古い実家の建物価値の確かめ方|査定ゼロでも土地・解体費・買い手で見直す

実家の査定で「建物の価値はゼロです」と言われると、家全体に値段が付かないように感じてしまいます。

けれど、その「ゼロ」は柱や基礎を調べた結果というより、築年数だけで値を付ける長年の慣行から出てきた数字であることがほとんどです。

土地・建物・解体費・買い手の4つに分けて確かめると、同じ「ゼロ」でも手取りが変わることが見えてきます。

古い実家の建物が価値ゼロと言われる理由

「ゼロ」の出どころを知ると、その数字をそのまま受け入れなくてよいと分かります。

値付けの元は国税庁の耐用年数表で、国土交通省はその慣行に改善を求めています。同じゼロでも値を付けないだけの場合と解体費を引いている場合があり、税の評価では建物に値が残ります。

木造22年の耐用年数が値付けに流用されてきた経緯

「築20年を過ぎた木造は建物ゼロ」という値付けの元は、税金の計算で使う減価償却の耐用年数です。

国税庁の耐用年数表では、木造の住宅用建物は22年とされています。この22年は、建物の取得費を何年に分けて経費にするかという会計上の年数で、22年を過ぎた家が住めなくなるという意味は含まず、住宅の寿命や売れる値段とは別の物差しです。

ところが、中古の一戸建ては建物の価値を反映した取引事例が少なく、仲介の査定ではこの耐用年数が参考にされてきました。国土交通省の指針でも、法人税法上の耐用年数(木造住宅は22年)などを参考にして、住宅の状態にかかわらず一律に築後20〜25年程度で市場価値がゼロとされる取り扱いが一般的だと書かれています。

つまり「建物ゼロ+土地値」という査定は、実家の柱や基礎を見て出た答えというより、築年数を耐用年数表に当てはめただけの簡便な値付けであることが多いといえます。

出典: 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」、国土交通省「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」

国が改善を求めた「築20〜25年で一律ゼロ」の慣行

この慣行は、国が改善を求めた対象でもあります。

国土交通省は2014年(平成26年)3月31日に「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」を策定し、個別の住宅の状態にかかわらず一律に築後20〜25年で建物の市場価値をゼロとする慣行が、中古住宅流通の阻害要因になっていると指摘しました。

指針では、住宅を「基礎・躯体」と「内外装・設備」に大きく分けて評価します。基礎・躯体は性能に応じて20年より長い耐用年数を設定し、長期優良住宅なら100年超の耐用年数も許容します。そして基礎・躯体の機能が維持されている限り、リフォームをすれば住宅の価値は回復・向上するととらえ、評価に反映するのが基本方針です。

指針の「ポイント」資料には、築30年の一戸建てで、従来の相場が1,500万円(建物0円+土地1,500万円)だった物件を、新しい評価手法で建物900万円+土地1,500万円の参考価格2,400万円程度と算出する例が載っています。

見方建物土地合計
従来の相場(築年数だけで判断)0円1,500万円1,500万円
指針の考え方で算出した参考価格900万円1,500万円2,400万円程度

この指針を受けて、2015年(平成27年)7月31日には宅建業者が査定の根拠として使う不動産流通推進センターの「既存住宅価格査定マニュアル」が改訂され、住宅の性能やリフォームの状況を反映した査定ができる形になりました。

ただし、この考え方が現場の値付けにどこまで浸透しているかは、会社や地域によって差があります。それでも「築20年超だからゼロ」は国が改善を求めた慣行であり、そのまま受け入れなくてよい値付けだと覚えておきましょう。

出典: 国土交通省「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」の策定について、国土交通省「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針のポイント」、国土交通省「既存住宅価格査定マニュアル」の改訂について

「値を付けない」と「解体費を差し引く」の2種類のゼロ

業者の言う「建物はゼロ」には、2種類あります。

ここを聞き分けると、土地・建物・解体費を分けて見る意味がはっきりします。

ゼロの種類意味査定額の構造手取りへの影響
①値を付けないゼロ建物に値段を付けず、土地の値段だけで売る(古家付き土地)土地の想定価格解体費は売主が出さない
②解体費を差し引くゼロ建物をマイナスとして扱い、更地にしたときの価格から解体費を引く更地想定価格 − 解体費解体費の分だけ手取りが減る

同じ「ゼロ」と聞いても、①なら建物は土地に乗っている「おまけ」として扱われているだけで、②なら建物は「取り除くのにお金がかかる負債」として扱われています。解体費の分だけ、同じゼロでも手取りが変わります(解体費の目安は「解体費を確かめる方法」の章で扱います)。

査定書に「建物0円」とだけ書いてあっても、土地の金額が近隣の更地相場より低ければ、②の解体費が内側で引かれている可能性があります。「このゼロは①と②のどちらですか」「解体費を引いているなら、いくら見ましたか」と聞いてみてください。査定を理解するための自然な質問です。

固定資産税の評価額が建物に残っている理由

業者はゼロと言うのに毎年の課税明細書には建物の評価額が載っているのは、市場の値付けと税の評価が別の物差しだからです。

固定資産税の家屋の評価額は、同じ建物を今建てたらいくらかかるかという「再建築価格」に、年数の経過による損耗を表す「経年減点補正率」を掛けて求めます。この補正率は0.2が下限で、一定の年数を過ぎた家屋はすべて0.2に据え置かれます。そのため、古い家屋でも評価額は再建築価格の2割で止まります。

相続税で家屋を評価するときも、この固定資産税評価額に1.0を乗じた金額を使います。つまり税の世界では、古い実家の建物にも評価額が残ります。

物差し建物の値決め方
仲介の査定(市場価格)ゼロになり得る築年数と取引事例から業者が意見を述べる
固定資産税評価額再建築価格の2割が下限再建築価格×経年減点補正率
相続税の家屋評価固定資産税評価額と同額固定資産税評価額×1.0

どちらが正しいという話ではなく、税の評価は建物そのものの価値に、市場価格は買い手が払う金額に着目しているという違いです。この違いを知っていれば、「ゼロ」と聞いた瞬間に家全体の価値まで諦めずに済みます。

出典: 秋田市 よくある質問「築35年以上で資産価値がないと思う家に固定資産税がかかるのはなぜか」、国税庁 タックスアンサーNo.4602「土地家屋の評価」

建物の状態を確かめる方法

建物に値が付くかを分けるのは、「新耐震基準の建物か」と「基礎・躯体と雨仕舞い(雨水を防ぐ部分)が生きているか」の2点です。

自分の目で見る、書類で確かめる、専門家に調べてもらう、証明を付ける、という4段階で確かめられます。

建築確認日で新耐震か旧耐震かを判定する

最初に確かめるのは、実家が新耐震基準の建物であるかです。

新耐震基準とは、昭和56年(1981年)6月1日の建築基準法改正で変わった耐震基準のことです。

間違えやすいのが、判定の基準日です。新耐震か旧耐震かは、登記簿の新築年月日や完成した日ではなく、建築確認を受けた日で判定します。自治体の耐震補助でも、笠間市のように対象を「昭和56年5月31日以前に建築確認を受けて着工され建築されたもの」と定めている例があります。昭和56年の秋に完成した家でも、建築確認が5月以前なら旧耐震になります。

建築確認の日は、「確認済証(昔の呼び方は確認通知書)」や「検査済証」に書かれています。実家の書類棚や、家を建てたときの契約書の束を探してみてください。

見つからない場合は、実家のある市区町村(または都道府県)の建築指導課で、建築確認の台帳に記録が残っていれば「台帳記載事項証明書」を発行してもらえます。これは確認済証の再発行ではなく、台帳に書かれた確認済証の交付年月日や番号などを証明する書類です。

確かめる順何を見るかどこで
1確認済証(確認通知書)・検査済証の交付日実家の書類・建築時の契約書類
2台帳記載事項証明書市区町村・都道府県の建築指導課
3登記簿の新築年月日(参考)法務局・登記情報

ここまで気にする理由は、旧耐震か新耐震かが買い手側の制度に直結するからです。たとえば中古住宅で住宅ローン控除を使うには、昭和57年1月1日以後に建築された家であるか、それより前の家なら耐震基準に適合していると証明されたものであることが要件になっています。既存住宅売買瑕疵保険にも、新耐震への適合を条件にする商品があります。買い手がこれらを使えるかで、建物に値を付けやすいかが変わります。

旧耐震でも買い手は付きますし、耐震改修で要件を満たす方法もあります。ただ、値付けの前提として、最初に知っておく条件だといえます。

出典: 横浜市「建物と地震の関係」、笠間市「木造住宅の耐震改修に係る費用の一部を補助します」、東京都都市整備局「台帳記載事項証明書の発行」、国税庁 タックスアンサーNo.1211-3「中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」

基礎・構造・雨漏りを自分の目で点検する

国の指針が建物を「基礎・躯体」と「内外装・設備」に分けるように、自分の目で見るときも分けて見ると整理しやすくなります。

見る順は「構造」「水」「設備」の3つです。

区分見るところ気になるサイン
構造建物や床の傾き、基礎のひび割れ、床のたわみビー玉が転がる、建具が閉まらない、基礎に幅のあるひびが走る
水雨漏りの跡、天井や壁のしみ、床下の湿気、シロアリ天井に茶色い輪じみ、押し入れのカビ臭、床下換気口まわりの土の湿り、柱の根元の蟻道(土のトンネル)
設備給排水・電気・給湯の動作水が出るか、排水が流れるか、ブレーカーが落ちないか、給湯器が動くか

このうち値付けを左右するのは「構造」と「水」です。指針でも、木造住宅の躯体は防蟻処理や防水・防湿が適切に行われていれば蟻害や腐朽が発生せず、長期間機能を維持できるとされています。逆に言えば、傾き・大きなひび・雨漏り・シロアリの4つに致命傷がなければ、建物は確かめる価値がある状態です。設備の古さは交換で直せるので、構造や水より軽く見てよい項目です。

ただし、自分の目で見て「問題なさそうだ」と思っても、それで安全と決めるのは早すぎます。床下や小屋裏は見えず、傾きは慣れると感じにくくなります。自分の点検は、専門家の調査に進むかを決めるための下見と考えておきましょう。

点検と同時に、設計図面、増改築やリフォームの契約書と領収書、給湯器や屋根の工事の保証書、シロアリ防除の記録などの書類も探して揃えておきましょう。建物状況調査で調査員が参考にしますし、不動産会社に査定の根拠として出す材料にもなります。

経験者の声:床下を見てもらって初めて「使える家」だと分かった

「業者には古いからゼロと言われましたが、点検口から床下を見てもらったら土台も柱も乾いていて、シロアリの跡も見当たらないと分かりました。雨漏りの跡は1か所だけで、そこは屋根の修理の領収書が残っていました。この結果を伝えてから、業者の話し方が変わりました」(母の実家を相続した方)

出典: 国土交通省「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針のポイント」

建物状況調査(インスペクション)を依頼する

自分の目で致命傷がなさそうだと分かったら、次は専門家に調べてもらう「建物状況調査(既存住宅状況調査、いわゆるインスペクション)」です。

宅建業法では、建物状況調査を「建物の構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分」の状況の調査で、経年変化その他の建物に生じる事象に関する知識及び能力を有する者として国土交通省令で定める者が実施するもの、と定めています。調べるのは、まさに自分の目で見た「構造」と「水」です。

調査を行うのは、国土交通省の登録を受けた講習を修了した「既存住宅状況調査技術者」です。その講習の登録規程と調査方法の基準は2017年(平成29年)2月3日に公布・施行されました。

この調査は宅建業法にも組み込まれています。2018年(平成30年)4月1日に施行された改正宅建業法により、宅建業者は媒介契約を結ぶときに、建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を書面に記載して渡すこと、調査が行われていれば買主への重要事項説明で結果の概要を説明することが義務になりました。さらに2024年(令和6年)4月1日からは、標準媒介契約約款の改正で、あっせんを「無」とする場合はその理由を記載する欄が設けられました。

つまり、媒介契約の場で「建物状況調査を頼める業者を紹介してもらえますか」と聞くのは、制度が想定している当たり前の会話です。

費用については、国土交通省のQ&Aでも「費用についての基準の設定はなく、各調査実施者により費用は異なります」とされています。延床面積や、床下・小屋裏に入る追加調査の有無で変わるので、依頼先ごとに見積を取って比べてみてください。

限界も知っておきましょう。建物状況調査の結果は、瑕疵(欠陥)の有無を判定するものでも、瑕疵がないことを保証するものでもなく、2024年4月の標準媒介契約約款の改正で、この限界が媒介契約書に明記されるようになりました。また、結果は重要事項説明で買主に開示されるため、悪い結果を隠す道具には使えない仕組みです。その代わり、良い結果は建物に値を付けるための客観的な材料になります。

なお、築古でも調査は受けられます。建物状況調査は築年数で対象外になる制度ではなく、古い家ほど「構造と水が生きているか」を第三者に確かめてもらう意味が大きくなります。調査会社によって受けられる範囲は違うので、依頼時に確かめておきましょう。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」第34条の2、国土交通省「既存住宅状況調査技術者講習制度の創設」、国土交通省「宅地建物取引業法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」を閣議決定、国土交通省「宅地建物取引業法の一部を改正する法律案」を閣議決定、国土交通省「既存住宅流通について(建物状況調査(インスペクション)活用に向けて)」、国土交通省「改正宅地建物取引業法に関するQ&A」

既存住宅売買瑕疵保険の検査で状態を証明する

建物状況調査で大きな問題がなければ、もう一段進めて「保険が付く家」にする方法があります。

それが既存住宅売買瑕疵保険です。

個人が売主になる中古住宅向けの「個人間売買タイプ」は、保険法人の検査に合格した住宅に付けられる保険で、保険期間は1年・2年・5年、保険金額は200万円・500万円・1,000万円から選びます。引き渡し後に構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分に瑕疵が見つかったとき、修補費用などが保険でまかなわれる仕組みです。

買い手から見ると、「保険が付く家」は検査に通った家であり、引き渡し後に何かあっても補償がある家です。住宅ローン控除でも、昭和56年12月31日以前に建築された住宅では、既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約に係る付保証明書が耐震基準を満たす証明書類の一つとして認められています。保険が付くことは、建物に値を付ける根拠になります。

加入の要件は保険法人ごとに定められています。新耐震基準への適合を条件とし、旧耐震の住宅は引き渡し前に新耐震基準に適合させる耐震改修を行う場合に限り対象とする商品があります。そのため、旧耐震の実家では、建築確認日による新耐震・旧耐震の判定を先に済ませておく必要があります。

検査で不適合の箇所が見つかっても、そこを修繕して再検査に通れば加入できるのが通常の流れです。要件の細部(築年数の扱い、傾きやひび割れの基準、検査費用)は商品によって違うため、保険法人か、保険を扱える検査事業者に確認してみてください。

段階誰が分かること買い手に渡せるもの
自分の点検自分致命傷の有無のあたり書類一式(図面・領収書・保証書)
建物状況調査既存住宅状況調査技術者構造と水の劣化・不具合の有無調査結果の報告書(重要事項説明で開示)
瑕疵保険の検査保険法人の検査保険の基準に適合するか付保証明書・保険

建物に値が残ると分かっても、家全体の値段の大半は土地が決めます。

出典: 国土交通省「既存住宅売買瑕疵保険(個人間売買タイプ)」、国税庁 タックスアンサーNo.1211-3「中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」

土地の価値を確かめる方法

古い実家の値段の大半は土地です。

ところが「建物ゼロ」と言われた衝撃で、土地の値付けを確かめずに終わってしまう人もいます。土地の値付けには、役所で確かめる「条件」と、業者に確かめる「前提」の2つがあり、分けて確かめると提示額の読み方が変わります。路線価や取引事例から相場そのものを調べる方法には触れず、条件と前提に絞ります。

接道と道路種別で再建築できるかを確認する

土地の価値を最初に分けるのは、「その土地にもう一度家を建てられるか」です。

建築基準法では、建築物の敷地は道路に2m以上接しなければならないと定められており(接道義務)、ここでいう道路とは原則として幅員4m以上のものを指します。

この条件を満たさない土地は「再建築不可」と呼ばれ、今ある建物を壊すと新しい家を建てられず、土地の値段は大きく下がります。ただし、ここに古い実家ならではの逆転があります。再建築不可の土地では、壊すと建て直せないからこそ、今の建物を壊さずに残すことに価値が出るのです。建物を直して住む・貸すという使い方が、土地だけで売るより高く評価されることがあります。

もう一つ確かめたいのが「42条2項道路」です。幅員4m未満でも、建築基準法が適用された時点で建物が立ち並んでいた道で特定行政庁が指定したものは道路とみなされ、その中心線から2mの線が道路の境界線とみなされます。この場合、建て替えるときは道路の中心から2m下がった位置まで敷地を後退させる(セットバック)必要があり、その分だけ使える敷地が減ります。査定の土地面積がセットバック分を差し引いているかで、提示額が変わります。

道路の状況建て替え土地の値付けへの影響建物を残す意味
幅員4m以上の道路に2m以上接しているできる通常の評価買い手が壊すか使うか選べる
42条2項道路(幅4m未満のみなし道路)に接しているできる(セットバックが必要)後退分だけ敷地が減る同上
接道義務を満たさない(再建築不可)できない大きく下がる壊すと建て直せないため、残す価値が出る

前面道路がどの種別で幅員が何mかは、実家のある市区町村の建築指導課で、道路台帳や指定道路図を見れば確認できます。業者の査定書に「再建築可」「2項道路」などの記載があっても、自分でも窓口で確かめておきましょう。この判定が、土地と建物の両方の価値を決める分かれ目になります。

出典: e-Gov法令検索「建築基準法」第42条・第43条

公簿面積と実測・境界確定の有無を確認する

古い実家は、測量をしていないことがよくあります。

登記簿に書かれた面積(公簿面積)と、実際に測った面積(実測面積)が違う。隣の家との境界がどこか、はっきりしない。こうした状態は、買い手にとって値引きの材料になります。

境界を確定する測量は、隣地の所有者の立ち会いが必要で、費用と時間がかかります。具体の費用は土地の形や隣地の数、地域によって大きく違うので、土地家屋調査士の見積で確かめることになります。先に確かめたいのは、査定が「公簿面積」と「実測面積」のどちらを前提にしているか、そして敷地の角に境界標(金属のプレートやコンクリートの杭)があるかです。

確かめること自分でできること分かること
境界標の有無敷地の角を見て回る境界が物理的に示されているか
過去の測量図の有無実家の書類・法務局の地積測量図実測の記録が残っているか
査定の前提業者に「公簿ですか、実測ですか」と聞く面積の違いが値付けに入っているか

境界が未確定でも、売ること自体はできます。ただ「確定測量を売主の負担で行う」ことが売買の条件になると、その費用と期間が手取りと時期に影響します。業者には、確定測量を前提にした査定なのか、公簿のまま売る前提なのかを聞いておきましょう。

用途地域と都市計画の予定を役所で確認する

土地には、どんな建物をどの大きさまで建てられるかの決まりがあります。

用途地域、建ぺい率、容積率などで、実家のある市区町村の都市計画課で確認できます。多くの自治体はウェブ上の都市計画図でも公開しています。

あわせて確かめたいのが「都市計画道路」などの計画の有無です。都市計画道路の区域内にある土地は建築に制限がかかる一方、将来道路が整備されるときには用地買収の対象になります。再開発や土地区画整理の予定がある地域では、値付けに影響することもあります。個々の計画が実家の土地の値段にどう響くかは、計画の進み具合によって違います。

大事なのは、こうした情報を業者任せにせず、自分でも確かめることです。業者は重要事項説明のために調べますが、それは買い手が決まった後の話です。査定の段階で自分でも窓口に行き、「この土地に何が建てられて、何の計画がかかっているか」を聞いておくと、提示された土地値が妥当かを判断する材料になります。

査定の前提が更地渡しか現況渡しかを確認する

同じ土地でも、「解体して更地で渡す」前提の査定と、「古家付きのまま現況で渡す」前提の査定では、提示額が変わります。

複数の会社に査定を頼んで土地値がばらついたとき、その原因が前提の違いであることはよくあります。

前提査定額の構造売主が負担するもの
解体更地渡し更地想定価格 − 解体費(業者が見込んだ額)解体費・解体の手間・解体後の固定資産税の変化
古家付き現況渡し古家付きの想定価格原則なし(建物の状態は買い手が引き受ける)

A社が「1,500万円」、B社が「1,350万円」と言ったとき、A社が現況渡し、B社が更地渡しで解体費150万円を引いていたなら、2社は同じ土地値を見ています。逆に同じ前提で150万円違うなら、土地の見方そのものが違います。

業者には、次の3つを揃えて聞いてみてください。「更地にした場合の想定価格はいくらか」「解体費をいくら見たか」「古家付きの現況渡しなら想定価格はいくらか」。この3つが出れば、「2種類のゼロ」のどちらなのかもはっきりします。複数社に頼むときは、同じ前提で頼むと比べやすくなります。質問の形は「不動産会社に査定の根拠を確かめる方法」の章にまとめます。

ここで出てきた「解体費」が本当にいくらなのかは、自分の数字に置き換えて確かめられます。

解体費を確かめる方法

「解体費を差し引くゼロ」の解体費が、業者の概算なのか現地を見た見積なのかで、手取りは変わります。

解体費を自分の数字に置き換えたうえで、壊す前に補助・税・負担者の3点を確かめると、壊す判断を急がずに済みます。

現地見積を複数社から内訳つきで取る

木造住宅の解体費には公的な基準額がなく、地域・建物の構造・前面道路の広さで大きく変わります。

一つの例として、長野県が公開している坂城町の空き家相談会の資料では、解体費用は「坪3万円くらいが目安」としたうえで、4t車が入れる道がない、アスベストが含まれている、茅葺や土壁といった状況では金額が高くなるとしています。これは一つの町の相談会での目安で、都市部や敷地の条件によって同じ坪数でも金額は大きく変わります。

査定で差し引かれる解体費は、多くの場合「坪単価×延床面積」の概算で、現地を見て出した見積とは差が出ます。概算が高めに引かれていれば手取りが減り、低めに引かれていれば売却後に自分で払う解体費が想定を超えます。どちらにしても、自分で現地見積を取って置き換えておくと、数字のずれを防げます。

見積は、現地を確認してもらった上で2〜3社から取り、内訳で比べてみてください。「解体工事一式 ○○円」としか書いていない見積は、何が含まれているか分からず、比べる材料になりにくいといえます。

内訳の項目中身見積で確かめること
本体工事建物を壊す費用構造(木造・鉄骨など)と延床面積が合っているか
付帯工事ブロック塀・門・物置・庭木・浄化槽などの撤去何を含み、何を含まないか
残置物処分家の中に残った家具・家電などの処分含まれているか、別料金か
養生・仮設粉じんや騒音を防ぐシート、足場隣家との距離に応じた内容か
整地壊した後に土地をならすどこまでやるか(砕石を敷くか等)
廃棄物処分木材・コンクリート・瓦などの処分費分別と処分費が明記されているか

見積書・契約書・領収書・解体前後の写真は、すべて保管しておきましょう。売却にかかった費用として扱えるかや、補助金の申請で証憑として必要になります。解体費を譲渡費用に含められるかの判断は、税務署か税理士に確認してみてください。

出典: 長野県「R07空家等対策専門家派遣事業 File21(坂城町作成・空き家対策相談会の開催)」

道路幅・残置物・アスベストで上振れする要因を確認する

見積が目安より高いときは、理由があることが多いです。

上振れする主な要因を知っておくと、見積の妥当性を自分で判断できます。

上振れ要因なぜ高くなるか確認すること
前面道路が狭い・重機が入らない手作業や小型重機になり、日数と人手が増える見積に「手壊し」「小型重機」の記載があるか
家財が残っている残置物の運搬・処分費が加算される自分で処分するか、業者に頼むかを決めて見積に反映
アスベスト(石綿)含有建材事前調査と除去の費用が加算される事前調査の費用と、含有が分かった場合の追加費用の扱い
地中埋設物(古い浄化槽・基礎・がれき)掘り出して処分する追加工事になる見つかった場合の精算方法

このうちアスベストは、法律で手順が決まっています。2022年(令和4年)4月1日以降に着工する工事のうち、解体部分の床面積の合計が80㎡以上の建築物の解体工事と、請負金額100万円以上の改修工事は、石綿の使用の有無にかかわらず、事前調査の結果を労働基準監督署と都道府県等に報告することが義務になりました。さらに2023年(令和5年)10月1日以降に着工する工事からは、建築物の事前調査は「一戸建て等石綿含有建材調査者」などの有資格者が行う必要があります。30坪は約99㎡なので、ほとんどの実家が対象です。この調査費は見積に含まれていることもあれば、別建てのこともあります。

もう一つ、建設リサイクル法の届出があります。床面積の合計が80㎡以上の建築物の解体工事は、工事に着手する日の7日前までに都道府県知事への届出が必要です。法律では発注者(つまり実家の所有者)または自主施工者が届け出るものとされ、解体業者に代行してもらう場合は委任状が必要になります。通常は業者が代行しますが、自分の名義で出される届出だと覚えておきましょう。

見積を比べるときは、「アスベストの事前調査は含まれているか」「建設リサイクル法の届出は代行してもらえるか」「残置物はどうするか」の3つを、各社に同じ条件で聞いてみてください。

出典: 厚生労働省「石綿総合情報ポータルサイト」、沖縄労働局「4月から建築物等の解体・改修工事における石綿事前調査結果の報告が義務付けられます!」、e-Gov法令検索「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」第10条、杉並区「建設リサイクル法による届出について」

自治体の除却補助を壊す前に確認する

解体費の一部を自治体が補助してくれる場合があります。

国土交通省の「空き家対策総合支援事業」は、空家法に基づく空家等対策計画に沿って市区町村が行う空き家の除却・活用の取り組みを国が支援する事業で、事業期間は令和8年度から令和12年度までです。この事業などを財源に、老朽化した空き家の解体費を補助する制度を設けている市区町村があります。

ただし、補助の有無・要件・上限額は自治体ごとに違います。たとえば、建物の老朽度の判定を受けること、市税の滞納がないこと、建物に抵当権が付いていないこと、市内の業者が施工すること、といった要件を設けている自治体があり、年度の予算枠に達すると締め切られることもあります。

そして最も大事なのが申請の順番です。多くの補助は「壊す前に申請して、交付決定を受けてから着工する」ことが条件になっており、先に壊してしまうと対象外になります。解体を決める前に、実家のある市区町村の空き家担当窓口に「空き家の除却補助はありますか」「申請はいつまでに、どの順番で行いますか」と聞いてみてください。

補助の確認は「壊す前」が鉄則

解体業者と契約する前、できれば見積を取る段階で、市区町村の空き家担当窓口に補助の有無を確認しておきましょう。交付決定前に着工した工事は対象外とする自治体が多くあります。

出典: 国土交通省「空き家対策総合支援事業」

解体の時期と負担者で変わる固定資産税と特別控除を確認する

解体は「いつ壊すか」「誰が壊すか」で税金が変わります。

壊す時期と負担者を決める前に、住宅用地の特例、放置による特例の解除、空き家の3,000万円特別控除の3つを確かめておきましょう。

1つ目は、住宅用地の特例です。住宅が建っている土地は、固定資産税の課税標準が200㎡以下の部分で6分の1に、200㎡を超える部分で3分の1に軽減されます。この特例は毎年1月1日(賦課期日)の状態で判定され、家屋を取り壊すとその翌年度から固定資産税・都市計画税が変わります。たとえば12月に壊すと翌年1月1日には更地なので、翌年度から軽減がなくなります。売却が決まっていないのに先に壊すと、売れるまでの間、高くなった税金を払い続けることになります。

2つ目は、放っておいても特例が外れる点です。以前は、市区町村長から「特定空家」として勧告を受けた敷地だけが住宅用地特例の対象から除外されていました。2023年(令和5年)12月13日に施行された改正空家特措法で、放置すれば特定空家になるおそれが大きい「管理不全空家」も、市区町村長の勧告を受けると敷地が住宅用地特例の対象から除外されるようになりました。自治体の案内では、特例が解除されると土地の固定資産税・都市計画税が約4倍になるとされています。つまり「壊すと税金が上がる」のは本当ですが、「壊さずに放っておけば安いまま」も成り立たず、管理の状態しだいで上がります。

建物の状態住宅用地特例土地の固定資産税・都市計画税
住宅が建っている(管理されている)適用軽減あり
1月1日時点で更地翌年度から外れる自治体の案内では約4倍
管理不全空家・特定空家として勧告を受けた外れる自治体の案内では約4倍

3つ目は、「空き家の3,000万円特別控除」です。相続した実家を売ったときの譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。主な要件は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、区分所有建物の登記がされておらず、相続開始の直前に被相続人以外に住んでいた人がいなかったこと、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、売却代金が1億円以下であることなどです。令和6年1月1日以後の譲渡で、家屋や敷地を取得した相続人が3人以上いる場合は控除額が2,000万円になります。

ここに、売主側に有利な事実があります。以前(令和5年12月31日までの譲渡)は、この特例を使うには売主が売る前に家を取り壊すか、耐震基準を満たすように改修しておく必要がありました。令和6年1月1日以後の譲渡では、売買契約などに基づき買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修または除却の工事を行った場合も対象になります。適用期間は令和9年12月31日までです。

つまり「特別控除を使うために自分で解体しなければ」と思い込まずに済み、古家付きのまま売って買主が壊す形でも、要件を満たせば控除が使えます。解体費を自分で出さず、住宅用地特例も売るまで維持したまま、控除も受ける、という組み立てができるようになりました。ただし、要件の判定(被相続人が一人で住んでいたか、老人ホームに入所していた場合の扱いなど)と申告は、税務署か税理士に確認してみてください。市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」が必要になる点も覚えておきましょう。

論点壊すと壊さないと確かめる先
住宅用地特例翌年度から外れる管理していれば維持(放置して勧告を受けると外れる)市区町村の固定資産税担当
除却補助壊す前の申請が条件申請してから壊せば対象になり得る市区町村の空き家担当
3,000万円特別控除売主が壊して敷地を売る形で対象買主が翌年2月15日までに壊す・耐震改修する形でも対象税務署・税理士

壊す前に、「壊さない売り方」で建物の価値を市場に確かめる方法もあります。

出典: 総務省「固定資産税」、横浜市「住宅を取り壊して駐車場にした場合の固定資産税は…」、国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」、国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」、e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」第13条、静岡市「空き家の固定資産税・都市計画税」、国税庁 タックスアンサーNo.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置(3,000万円控除)の拡充・延長」

建物に買い手・使い手が付くかを確かめる方法

建物に値が付くかは、最終的には買い手や使い手がいるかで決まります。

「ゼロ=壊すしかない」と決める前に、壊さない売り方で建物の価値を市場に確かめる手段が4つあります。賃貸経営やリノベーションの費用の組み立てには触れず、確かめ方に絞ります。

古家付き土地として売り出して買い手の反応を確かめる

壊す前にまず試したいのが、「古家付き土地」として売り出すことです。

建物を残したまま売りに出せば、買い手が「壊して建てる」か「直して使う」かを選びます。売り手は解体費を出さずに済み、住宅用地特例も売れるまで維持されます。

順番が大事です。先に壊すと元に戻せませんが、古家付きで出して反応が薄ければ、そのとき初めて解体を検討すればよいのです。そのため「まず古家付きで出して、市場の反応を見る」のが現場の定石になっています。

古い家を買って直す買い手は実在します。国土交通省の指針でも、近年の中古戸建て住宅市場では築30年以上の物件が流通する割合が増加していると指摘されています。建物の状態の点検結果と揃えた書類は、この買い手層に向けた材料になります。

再建築不可の土地なら、話はさらにはっきりします。壊すと建て直せないので、建物が残っていること自体が価値になります。この場合、更地にして売る選択肢はそもそも不利で、古家付きで出すのが基本です。

出典: 国土交通省「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」

土地目的・個人・買取業者で分かれる買い手の型を見極める

同じ家でも、誰に売るかで建物の扱いが変わります。

買い手は大きく3つの型に分かれます。

買い手の型建物の扱い価格の構造合う実家
①土地目的の買い手解体前提。解体費分の値引きを求める更地想定価格 − 解体費立地が良く土地値が高い。建物の状態は問わない
②自分で直して住む個人建物を使う。状態と価格が合えば値が付く土地値+建物の評価(状態次第)構造と水が生きている。調査結果・瑕疵保険が訴求材料
③買取・再販業者解体または再販前提更地想定価格 − 解体費 − 業者の利益早く手放したい

①と③にとって建物は「ゼロか負債」ですが、②にとっては「値段次第で欲しいもの」です。建物状況調査の結果や瑕疵保険は、②の買い手に向けた材料で、①や③への説得材料にはなりにくいといえます。そのため、自分の実家の地域に②の買い手がいるかで、建物を確かめる手間をかける意味が変わります。

これを見極めるには、業者に「この家を古家付きで出した場合、どんな買い手が付きそうですか」と聞くのが早いです。「土地を探している人」と答えるか、「直して住みたい若い世帯」と答えるかで、地域の買い手像が分かります。複数の会社に同じ質問をすると、答えの違いから各社の得意分野も見えてきます。

古民家としての価値についても触れておきます。太い梁や土間、蔵などがある家は、一般の仲介では評価されにくい一方で、古民家を専門に扱う業者や移住希望者には需要があることがあります。ただし、どの家でも古民家として値が付くわけではなく、地域や建物の個性によって大きく違います。「古民家だから高く売れる」と「一般の査定でゼロだから古民家としても価値がない」のどちらも言い切れない、という程度に受け止めておきましょう。

空き家バンクで移住・利用希望者の有無を確かめる

不動産会社が扱わない安い家や地方の家にも、使い手を探せる窓口があります。

自治体の空き家バンクと、国土交通省が整備した「全国版空き家・空き地バンク」です。

全国版は、各自治体が把握している空き家の情報を自治体をまたいで検索できる仕組みです。令和8年2月末時点で1,134自治体(全1,788自治体の63%)が参画し、物件掲載件数は19,075件、自治体へのアンケート調査等によるとこれまで約24,700件の物件が成約済みとされています。

空き家バンクは、仲介手数料の採算が合わない安い家でも、移住希望者や地域で使いたい人に見つけてもらえる点が強みです。登録の可否や条件(建物の状態、所有者の要件、仲介を自治体の協定業者が行うかなど)は自治体ごとに違うので、実家のある市区町村の空き家担当窓口に相談してみてください。

限界もあります。空き家バンクは成約を保証する仕組みではなく、登録しても問い合わせが来ない家はあります。また、価格は相場より低めになることが多いです。ただ、「ゼロだから壊す」の前に「使いたい人がいるか」を確かめる窓口として、費用をかけずに試せる手段です。

出典: 国土交通省「全国版空き家・空き地バンク」について

賃料査定で貸せるかどうかを確かめる

売る以外に、貸すという選択もあります。

貸せるかは、不動産会社に賃料の査定を頼めば確かめられます。「この家をこのまま、または最低限の修繕をして貸したら、月いくらで借り手が付きそうか」と聞いてみてください。

ただし、古い実家を貸すには先に修繕費が出ることが多いです。旧耐震や設備の古さで借り手が付きにくい地域もあります。そのため賃料査定は、想定賃料だけで判断せず、「貸せる状態にするための修繕見積」と並べて見ておきましょう。

並べて見るもの聞く先判断の材料
想定賃料と入居の見込み不動産会社(賃貸仲介)月いくらで、どのくらいの期間で借り手が付くか
貸せる状態にする修繕の見積リフォーム会社・工務店水まわり・給湯・電気など最低限の修繕額
貸している間の固定資産税など市区町村住宅用地特例は維持される

賃貸経営の収支そのものには触れませんが、「貸せる家だ」と分かることは、売るときにも役立ちます。貸せる家は使える家であり、②の買い手にも、投資目的の買い手にも訴求できるからです。

最後に一つ念を押します。「活かす」と「放置」は別です。売らず、貸さず、使わずに放っておくと、管理不全空家の勧告に進み、住宅用地特例が外れて税金が上がります。「ゼロと言われたから手を付けない」のは、手取りを減らしやすい選択といえます。

不動産会社に査定の根拠を確かめる方法

確かめた材料は、査定の場で使うと活きます。

根拠を聞くのは業者をやり込めるためというより、納得して任せる相手を選ぶためです。良い会社ほど根拠を説明でき、説明できる会社と組んだほうが結果的に高く・早く売れます。

宅建業法で定められた査定根拠の説明義務を知る

査定の根拠を聞くことは、法律で裏付けられた正当な行為です。

宅建業法第34条の2第2項は、「宅地建物取引業者は、前項第二号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない」と定めています。査定額は「売買すべき価額」についての業者の意見であり、根拠の明示は義務です。

その根拠として何が認められるかも決まっています。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では、意見の根拠は、不動産流通推進センターが作成した価格査定マニュアル(またはこれに準じたもの)や、同種の取引事例等、他に合理的な説明がつくものであることとされています。そしてこの価格査定マニュアルは、建物評価の改善指針に沿って改訂されています。

つまり「築20年を超えているので建物はゼロです」という説明だけでは、法律が求める根拠に届いていないといえます。「ゼロと判断した根拠を教えてください」は、業者を疑う質問ではなく、法律が業者に求めている説明をそのまま求めているだけです。

一つ添えておくと、仲介会社の査定は媒介業務の一環として無料で行われるサービスで、不動産鑑定士が行う不動産鑑定評価とは別物です。「正しい価値」を保証するものではなく、「この会社ならこの値段で売れると考えている」という意見です。そのため会社によって違って当然で、違いの理由を聞くことに意味があります。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」第34条の2、国土交通省「価格査定マニュアルの改訂経緯」

査定の前提と解体費・現地確認・取引事例を質問する

質問は5つに絞ると、各社の答えを並べて違いがはっきり見えます。

多く聞くより、同じ5つを各社に聞いて答えを並べるほうが比べやすくなります。

番号質問何が分かるか
①更地渡しと現況渡しのどちらの前提ですか「2種類のゼロ」のどちらか。更地渡しと現況渡しの前提の違い
②解体費をいくら見積もりましたか。坪単価の概算ですか、現地を見た見積ですか自分で取った現地見積と置き換えられるか
③建物の状態は現地で見ましたか。床下や小屋裏は見ましたかゼロが建物を見た結果か、築年数だけの判断か
④比較した取引事例はどれですか築年数・立地・状態が似た事例か、更地の事例か
⑤古家付きで出した場合の想定価格はいくらですか。どんな買い手が付きそうですか地域の買い手像。壊さない売り方の値段

査定書を受け取ったら、建物・土地・解体費の内訳があるかを見てみてください。合計額しか書いていなければ、内訳を聞いておきましょう。内訳が出せない査定は、前提を揃えて他社と比べる材料に使いにくいといえます。

複数社に頼むときは、同じ前提で頼むことが条件です。A社に更地渡し、B社に現況渡しで頼んでしまうと、出てきた数字の違いが前提の違いなのか見方の違いなのか分からなくなります。「古家付きの現況渡し、公簿面積、解体費は引かない前提でお願いします」のように、前提を自分から指定すると揃います。

建物状況調査の結果とリフォーム履歴を査定に出す

揃えた材料は、査定の場に出してこそ値付けに反映されます。

建物状況調査の報告書、リフォームの契約書と領収書、確認済証・検査済証(または台帳記載事項証明書)、設計図面、設備の保証書です。

基礎・躯体が生きていてリフォームの履歴があれば、国土交通省の指針と改訂後の価格査定マニュアルの考え方では、その価値の回復を評価に反映できます。指針では、基礎・躯体部分の機能が維持されている限り、リフォームを行った場合は住宅の価値が回復・向上するととらえて評価に反映することを基本的な考え方としています。

現場では、「出せる書類があります」と伝えるだけで対応が変わることがあります。書類が揃っている売主は、買い手にとっても安心材料が多い売主であり、業者にとっても売りやすい物件だからです。

ただし、書類があっても建物に値が付くとは限らず、地域の買い手が土地目的ばかりなら、建物の評価は価格に乗りにくいです。書類は「値を付ける根拠を業者と買い手に渡す」ものであり、値を付けさせる道具とは別だと考えておきましょう。

経験者の声:書類を出したら「ゼロ」が「参考価格あり」に変わった

「最初の査定は建物ゼロでした。父が10年前に屋根と外壁を直した領収書と、建物状況調査の報告書を持って行ったら、別の会社が建物に値を付けた査定書を出してくれました。結果的にそちらの会社に頼みました。金額もそうですが、説明してくれる会社のほうが安心できました」(父の実家を相続した方)

出典: 国土交通省「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」の策定について

仲介の査定と買取の提示を分けて比べる

買取業者の提示額は、おおよそ「更地想定価格 − 解体費 − 業者の利益」で構成されます。

仲介の査定より低く出るのは、業者が悪いのではなく、そういう構造だからです。早さと売れる見込みの高さを買う代わりに、金額を手放す取引です。

比べる点仲介で売る買取
価格市場の買い手が付けた値段更地想定価格 − 解体費 − 業者の利益
時期買い手が見つかるまで(数か月単位)短い(業者の都合次第)
売れる見込み売れないこともある業者が買うのでほぼ決まる
建物の扱い買い手の型で変わる原則ゼロか負債
合う状況時間をかけて高く売りたいすぐに現金化したい、手間をかけたくない

同じ「ゼロ」でも、買取のゼロは仲介のゼロより深く引かれています。買取を勧められたら、「仲介で出した場合の想定価格はいくらですか」もあわせて聞いて、2つを分けて比べてみてください。差額が「早さと売れる見込みの代金」として納得できるなら買取を選べばよいですし、納得できなければ、仲介で古家付きで出してみてから買取を考え直す順でも選び直せます。

そしてこの比較は、家族への説明にも使えます。兄弟・姉妹に「業者がゼロと言った」とだけ伝えても、納得は得にくいでしょう。「建物状況調査では構造と水に問題がなかった」「土地は再建築できる」「解体費は現地見積で○○万円」「古家付きで出せば○○万円、買取なら○○万円」と、建物・土地・解体費・買い手の順に分けて説明できれば、何を選ぶにしても家族で納得して決められます。ゼロという一言を、確かめた数字に置き換える。それが、古い実家の建物価値の確かめ方の全体像です。

まとめ:「建物ゼロ」は土地・建物・解体費・買い手に分けて確かめ直せる

「建物の価値はゼロ」という査定は、柱や基礎を調べた結果というより、築20〜25年で一律にゼロとする慣行から出た数字であることが多く、国土交通省がその改善を求めています。同じゼロでも、値を付けないだけなのか解体費を差し引いているのかで手取りが変わり、固定資産税や相続税の評価では建物に値が残ります。

次の一歩は、査定を出した会社に「更地渡しか現況渡しか」「解体費をいくら見たか」「建物を現地で見たか」を聞き、解体費を自分で取った現地見積に置き換えることです。これを飛ばして先に壊すと、住宅用地特例が翌年度から外れ、除却補助は申請の順番を逃し、古家付きで売る選択肢も消えてしまいます。

次に、実家が新耐震か旧耐震か、前面道路で再建築できるかの2点を、確認済証と役所の窓口で確かめてみてください。実家と相続の地図帳「つぐーる」では、古い実家の建物価値の確かめ方も含めて、相続や実家について悩むあなたに経験に基づいた情報を提供しています。