遠方の実家に対応するための体制づくり|行かずに進める手続きと頼める相手

遠くに住む親の家のことで、帰省のたびに宿題が増えていませんか。

実家の対応のうち現地でしかできない作業は5つほどで、名義の確認も戸籍の収集も金融機関の手続きも、自宅のパソコンと郵送で進められます。

現地確認・鍵の管理・代理対応・オンライン手続きの4つを誰が担うか決める手順を、頼める相手と費用、亡くなった親宛の郵便が転送されないといった落とし穴まで含めてまとめました。

遠方の実家に対応する体制の全体像

実家が遠くても、現地でしかできない作業はごく一部で、残りは自宅のパソコンと電話、郵送で進められます。

「行かないと何も進まない」と思い込んでいませんか。やることを「誰が担うか」で分け、自分が行くのは本当に必要な回だけに絞るのが、遠方のオーナーの基本の形です。

体制を分ける4つの役割

遠方の実家に対応する体制は、次の4つの役割に分けると整理できます。

役割中身担う人の例
現地確認外観・郵便受け・雑草・室内の様子を見て、異変を知らせる近所の人、親戚、管理サービス、見守り機器
鍵の管理誰が鍵を持ち、どうやって業者を入れるかを決める自分(台帳の管理者)、キーボックス、スマートロック
代理対応役所や契約の場で、自分の代わりに動く親族、士業、不動産会社
オンライン手続き名義の確認・戸籍・金融機関・税の手続きを自宅から進める自分

この4つは、どれか1つが欠けると他も止まります。鍵がなければ管理業者も内見も入れず、名義が分からなければ代理も士業も動きようがありません。

逆に言えば、4つそれぞれに「誰が」を当てはめた時点で、体制はほぼできあがります。

ポイントは、全部を自分一人で抱えないことです。「現地の目」は近所や業者に、「書類の手」は士業や親族に預け、自分は「判断する人」に回りましょう。

士業や管理業者のサイトは自分たちの業務から説明を始めがちですが、先に決めるべきは「家が放置状態にならない仕組み」で、相続手続きはその後に回せます。

現地に行かないと進まない作業

本当に現地でしかできない作業は、次の5つに絞られます。

  • 残置物(家財・衣類・書類)の分別
  • 建物の状態の実地把握
  • 隣地との境界の立会い
  • 貸金庫の開扉
  • 重要書類の回収

何を残して何を捨てるかは、写真だけでは判断に迷います。雨漏り・床の傾き・白アリの跡も、現地で歩いて初めて分かります。

境界の立会いは、売却や測量の場面で本人か代理人の出席が求められます。貸金庫は、金融機関が相続人全員の同意と立会いを原則として求めるので、開けるには誰かが窓口に行く必要があります。権利証(登記識別情報)・通帳・保険証券・年金手帳は、現物を持ち帰る必要があります。

裏を返すと、登記の確認、戸籍の収集、金融機関の手続き、固定資産税や公共料金の通知先の変更、管理業者や士業への依頼は、すべて自宅から始められます。

先に自宅でできることを片付けてから、現地でやる作業を1回にまとめる。この順番にすると往復が減ります。

最初の帰省で済ませておく準備

初回の帰省で次の6つを済ませておくと、以後の帰省は「片付け」と「決済(売却する場合)」の2回程度に収まります。

遠方のオーナーで一番多い失敗は、準備をせずに帰ってしまい、同じ用事でもう一度行く羽目になることです。

最初の帰省のチェックリスト
  • 合鍵を全部集めてラベルを付け、本数を数えて写真に撮る
  • 近所に挨拶し、連絡先を交換する
  • 郵便受けの中身を封筒ごと持ち帰る
  • ブレーカーと水道の扱いを決める
  • 権利証・通帳・保険証券・固定資産税の納税通知書・年金関係の書類を持ち帰る
  • 各部屋・外壁・屋根・庭・塀を、日付が残る形で撮る

親の鍵束は、どれが玄関でどれが物置か分からない状態で始まります。全部にラベルを付けて写真に撮っておくと、後の台帳づくりがその場で終わります。

近所には「郵便受けがあふれていたら教えてほしい」と頼んでおくだけで、以後の異変が自然に耳に入ります。保険・証券・年金・税の通知は実家の郵便受けにしか届かないので、封筒ごと全部持ち帰りましょう。

水道は、管理業者に通水を頼むなら止めず、誰も入らないなら元栓を閉めます。重要書類は仏壇の引き出し、タンスの奥、金庫と、探す場所を一通り当たってみてください。

写真は、後で業者に見積もりを頼むときや、相続人同士で状況を共有するときの共通の土台になります。

やることは紙に書いて持っていきましょう。現地に着くと片付けに気を取られて、鍵の回収や近所への挨拶を忘れがちです。

「行ったときにまとめてやろう」と考えると、1回の帰省が丸2日の作業になり、しかも抜けが出ます。初回は片付けを後回しにして上の6つだけに集中した方が、結果として往復回数が減ります。

現地に行かずに始められる手続き

自宅から始める作業は、「実家に何があるか」を把握することと、「通知が自分宛に届く」ようにすることの2つです。

不動産・口座・契約を把握し、通知の宛先を自分に向ける。この2つを先に済ませておくと、現地確認を頼む相手にも、代理を立てる士業にも、何を頼めばよいかが決まります。

登記事項証明書と名寄帳で実家の名義と範囲を確かめる

実家の土地と建物が本当に親の名義か、ほかに誰かの持分や抵当権が残っていないかは、登記事項証明書で分かります。

登記事項証明書は、法務局の「登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと)」の「かんたん登記・供託申請」(以前の名前は「かんたん証明書請求」)から請求でき、自宅への郵送で受け取れます。電子証明書やカードリーダーは不要で、手数料はインターネットバンキング等で払えます。

手数料は郵送受取で1通520円、法務局の窓口で受け取るなら490円で、窓口で直接請求する600円より安く設定されています。

閲覧だけでよければ「登記情報提供サービス」でその場でPDFが見られます。ただし法務局の証明文や公印がなく、金融機関や役所への提出書類には使えないので、手続きに使う分は登記事項証明書を取っておきましょう。

ここで、税理士や司法書士は当たり前に使うのに、一般にはほとんど知られていない書類が「名寄帳」です。

名寄帳は、市区町村が所有者ごとに土地・家屋をまとめた台帳で、親名義の不動産をその市区町村の分だけ一覧にできます。実家の敷地だけだと思っていたら、裏の山林、私道の持分、隣の畑まで親名義だった、という例もあります。

登記事項証明書は「この土地」と指定して取る書類なので、存在を知らない不動産は探しようがなく、名寄帳がその穴を埋めます。

名寄帳は、実家のある市区町村(東京23区は都税事務所)に郵送で請求できます。相続人が請求するときは、所有者が亡くなったことと自分が相続人であることが分かる戸籍(コピー可とする自治体が多い)と、本人確認書類の写しを添えます。

請求用紙と手数料の額は自治体ごとに違うので、「〇〇市 名寄帳 郵送」で市のページを確認してから送ってみてください。

出典: 法務局「登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です」、法務省「登記手数料について」、登記情報提供サービス「登記情報提供サービスとは」、名古屋市「名寄帳(土地・家屋)の閲覧(写しの交付)の申請」

戸籍の郵送請求と広域交付を使い分ける

遠方の人の現実的な手は本籍地への郵送請求で、2024年3月に始まった広域交付は使える場面が限られます。

相続手続きでは、亡くなった親の出生から死亡までの戸籍と、相続人全員の現在の戸籍が要ります。本籍地が引っ越しで動いていれば、複数の市区町村に請求することになります。

2024年3月1日から、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍を取れる「広域交付」が始まりました。便利に見えますが、遠方の人には使いにくい制度です。

法務省の案内によると、広域交付は本人が市区町村の窓口に出向いて請求する形に限られ、郵送や代理人による請求は対象外です。

取れる戸籍も本人・配偶者・父母や祖父母(直系尊属)・子や孫(直系卑属)の分に限られ、兄弟・姉妹の戸籍と、コンピュータ化されていない古い戸籍・除籍は除かれます。

つまり、自宅の近くの役所で親の戸籍を一気に取れる場合はあるものの、兄弟・姉妹が相続人になる場合や古い除籍が必要な場合は、結局は本籍地への請求に戻ります。

郵送請求では、申請書・定額小為替(ゆうちょ銀行で買う手数料)・返信用封筒(切手を貼る)・本人確認書類の写しを送ります。相続用であれば「出生から死亡までの戸籍を全部」と書き添えると、その市区町村にある分をまとめて出してもらえます。

本籍地が別の市区町村に移っていれば、届いた戸籍の記載を見て次の市区町村に請求する、という作業を繰り返します。

もう1つの手が、行政書士・司法書士などの士業に依頼する「職務上請求」です。士業は依頼を受けた相続手続きのために、自分の名前で戸籍を請求できます。本籍地が何度も動いていて自分で追うのが大変なときは、戸籍の収集だけ士業に頼むという分け方もできます。

出典: 法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」

法定相続情報一覧図で金融機関の手続きを郵送でまとめる

戸籍が揃ったら、法務局で「法定相続情報一覧図」を作ってもらうと、金融機関ごとに戸籍の束を送る手間が消えます。

集めた戸籍と自分で作った相続関係の図を法務局に出すと、法務局が確認したうえで、認証文付きの一覧図の写しを無料で交付します。写しは必要な通数をまとめてもらえるので、銀行A・銀行B・証券会社・年金事務所に同時に送れます。

戸籍の束は1組しかないため、順番に送ると1社ごとに返却を待つことになり、遠方の人ほど時間がかかります。一覧図があれば、この待ち時間がなくなります。

遠方の人にとって都合がよいのは、申出先の法務局を4つから選べる点です。被相続人の本籍地・最後の住所地・申出人の住所地・被相続人名義の不動産の所在地のいずれかで、「申出人の住所地」を選べば自宅近くの法務局で済みます。

申出も写しの受け取りも郵送でよく、返信用の封筒と切手を同封すれば自宅に届きます。一覧図は申出日の翌年から5年間保存され、その間は再交付も受けられます。手続きの途中で通数が足りなくなっても追加できます。

なお、一覧図を相続手続きに使えるかは提出先の機関ごとに決まっています。金融機関には「法定相続情報一覧図で手続きできますか」と先に電話で確認しておくと、二度手間を防げます。

出典: 法務局「法定相続情報証明制度について」、法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」

固定資産税と公共料金の通知先を自分に変える

実家の郵便受けに届き続ける通知を、自分宛に向ける作業です。

固定資産税の納税通知書は、相続登記が終わるまでは亡くなった親の名前で実家に届きます。これを自分宛にするのが「相続人代表者指定届」で、実家のある市区町村の税務担当に出します。多くの自治体は、相続人であると知った日の翌日から3か月以内の届け出を求めていて、静岡市のように期限を過ぎると過料の対象になると案内する市もあります。

届け出をすると、納税通知書が指定した相続人に届きます。ただしこれは「通知の受取人」を決めるだけで、登記上の所有者はそのままなので、相続登記は別に必要です。

親が口座振替で納めていた場合、口座振替は相続人に引き継がれず、親の口座が止まれば引き落としも止まります。届け出と一緒に自分の口座で振替を申し込むか、納付書で払う形に切り替えておきましょう。

電気・ガス・水道の停止や名義変更は、電話か各社のWebで済みます。管理業者に通水を頼む予定なら水道は残し、見守り機器やカメラを置くなら電気も残します。

火災保険も連絡が要ります。空き家になると保険会社の区分が「住宅物件」から「一般物件」に変わることがあり、一般物件は保険料が上がる、地震保険を付けられないといった扱いになる例があります。

契約者が亡くなった場合も、保険会社に連絡して契約者を変更するか、空き家向けの契約に切り替えます。黙っていると、火事や台風のときに保険金が出ない恐れがあります。

順番で1つ注意があります。金融機関は、親の死亡を伝えた時点で口座を止めます。

その口座から公共料金や保険料が引き落とされていた場合、先に引き落とし先を切り替えておかないと、支払いが滞って督促が実家に届きます。「先に引き落としの切り替え、その後に死亡の連絡」の順番で進めましょう。

出典: 静岡市「固定資産(土地・家屋)の所有者が亡くなられた場合の手続き」、熊本市「固定資産の現所有者にかかる申告について」

亡くなった親宛の郵便が転送できないときの受け取り方

亡くなった本人宛の郵便物は、家族が申し出ても転送の対象外で、差出人に返還されます。

日本郵便の転居届は「転居者氏名」ごとに出す仕組みで、4人家族のうち1人だけの転送もできます。ところが、日本郵便のよくある質問にある通り、亡くなった方宛の郵便物は家族が転送を申し出ても差出人に返されます。ここが遠方の人の一番の盲点です。

このため、場面で手が変わります。

親が存命で施設に移った場合は、親本人の転居届を出せば、親宛の郵便を施設へ転送できます。入院中だけ病院へ転送する形も、転居届で受け付けてもらえます。転居届は郵便局の窓口のほか、Webの「e転居」でも出せます。

ただし、転送先は親が実際に暮らす場所に限られ、「入院中の親に代わって自分の家で受け取りたい」という申し出は、親が住んでいない場所への転居届にあたるため断られます。親宛の郵便は施設や病院で受け取り、必要な封筒を自分に送ってもらう段取りを施設側と決めておきましょう。

親が自分で手続きできないときは、家族が代わりに出せるかと必要書類を、郵便局の窓口で先に確かめておくと二度手間が減ります。

親が亡くなった後は、転送という手段がなくなります。保険会社・証券会社・年金・固定資産税・自治体からの通知は、しばらく実家の郵便受けに届き続けます。放っておくと、気づいたときには期限が過ぎていた、ということが起きます。

対策は2つです。

1つは、現地確認を頼む相手に「郵便受けの中身」を見てもらう体制を作ることです。近所の人に「あふれていたら教えてほしい」と頼む、管理サービスに郵便物の確認や送付を入れてもらう、といった形です。

郵便局の空き家みまもりには、郵便受けの投函物を契約者の住所に送るオプションが月800円であります。

もう1つは、差出人を自分で減らしていくことです。初回の帰省で持ち帰った郵便物と通帳の引き落とし明細から、保険会社・証券会社・年金事務所・携帯会社などを洗い出し、それぞれに死亡の連絡と、今後の連絡先を自分に変える手続きを入れます。

差出人側が「相続人宛」に送るようになれば、実家に届く郵便は減っていきます。転送できない以上、これが一番の近道です。

出典: 日本郵便「死亡した受取人あての郵便物等を家族に転送してもらえますか?」、日本郵便「4人家族のうち1人が引越しする場合、転送できますか?」、日本郵便「入院中だけ病院へ転送したい」、日本郵便「入院中の親族に代わり転送を受けたい」、日本郵便「転居・転送サービス」、日本郵便「郵便局の空き家みまもり」

現地確認を頼める相手

現地確認は、「外からの目」と「中に入る確認」を分け、報告が必ず自分に届く形にすると揉めずに回ります。

外からの目は近所・親戚・機器に頼めます。中に入る確認は、鍵を預ける以上、業者に頼む方が相続人同士の疑いを避けられます。費用は「何を頼むか」で決まるので、頼む中身を先に決めてから相手を選びましょう。

近所や親戚に頼める範囲と頼み方

一番安くて早いのは、近所の人に「外から見てもらう」ことです。

郵便受けがあふれていないか、雑草が道にはみ出していないか、見慣れない人が出入りしていないか。この程度なら、相手の普段の生活のついでに見てもらえます。

頼むときのコツは、範囲を小さく言うことです。「何かあったら見ておいてください」と頼むと、相手は「何かあったら責任を問われるのでは」と身構えます。「郵便受けと外観を見て、気づいたら電話をくれるだけでいいです」と言えば、引き受けやすくなります。

連絡先は紙に書いて渡し、自分の番号と、不在時に代わりに出る相続人の番号を添えましょう。お礼はその都度送金するより、帰省のたびに菓子折りを持っていく方が、関係が自然に続きます。

親戚に頼む場合、注意したいのは「鍵を渡して中に入ってもらう」ことです。

善意の風通しが火種になる形

親戚が善意で月に一度風を通してくれている家で、遺産分割の話し合いの最中に、別の相続人から「勝手に入って物を持ち出したのではないか」と声が上がる。親戚本人に落ち度がなくても、いつ入って何をしたかの記録がないため、疑いを晴らす材料がない。

遺産分割がまとまる前は特にそうです。中に入る確認は報告書が残る業者に頼み、親戚には外からの確認だけをお願いする、と分けておくと疑いが生まれにくくなります。

どうしても親戚に中を見てもらうなら、入る日を相続人全員に事前に知らせ、入った後に写真を全員に送る形にしておきましょう。

自治体の管理代行事業者リストとシルバー人材センター

業者サイトではあまり紹介されない、安く頼める選択肢が2つあります。

1つは、自治体が公開している空き家管理代行事業者のリストです。

たとえば横浜市は、遠方に住んでいるなど自分で管理が難しい所有者向けに、外観調査・敷地内の清掃・内観調査・通風通水・庭木の剪定・除草などを所有者に代わって行う事業者を募集し、市のサイトに一覧を載せています。

ただし市は事業者の斡旋はせず、業務内容や料金は事業者と所有者の合意で決め、市は一切関与しないと明記しています。つまり「市のお墨付きの業者」ではなく「市が窓口を広げただけ」なので、2〜3社から見積もりを取る前提で使いましょう。

実家の市区町村に同じようなリストがあるかは、「〇〇市 空き家 管理 事業者」で検索すると分かります。

もう1つは、シルバー人材センターです。

地元の高齢者が会員として働く組織で、空き家の除草・庭木の伐採・見回り(窓の開閉など)・簡単な修繕を引き受けている地域があります。

料金は地域によって違いますが、一例として大阪市のセンターでは建物の見回りが1回1,695円、除草が半日(約4時間)5,650円からで、写真付きの作業報告書は1回1,345円の別料金という目安が公開されています。

民間の管理サービスより安く、地元の人が来るので近所とも顔がつながります。ただし、写真付きの報告書が毎回来るとは限らず、頼める作業も「できる会員がいるか」で変わります。

先に電話で「空き家の見回りはできますか、報告はどう届きますか」と確認してみてください。

出典: 横浜市「空家等の管理を代行する事業者リストを掲載しています」、大阪市「空家の管理でお困りではありませんか?(大阪市シルバー人材センター 料金表)」

民間の空き家管理サービスの費用と報告書

民間の空き家管理サービスは価格の幅がとても広く、「安い=損」でも「高い=安心」でもないので、何をしてくれるかで比べます。

下限の例が、NPO法人の空家・空地管理センターが提供する「100円管理」です。

月額100円で、近隣からのクレーム対応の窓口になることと定期的な巡回が中身です。管理に手をかける余裕がない所有者向けで、「近所から苦情が来たときに誰も対応しない」状態を避ける保険のようなサービスです。

中間の例が、日本郵便が2025年1月から全国で始めた「郵便局の空き家みまもり」です。

基本サービスは月額4,280円(税込)で、郵便局社員が月1回訪問し、次の7項目を確認して写真付きの報告書をメールで送ります。

  • 住宅外観
  • 玄関の施錠
  • 玄関周辺
  • 庭木と雑草
  • 隣家への越境物
  • 不法投棄
  • 郵便受けの投函物

オプションは、玄関と各部屋の窓を開ける換気と水道の通水(郵便受けの投函物を室内に移す作業込み)が月5,000円、郵便受けの投函物を契約者の住所へ送る送付が月800円、依頼のたびに3営業日以内に報告する臨時見回りが1回3,000円です。

草刈りや不用品整理は提携企業の都度見積もりになります。

このように、同じ「管理サービス」でも、外から見るだけの契約と、中に入って通水までする契約では、料金も意味も違います。比べるときは次の3点を見ます。

  • 写真付きの報告書が毎回届くか
  • 中に入って通風・通水をするか
  • 頼んだときに臨時で見に行ってもらえるか

口頭や「異常なし」の一言だけの報告では、後で相続人同士に説明するときの材料に欠けます。外からの確認だけでは室内の臭気・カビ・害虫までは防げず、台風の後など巡回日を待てない場面では、臨時見回りの有無が差になります。

通水について1つ補足します。

台所や洗面台、トイレの排水管には「排水トラップ」という水をためる部分があり、この水(封水)が下水からの臭気と害虫を止めています。誰も使わないと封水が蒸発して切れ、家中に下水の臭いが上がり、ゴキブリや小さな虫が配管から入ってきます。

これを防ぐのが通水で、月1回でも蛇口を開けて水を流すだけで封水が戻ります。「見回りだけ」のサービスでは防げないので、室内の状態を保ちたいなら通水のある契約を選んでおきましょう。

出典: 日本郵便「郵便局の空き家みまもり」、日本郵便「『郵便局の空き家みまもり』のサービス提供開始(2024年9月27日)」

売却を前提に不動産会社へ巡回を頼む条件

売却を決めているなら、不動産会社が巡回を引き受けてくれる場合があります。

鍵を預かって内見対応をする会社なら、内見のついでに外観や室内を見て様子を知らせる、郵便受けを見るといった対応を無料か安価でしてくれることがあります。遠方のオーナーにとっては、管理と売却を一本化できる形です。

ただし、これは媒介契約(売却の依頼契約)が前提です。不動産会社にとって巡回は売るための準備であって、管理そのものが商売ではないためです。

売る意思が固まっていない段階で「とりあえず見ておいてほしい」と頼むと、相手は売却の見込みがないまま手間だけかけることになり、こちらも「売らないなら」と気まずくなります。

売ると決めるまでは管理サービスやシルバー人材センターに頼み、売ると決めてから不動産会社に鍵を預ける。この順番の方が、お互いにとってよい関係が続きます。

不動産会社を選ぶときは、次の3つを聞いてみてください。

  • 遠方のオーナーの売却を扱った実績があるか
  • 報告や面談をオンラインで受けられるか
  • 鍵の預かりで預り証を出す運用になっているか

この3つに具体的に答えられる会社は、遠方の案件に慣れています。

見守り機器で巡回の間を埋める方法

巡回が月1回だと次の巡回まで最長1か月、誰も見ていない時間が生まれ、その間の異変を拾うのが見守り機器です。

  • 人感センサーや開閉センサー
  • ネットワークカメラ
  • 電気の使用量通知
  • 水道の使用量

人感センサーや開閉センサーは、玄関や窓に付けておくと、人の動きやドアの開閉をスマホに通知します。業者が入る日以外に反応があれば、侵入の可能性があります。

ネットワークカメラは玄関の内側や廊下に置き、通知が来たときに映像で確認できます。電源とWi-Fi(または携帯回線のモバイルルーター)が要るので、電気は残しておきましょう。

電気の使用量は、電力会社のWeb明細やスマートメーターの連携サービスで日ごとに見られます。誰もいないはずの家で使用量が増えていれば何かが動いていますし、カメラを置いているのに使用量がゼロなら停電か機器の故障です。

水道は、一部の地域でスマートメーターが導入され、使用量を遠隔で確認できます。巡回以外の日に水が流れていれば漏水の疑いがあります。導入されていない地域では、毎回の巡回でメーターの数字を写真に撮ってもらうと、漏水の有無が分かります。

機器は巡回の代わりにはならず、巡回の間を埋める役です。機器が通知を出しても、現地に行って確かめる人が要ります。

その役を近所の人や管理業者の臨時見回りに頼めるように、通知が来たときの連絡先を先に決めておきましょう。

鍵の管理方法

鍵がなければ管理業者も不動産会社も親戚も動けず、遠方のオーナーにとって鍵は最初の壁です。

相続のサイトで鍵が取り上げられることはまれですが、鍵の管理で押さえるのは「所在を記録する」「遠隔で業者を入れる手段を持つ」「預けるときは書面にする」の3つです。どれも相続人同士の疑いを生まないための仕組みです。

合鍵の本数と持ち主を決めて記録する

最初にやるのは、誰が何本持っているかの台帳づくりです。

親が住んでいた家の鍵は、親の知人、ヘルパー、近所の人、兄弟・姉妹など、思っている以上に多くの人に渡っていることがあります。親が亡くなると、誰が何本持っているかを知っている人がいなくなります。

初回の帰省で親の鍵束を全部集め、玄関・勝手口・物置・門扉・ポストと場所ごとにラベルを付けて写真を撮り、「鍵の種類・本数・持っている人・渡した日」を一覧にします。

親の手帳や連絡先から、鍵を渡していそうな人(ヘルパー事業所、親しい近所の人)に連絡して、返してもらうか、持っていることを台帳に書いておきましょう。

この台帳は、相続人全員で共有します。兄弟・姉妹の1人だけが鍵を持っている状態は、「あの人が勝手に入っている」「何か持ち出したのでは」という疑いを生みます。

誰が何本持ち、いつ誰が入ったかを全員が見られる状態にしておけば、疑いが起きる前に消えます。スマホの共有メモや共有フォルダに、台帳と鍵の写真を置くだけで済みます。

キーボックスを置くときの番号管理と設置場所

遠隔で業者を入れる一番手軽な手段が、ダイヤル式のキーボックスです。

中に鍵を入れて暗証番号で開ける道具で、数千円で買えて工事が要りません。ただし、使い方を誤ると「誰でも入れる家」になります。注意点は3つです。

  • 設置場所は玄関の目立つ位置を避ける
  • 暗証番号は業者が替わるたびに変える
  • 番号を伝える相手を限る

玄関ドアの取っ手に下げると、「ここに鍵があります」と知らせているのと同じです。門扉の内側、勝手口のそば、メーターボックスの中など、通りから見えない場所に付けましょう。

管理業者、遺品整理業者、内見に来る不動産会社と、番号を伝える相手が増えるほど、どこから漏れたか分からなくなります。業者を切り替えたら、その日に番号を変えます。

番号は電話やメールで伝えることになるので、伝えた相手と日付を鍵の台帳に書いておくと、後から経緯を追えます。「とりあえず番号を教えておく」は避けたい渡し方です。

キーボックスは「鍵をそこに置いてある」仕組みなので、中の鍵が持ち出されても気づきにくい道具です。業者が入る日を決めて、その日の前後に番号を変える運用にすれば、安全性はかなり上がります。

スマートロックで遠隔から一時的に開けられるようにする

もう一段進んだ手段が、後付けのスマートロックです。

玄関ドアの内側のサムターン(つまみ)にかぶせる形で取り付けるタイプなら、既存の鍵穴を残したまま、スマホから施錠・解錠できます。持ち家なので賃貸のような設置制限はなく、工事不要の製品も多くあります。

遠方のオーナーにとっての利点は2つです。

1つは、業者ごとに一時的な暗証番号やスマホの鍵を発行できることです。「この業者には今週の火曜日の午前中だけ有効な番号」という渡し方ができるので、キーボックスのように番号を変えて回る手間がなく、業者が替わっても過去の番号は自動で無効になります。

もう1つは、入退室の記録が残ることです。誰がいつ開けたかがスマホで見られるので、相続人同士で「誰が入ったか」の説明が記録で済みます。

注意点は電池です。スマートロックは電池で動くので、電池が切れるとスマホからは開けられなくなります。電池残量の通知をオンにしておき、巡回の業者に電池交換を頼める形にしておきましょう。

そして、物理鍵は必ず残します。電池切れ・通信障害・スマホの紛失に備えて、玄関の鍵は鍵穴から開けられる状態を保ち、その物理鍵を自分が1本、別の相続人が1本持っておくと安心です。

業者に預けるときの預り証と返却条件

不動産会社や管理業者に鍵を預けるときは、口約束にせず書面にします。

もらうのは「鍵預り証」です。預けた鍵の種類と本数、預けた日、預かった会社と担当者名、使用目的(内見対応・巡回)を書いてもらいます。

合わせて、返却の条件も決めておきましょう。媒介契約が終わったとき、売却が成立したとき、管理契約を解約したときに、いつまでに誰に返すか、です。不動産会社に預ける場合は、媒介契約書と一緒に預り証を保管します。

返却条件を書いておく理由は、契約が終わった後に鍵が戻ってこない、戻ってきたが本数が合わない、という事態を避けるためです。預けた本数を台帳と預り証の両方に書いておけば、返却時に照合できます。

スマートロックやキーボックスを使っているなら、物理鍵を渡さず、一時番号の発行で済ませるという選択もあります。

親が亡くなった後に鍵を交換する判断

合鍵の所在が追い切れないなら、鍵の交換が一番の早道です。

シリンダー(鍵穴の部分)を交換すれば、過去に渡った合鍵はすべて使えなくなり、「誰が持っているか分からない」状態が一度で解消します。

費用は鍵の種類で変わります。鍵業者が公開している目安では、シリンダーのみの交換で1万数千円から2万円程度、防犯性の高いディンプルキーに錠前ごと交換すると4万円から6万円程度の例があります。出張費や地域で差が出るので、見積もりを2社から取ると安心です。

交換の判断は、次の基準で決めます。

  • 相続人以外に渡った鍵が回収できていない → 交換する
  • 回収できたが、本数が親の記憶や台帳と合わない → 交換する
  • 全部回収できて本数も合っている → 交換は任意。管理業者を入れるなら念のため交換してもよい
  • 売却が近く、不動産会社が鍵を預かる → 交換後の新しい鍵を預ける

交換後の新しい鍵を預ければ、過去の合鍵が内見中に使われる心配が消えます。

交換したら、新しい鍵の本数と持ち主を台帳に書き直し、相続人全員に知らせます。交換の費用は、相続財産を守るための費用として、相続人の間で分担を決めておくと後で揉めずに済みます。

代理対応を頼める範囲

代理の体制で一番大事なのは、「親族」「士業」「不動産会社」に頼める範囲と「本人でないと済まない範囲」を最初に分けておくことです。

本人でないと済まない手続きが分かれば、帰省の日程をそこに合わせて組めます。分けないまま進めると、「それは本人が来ないとできません」と途中で言われて、予定外の帰省が増えます。

親族に委任状で頼める手続き

実家の近くに住む親族がいれば、委任状で次の手続きを頼めます。

  • 役所の証明書の取得
  • ライフラインの手続き
  • 遺品整理や修繕の立ち会い

亡くなった親の住民票の除票、固定資産評価証明書(相続登記や相続税の計算で使う)などは、相続人からの委任状と、相続人であることが分かる戸籍や法定相続情報一覧図の写しがあれば、代理で取れる自治体がほとんどです。

自治体ごとに必要書類が違うので、頼む前に市のページで確認しておきましょう。

電気・ガス・水道の停止や名義変更は、電話やWebで済むものが多く、ガスの閉栓など現地で立ち会いが要る場合は親族に立ち会ってもらいます。

遺品整理や修繕では、業者を入れる日に鍵を開け、作業を見て、終わったら施錠する役を頼みます。作業前後の写真を撮って相続人全員に送ってもらえば、業者とのやりとりも後で確認できます。

親族に頼むときに決めておくのは、費用と謝礼です。

交通費・駐車場代・半日つぶれる手間を「身内だから」で済ませると、後で「自分ばかり動いた」という不満が残り、遺産分割の話し合いに影響します。実費は必ず払う、作業1回につきいくらと決めるなど、最初に相続人全員で合意しておきましょう。

士業ごとに代理で頼める手続き

士業はそれぞれ頼める範囲が法律で決まっていて、特定の士業に全部を任せられるわけではないので、横並びで押さえておきます。

士業頼める手続き
行政書士戸籍の収集(職務上請求)、相続関係説明図や遺産分割協議書の作成、金融機関の手続きの代行
司法書士相続登記(不動産の名義変更)、法定相続情報一覧図の申出代理、戸籍の収集、遺産分割協議書の作成
税理士相続税の申告、準確定申告、財産の評価
弁護士相続人同士の争いの代理、調停・訴訟、遺留分の請求

遠方でも支障がないのは、依頼がオンライン面談と郵送で完結するようになったためです。本人確認はオンライン面談で本人確認書類を見せるか、本人確認書類の写しを郵送する形で済みます。

司法書士の相続登記は、不動産の所在地を管轄する法務局に申請しますが、申請はオンラインでできるので、実家の近くでも自宅の近くでも、どちらの司法書士にも頼めます。税理士の相続税申告も電子申告で出せるので、税務署の場所を気にせず頼めます。

なお、相続登記は2024年4月1日から義務になり、相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に申請する必要があります。2024年4月1日より前に相続した不動産で登記が済んでいないものも対象で、こちらは2027年3月31日が期限です。遠方だからと後回しにすると期限に追われるので、先に手を付けておきましょう。

頼み方で1つ。「遠方なので全部お願いしたい」と1つの事務所に言うと、頼めない範囲(他の士業の業務)が後から分かって、別の事務所を探し直すことになります。

最初の面談で、「相続登記・戸籍・協議書・税の申告・金融機関、それぞれ誰が担うか」を一覧にしてもらってみてください。相続を多く扱う事務所は他の士業と連携していて、この一覧をその場で出してくれます。

出典: 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

不動産会社に任せられる現地対応

売却を決めた後は、不動産会社が現地対応の多くを引き受けます。

  • 鍵を預かっての内見対応
  • 遺品整理業者・測量士・解体業者の手配
  • 重要事項説明のオンライン実施
  • 契約書のやりとり

買主候補の案内は不動産会社に任せられます。業者の手配も、会社によっては提携先を紹介し、見積もりの取りまとめまでしてくれます。

売買の重要事項説明は、2021年3月30日からテレビ電話などによる「IT重説」が本格運用されており、売主が遠方でも自宅から受けられます。契約書の署名・押印は郵送で、電子契約に対応する会社なら書面の郵送も不要です。

決済(残金の受け取りと引き渡し)は、本来は売主本人の出席が基本ですが、行けないときは親族を代理人に立てる方法があります。

その場合、登記を担当する司法書士が事前に売主本人の本人確認と意思確認を済ませておけば、代理人は当日に委任状と必要書類を持って行くだけで済みます。

不動産会社に「決済に行けないので、司法書士と事前に本人確認を済ませたい」と早めに伝えておくと、日程が組みやすくなります。

出典: 国土交通省「不動産の売買取引に係る『オンラインによる重要事項説明』(IT重説)の本格運用について」

代理では済ませられない手続き

次の4つは本人が動く必要があり、先に知っておくと帰省の予定を組めます。

  • 貸金庫の開扉
  • 実印の押印と印鑑証明書の取得
  • 海外在住の相続人の署名証明
  • 境界確認の承諾の判断

親が貸金庫を借りていた場合、金融機関は契約者の死亡を知った時点で貸金庫を凍結し、開けるには相続人全員の同意と立会いを原則とします。

金融機関によっては、全員の同意書と委任状があれば代表者だけで開けられる、司法書士などの代理人の立会いで済む、といった運用もあります。ただし「自分1人が郵送で頼む」形は、どの金融機関でも通らないと考えておくと計画が立てやすくなります。

遺言書や権利証が貸金庫に入っていることが多いので、早めに金融機関に手順を聞いておきましょう。

遺産分割協議書や登記の委任状には実印を押し、印鑑証明書を付けます。印鑑証明書は自分の住所地の市区町村で取るもので、実家ではなく自宅の話ですが、横浜市・相模原市・神戸市・堺市など郵送請求ができない自治体が多くあります。

マイナンバーカードがあればコンビニ交付で取れる自治体が多いので、カードを作っておくと手続きが進めやすくなります。実印の押印そのものは、本人が押すか本人の意思で押したことが分かる形が要るので、他人に代わってもらえない手続きです。

日本に住民登録がない人は印鑑登録ができないため、印鑑証明書の代わりに、在外公館(大使館・領事館)で領事の面前で署名して「署名証明」を受けます。本人が在外公館に出向く必要があり、代理では取れない書類です。在外公館が遠くて領事の署名証明を取りにくいときは、外国の公証人が作成した署名証明でも登記の申請ができます。

隣地との境界の立会いは代理人でもできますが、「この線で間違いない」と承諾する判断は本人がします。代理人に任せきりにすると、後で「聞いていない」と言えなくなります。

立会いの前に測量士から図面を送ってもらい、自分で確認したうえで代理人に伝えましょう。

これらは、帰省の予定を立てる基準になります。貸金庫の開扉と境界の立会いを同じ帰省にまとめる、印鑑証明は帰省の前に自宅で取っておく、という組み方です。

出典: 法務省「外国に居住しているため印鑑証明書を取得することができない場合の取扱いについて」、横浜市「印鑑登録証明書を窓口で請求する」、相模原市「印鑑登録証明書」、神戸市「印鑑登録証明書」、堺市「郵送による請求」

遠方対応に慣れた依頼先の見分け方

士業も不動産会社も管理業者も、遠方の案件に慣れているかで、こちらの手間が大きく変わります。

見分け方は3つです。

  • 初回からオンライン面談を提案してくる
  • 返信用封筒を先に送ってくる
  • 遠方案件の実績を具体的に言える

「一度お越しください」が最初の返事なら、遠方の案件には不慣れと考えられます。郵送でのやりとりが前提の事務所は、こちらが頼む前に、記入見本と返信用封筒を同封して送ってきます。

実績は、「遠方の方もよくいらっしゃいます」ではなく、「北海道にお住まいの方の九州の実家を、現地に1回も行かずに売却まで進めました」のように、どこまで現地なしで進んだかを言えるかで判断します。

もう1つ、不動産会社と管理業者には「報告はどんな形で来ますか」と聞いてみてください。「写真付きでメールします」「月末にレポートを送ります」と即答できる会社は、遠方のオーナーを普段から相手にしています。

依頼先が決まったら、「誰が何を担うか」の一覧を1枚にまとめます。

「誰が何を担うか」の1枚に書くこと
  • 現地確認は誰が、どの頻度で、報告はどの形で届くか
  • 鍵は誰が何本持ち、業者に渡す手段はキーボックスか一時番号か
  • 代理は誰に、どこまで頼むか(役所の証明書・立ち会い・決済)
  • オンライン手続きは自分がどこまで進め、士業に何を渡すか

この1枚を相続人全員と依頼先に共有しておけば、「それは聞いていない」「誰がやるはずだった」という二度手間が消えます。体制づくりとは、この1枚を作ることです。

まとめ:遠方の実家は、4つの役割に「誰が」を当てはめた時点で回り始める

実家が遠くても、現地でしかできない作業は残置物の分別・建物の実地確認・境界の立会い・貸金庫の開扉・重要書類の回収に絞られ、名義の確認も戸籍も金融機関の手続きも自宅から進められます。現地確認・鍵の管理・代理対応・オンライン手続きの4つに「誰が」を当てはめれば、帰省は片付けと決済の2回程度に収まります。

次の一歩は、最初の帰省で合鍵を全部集めて台帳を作り、郵便受けの中身と重要書類を持ち帰ることです。これを飛ばすと、鍵が足りずに管理業者も内見も入れず、亡くなった親宛の郵便は転送されないため、保険や税の通知を見ないまま期限が過ぎます。

帰省の前に、実家の市区町村のサイトで名寄帳の郵送請求と相続人代表者指定届の様式を確かめてみてください。実家と相続の地図帳「つぐーる」では、遠方の実家の現地確認・鍵の管理・代理対応・オンライン手続きの頼み方も含めて、相続や実家について悩むあなたに経験に基づいた情報を提供しています。