人が来ても家に入れない」「その場で頼まない」「まず子どもに電話する」の3つを、ふだんから親子で決めておきましょう。
出典: 国民生活センター「屋根工事の点検商法のトラブルが増えています」、国民生活センター「『大雪で歪んだ』などと自宅の不具合を指摘して不安をあおる『点検商法』」、鳥取県「点検商法」チラシ、e-Gov法令検索「特定商取引に関する法律」第9条
火災保険で直せるという勧誘に乗らない
「火災保険を使えば、自己負担なしで直せます」「保険金の申請をサポートします」という勧誘は、その場で断っておきましょう。
国民生活センターは、2012年からこうした住宅修理のトラブルについて注意を呼びかけており、その後も相談は増え続けています。2020年度の相談件数は、2019年度の2倍以上になりました。
知っておきたいのは、火災保険が補償するのは、台風・雪・ひょうなどの自然災害や事故による損害だという点です。国民生活センターも、経年劣化によって生じた損害は支払いの対象にならないと説明しています。
古くなって傷んだだけの場所を「台風で壊れた」とうその理由で申請すると、保険会社から保険金の返還を求められたり、保険の契約を解除されたりするおそれがあります。詐欺罪に問われる可能性もあります。
業者が勧めたことでも、申請するのは契約者本人です。
国民生活センターに寄せられたトラブルには、次のようなものがあります。
- 申し込みのときに手数料の説明がなかった。保険金の40%を手数料とする例もある
- 解約を申し出たら、違約金や手数料を請求された
- 保険金が支払われたのに、工事が始まらない
- 「保険金の請求期限が迫っている」と急かされる
対処法
- その場で契約しない
- 保険の請求は、契約者本人が保険会社や代理店に直接相談する。申請を手伝う業者を通さなくても請求できる
本当に台風や大雪で壊れたのなら、保険の対象になる可能性があります。そのときは、業者を通さず、まず自分で保険会社に連絡してみてください。
出典: 国民生活センター「保険金で住宅修理ができると勧誘する事業者に注意!」、国民生活センター「『保険金を使って住宅を修理しませんか』がきっかけでトラブルに!」、広島市「火災保険の保険金で住宅を修理しませんか 火災保険を使った住宅の修理 ご注意を」
調査を頼む相手と工事を頼む相手を分ける
原因が分からない傷みは、工事を請け負わない建築士に先に調べてもらい、その報告書をもとに工事業者へ見積を頼みましょう。
調査と工事を同じ業者に頼むと、調査の結果と工事の受注が結びつきやすくなります。業者の良し悪しとは別に、工事で収入を得る業者にとって「工事は要りません」とは言いにくいからです。
使い分けは次のとおりです。「専門調査が必要な症状と依頼先」で挙げた頼み先の選び方と同じです。
| 状態 | 頼み方 |
|---|---|
| 原因が分からない、傷みが広い | 工事を請け負わない建築士の住宅診断を先に受け、その報告書を持って工事業者に見積を頼む |
| 原因がはっきりした単独の修理(割れた瓦の差し替えなど) | 直す専門業者に直接頼んでよい |
先に建築士の報告書があれば、どの業者にも同じ前提で見積を出してもらえるので比べやすく、必要のない工事も減らせます。
シロアリ防除業者の無料点検も、自分から選んで頼んだ相手なら役に立ちます。点検と見積を受けたら、その場で決めずに持ち帰って比べてみてください。
調査の範囲と報告書の形を先に決める
調査を頼む前に、どこまで見てもらうかと、報告書の形を書面で決めておきましょう。
同じ「調査」でも、どこまで見るかで、分かることが大きく変わります。
国の建物状況調査の方法でも、床下は点検口から顔や上半身を入れる程度が想定されており、家具で隠れた場所や点検口のない場所は「調査できない」扱いになります。
頼む前に、次の4つを書面(メールでもよい)で確かめておくと、あとで「そこは見ていない」と言われずに済みます。
- 床下・屋根裏は中に入って見るのか、点検口からのぞくだけか
- 雨漏りの散水調査などの追加の調査をするか、するなら料金はいくらか
- 報告書を写真付きの書面でもらえるか(口頭の説明だけで終わらないか)
- 報告書にどんな内容が書かれるか
報告書には、次の内容が入っていると役立ちます。
- 傷んでいる場所の写真と位置
- 急ぐ度合い(すぐ直す/数年のうちに直す/様子を見る)
- 考えられる原因
- さらに詳しい調査が要るか
遠方に住んでいて立ち会えず、鍵を預けて調査してもらう場合は、この取り決めと写真付きの報告書があれば、現地にいなくても家の状態を確かめられます。
報告書は、兄弟・姉妹で「直すか、どこまで直すか」を話し合うときにも、全員が同じ情報を見られる共通の材料になります。
見積と保証を書面で比べてから契約する
契約の前に、同じ条件の見積を2〜3社から取り、保証の中身を書面で比べておきましょう。
見積は同じ条件で2〜3社から
見積で大事なのは、条件をそろえることです。調査の報告書を全社に渡し、同じ範囲で見積を出してもらうと比べやすくなります。
- 「工事一式」とだけ書かれた見積は、数量・単価・工法・材料の内訳に分けてもらう
- 屋根なら、部分的な補修か、ふき替えか、今の屋根に新しい屋根を重ねる方法(カバー工法)かをそろえる
- シロアリなら、薬剤で家のまわりに防ぐ層をつくる方法か、毒えさを置く方法(ベイト工法)か、どこまで施工するのかをそろえる
契約の前に、住まいるダイヤルの「リフォーム見積チェック」で、見積の中身を建築士に見てもらうこともできます。
保証は書面で中身まで確かめる
保証は「あります」という言葉ではなく、書面で中身を確かめておきます。
シロアリ防除の保証期間は5年のことが多くなっています。日本しろあり対策協会が認定する薬剤の効果の期間が5年だからです。確かめたいのは、次の点です。
- 保証の期間
- 保証の範囲(再発したときに駆除し直すだけか、被害を受けた木材の補修費まで含むか)
- 上限の金額
- 定期点検の有無
日本しろあり対策協会も、どこまで責任を負うかは保証書の書き方しだいで、業者によって保証内容は違うと説明しています。
もう一つの落とし穴が、頼む相手です。リフォーム会社を通してシロアリ防除を頼むと、シロアリの業者はリフォーム会社の下請けになります。
協会の説明では、そのときシロアリ業者の保証書を施主に渡すかは、リフォーム会社の判断になります。保証書を誰が出し、自分の手元に届くのかを、契約前に確かめておきましょう。
雨漏りの修理なら、同じ場所から再び漏れたときに無料で直してもらえるか、その期間はいつまでかを書面で確かめておくと、再発しても慌てずに済みます。
応急処置と本工事を分ける
落ちそうな瓦を外す、屋根にブルーシートをかけるといった応急処置は、急ぐなら先に頼めます。
本格的な工事の契約は、見積と保証を比べてから決めましょう。急ぐのは応急処置だけで、本工事は落ち着いて選べます。
出典: 日本しろあり対策協会「保証は5年となっていますが、なぜなのですか。」、日本しろあり対策協会「シロアリQ&A 保証に関すること」、住まいるダイヤル「リフォームの見積書に関する相談」
まとめ:家族は異変を記録し、原因の判定は症状に合った専門家に任せる
雨漏りと構造の傷みは待つあいだにも進み、原因が分からないまま表面だけ直すと、かえって遠回りになります。症状がいくつも重なっているときは、工事を請け負わない建築士に先に建物全体を見てもらうと、直す順番を決められます。
次に実家へ行くときは、しみ・床の傾き・基礎のひびを写真と数字で残し、症状がいつからかを親に聞いておきましょう。この記録を飛ばすと、症状が進んでいるかを専門家が判断しにくくなり、突然訪ねてくる業者の説明を家族が確かめる材料もなくなります。
1981年5月以前に建築確認を受けた木造住宅なら、実家のある市区町村に無料の耐震診断の制度があるか、今年度の受付が続いているかを確かめてみてください。実家と相続の地図帳「つぐーる」では、古い実家の劣化の確かめ方や専門家への頼み方も含めて、相続や実家について悩むあなたに経験に基づいた情報を提供しています。

