実家の片付け・解体・契約停止を進める前の確認|相続放棄と税金で損しない順番

親が亡くなった後、空き家になった実家を早く片付けて、解約や解体まで済ませたいと考える方もいるでしょう。

ただ、遺品の処分や解体の中には、相続放棄ができなくなる、固定資産税が上がる、補助金や税金の特例が使えなくなるなど、後から取り返せない行動が混じっています。

先に確かめておきたい書類や契約と、期限に合わせた進め方を知っておけば、すぐ始めてよい作業と、確認を待つ作業を見分けられます。

片付け・解約・解体を先に進めるリスク|相続放棄ができなくなる・ほかの相続人ともめる

実家の片付けや解体を急ぐと、相続放棄ができなくなったり、兄弟・姉妹ともめたりするおそれがあります。

相続放棄は、親の財産も借金もまとめて受け継がないと、家庭裁判所に申し出る手続きです。親に借金が多かったとき、借金を背負わずに済む手段になります。

親に借金がないと分かっていて、相続放棄をするつもりもない場合は、「ほかの相続人に無断で処分や解体をすると争いになる」から読んでみてください。

遺品の処分や解体をすると相続放棄ができなくなる

親の遺品を捨てたり家を解体したりすると、その後で借金が見つかっても、相続放棄はできなくなります。

民法には、相続人が親の財産を「処分」すると、相続をそのまま受け入れた(単純承認した)とみなす決まりがあります(民法921条1号)。

処分には、売る・人にあげるのほか、捨てる・壊すことも含まれると考えられています。家財をまとめて捨てることや、家を解体することも処分に当たります。

とくに困るのは、借金があとから分かる場合です。親が知人の借金の保証人になっていた、カードローンが残っていた、といった事情は、しばらくたってから督促の手紙で分かることもあります。

片付けや解体を終えた後に督促が届くと、その借金も受け継ぐことになります。

一方で、財産の価値を守るための「保存行為」は処分に当たらないと、同じ条文に書かれています。次のような作業は、処分に当たらないと考えられます。

  • 冷蔵庫の中の腐る食べ物を捨てる
  • 戸締まりをする、割れた窓をふさぐ
  • 雨漏りの応急処置をする

迷ったときは、その作業が財産の価値を減らすのか、守るのかで考えてみてください。

相続放棄の期限は、原則として「自分が相続人になったと知った時から3か月以内」です(民法915条1項)。

3か月で借金を調べきれないときは、家庭裁判所に申し立てて期限を延ばしてもらえます。この申し立ても、3か月以内に行う必要があります。

借金の調べ方は、「3か月以内に借金を調べて相続放棄をするか決める」の見出しで紹介しています。

出典: e-Gov法令検索「民法」、裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」

高価な品の形見分けでも相続放棄できなくなるおそれがある

形見分けでも、着物や貴金属のようにお金としての価値がある品を持ち帰ると、相続放棄ができなくなるおそれがあります。

着古した服や日用品のように、お金としての価値がほとんどない品を受け取るだけなら、処分には当たらないと考えられています。

問題になるのは、着物、貴金属、腕時計、ブランド品、骨とう品などです。どこまで許されるかは、品物の値段や、遺産全体に占める割合などによって判断が分かれます。

  • 葬儀や四十九日で親族が集まり、「好きな物を持っていって」という流れになったとき
  • 片付けの途中で、たんすや引き出しから現金や貴金属が出てきたとき

たんすから出てきた現金も遺産です。片付けの費用に使ったり、その場で分けたりするのは避けましょう。

相続放棄をした後でも、遺産を隠したり、こっそり使ったりすると、相続を受け入れたとみなされます(民法921条3号)。

相続放棄をする可能性があるうちは、価値がありそうな品は持ち帰らず、写真に撮って一覧にしておくと、後から兄弟・姉妹にも説明できます。

出典: e-Gov法令検索「民法」

故人の預金で未払いの料金を払うと相続放棄できなくなるおそれがある

親の預金で電気代や入院費などの未払い分を払うと、遺産を処分したとみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。

親が亡くなった後も、電気代や水道代、入院費などの請求は届きます。「親の分なので、親の口座から払っておこう」と考えるのは自然なことです。

しかし、親の預金も遺産です。相続放棄を考えているなら、親の預金での支払いは控えておきましょう。

葬儀費用については、処分に当たらないとする考え方もあります。ただ、認められる範囲は金額や事情によって変わります。

支払いが必要なときは、次の方法をとると、後で説明に困りにくくなります。

  • 自分のお金で払う
  • 領収書や振込の控えを残す
  • 相続放棄をする可能性があれば、払う前に司法書士や弁護士に相談する

善意で払ったお金が、相続放棄をできなくする理由になるおそれもあります。迷ったら、払う前に専門家へ一度確かめてみてください。

出典: e-Gov法令検索「民法」

ほかの相続人に無断で処分や解体をすると争いになる

遺産分割が終わるまで、実家も家財も相続人全員で共有している状態なので、一人の判断で処分や解体を進めると争いのもとになります。

遺産分割とは、誰が何を受け継ぐかを相続人で決める話し合いです。

民法では、共有している物の形や働きを大きく変えるには、ほかの共有者全員の同意が必要です(民法251条1項)。家の解体は、これに当たります。

実家の近くに住んでいる人や、これまで管理してきた人でも、一人の判断で解体を決めることはできません。

家財を勝手に処分した人は、取り分が減ることもあります。

遺産分割の前に相続人の一人が遺産を処分した場合、ほかの相続人全員が同意すれば、処分された財産も遺産に残っているものとして分け方を決められるためです(民法906条の2)。

このとき、処分した本人の同意はいりません。つまり、勝手に処分した人は、その分をすでに受け取ったものとして計算されることがあります。

お金のほかに、気持ちの面でもめることもあります。遠くに住む兄弟・姉妹が「思い出の品を勝手に捨てられた」と感じ、関係がこじれる例もあります。

遺品整理業者や解体業者が、ほかの相続人の同意まで確かめてくれるとは限らない点にも注意が必要です。もめごとを防ぐには、作業の前に次の3つをそろえておきましょう。

  • 相続人全員に、作業の日程と内容を知らせる
  • 家の中と家財を写真に撮り、残す品と処分する品の一覧を全員で見られるようにする
  • 片付けや管理の費用を、誰がいくら出すか決めておく

出典: e-Gov法令検索「民法」

遺品を片付ける前の注意点|遺言書・通帳や権利証・仏壇・遺品整理業者

遺品の片付けで取り返しがつかなくなるのは、遺言書や大事な書類、決める役目の人を確かめないまま、捨てたり業者に任せたりしたときです。

業者に頼むと、紙類はまとめて処分されやすくなります。何を残すかは、依頼する人が決めて業者に伝える必要があります。

遺言書の有無を片付けの前に確かめる

遺言書で実家を受け継ぐ人が決まっていれば、片付けはその人と相談して進めることになるため、まず遺言書の有無を確かめておきましょう。

遺言書を探す場所は、次の3つです。

探す場所どんな遺言書があるか調べ方
家の中(たんす・仏壇・金庫など)親が自分で書いた遺言書(自筆証書遺言)片付けの最初に探す
法務局法務局に預けてある自筆の遺言書(2020年7月に始まった制度)「遺言書保管事実証明書」を請求する(1通800円。郵送でも請求できる)
公証役場公証役場で作った遺言書(公正証書遺言)全国どこの公証役場でも、遺言の検索を申し出られる(無料。平成元年以降に作られたものが対象)

家の中で見つからなくても、法務局や公証役場に預けられていることがあります。

法務局と公証役場で調べるときは、親が亡くなったことが分かる戸籍(除籍)謄本と、自分が相続人であることが分かる戸籍謄本などが必要です。

自宅で自筆の遺言書が見つかったら、封を開けずに家庭裁判所へ出し、「検認」という手続きを受ける決まりです(民法1004条)。

封のある遺言書を家庭裁判所の外で開けると、5万円以下の過料の対象になります(民法1005条)。

開けても遺言そのものが無効になるわけではないとされていますが、兄弟・姉妹から「書き換えたのでは」と疑われるもとになります。

なお、法務局に預けてあった遺言書と公正証書遺言は、検認が不要です。

遺言で「遺言執行者」が決められている場合は、さらに注意が必要です。遺言執行者とは、遺言の内容を実現する役目の人です。

遺言執行者がいると、相続人が遺産を処分するなど、遺言の実現をさまたげる行動をしても無効になります(民法1013条)。片付けや解体は、遺言執行者と相談しながら進めましょう。

遺言書を見つけたら、写真を撮って相続人全員に知らせておくと、後のもめごとを防げます。

出典: e-Gov法令検索「民法」、東京法務局「遺言書保管事実証明書の交付の請求」、日本公証人連合会「遺言」

通帳・借用書・郵便物は預金と借金の手がかりとして残す

通帳・借用書・郵便物は、親の預金と借金を知る手がかりになるので、片付けの前に抜き出しておきましょう。

よくある失敗は、大事な紙を「古い書類」としてまとめて捨ててしまうことです。全部に目を通す必要はなく、次の2種類を先に抜き出しておけば、後の判断に困りにくくなります。

預金の手がかり

  • 通帳、キャッシュカード
  • 銀行や証券会社からの郵便物(取引の報告書など)
  • 保険証券、保険会社からの郵便物
  • 年金の書類

借金の手がかり

  • 借用書、お金を貸した人からの手紙
  • 保証人になった契約の書類
  • ローンやクレジットカードの明細
  • 督促状、催告書

通帳の引き落とし欄も手がかりになります。毎月同じ相手に引き落としがあれば、ローンの返済や、今も続いている契約を見つけられます。

家に届く郵便物も、しばらくは捨てずに1か所にまとめておきましょう。集めた書類は、相続放棄の判断と、止める契約探しの両方に使えます。

国民生活センターに寄せられた相談

大切な書類は残す約束で遺品整理を頼んだのに、アルバムや電話機まで処分され、運び出された後で取り戻せなかったという相談があります。

業者に頼むときは、「紙類は捨てずに箱にまとめてほしい」と具体的に伝えておけば、書類がほかの品と一緒に捨てられるのを防げます。

出典: 国民生活センター「遺品整理を頼むときは、事業者選びは慎重に」

権利証・図面・測量図は売却や解体に備えて残す

権利証や図面、測量図は、実家を売るときや解体を決めるときに使うので、捨てずに残しておきましょう。

再発行ができない書類もあり、なくすと代わりの書類をそろえる手間や費用がかかります。

書類使う場面捨てると困ること
権利証(登記識別情報通知)親がどの土地・建物を持っていたかを確かめる持っていた不動産を確かめる手がかりが減る
固定資産税の納税通知書(課税明細書)持っている土地・建物と税額を確かめる登記していない建物など、見落としやすい不動産に気づきにくくなる
測量図・境界の書類売るときに土地の広さや隣との境目を示す測量のやり直しに費用がかかることがある
建築確認済証・検査済証・設計図面建物が建てられた時期や、決まりに沿って建てられたかを確かめる売却や建て直しの相談で、建物のことを説明しにくくなる
借地の契約書土地が借りているものかを確かめる地主と契約の内容を確かめにくくなる

土地が借地の場合、契約の内容によっては、解体や売却に地主の承諾が必要になることがあります。

建物が建てられた時期は、相続した空き家を売ったときの税金の特例(昭和56年5月31日以前に建てられた家が対象)を使えるかにも関わります。図面や確認済証は、解体や売却を考えるときの大事な材料になります。

出典: 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

仏壇・位牌・お墓は祭祀を受け継ぐ人が扱いを決める

仏壇や位牌、お墓は、ほかの遺産とは別に、先祖をまつる役目を受け継ぐ人が引き継ぎ、扱いを決めます。

民法では、これらは「祖先の祭祀(さいし)を主宰すべき者」が引き継ぐと決められています(民法897条)。

受け継ぐ人は、親の指定があればその人です。指定がなければ地域の慣習で決まり、慣習がはっきりしないときは家庭裁判所が決めます。

つまり、仏壇やお墓は、遺産分割で分ける財産とは別の扱いです。相続放棄をした人でも、受け継ぐことができると考えられています。

片付けを担当する人が自分の判断で仏壇を業者に出すと、親族とのもめごとになりやすくなります。先に受け継ぐ人を決め、その人を中心に、処分や供養のしかたを親族で話し合っておきましょう。

出典: e-Gov法令検索「民法」

遺品整理業者は許可と見積もりの条件を確かめてから頼む

遺品整理業者に頼む前に、許可と見積もりの条件、残す品の伝え方の3点を確かめておくと、料金や処分のトラブルを防げます。

遺品整理業者は、量の多い実家の片付けで頼りになります。一方で、国民生活センターには、料金や処分をめぐる相談が寄せられています。

国民生活センターに寄せられた相談

作業の前は20万円ぐらいと聞いていたのに、作業の後で30万円と言われた。見積書は受け取っていなかった。

1. 許可を持っているか

家庭から出た不用品を、料金をもらって運ぶには、市区町村の「一般廃棄物処理業」の許可(または市区町村からの委託)が必要です。

遺品整理業者が許可を持っていない場合は、許可を持つ業者と組んで処分しているかを聞いてみてください。許可の有無は、市区町村の窓口でも確かめられます。

遺品を買い取る業者には、「古物商」の許可が必要です。買い取りのときは、古物商許可証などで許可を確かめられます。

2. 見積もりの条件

作業の内容と金額、追加料金がかかる条件、キャンセル料を、書面で受け取っておきましょう。見積もりを複数の業者から取ると、料金や作業内容の違いが見えてきます。

3. 残す品の伝え方

残す品と処分する品をはっきり分けて伝え、作業にはできるだけ立ち会いましょう。書類や写真のように取り戻せない品は、作業の前に自分で抜き出しておくと安全です。

相続放棄をするか決まるまでは、遺品の買い取りの提案は受けずにおきましょう。遺品を売ると、遺産の処分とみなされるおそれがあります。相続放棄をしないと決めた後でも、着物や貴金属などは、専門の買取店の査定と比べてから決めると、安く手放さずに済みます。

出典: 国民生活センター「遺品整理を頼むときは、事業者選びは慎重に」、横浜市「遺品整理業者に依頼する際の注意」

解約を急ぐと困る契約と早めに止めてよい契約|携帯・火災保険・電気・水道・ガス・サブスク

親が亡くなった後の契約には、早めに止めてよい契約と、止めると後で困る契約があります。

契約止めるか残すかの目安主な理由止める前に確かめること
故人の携帯電話残すネット銀行などの確認に使うネット銀行・ネット証券の有無
火災保険残す(空き家になったと保険会社に伝える)火事や台風の被害、近所への賠償に備える空き家になったときの補償の扱い
電気・水道片付けと売却の見通しが立つまで残す片付けの作業や、不動産会社の査定・内見で使う名義と支払いの口座
都市ガス早めに止めてよい片付けや売却で使う場面が少ない特になし
プロパンガス止めてよい片付けや売却で使う場面が少ない解約するときの精算金の有無
新聞・サブスク・固定電話など早めに止めてよい実家の管理や売却に使わないカード払いにしている契約の支払い方法

もう1つ知っておきたいのが、親の銀行口座の扱いです。銀行が亡くなったことを知ると口座が止まり、公共料金などの引き落としもできなくなります。

残す契約は、早めに相続人の名義と支払い口座に切り替えておきましょう。親の預金で料金を払うときの注意は、「故人の預金で未払いの料金を払うと相続放棄できなくなるおそれがある」の見出しで紹介しています。

故人の携帯は財産の確認が済むまで解約しない

故人の携帯は、ネット銀行やネット証券の確認に使うことがあるので、財産の確認が済むまで残しておきましょう。

ネット銀行やネット証券は、通帳がなく郵便物も少ないため、家族が気づきにくい財産です。手続きのときに、スマホに届く確認コード(SMS)で本人確認をする仕組みも広く使われています。

携帯を先に解約すると、こうした財産を確かめるのに時間がかかることがあります。

画面ロックが外せなかった例

栃木県の消費生活の注意喚起では、亡くなった兄のネット銀行の口座を確かめようと携帯ショップに相談したところ、「初期化はできるが、画面ロックの解除はできない」と言われた例が紹介されています。

パスコードは、手帳やメモ、エンディングノートに書かれていることがあります。片付けの前に探してみてください。

携帯会社によっては、解約のほかに、家族が契約を引き継ぐ「承継」の手続きも用意されています。

ただし、承継すると、それまでの未払い料金も新しい契約者に引き継がれる場合があります。相続放棄を考えているなら、承継の前に専門家に相談しておきましょう。

料金が気になる場合は、引き継いだ後にプランを見直す方法もあります。携帯の中の写真や連絡先も、解約や初期化の前に残しておくと、後から見返せます。

出典: 栃木県「くらしの安全安心情報(デジタル遺品)」

火災保険は解約せず空き家になったと保険会社に伝える

火災保険は、空き家になったことを保険会社に伝えたうえで解体まで残しておくと、火事や台風の被害と、近所への賠償に備えられます。

空き家は人の目が届きにくく、火事や台風の被害に気づくのが遅れがちです。

近所に被害を与えたときの責任にも注意が必要です。民法では、建物などの管理に問題があって他人に損害を与えたとき、まず建物を占有する人が責任を負うと決められています(民法717条)。

占有する人が十分に注意していた場合は、持ち主が責任を負います。たとえば台風で瓦が飛んで隣の家を傷つけた場合、持ち主である相続人が責任を問われることがあります。

一方で、空き家になったことは保険会社に知らせる必要があります。損害保険会社の案内では、空き家は住宅ではなく、店舗や事務所と同じ「一般物件」として扱われることが多いとされています。

知らせずにいると、事故のときに補償を受けられないおそれがあります。保険法でも、契約で決めた通知を、わざと、または大きな不注意で怠った場合は、保険会社が契約を解除できるとされています(保険法29条)。

いったん解約してから入り直そうとしても、空き家は保険料が高くなりやすく、古い建物では加入を断られることもあります。一般物件の契約では、地震保険を付けられない場合もあります。

まずは、今の契約のまま空き家になったらどうなるかを、保険会社や代理店に聞いてみてください。

長い期間の契約を途中で解約すると、払い込んだ保険料の一部が戻ることがあります。親が契約者だった場合、このお金は遺産として扱われる可能性があるため、相続放棄を決める前の解約は控えておきましょう。

契約の名義を相続人に変える手続きも、あわせて保険会社に聞いておけば、やり取りを一度で済ませやすくなります。

出典: e-Gov法令検索「民法」、e-Gov法令検索「保険法」

電気と水道は片付けと売却の見通しが立つまで残す

電気と水道は、片付けの作業や不動産会社の査定・内見で使うので、片付けと売却の見通しが立つまで残しておきましょう。

誰も住んでいない家でも、電気と水道を使う場面は次のとおりです。

  • 片付けの作業(照明、掃除機、トイレ、手洗い)
  • 遺品整理業者の見積もりや作業
  • 不動産会社の査定や、買いたい人の内見

電気がつかない家では、査定のときに家の中が暗く、写真も撮りにくくなります。水が出なければ、作業の途中でトイレも使えなくなります。

残しておく間は、季節ごとに次のような手当てをしておくと、家の傷みや無駄な出費を防げます。

冬(とくに寒い地域)

水道管が凍って破れると、誰もいない家では気づかないまま水が漏れ続け、水道料金が高額になることがあります。

自治体の水道局は、長く留守にする家では、水道メーターの近くにある止水栓を閉めるよう呼びかけています。止水栓を閉めた後に蛇口を開けて、管の中の水を抜く方法も案内されています。

夏

水を長く使わないと、排水口にたまった水が乾き、下水の臭いや虫が上がってくることがあります。実家に行くたびに、台所や洗面所、トイレの水を流しておきましょう。

内見のときに臭いがすると、家の印象が悪くなります。

電気を残す間は、使わない家電のコンセントを抜いておくと、無駄な電気代を抑えられます。照明や換気扇、防犯用のセンサーライトも使えるので、空き家の管理がしやすくなります。

出典: 広島市水道局「水道管を寒さから守りましょう!」、呉市「水道水の凍結及び水道管の破損防止」、有田市「水道管の凍結について」

都市ガスは早めに止めてよいがプロパンガスは精算金を確かめる

都市ガスは早めに止めてかまいませんが、プロパンガスは解約のときに設備の精算金を求められることがあるため、契約書を確かめてから止めましょう。

都市ガスは片付けや売却ではほとんど使わないため、基本料金を払い続けるより、早めに止めたほうが出費を減らせます。

プロパンガスでは、ガス会社が給湯器や配管を無料で取り付け、その費用を毎月のガス代で少しずつ回収していることがあります。この場合、途中で解約すると、残りの費用を精算金として請求されることがあります。

解約の前に、ガス会社との契約書や、設備の貸し出しに関する書類を見ておくと、精算金の有無が分かります。

2025年4月からは、プロパンガスの料金を「基本料金」「使った量に応じた料金」「設備の料金」に分けて示すことが、事業者に義務づけられました。

毎月の請求書に設備の料金が書かれていれば、設備の費用を払い続けている手がかりになります。

精算金をめぐる最高裁判所の判決

2025年12月23日、最高裁判所は、ガスの供給を始めてから10年以内に契約を終えると配管の設置費用などを支払う、という契約の決まりを、消費者契約法によって無効と判断しました。

ただし、結論は契約の中身や事情によって変わり得ます。請求に納得できないときは、消費者ホットライン(188)で消費生活センターに相談できます。

出典: 資源エネルギー庁「三部料金制の徹底(設備費用の外出し表示・計上禁止)に関するQ&A」、裁判所「令和6(受)204 残存費用等請求事件 令和7年12月23日 最高裁判所第三小法廷判決」

新聞やサブスクは通帳とカード明細から見つけて早めに止める

新聞やサブスクは実家の管理や売却に使わないので、通帳とカード明細から契約を見つけて早めに止めると、払うお金を減らせます。

早めに止めてよい契約には、次のようなものがあります。

  • 新聞、健康食品などの定期便
  • 動画配信などのサブスク
  • インターネット回線
  • 固定電話
  • NHKの受信契約(テレビを処分する場合)

親がどんな契約をしていたかは、次の3つから探せます。

  • 通帳の引き落とし欄
  • クレジットカードの利用明細
  • 家に届く郵便物やメール

片付けの前に抜き出しておいた通帳や郵便物が、ここで役立ちます。

クレジットカードを止めるときは、順番に注意が必要です。電気や水道など、残す契約をカード払いにしている場合、先にカードを止めると支払いが止まります。

残す契約の支払い方法を変えてから、カード会社に連絡しましょう。

サブスクがすぐに解約できなかった例

栃木県の消費生活の注意喚起では、夫の携帯を解約した後にスマホのセキュリティのサブスクが残っていて、IDとパスワードが分からないとすぐには解約できないと言われた例が紹介されています。

IDやパスワードが分からないときは、サービスの問い合わせ窓口に亡くなったことを伝えて、手続きを相談してみてください。

出典: 栃木県「くらしの安全安心情報(デジタル遺品)」

実家の解体を先に進めると損をする理由|固定資産税・補助金・空き家特例・売却

片付け・解約・解体の中で、いちばん元に戻せないのが解体です。

解体を先に進めて損をする理由は、税金・補助金・特例・建て直し・売り方の5つです。どれも、売り方が決まってから解体すれば避けやすくなります。

解体業者や不動産会社は、それぞれの立場から解体や売り方を勧めてくれます。ただ、相続した人の税金や特例まで見てくれるわけではないので、話を聞く前に5つの理由を知っておくと判断しやすくなります。

建物がなくなると土地の固定資産税が上がる

家を解体すると、土地の固定資産税を安くしている特例が外れ、翌年度から税金が上がります。

家が建っている土地には「住宅用地の特例」があります。総務省の資料では、税金を計算するもとになる額が、200㎡までの部分は土地の評価額の6分の1に下げられています。

200㎡を超える部分(家の床面積の10倍まで)は、評価額の3分の1です。家を解体すると、この特例が外れます。

よく「解体すると固定資産税が6倍になる」と言われますが、実際にはそこまで上がらないことが多いです。住宅用地でない土地には、計算のもとになる額を評価額の70%までにおさえる仕組みがあるためです。

神戸市は、特例が外れると土地の固定資産税は一般的に3.5倍程度になると案内しています。

神戸市の計算例(仮の数字)

神戸市が示している例で、市街化区域にある敷地100㎡、評価額1,500万円の土地を仮に置いています。

  • 特例があるときは、固定資産税が1,500万円×6分の1=250万円に税率1.4%をかけて35,000円、都市計画税が1,500万円×3分の1=500万円に税率0.3%をかけて15,000円で、合計50,000円
  • 特例が外れたときは、固定資産税が1,500万円×70%=1,050万円に税率1.4%をかけて147,000円、都市計画税が1,050万円に税率0.3%をかけて31,500円で、合計178,500円

自分の土地では、200㎡までの部分について「評価額×6分の1×1.4%」と「評価額×70%×1.4%」を比べると、上がり方の見当がつきます。評価額は固定資産税の課税明細書に載っています。都市計画税の税率や実際の税額は市区町村ごとに違うため、資産税の担当窓口で確かめてみてください。神戸市も、計算はあくまで例で、土地の状況によって異なる場合があるとしています。

自分の土地でいくら上がるかは、市区町村の資産税の担当窓口で聞けます。

もう1つ大事なのが日付です。固定資産税は、毎年1月1日の時点の状態で決まります。

1月1日に家が建っていれば、その年度の土地の税金は安いままです。12月に解体を終えると翌年度から上がりますが、年明けに回せば、税金が上がる時期を1年遅らせられることがあります。

自治体によっては、解体した後の税金を一定の期間減らす制度もあります。

自治体対象減らす期間主な条件
千葉市1年以上空き家だった住宅を解体した土地解体の翌年度の1年分2026年8月1日から2031年1月1日までの解体が対象。解体した翌年の4月末までに申請する
三条市倒壊などの危険があると市が認めた空き家を解体した土地最大2年度分解体前に申請し、市の調査を受ける

どちらも、解体した後では申し込めなかったり、決まった時期の解体に限られたりします。実家のある市区町村に同じような制度があるか、解体の前に調べてみてください。

一方で、家を残していても税金が上がる場合があります。屋根や外壁が大きく壊れている、管理されずに放置されている、といった空き家は、市区町村から勧告を受けると特例が外れます。

神戸市も、勧告を受けた空き家や、住宅と認められない状態の空き家は、特例の対象外になると案内しています。傷みが激しい家では、解体したほうがよい場合もあります。

出典: 総務省「固定資産税の概要」、神戸市「空き家と固定資産税」、千葉市「空き家解体後の土地の固定資産税等の減免」、三条市「倒壊などの危険のある空き家を解体した場合の土地の固定資産税等を減免」

交付決定より前に解体の契約や着工をすると補助金が出ない

解体の補助金は、交付決定の通知を受け取る前に解体業者と契約したり、工事を始めたりすると、受け取れなくなります。

多くの市区町村に、古い空き家の解体費用の一部を補助する制度があります。

熊本県八代市の手引きには、交付決定の前に工事の契約を結んだり解体を始めたりした場合は補助金を受け取れない、と書かれています。神奈川県厚木市も、交付決定の前に始めた工事を対象外にしています。

補助金を使うときは、おおむね次の順番で進みます。

  1. 市区町村の窓口に相談する(建物の調査が必要な市区町村もある)
  2. 解体業者から見積もりを取る(見積もりはこの段階で取ってよい)
  3. 補助金を申請する
  4. 交付決定の通知を受け取る
  5. 解体業者と契約し、工事を始める
  6. 工事が終わったら完了を報告する
  7. 補助金を受け取る

補助金には、主に次のような条件があります。

  • 長く空き家になっていて、建物が古く傷んでいる(市区町村の調査で判定されることが多い)
  • 市区町村の税金を滞納していない
  • 相続人が複数いる場合は、全員が解体に同意している

金額も市区町村ごとに違い、八代市は上限60万円、厚木市は上限50万円(解体費用の2分の1まで)です。

年度ごとの予算があり、予算を超えると受け付けられない、申し込みが多いと抽選になる、といった場合もあります。

解体業者が補助金の申請を手伝ってくれることもありますが、契約を結ぶ時期を守るのは依頼する人です。交付決定の通知を受け取るまでは、契約書へのサインは待っておきましょう。

出典: 八代市「老朽危険空き家等除却促進事業 補助制度利用の手引き(令和8年度)」、厚木市「老朽空き家の解体工事補助金」

解体後に土地を貸したり売却が遅れたりすると空き家の3,000万円控除が使えない

解体した土地を売れるまで駐車場として貸したり、売る時期が期限を過ぎたりすると、空き家の3,000万円控除が使えなくなるおそれがあります。

親から相続した空き家やその土地を売ったときは、売って得た利益から最大3,000万円を差し引ける特例があります。正式には「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」といいます。

国税庁の案内のうち、解体に関わる条件は次のとおりです。

対象になる家

  • 昭和56年5月31日以前に建てられた家
  • マンションなどの区分所有の建物ではない家
  • 親が亡くなる直前に、親以外に住んでいた人がいない家

親が老人ホームなどに入っていた場合も、条件を満たせば対象になります。

解体して土地を売る場合の条件

  • 相続してから解体するまで、家を住まい・貸し出し・仕事に使っていない
  • 相続してから売るまで、土地を住まい・貸し出し・仕事に使っていない
  • 解体した後、売るまでに建物などを建てていない

解体した土地を売れるまでの間だけ駐車場として貸すと、「貸し出し」に当たり、特例が使えなくなるおそれがあります。

売る時期と金額の条件

  • 相続した日から3年がたつ日の属する年の12月31日までに売る
  • 売った金額が1億円以下
  • 家族や親族など、特別な関係のある人に売るのではない

たとえば2026年3月に親が亡くなった場合、期限は2029年12月31日です。片付けや解体に時間をかけすぎると、この期限を過ぎてしまいます。

また、この特例そのものは、今のところ2027年12月31日までに売った場合が対象です。

自分で解体しなくても使える

実は、2024年1月1日以降に売る場合は、家が建ったまま売り、売った翌年の2月15日までに買主が解体(または耐震改修)すれば、この特例を使えます。売主が先に解体しなくても、特例を受けられるのです。

なお、2024年1月1日以降の売却で、家と土地を相続した人が3人以上いる場合は、差し引ける額は1人あたり2,000万円までになります。

出典: 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

再建築不可や市街化調整区域の土地は解体すると建て直せない

家の前の道路が狭い土地や、市街化調整区域の土地では、今の家を壊すと新しい家を建てられなくなることがあります。

再建築不可の土地

建築基準法では、家を建てる土地は、原則として幅4m以上の道路に2m以上接している必要があります(建築基準法42条・43条)。

古い住宅地には、この条件を満たしていない土地があります。今の家があるうちは住めても、壊すと新しく建てられない土地を「再建築不可」と呼びます。

再建築不可の土地は建て直しができないため、買いたい人が限られます。解体して更地にしても、建て直せない土地であることは同じです。

家の前の道が幅4m未満で、建築基準法上の道路とみなされている場合は、建て直すときに道の中心から2mの線まで敷地を下げる必要があります(セットバック)。建て直せても、使える土地が狭くなることがあります。

市街化調整区域の土地

市街化調整区域は、街が広がりすぎないよう、建物を建てることを抑えている区域です。家を解体して更地にすると、建て直しが認められにくくなることがあります。

千葉市も、解体予定の住宅が市街化調整区域にある場合などは、解体すると建て替えができなくなることがあると注意を呼びかけています。

埼玉県久喜市のように、市街化調整区域の空き家を解体した後も、最大3年間は建物があるものとみなす制度を設けている市もあります。扱いは市区町村ごとに違い、久喜市も解体する前の相談を呼びかけています。

実家の土地がどちらに当たるかは、市区町村の建築や都市計画の担当窓口で確かめられます。相談のときには、残しておいた図面や測量図、建築確認の書類が役立ちます。

出典: e-Gov法令検索「建築基準法」、千葉市「空き家解体後の土地の固定資産税等の減免」、久喜市「市街化調整区域内の老朽化した空家等の除却」

古家付きのまま売るほうが手取りが多くなる場合がある

家を残したまま「古家付き」で売ると、解体費用を払わずに済むため、更地にして売るより手元に残るお金が多くなる場合があります。

「古い家は壊して更地にしたほうが売れる」と聞くこともあるでしょう。たしかに、場所によっては更地のほうが買い手が見つかりやすいこともあります。

古家付きで売るよさは、主に次のとおりです。

  • 買う人が、リフォームして住むか建て替えるかを選べる
  • 売る人が、解体費用を先に払わずに済む
  • 解体しないので、固定資産税の特例が外れず、補助金の順番を気にする必要もない

解体には、以前より手間がかかるようになっています。

2022年4月からは、解体する部分の床面積が80㎡以上の工事で、石綿(アスベスト)の事前調査の結果を国や自治体に報告することが義務になりました。こうした手間も、解体費用に含まれます。

更地のほうが売れやすい場所でも、買い手が決まってから売主が解体し、更地で引き渡す条件で売る方法があります。この方法なら、売れるか分からないうちに解体費用をかけずに済みます。

買主が解体する形で売れば、空き家の3,000万円控除を使える方法もあります。

解体を決める前に、不動産会社に「古家付きで売る場合」と「更地で売る場合」の両方の査定を頼んでみてください。査定は無料で受けられることが多く、複数の会社に頼めば比べる材料がそろいます。

出典: 環境省「4月1日から石綿の事前調査結果の報告制度がスタートします」、国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

片付け・解約・解体を進める流れ|相続放棄の3か月・固定資産税の1月1日・空き家特例の期限に合わせる

実家の整理は、相続放棄の3か月、固定資産税の1月1日、空き家特例の売却期限という日付を目安に順番を決めると、損を避けやすくなります。

期限何の期限か関係する作業詳しく紹介している見出し
相続人になったと知った時から3か月以内相続放棄をするかの期限(期限を延ばす申し立てもこの期限内)借金の調査、遺品の処分、親の預金での支払い3か月以内に借金を調べて相続放棄をするか決める
不動産を相続したと知った日から3年以内相続登記の申請の期限実家の売却の準備実家を売るか残すかと片付けの費用の分担を相続人で決める
毎年1月1日固定資産税を決める日解体を終える時期建物がなくなると土地の固定資産税が上がる
相続した日から3年がたつ日の属する年の12月31日空き家の3,000万円控除を使うための売却の期限解体と売却の時期解体後に土地を貸したり売却が遅れたりすると空き家の3,000万円控除が使えない
毎年度(市区町村ごとに異なる)解体の補助金の受付期間と予算補助金の事前相談と申請交付決定より前に解体の契約や着工をすると補助金が出ない

進める順番は、元に戻せる準備、相続放棄の判断、相続人どうしの話し合い、片付けと解約、解体の5段階です。

亡くなってすぐは記録・戸締まり・書類探しから始める

家の中の記録、戸締まり、書類探しは、相続放棄の判断より前でも、亡くなってすぐに始めて大丈夫です。

  • 家の中と家財を写真で記録する
  • 戸締まりをする、冷蔵庫の中の腐る物を捨てる
  • 遺言書と、通帳・借用書・郵便物・家の書類を探して1か所にまとめる

写真の記録は、兄弟・姉妹に家の様子を伝えるとき、遺産の分け方を話し合うとき、相続放棄をした場合に手をつけていない品を説明するときに使えます。

戸締まりや腐る物の処分は財産を守るための作業なので、相続放棄の妨げにはならないと考えられます。

遺言書と書類の探し方は、「遺言書の有無を片付けの前に確かめる」と「通帳・借用書・郵便物は預金と借金の手がかりとして残す」の見出しで紹介しています。

不動産会社の査定も、この時期から頼めます。査定は家の価値を見てもらう手続きで、遺産の処分とは別の行為です。

実家がいくらで売れそうかが分かれば、借金と比べて相続放棄をするか判断する材料になります。

出典: e-Gov法令検索「民法」

3か月以内に借金を調べて相続放棄をするか決める

相続放棄をするかは、親が亡くなったと知った日から3か月以内に決める必要があるので、借金の調査は早めに始めておきましょう。

期限は、原則として「自分が相続人になったと知った時から3か月以内」です。葬儀や役所の手続き、四十九日の準備が続く間にも、この期限は進みます。

借金は、見つけた書類や郵便物のほかに、信用情報機関に問い合わせて調べられます。信用情報機関は、ローンやクレジットカードの利用状況を記録している機関です。

主な機関は次の3つで、どれも亡くなった人の情報を法定相続人が請求できます。

機関主に分かる借入
全国銀行個人信用情報センター銀行などからの借入
CICクレジットカード、分割払いなど
JICC(日本信用情報機構)消費者金融など

請求には、親が亡くなったことと、自分が相続人であることが分かる戸籍謄本など(または法務局で作る「法定相続情報一覧図」)が必要です。

手数料や書類は機関ごとに違うので、それぞれの公式サイトで確かめてから申し込んでみてください。

信用情報機関で分かるのは、加盟している会社からの借入に限られます。知人からの借金などは、書類探しで補いましょう。

3か月で調べきれないときは、親の最後の住所地を受け持つ家庭裁判所に、期限を延ばす申し立てができます。この申し立ても3か月以内に行う必要があるため、期限が近づく前に判断しておくと慌てずに済みます。

出典: 全国銀行個人信用情報センター「本人開示の手続きについて」、CIC「亡くなった方の開示申込手続き」、JICC「法定相続人等による開示」、裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」

実家を売るか残すかと片付けの費用の分担を相続人で決める

相続放棄をしないと決めたら、次は相続人どうしで実家の扱いを話し合っておきましょう。

話し合いで決めておきたいのは、次の3つです。

  • 実家を誰が受け継ぐか
  • 実家を売るか、残すか、解体するか
  • 片付けや管理にかかる費用を、誰がいくら出すか

四十九日の法要など、親族が顔をそろえる機会を使うと、話し合いを進めやすくなります。写真や書類の一覧を見せられるようにしておけば、話もまとまりやすくなります。

遺産分割で実家を受け継ぐ人が決まれば、その人の判断で片付けや解体を進められます。決まるまでは相続人全員で共有している状態なので、大きな作業には全員の同意が必要です。

相続登記の期限も、このときに確かめておきましょう。2024年4月1日から、相続で不動産を取得した人は、それを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。

正当な理由なく申請しないと、10万円以下の過料の対象になります。2024年4月1日より前の相続で登記していない場合も対象で、期限は2027年3月31日です。

実家を売るには、先に相続登記を済ませる必要があります。

解体の補助金を考えているなら、同意書の準備も早めに始めておくと手続きが止まらずに済みます。八代市や厚木市のように、相続人が申請するときに相続人全員の同意を求める市区町村があります。

連絡を取りにくい兄弟・姉妹がいると、同意書がそろうまでに時間がかかります。

出典: 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」、法務省「相続登記の申請義務化について」、八代市「老朽危険空き家等除却促進事業 補助制度利用の手引き(令和8年度)」、厚木市「老朽空き家の解体工事補助金」

片付けと解約は見積もりと査定をそろえてから進める

片付けと解約は、遺品整理業者の見積もりと不動産会社の査定をそろえてから進めると、費用と売れる値段を見比べて判断できます。

  • 遺品整理業者の見積もり(複数の業者から)
  • 不動産会社の査定(「古家付きで売る場合」と「更地で売る場合」の両方)

見積もりと査定がそろえば、片付けにいくらかかり、実家がいくらで売れそうかが見えてきます。業者に頼む範囲や解体するかも、その金額をもとに決められます。

解約は、新聞やサブスクなど、止めてよい契約から始めましょう。電気と水道は、片付けの作業と査定や内見が終わるまで残しておけば、作業にも内見にも使えます。

どの契約を止めてよいかは、「解約を急ぐと困る契約と早めに止めてよい契約」の見出しにまとめています。

解約したときの書類は捨てずに残す

解体の補助金や、解体後の税金の減免では、「1年以上空き家だったこと」の証明を求められることがあります。千葉市や厚木市は、電気・水道・ガスを止めた日が分かる書類などを証明に使えると案内しています。

出典: 千葉市「空き家解体後の土地の固定資産税等の減免」、厚木市「老朽空き家の解体工事補助金」

解体の時期は固定資産税の1月1日と空き家特例の期限に合わせて決める

解体の時期は、固定資産税が決まる1月1日と、空き家特例の売却期限の2つの日付を見て決めると、税金で損をしにくくなります。

1つめは固定資産税の1月1日

固定資産税は、毎年1月1日の時点の状態で決まります。1月1日を過ぎてから解体を終えれば、その年度の土地の税金は安いままです。

年末に急いで解体を終えると、翌年度から税金が上がります。「年内に片付けたい」という気持ちがあっても、お金の面では年明けに回したほうが得になることがあります。

2つめは空き家特例の売却期限

空き家の3,000万円控除を使うには、相続した日から3年がたつ日の属する年の12月31日までに売る必要があります。2026年3月に相続した場合、期限は2029年12月31日です。

売りに出して買い手が見つかるまでの期間、解体工事、補助金の手続きには、それぞれ時間がかかります。期限の年になってから動き出すと、売却が期限に間に合わないおそれがあります。

遅くとも期限の前の年のうちに解体するかを決めておけば、売り出しから引き渡しまでの時間を確保しやすくなります。

補助金を使う場合は、市区町村ごとに受付期間と予算が決まっています。八代市では受付期間を決めて募集し、申し込みが多ければ抽選を行っています。解体を考え始めた時点で、市区町村の窓口に相談しておきましょう。

実家を売るなら、買い手が決まってから解体すると、固定資産税・補助金・空き家特例のどれでも損をしにくくなります。

古家付きのまま売る方法と、買い手が決まってから更地にして引き渡す方法を、不動産会社と比べてみてください。

出典: 総務省「固定資産税の概要」、国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、八代市「老朽危険空き家等除却促進事業 補助制度利用の手引き(令和8年度)」

まとめ:遺品の処分と解体は、相続放棄の判断と相続人の同意を確かめてから進める

実家の整理でいちばん取り返しがつかないのは、相続放棄の判断より前に遺品を処分したり、家を解体したりすることです。借金が後から見つかっても相続放棄はできず、解体した家も元には戻らないため、処分と解体は借金の有無と相続人全員の同意を確かめてから進めましょう。

次の一歩は、親が亡くなったと知った日から3か月以内に、通帳や郵便物、信用情報機関で借金を調べることです。この調べを飛ばして片付けを進めると、後から督促が届いたときに、その借金も受け継ぐことになります。

借金の調べがついたら、遺言書の有無と、実家の土地で建て直しができるか、解体の補助金や減免の制度があるかを、法務局や公証役場、市区町村の窓口で確かめてみてください。実家と相続の地図帳「つぐーる」では、実家の片付け・解約・解体を進める前に確かめたい書類や期限、損をしない進め方の順番も含めて、相続や実家について悩むあなたに経験に基づいた情報を提供しています。