実家の価格・評価額の違い|固定資産税・相続税・査定のどれを使うか

固定資産税の通知書に書いてある金額、相続の話で出てくる評価額、不動産会社の査定書の金額。同じ実家なのに、紙ごとに数字がまるで違う。「どれが本当の値段なのか」と戸惑う人は多いでしょう。

どの金額も、その用途では正しい数字です。実家には用途ごとに別の価格・評価額があり、決める人も目的も、いつ時点の金額かも違います。そのため、一つに揃うことのほうが珍しいといえます。

実家に付く価格・評価額は5種類あり、ずれる理由も決まっています。相続税がかかるか、登記の費用はいくらか、兄弟・姉妹とどう分けるか、売るか残すか。判断ごとに使う金額が違うので、手元の紙のどの欄を見ればよいかまで整理しました。

実家の価格・評価額の種類

同じ実家に複数の価格・評価額があるのは、用途ごとに「決める主体」「目的」「時点」が違うからです。

固定資産税のための金額、相続税のための金額、売るときの金額は、それぞれ別の人が別のルールで出しています。どれか一つが正しくてほかが間違っているという関係ではなく、用途ごとに別の数字が並んでいる状態です。

価格の種類決める主体目的評価時点手元にあるか
固定資産税評価額市町村(東京23区は都)固定資産税・都市計画税など3年ごとの基準年度の1月1日毎年届く納税通知書(課税明細書)にある
相続税評価額納税者が国税庁の路線価・倍率で計算相続税・贈与税相続開始日の年分の路線価(毎年1月1日時点を7月に公開)どの紙にもない。自分で計算する
公示価格・基準地価国交省の土地鑑定委員会・都道府県取引の指標・公的評価の基準公示価格は毎年1月1日、基準地価は7月1日国交省の不動産情報ライブラリで見る
査定価格不動産会社売却の見込み査定日依頼して取る
成約価格売主と買主の合意実際の取引契約日近隣の事例を調べる
鑑定評価額不動産鑑定士分割や申告の根拠依頼日費用を払って取る

固定資産税評価額は市町村が固定資産税のために決める

実家の所在する市町村(東京23区は東京都)が、固定資産税を課税するために決める金額です。

毎年春に届く納税通知書に付いている課税明細書に載っているので、手元にほぼ必ずある紙といえます。

決め方は市町村の自由ではなく、総務大臣が告示する「固定資産評価基準」に従います。土地・家屋とも3年に1回の「評価替え」で価格を見直し、間の2年は原則として据え置きます。

直近の評価替えは令和6年度で、令和7・8年度は据置、次の評価替えは令和9年度です。宅地は「地価公示価格等の7割を目途」に評価され、家屋は「再建築価格及び経年減点補正率等に応じて」算定されます。

課税明細書には「価格(評価額)」と「課税標準額」の2つの欄があります。ここで言う固定資産税評価額は「価格」のほうです。2つの欄の取り違えで損をする話は、最後の章「実家の価格・評価額で損をしないために知っておく事実」で扱います。

出典: 総務省 固定資産税の概要出典: 総務省 固定資産税の令和3年度評価替えへの対応

相続税評価額は路線価や倍率から納税者が計算する

相続税評価額は、どこかの紙に印刷されている金額ではなく、相続税や贈与税のために納税者(または税理士)が国税庁の基準で計算する金額です。

土地は、路線価が定められている地域なら「路線価×補正率×面積」の路線価方式、路線価がない地域なら「固定資産税評価額×倍率」の倍率方式で計算します。家屋は「固定資産税評価額に1.0を乗じて計算した金額」、つまり固定資産税評価額と同じ金額です。

分譲マンションは敷地利用権(土地部分)と区分所有権(家屋部分)の合計で、令和6年1月1日以後に相続した場合は区分所有補正率を乗じることがあります。

路線価は毎年1月1日を評価時点として、「地価公示価格等を基にした価格(時価)の80%程度を目途」に評価され、7月1日に国税庁ホームページで公開されます。実家を人に貸している場合は、権利関係に応じて評価額が調整されます。

出典: 国税庁 タックスアンサー No.4602 土地家屋の評価出典: 国税庁 タックスアンサー No.4667 居住用の区分所有財産の評価出典: 国税庁 札幌国税局 令和2年分の路線価等について

公示価格・基準地価は国と都道府県が示す土地の指標

公示価格は、国土交通省の土地鑑定委員会が毎年1回、全国の「標準地」について1月1日時点の正常な価格を公示する金額です。

一般の土地取引の指標になるほか、「土地の相続税評価及び固定資産税評価については、公示価格を基準として、その一定割合程度を評価割合として評価が行われる」とされ、公的な評価額のもとになっています。公表は例年3月で、令和8年は3月18日でした。

基準地価(都道府県地価調査)は、都道府県が7月1日時点で調べる同じ役割の価格で、例年9月に公表されます。令和8年は9月16日でした。

注意したいのは、標準地の価格が建物や借地権などのないものとして、つまり更地として判定される点です。近くの標準地の単価は実家の土地の目安になりますが、実家そのものの値段とは別物と考えておきましょう。

出典: 国土交通省 地価公示制度の概要出典: 国土交通省 令和8年地価公示を公表しました出典: 国土交通省 令和8年都道府県地価調査を公表しました

査定価格・成約価格は不動産会社の見込みと実際の取引

査定価格は不動産会社が「この金額なら売れるだろう」と見込む金額で、成約価格は実際に買主と合意して契約した金額です。

査定書に載るのは前者だけで、後者は売れて初めて決まります。

査定は、不動産会社に売却を任せる媒介契約の前提として出される見込みです。宅地建物取引業法では、媒介契約を結んだときに交付する書面に「当該宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額」を記載することが定められています。

成約価格は、国土交通省の不動産情報ライブラリで、近隣の「不動産価格(取引価格・成約価格)情報」として事例を見られます。

出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法 第34条の2第1項第2号出典: 国土交通省 不動産情報ライブラリ

鑑定評価額は不動産鑑定士が判定する価格

鑑定評価額は、国家資格を持つ不動産鑑定士が「不動産の鑑定評価に関する法律」に基づき、不動産の経済価値を判定して価額に表した金額です。

公的な評価額や査定と違い、費用を払って依頼して取ります。

相続で使う場面は限られます。兄弟・姉妹の間で実家をいくらと見るかの合意ができないとき、または路線価などの通達による評価が実態と離れていて申告の根拠が要るときです。費用の相場を示す公的な資料は見当たらないため、金額は依頼先の見積もりで確かめる形になります。

出典: e-Gov法令検索 不動産の鑑定評価に関する法律 第2条第1項・第3条

実家の価格・評価額がずれる理由

金額がずれる原因は、大きく2つの系統に分かれます。

ひとつは公的な評価額の作られ方で、税のための評価額はわざと低めに作られています。もうひとつは市場価格の決まり方で、売買の金額は需要と交渉だけで決まり、公的な評価額に寄せる仕組みを欠いています。

これに「評価の時点のずれ」「建物の計算方法の違い」「査定の前提の違い」の3つを足した、合計5つが原因です。先に言い切っておくと、「評価額が低い=実家が安い」でも「査定が高い=実家が高い」でもなく、どちらも別の目的で出た数字です。

公的な評価額は公示価格の7割・8割を目途に低く作られる

公的な評価額には、公示価格を基準にした序列があります。

おおまかに言うと「公示価格 > 路線価(相続税評価額) > 固定資産税評価額」の順です。これは偶然ではなく、意図してそう作られています。

根拠は3つあります。宅地の固定資産税評価は「地価公示価格等の7割を目途」に行われます。路線価は「地価公示価格等を基にした価格(時価)の80%程度を目途」に評価されます。

そして国土交通省は、相続税評価と固定資産税評価は「公示価格を基準として、その一定割合程度を評価割合として評価が行われる」と説明しています。

価格公示価格に対する目途決める主体
公示価格100%(基準)国交省 土地鑑定委員会
路線価(相続税評価額の基礎)80%程度国税庁
固定資産税評価額(宅地)7割市町村

ここで押さえておきたいのは、この7割・8割が「公示価格に対する目途」であって、「あなたの実家の市場価格に対する比率」とは別の話だという点です。公示価格と実際の取引価格がずれていれば、市場価格との間で7割・8割の関係は崩れます。

さらに路線価方式では、奥行や形状などに応じた補正率で土地ごとに個別に補正されるので、同じ路線価でも評価額は変わります。

出典: 総務省 固定資産税の概要出典: 国税庁 札幌国税局 令和2年分の路線価等について出典: 国土交通省 地価公示制度の概要出典: 国税庁 タックスアンサー No.4602 土地家屋の評価

市場の価格は需要と交渉で決まり公的な評価額と連動しない

査定価格や成約価格は、その土地と建物を欲しい人がどれだけいるか、個別の事情、そして売主と買主の交渉で決まります。

公示価格に対して何割という作られ方とは無縁の金額です。

そのため、公的な評価額を上回る金額で取引される実家もあれば、買い手の少ない地域では評価額を下回る実家もあります。どの地域でどれくらい上回る・下回るかは一律には言えず、「公的な評価額と連動しない地域がある」というところまでが確かなことです。

経験者からは「土地は評価額より高く売れたのに、建物は値段が付かなかった」という声をよく聞きます。土地と建物で価格の決まり方がまったく違うためで、建物の話は「建物の評価額は再建築価格から計算され中古市場の価格と別物」で取り上げます。

評価の時点が1月1日基準や3年据置で今とずれる

金額ごとに「いつの価格か」が違うことも、ずれの大きな原因です。

価格価格の時点公開・適用
固定資産税評価額基準年度(直近は令和6年度)の1月1日令和8年度まで据置。次の評価替えは令和9年度
路線価毎年1月1日その年の7月1日に公開
公示価格毎年1月1日例年3月に公表
査定価格・成約価格査定日・契約日今の金額

地価が上がっている局面では、3年前に決まった固定資産税評価額と今の相場の差はどんどん開きます。下がっている局面では逆に、評価額のほうが相場より高く見えることもあります。

経験者からは「3年前に決まった評価額と、今の相場がまったく合っていなかった」という声も聞きます。なお、据置年度でも地価が下落して課税上著しく均衡を失すると認められる場合は、土地の評価額を下落修正できる仕組みがあります。

出典: 総務省 固定資産税の概要出典: 国税庁 札幌国税局 令和2年分の路線価等について出典: 国土交通省 令和8年地価公示を公表しました

建物の評価額は再建築価格から計算され中古市場の価格と別物

家屋の固定資産税評価額は、「再建築価格×経年減点補正率」で計算します。

再建築価格とは「評価対象家屋と同一の家屋を、評価時点においてその場所に新築する場合に必要とされる建築費」、経年減点補正率とは「家屋の建築後の年数の経過に応じて生じる減価を基礎として定めた率」です。

つまり「同じ家を今建てたらいくらか」を出発点に、年数に応じて減らす計算です。相続税評価額はその1.0倍なので同じ金額になります。

一方、中古住宅の市場価格は「その家に住みたい人がいくら払うか」で決まります。ここに両方向のずれが生まれます。

家の状態評価額の見え方市場価格の見え方
築年数の古い家一定の年数を過ぎると下げ止まり、0にならない建物価値ゼロ、または解体費分のマイナスになることがある
築年数の浅い家建築費や住宅ローン残高より低いのが普通建築費に近い金額で売れることもある

築古の家で評価額が0にならない「2割で止まる仕組み」は、「実家の価格・評価額で損をしないために知っておく事実」の章で詳しく扱います。

出典: 総務省 固定資産税の概要出典: 国税庁 タックスアンサー No.4602 土地家屋の評価

査定価格は会社ごとに根拠が違い幅が出る

査定価格は、不動産会社ごとに参照する成約事例や、実家との違い(築年・距離・面積・道路付け)をどう補正するかの前提が違います。

そのため、同じ実家でも複数社に頼むと金額に幅が出ることがあります。

査定額の高さと、売れる金額は別の数字です。根拠を丁寧に出す会社もあれば、根拠が薄いまま高めの金額を出す会社もあるため、金額の高低だけで会社を選ぶと判断を誤ります。

幅が出るのは普通のことです。大切なのは「どの金額が正しいか」より、「各社がどの事例をもとに、どう補正したか」を比べることで、比べるのは依頼した側の仕事になります。

今の判断ごとの価格・評価額の選び方

判断ごとに、制度が前提にしている金額は決まっています。

相続税なら相続税評価額、相続登記の費用なら固定資産税評価額の「価格」、固定資産税の負担なら「課税標準額」です。制度の前提がない判断、つまり兄弟・姉妹との分け方と、売るか残すかの判断は、相続人の合意と市場の事例で金額を揃えます。

今の判断使う価格・評価額その理由見る紙・サイト
相続税がかかるかの見通し相続税評価額相続税は相続税評価額で課される国税庁の路線価図・評価倍率表、課税明細書(家屋)
相続登記の登録免許税固定資産税評価額の「価格」税率を掛ける元が「価格」と決まっている課税明細書の「価格」欄、固定資産評価証明書
実家を持ち続ける負担課税標準額(と税額欄)固定資産税は課税標準額×税率で決まる課税明細書の「課税標準額」「税額」欄
兄弟・姉妹との分け方相続人の合意で選ぶ(時価寄りで揃える)法律で一つに決まっていない全員が同じ基準を見る
売るか残すか成約事例と複数の査定の中央値査定の最高値は売れる保証がない不動産情報ライブラリ、複数社の査定書

相続税がかかるかの見通しには相続税評価額を使う

相続税がかかるかは、相続税評価額の合計(実家以外の預金などの財産も含みます)を、基礎控除額「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と比べて見通します。

比べる相手は査定額ではなく、相続税評価額です。土地は路線価か倍率で、家屋は固定資産税評価額×1.0で、分譲マンションは区分所有補正率込みで計算します。

経験者の声:査定額ではなく評価額で見通す

「不動産会社の査定額で計算して相続税を心配していたが、路線価で評価額を出したら基礎控除に収まっていた」(父の実家を相続した方)

路線価図を開く前に、ざっくりの目安が欲しいときの考え方があります。固定資産税評価額の「価格」は公示価格の7割を目途、路線価は公示価格の8割程度を目途なので、土地の「価格」を0.7で割って0.8を掛けると、路線価ベースの金額に近い数字になります。

手順モデルケースの仮定値計算
土地の固定資産税評価額(価格)2,100万円課税明細書の「価格」欄の数字を入れる
公示価格相当に戻す2,100万円÷0.73,000万円
路線価相当にする3,000万円×0.82,400万円

ただしこれは、公示価格に対する目途から導いた概算にすぎず、実際の路線価は土地ごとに違い、補正率も掛かります。手元の「価格」欄の数字を1行目に入れ替えれば自分の実家の概算になりますが、必ず路線価図で確かめる前提の数字と考えておきましょう。税額の計算手順や特例の細かい条件は、ここでは省きます。

出典: 国税庁 タックスアンサー No.4152 相続税の計算出典: 国税庁 タックスアンサー No.4602 土地家屋の評価出典: 国税庁 タックスアンサー No.4667 居住用の区分所有財産の評価

相続登記の登録免許税は固定資産税評価額の「価格」で決まる

実家を相続人の名義に変える相続登記には登録免許税がかかり、計算は「固定資産税評価額の合計(1,000円未満切捨て)×1000分の4(100円未満切捨て)」です。

ここで使うのは課税明細書の「価格」または「評価額」であって、「課税標準額」とは別の欄です。法務局も「評価額は『固定資産税課税標準額』とは異なります」と注意しています。亡くなった方が共有者だった場合は、評価額に持分を掛けます。

手順モデルケースの仮定値計算
土地の価格8,765,432円課税明細書の「価格」欄の数字を入れる
家屋の価格2,345,678円同上
合計11,111,110円8,765,432+2,345,678
1,000円未満切捨て(課税価格)11,111,000円合計から最後に1回だけ切り捨てる
×1000分の444,444円11,111,000×0.004
100円未満切捨て(登録免許税)44,400円計算額が1,000円未満なら1,000円

なお、不動産の価額が100万円以下の土地については、令和9年(2027年)3月31日までの相続による所有権移転登記の登録免許税が免税になります。地方の実家では土地がこの範囲に入ることがあるので、課税明細書の「価格」を確かめてみてください。

出典: 前橋地方法務局 登録免許税 計算のポイント出典: 法務局 相続登記の登録免許税の免税措置について

実家を持ち続ける負担は課税標準額から固定資産税を見る

固定資産税は「課税標準額×税率(標準税率1.4%)」で計算します。

住宅が建っている土地(住宅用地)には課税標準の特例があり、200㎡以下の部分(小規模住宅用地)は評価額の6分の1、200㎡を超える部分(一般住宅用地)は3分の1まで課税標準額が軽減されます。

そのため、実家を持ち続ける負担を見るときは「価格」ではなく「課税標準額」と「税額」の欄を見ましょう。「価格」に1.4%を掛けると、土地については実際の何倍もの税額を恐れることになります。

項目モデルケースの仮定値計算
土地の価格(180㎡、住宅用地)2,100万円課税明細書の「価格」欄の数字を入れる
土地の課税標準額350万円2,100万円×6分の1
家屋の価格=課税標準額300万円家屋に住宅用地の特例はない
固定資産税(年額)9万1,000円(350万円+300万円)×1.4%

※モデルケースでは負担調整措置と都市計画税を省いた仮の計算で、税率も標準税率で置いています。実際の金額は課税明細書の税額欄をそのまま使えます。

空き家のまま実家を持つ年間負担は、毎年の通知書の税額がそのまま答えです。住宅用地の特例が外れる条件は別の記事で扱う範囲なので、ここでは省きます。

出典: 総務省 固定資産税の概要

兄弟・姉妹との分け方は相続人の合意で基準を選び時価寄りで揃える

遺産分割で実家をいくらと見るかは法律で一つに決まっておらず、相続人全員の合意で基準を選びます。

全員が合意すれば、固定資産税評価額でも、相続税評価額でも、査定や事例による時価でもよいというのが一般的な扱いです。合意できなければ、不動産鑑定士の鑑定評価によることになります。

ここで相続人側の損得をはっきり書いておきます。実家を取る人は低い評価額(固定資産税評価額など)で計算したほうが得で、現金をもらう人は高い価格(時価)で計算したほうが得です。

一人が実家を取り、他の人に現金(代償金)を払う代償分割では、時価寄りの金額に揃えないと、現金を受け取る側が損をします。

経験者の声:同じ基準で見ないと代償金で揉める

「弟は固定資産税評価額で、自分は査定額で実家を考えていて、代償金の額でまったく話が噛み合わなかった」(実家を弟が引き継ぎ、代償金を受け取った方)

遺留分(一定の相続人に保障される最低限の取り分)については、民法が「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額」を基準にすると定めています。相続開始時の価額なので、評価額ではなく時価の考え方です。

出典: e-Gov法令検索 民法 第1043条第1項

売るか残すかの判断は成約事例と複数の査定で見る

「残す負担(固定資産税)」と比べる売却側の金額は、査定価格ではなく、近隣の成約事例と複数社の査定の中央値です。

国土交通省の不動産情報ライブラリで見られる近隣の成約・取引事例と、複数社の査定書を並べて使います。

査定の最高値で判断すると、残す負担との比較を誤ります。最高値は「その金額で売れる保証」ではなく「その会社の見込み」だからです。

経験者の声:最高値ではなく事例で前提が変わった

「一番高い査定額で『売れば十分な現金になる』と考えていたが、同じ町の成約事例を見たら、残すか売るかの前提そのものが変わった」(親の実家の処分を兄弟・姉妹で話し合った方)

出典: 国土交通省 不動産情報ライブラリ

実家の価格・評価額の調べ方

調べる順番は「手元の課税明細書 → 国税庁 → 国交省 → 不動産会社 → 不動産鑑定士」で、前の3つは無料で自分で当たれます。

概算で十分な段階と、正確さが要る段階を分けて考えると無駄が減ります。相続税がかかるかの見通しや、兄弟・姉妹との最初の話し合いは、前の3つの概算で十分です。相続税の申告や代償金の確定のように正確さが要る段階では、税理士の確認や鑑定評価が必要になります。

段階調べる先費用分かること
1手元の課税明細書・固定資産評価証明書無料(証明書は手数料)固定資産税評価額(価格)・課税標準額・税額
2国税庁 路線価図・評価倍率表無料相続税評価額の概算
3国交省 不動産情報ライブラリ無料公示価格・基準地価・近隣の成約事例
4不動産会社無料査定価格(根拠付きで)
5不動産鑑定士有料鑑定評価額

固定資産税評価額は課税明細書の「価格」欄か評価証明書で確かめる

固定資産税評価額は、毎年春に届く納税通知書に付いている課税明細書の「価格(評価額)」の欄で分かります。

土地と家屋が別の行になっていて、それぞれに「価格」と「課税標準額」が並んでいます。評価額は「価格」の欄です。

通知書が見当たらない、または実家が親名義のままで自分には届かない場合は、実家の所在する市区町村で固定資産評価証明書や名寄帳(その市区町村にある同じ所有者の不動産の一覧)を取れます。相続人は、戸籍などで相続人であることを示せば取得できるのが一般的ですが、必要書類は自治体ごとに違うので、窓口のページで確認しておきましょう。

経験者からは「親が通知書を捨てていて、金額が分からず評価証明書を取りに行った」という声も聞きます。親が存命のうちに、通知書の保管場所を聞いておくだけでも手間が減ります。

出典: 前橋地方法務局 登録免許税 計算のポイント

相続税評価額は国税庁の路線価図と評価倍率表から計算する

相続税評価額の概算は、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で相続が起きた年分を選び、実家の所在地を開くと計算できます。

実家の土地見る場所概算の計算
路線価が付いている地域路線価図。道路に千円単位の数字が書いてある路線価×面積(㎡)。形状に応じた補正率が掛かる
路線価がない地域評価倍率表。地域ごとに倍率が書いてある固定資産税評価額×倍率
家屋課税明細書固定資産税評価額そのもの
分譲マンション国税庁の区分所有補正率の計算明細書敷地利用権・区分所有権それぞれ×区分所有補正率

面積は登記事項証明書か、課税明細書の地積の欄で分かります。路線価図の数字は1㎡あたりの千円単位なので、「200」なら20万円/㎡です。

概算は自分でできますが、補正率の当てはめや申告額の確定は税理士の確認が要る範囲と分けて考えておきましょう。

出典: 国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表出典: 国税庁 タックスアンサー No.4602 土地家屋の評価出典: 国税庁 タックスアンサー No.4667 居住用の区分所有財産の評価

公示価格と成約事例は国交省の不動産情報ライブラリで調べる

国土交通省の不動産情報ライブラリでは、「地価公示・都道府県地価調査」で近くの標準地の㎡単価を、「不動産価格(取引価格・成約価格)情報」で近隣の取引事例を見られます。

事例は、同じ町丁・近い築年・近い面積帯で絞ると、実家の相場感になります。条件が違う事例を混ぜると、高いほうにも低いほうにも引っ張られます。

注意点は、標準地の単価×面積が「土地だけの目安」であって、実家の値段とは別物という点です。標準地は更地として評価されているので、建物の状態や道路付けの違いは反映されず、実家ごとの事情は別に見る必要があります。

経験者からは「同じ町の成約事例を見たら、査定より低い金額で売れていた」という声も聞きます。査定書を受け取る前に事例を見ておくと、査定の数字を落ち着いて読めます。

出典: 国土交通省 不動産情報ライブラリ出典: 国土交通省 地価公示制度の概要

査定価格は複数の不動産会社から根拠付きで取る

査定は複数社に頼み、査定書に根拠を付けてもらいましょう。

査定には、資料だけで出す机上査定と、実際に実家を見て出す訪問査定があり、机上査定は早いぶん粗く、訪問査定は建物の状態や道路付けまで見るぶん正確です。

依頼するときは、査定書に「参照した成約事例」と「補正の内訳(築年・距離・面積などをどう加減したか)」を付けてもらうように頼んでみてください。根拠が付いていれば、会社ごとに幅が出る理由が分かり、比べられます。

売る予定が未定でも、金額を知るために頼めます。経験者からは「『相続の話し合いのために金額を知りたいだけ』と目的を伝えたら、その後の営業が続かなかった」という声も聞きます。根拠の提示が法律でどう決められているかは、「実家の価格・評価額で損をしないために知っておく事実」の章で扱います。

鑑定評価額は不動産鑑定士に依頼して取る

鑑定評価は不動産鑑定士に依頼して取る評価で、費用がかかるぶん使う場面は限られます。

兄弟・姉妹の間で実家の評価について合意ができないときと、相続税の申告で路線価などの通達による評価が実態と離れていると考えるときです。

分割のために取る場合は、費用を相続人で分担する例もあります。相場の金額を示す公的な資料は見当たらないため、依頼前に見積もりを取って確かめましょう。

出典: e-Gov法令検索 不動産の鑑定評価に関する法律 第2条第1項・第3条

実家の価格・評価額で損をしないために知っておく事実

実家の金額で損をする原因は、だいたい5つに絞れます。

紙の欄の読み違え、査定の鵜呑み、評価額を変えられないものだと思い込むこと、古い常識のまま計算すること、そして評価額と市場価値が逆転している実家に気づかないことです。

相続人側には、査定の根拠を求める権利と、評価額を争う手続きがあります。どちらも制度に書いてある事実で、知っているだけで使えます。

課税標準額や土地の固定資産税評価額をそのまま使う取り違え

取り違えには2つの類型があります。

1つめは、課税明細書の「課税標準額」と「価格」の取り違えです。「課税標準額」を評価額だと思うと、住宅用地は6分の1や3分の1に軽減された数字なので、登録免許税の見積もりも相続税の見通しも大きく過小になります。

逆に「価格」を税額の基礎だと思うと、固定資産税を実際の何倍にも恐れることになります。法務局も「評価額は『固定資産税課税標準額』とは異なります」と注意しています。

欄何の金額か使う判断
価格(評価額)市町村が決めた固定資産税評価額相続登記の登録免許税、相続税評価額の計算(家屋・倍率地域の土地)
課税標準額特例や負担調整で軽減した後の、税率を掛ける元固定資産税の負担の確認

2つめは、土地の固定資産税評価額をそのまま相続税評価額だと思う取り違えです。路線価が付いている地域なら路線価で計算し直す必要があり、倍率地域なら倍率を掛けます。固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になるのは家屋だけです。

経験者の声:課税標準額で見積もると登記費用が合わない

「課税標準額で登録免許税を見積もって法務局に行ったら、倍近い金額を言われた」(実家の相続登記を自分で申請した方)

出典: 前橋地方法務局 登録免許税 計算のポイント出典: 国税庁 タックスアンサー No.4602 土地家屋の評価

査定価格の根拠は宅建業法で提示が義務づけられている

宅地建物取引業法は、不動産会社が媒介契約書に記載する売買すべき価額や評価額について、「前項第二号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない」と定めています。

つまり、査定価格の根拠を聞くことは、お願いではなく法律上当然の手続きです。聞く中身は、参照した成約事例の日付・実家からの距離・築年と、そこからどう補正して査定額にしたかの内訳です。根拠が揃えば、複数社の査定を最高値ではなく中央値で判断できます。

根拠をきちんと示す会社は、売るときにも買主への説明が通りやすい会社です。金額の高さより、根拠の出し方で会社を選ぶと、高めの査定に引っ張られる失敗を避けられます。

経験者の声:最高値の査定で任せた結果

「一番高い査定を出した会社に任せたら、半年たっても売れずに値下げになった。あとで聞いたら、根拠の事例はかなり条件の良い物件だった」(母の実家を売却した方)

出典: e-Gov法令検索 宅地建物取引業法 第34条の2第2項

固定資産税評価額の誤りは納税通知書から3か月以内に審査申出できる

固定資産税評価額は市町村が決めますが、人の手で登録している以上、誤りはありえます。

地目(宅地か雑種地かなど)、面積、家屋の構造や床面積、住宅用地の特例の適用漏れなどです。

納税者には、評価額を争う手続きがあります。固定資産課税台帳に登録された価格に不服があるときは、原則として「公示の日から納税通知書の交付を受けた日後三月を経過する日まで」の間に、文書で固定資産評価審査委員会に審査の申出ができます。

また、毎年4月1日から、4月20日または当該年度の最初の納期限の日のいずれか遅い日までの間、市町村の指定する場所で縦覧帳簿を見て、同じ市町村内の他の土地や家屋の価格と比べられます。自分の実家だけ周りより高く評価されていないかを確かめる機会です。

手続きいつ何ができるか
縦覧毎年4月1日〜4月20日または最初の納期限のいずれか遅い日同じ市町村内の他の土地・家屋の価格と比べる
審査の申出納税通知書の交付を受けた日後3か月まで固定資産評価審査委員会に価格の不服を申し出る

注意したいのは、審査の申出の対象が「価格」に限られる点です。税額の計算や特例の適用漏れの誤りは別の手続き(市町村への申し出や審査請求)になるので、自治体に確認しておきましょう。また、評価替えの年度(次は令和9年度)は価格が見直される機会なので、その年の通知書は特に丁寧に見る価値があります。

経験者からは「親の代から住宅用地の特例が付いておらず、申し出て直してもらった」という声も聞きます。通知書の「課税標準額」が「価格」の6分の1や3分の1になっていなければ、特例の適用を疑う目安になります。

出典: e-Gov法令検索 地方税法 第416条第1項・第432条第1項出典: 総務省 固定資産税の概要

築古の家屋は評価額が再建築価格の2割で止まり市場価値と離れる

家屋の固定資産税評価額は再建築価格×経年減点補正率で計算しますが、この経年減点補正率には下限があります。

「この『経年減点補正率』は0.2が限度となっており、一定年数を経過した場合にはすべて0.2に据え置くこととされています」と自治体が説明しているとおり、一定の年数を過ぎた家屋は再建築価格の2割が評価額の下限になります。

相続税評価額も家屋はその1.0倍なので、同じ金額が付きます。

項目モデルケースの仮定値計算
再建築価格1,500万円同じ家を今その場所に建てる建築費(仮の値)
経年減点補正率(下限)0.2一定年数経過後は0.2に据置
家屋の評価額300万円1,500万円×0.2

再建築価格は市町村が評価基準で算定する金額で、課税明細書には結果の「価格」だけが載ります。実額は課税明細書の家屋の「価格」欄で確かめられます。

一方、市場では築古の家に建物価値がゼロ、場合によっては解体費分のマイナスが付くこともあります。「評価額が付いている=価値がある」ではありません。登録免許税や固定資産税はこの300万円を基礎に課されますが、売るときにこの300万円が手に入るわけではない、という二重の見方が必要です。

経験者の声:評価額と解体見積もりの逆転

「築年数の古い実家に評価額が付いていたので資産だと思っていたが、解体の見積もりを取ったら評価額に近い金額が出てきて、むしろ負担だと気づいた」(父の実家を相続した方)

なお、家屋の評価基準は令和8年6月26日付の総務省告示第239号で改正され、改正箇所は令和9年度分の固定資産税から適用されます。令和9年度の通知書は、家屋の評価額が変わっていないか見直しておきましょう。

出典: 総務省 固定資産税の概要出典: 秋田市 固定資産税FAQ 築35年以上の家に固定資産税がかかるのはなぜか出典: 国税庁 タックスアンサー No.4602 土地家屋の評価

分譲マンションは2024年以降の相続から区分所有補正率で評価額が上がりうる

令和6年(2024年)1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した分譲マンション(居住用の区分所有財産)は、区分所有権(家屋部分)と敷地利用権(土地部分)のそれぞれに「区分所有補正率」を乗じて評価します。

令和5年12月31日以前の相続では、この補正はなく、家屋は固定資産税評価額×1.0、土地は路線価や倍率で計算した敷地全体の価額に敷地権の割合を掛けた金額のままでした。

計算の流れは2段階です。まず「評価乖離率」を、築年数(×△0.033)、総階数指数(総階数÷33で1を超える場合は1、×0.239)、所在階(×0.018)、敷地持分狭小度(敷地利用権の面積÷専有部分の床面積、×△1.195)の4つと定数3.220から出します。

次に評価水準(=1÷評価乖離率)を出し、評価水準に応じて補正率が決まります。

評価水準区分所有補正率評価額の動き
0.6未満評価乖離率×0.6上がる
0.6以上1以下補正なし変わらない
1超評価乖離率下がる

式の中身を見ると、築年数が浅いほど、総階数が多いほど、所在階が高いほど、敷地持分が小さいほど評価乖離率が大きくなります。つまり高層階・築浅ほど評価額が上がりやすい仕組みです。

項目モデルケースの仮定値計算
築年数10年10×△0.033=△0.330
総階数指数15階÷33=0.45450.4545×0.239≒0.1086
所在階12階12×0.018=0.216
敷地持分狭小度0.250.25×△1.195≒△0.2988
評価乖離率約2.916△0.330+0.1086+0.216-0.2988+3.220
評価水準約0.3431÷2.916
区分所有補正率約1.752.916×0.6(評価水準0.6未満)

※築年数・総階数・所在階は登記事項証明書で、敷地持分狭小度は敷地の面積×敷地権の割合÷専有部分の床面積で、自分のマンションの数字に置き換えられます。端数処理は国税庁の計算明細書の手順によるため、この表は概算です。この例では、補正前の評価額の約1.75倍になります。

総階数が2階以下の建物や、区分建物の登記がされていない一棟所有の賃貸マンションなどは対象外です。「マンションは評価額が時価よりずっと低い」という以前の常識は、2024年以降の相続には通用しません。経験者からは「昔の記事の計算で申告額を見積もっていて、実際の評価額との差に驚いた」という声も聞きます。

出典: 国税庁 タックスアンサー No.4667 居住用の区分所有財産の評価出典: 国税庁 タックスアンサー No.4602 土地家屋の評価

公的な評価額が市場価格を上回る実家もある

買い手のつかない地域では、公的な評価額のほうが市場価格より高い実家があります。

相続税は評価額で課され、相続登記の登録免許税も評価額で決まるのに、売ろうとしても評価額では売れない、という状態です。市場価格が公示価格を下回る地域があること自体は、「市場の価格は需要と交渉で決まり公的な評価額と連動しない」で書いたとおり、「連動しない地域がある」というところまでが裏づけのある話です。

相続税や贈与税で土地の価額は「時価により評価する」のが原則で、路線価はその計算の便宜として公開されています。路線価による評価額が時価を明らかに上回るときは、鑑定評価額で相続税を申告するという選択肢があります。ただし、それが認められるかは個別の判断で、税理士の確認が必要です。

ここで混同を防いでおきます。財産評価基本通達の6項(総則6項)は、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」という規定です。

この規定を使うのは国税側で、納税者が「評価額が高すぎるから」と選べる手続きとは別の仕組みです。鑑定評価で申告する場合も、その鑑定が時価として認められるかは、個別の事情次第です。

評価額が市場価格を上回る実家を相続する場合、持ち続ける負担(固定資産税)と相続の費用(登録免許税)は評価額で決まるのに、手放すときの金額はそれより低い、という前提で判断することになります。この判断自体は「売るか残すかの判断は成約事例と複数の査定で見る」の考え方で行えます。

出典: 国税庁 札幌国税局 令和2年分の路線価等について出典: 国税庁 税務大学校論叢 評価通達の定めによらない土地の評価について

まとめ:実家の金額は判断ごとに使う欄が決まっている

実家の価格・評価額は、どれか一つが本当の値段なのではなく、判断ごとに使う数字が決まっています。相続税なら相続税評価額、相続登記の費用なら課税明細書の「価格」、持ち続ける負担なら「課税標準額」、分け方と売るか残すかの判断なら時価寄りの金額です。公的な評価額は公示価格の7割・8割を目途に低く作られ、市場の価格は需要と交渉で決まるので、紙ごとに数字が違うのは仕組みどおりの結果です。

次の一歩は、手元の課税明細書を開いて、土地と家屋それぞれの「価格」と「課税標準額」の2つの欄を書き出すことです。この2つを取り違えたまま進むと、登録免許税の見積もりや相続税の見通しが大きく外れ、兄弟・姉妹との話し合いも噛み合わないまま代償金の額で揉めることになります。

欄を書き出したら、国税庁の路線価図で相続税評価額の概算を出し、不動産情報ライブラリで近隣の成約事例を見てみてください。相続登記の免税や分譲マンションの区分所有補正率が自分の実家に当たるかも、同じ流れで確かめられます。実家と相続の地図帳「つぐーる」では、固定資産税評価額・相続税評価額・査定価格の違いと判断ごとの使い分けも含めて、相続や実家について悩むあなたに経験に基づいた情報を提供しています。