実家の相続登記の進め方|自分で申請して終えるまでの4段階・必要書類・期限

親が亡くなり、実家の名義が親のまま残っている人に向けて、相続登記を自分で申請して終えるまでの進め方をまとめました。

進め方は「名義を決める→書類をそろえる→申請書を作って出す→補正に応じて完了」の4段階で、申請するのは相続人本人、司法書士はその代理をする立場です。

期限の数え方、8種類の必要書類と費用、申請書の書き方、つまずいたときの対処まで分かると、自分で進めるか司法書士に頼むかを決められます。

実家の相続登記の全体像|4段階の流れと期限の数え方

相続登記の申請人は、不動産を取得する相続人本人で、司法書士はその代理人です。

頼まずに進めるなら、まず全体の流れと期限を押さえ、登記事項証明書で今の名義を確かめます。

相続登記は司法書士に頼まなくても申請できる|申請人は不動産を取得する相続人

相続登記の制度は、「本人が申請する」前提で組まれています。

法務局のサイト「不動産登記の申請書様式について」には、相続登記の申請書の様式と記載例が「遺産分割」「法定相続」「公正証書遺言」「自筆証書遺言」の場合ごとに置かれています。法務省も、申請の手引き(登記申請手続のご案内)を公開しています。各法務局には、申請者本人が使う「登記手続案内」の窓口もあります。

申請人になるのは、不動産を取得する相続人だけです。長男が実家を取得するなら申請するのは長男1人で、他の兄弟・姉妹は遺産分割協議書に実印を押して印鑑証明書を渡せば済みます。法務局へ出向くことも、委任状も不要です。

祖父母名義が残っている、住所がたどれない、連絡が取れない兄弟・姉妹がいる、といった家では、自分で進めると止まる場面があります。その対処と、頼むかを決める条件は、第5章と第6章にまとめました。

出典: 法務局「不動産登記の申請書様式について」 / 法務局「相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ(登記手続ハンドブック)」

名義・書類・申請・補正の4段階で進む|順調なら1〜1か月半

4段階のうち、時間がかかるのは戸籍集めと家族の足並みです。

段階やること誰が動くか所要の目安詳しくは
①名義を決める遺言書を探す。なければ相続人全員で遺産分割協議をして協議書を作る相続人全員家族の足並みで決まる第2章
②書類をそろえる親の戸籍一式と住所をつなぐ書類、相続人の戸籍と住民票、評価証明書、協議書と全員の印鑑証明書取得する人が中心2〜4週間第3章
③申請書を作って出す記載例を写して申請書を作り、収入印紙を貼って管轄の法務局へ窓口か郵送で出す取得する人書く時間は1〜2時間第4章
④補正に応じて完了審査を待ち、不備の連絡が来たら直す。登記完了証と登記識別情報通知を受け取る取得する人審査は1〜2週間程度第4章・第5章

①と②は並行できます。戸籍を集めながら、誰の名義にするかの話し合いを同時に進められます。順調なら全体で1〜1か月半が目安です。

所要を決めるのは法務局の審査ではなく、戸籍を集める期間と、相続人全員の実印と印鑑証明書がそろうまでの期間です。審査の日数は、申請する法務局のサイトに出ている「登記完了予定日」で確かめられます。

なお、相続税の申告期限は「亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」で、登記の期限とは別です。登記を10か月以内に終える義務はなくても、遺産分割協議は税の申告でも使うので、早く固める価値があります。

出典: 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」

期限は知った日から3年|2024年3月までの相続は2027年3月31日まで

期限は、不動産登記法76条の2が定める「知った日から3年」です。

起算点は「自分のために相続が始まったことを知り、かつ、その不動産を取得したことを知った日」で、そこから3年以内に申請する義務があります。親が亡くなって実家が親名義だと分かった日、と考えれば多くの家で当たります。

2024年4月1日より前に亡くなった親の相続も対象で、こちらは2027年3月31日が区切りです(法務省の案内)。2026年10月の時点で、残りは半年を切っています。遺産分割で取得が決まった場合は、分割が成立した日から3年以内に、その内容で登記する義務が別に生じます。

過料は「10万円以下」です(同法164条)。ただ、期限を過ぎたら自動的に取られる仕組みではなく、法務省の案内では、登記官が義務違反を把握するとまず催告書を送り、その期限内に登記がされないときに裁判所へ通知する流れです。催告に応じて申請すれば通知は見送られます。

相続人が極めて多い、重い病気、経済的に困窮しているなどの事情は「正当な理由」として扱われます。期限を過ぎた家も、名義を協議で決めてから申請する順番で進められます。

期限までに協議がまとまりそうにないときは、「相続人申告登記」という仮の申出で義務だけを果たす道があります。自分1人で申し出られ、登録免許税はかかりません。ただし売却や担保の設定には使えず、別に相続登記が要ります(手続きは相続人申告登記の姉妹記事へ)。

「期限が迫っているから、とりあえず法定相続分で登記しておく」は、後で手続きが2回になります(第2章)。

ここで、自分の起算日と期限を1行で書き出してみてください。例えば「父の死亡2023年11月、父名義の実家を相続すると知った日も同じ→2026年11月まで」「母の死亡2018年→2027年3月31日まで」です。この1行を、第6章で自分で進めるか頼むかを決めるときに使います。

経験者の声:6年前の相続でも2027年3月までと知って落ち着いた

「父が亡くなったのは6年前で、過料を取られると思って焦っていました。2024年4月より前の相続は2027年3月末までと知って、落ち着いて協議から進められました」(父の相続・実家の登記を数年放置していた方)

出典: e-Gov法令検索「不動産登記法」第76条の2・第164条 / 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」 / 法務省「相続人申告登記について」

始める前に登記事項証明書で名義を確かめる|祖父母名義なら段階が増える

進め方を決める前に、実家の登記事項証明書を1通取っておきましょう。

誰でも請求でき、法務局の窓口で1通600円です。オンライン請求なら郵送受取520円・窓口受取490円で、この2つは2025年4月1日に500円・480円から改定されました。「権利部(甲区)」の最後の所有者欄で、登記上の名義人が分かります。

名義が亡くなった親本人なら、4段階どおりに進めます。祖父母の名義のままなら、祖父母から親への相続登記が先に要る(条件が合えば1件にまとめられる)うえ、祖父母の相続人である叔父や叔母、亡くなっていればその子まで協議に加わることになり、段階が増えます(対処は第5章)。

あわせて、実家の土地と建物のほかに親名義が残っていないかを、固定資産税の課税明細書で見ておきます。前の道路の私道の持分、隣の畑、分筆された物置の土地が別の筆になっていることがあります。

非課税の私道は課税明細書に載らないので、市区町村の名寄帳か、2026年2月に始まった所有不動産記録証明制度で確かめます(取り方は姉妹記事「実家の名義の調べ方」へ)。

出典: 法務省「登記手数料について」 / 広島法務局「令和7年4月1日から各種証明書等の手数料が変わります」(PDF) / 法務省「所有不動産記録証明制度について」

誰の名義にするかの決め方と遺産分割協議書の作り方

相続登記で最初に決めるのは「誰の名義にするか」です。

実家で多いのは、①住む人がいる、②売って分ける、③母が住み続ける、④決められない、の4つの場面です。遺言書の有無を確かめたうえで、この4つを順に当てます。なお、相続税がかかる見込みの家では、小規模宅地等の特例や二次相続の面で名義の有利不利が変わることがあるので、登記の前に税の面も見ておきましょう。

遺言書があれば遺言どおりに登記し、なければ相続人全員の遺産分割協議で決める

遺言書があれば協議は不要で、なければ相続人全員の協議が要ります。

遺言書の探し方は3つです。

遺言書の種類探し方費用・注意
公正証書遺言最寄りの公証役場で「遺言検索」を申し出る(1989年以降の分を全国分検索できる)無料。相続人など利害関係人だけ。除籍謄本・相続人と分かる戸籍・本人確認書類が要る
法務局に保管された自筆証書遺言全国どの法務局でも「遺言書保管事実証明書」で有無を確かめ、あれば「遺言書情報証明書」を取る800円と1,400円(各1通)。検認は不要
自宅で保管されていた自筆証書遺言親の最後の住所地の家庭裁判所で検認を受ける収入印紙800円(1通につき)。封印のある遺言書は家庭裁判所で開封するので、見つけても開封しない

遺言に基づく相続登記では、戸籍は亡くなった親の死亡の記載がある戸籍と、取得する人の戸籍でそろいます(第3章の一覧で注記します)。遺言執行者が指定されていれば、その人が申請できます。

遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議をして協議書を作ります。相続放棄をした人は協議の外です(放棄の判断は姉妹記事「実家の相続放棄を検討するときの確認」へ)。

相続人に未成年がいれば特別代理人、認知症などで判断能力のない人がいれば成年後見人の選任が要ります。家庭裁判所の手続きになるので、その家は早めに専門家へ相談しましょう。

出典: 日本公証人連合会「亡くなった方について、公正証書遺言が作成されているかどうかを調べることができますか」 / 法務省「自筆証書遺言書保管制度の手数料一覧」 / 裁判所「遺言書の検認」

住む人がいれば単独名義、売って分けるなら換価分割で代表者の単独名義にする

住む人がいる場合も売って分ける場合も、「1人の単独名義」に落ち着きます。

①住む(または管理する)兄弟・姉妹がいる場合は、その人の単独名義にすると、後の手続きが1回で済みます。他の兄弟・姉妹に金銭を渡して釣り合いを取るなら、協議書に「代償分割」として金額と支払時期を書いておくと、支払いの約束が書面に残ります。

②売って分ける場合は、「換価分割」として代表者1人の名義で登記すると、その人が売主になって売り、代金を割合で分けられます。登記は1回で済み、売買契約も1人で結べます。

代金を分けたとき、贈与税はかかるのでしょうか。国税庁の質疑応答事例「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」では、換価の都合で共同相続人のうち1人の名義に相続登記をして売却し、その登記が換価のための便宜であり、代金が遺産分割の内容どおりに実際に分配されるなら、贈与税の課税の問題は生じないとされています。

協議書に「換価のための名義であること」と「分配の割合」を明記しておくことが要点です。文言は次のように具体に書きます。

相続人〇〇は、下記の不動産を換価分割のため便宜上単独で取得し、速やかに売却する。売却代金から売却に要した費用(仲介手数料・登記費用・測量費等)を差し引いた残額を、〇〇が2分の1、△△が2分の1の割合で取得する。

単に「〇〇が取得する」とだけ書いて後から代金を分けると、分配が贈与とみなされる余地が残ります。売る予定があるなら、協議書の段階で書き込んでおきましょう。

③母が住み続ける場合は、「とりあえず母の名義」にする前に、母名義にすると増える手続きを見ておきます。

経験者の声:換価分割と書いて長男1人の名義にした

「売って3人で分ける予定だったので、長男の自分1人の名義にして、協議書に換価分割の文言と分け方を書きました。売却後に弟たちと代金を分けましたが、贈与税は問題になりませんでした」(父の相続・相続人3人で実家を売却した方)

出典: 国税庁 質疑応答事例「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」

母名義・兄弟・姉妹の共有名義・法定相続分の先行登記は手続きと費用が増える

迷ったときに選びやすい3つの決め方は、どれも後の手続きと費用を増やします。

選び方増える手続き増える費用・負担
母の名義にする母が高齢なら、近い将来もう一度相続登記(戸籍集め・協議・申請)が要る。母の判断能力が落ちると、売却も協議も成年後見人を立ててからになる2回目の登録免許税(評価額の0.4%)と実費。後見人の報酬
兄弟・姉妹の共有名義にする売却・解体・建て替えに共有者全員の同意が要り、相続が重なるごとに共有者が増える固定資産税の負担が曖昧になる。1人が反対すると動かせない
法定相続分で先に登記する共有名義と同じ弊害。後で単独名義に直すとき、もう一度協議書と申請書をそろえて更正登記をする2回分の手間と実費。更正登記の登録免許税は不動産1個につき1,000円

法定相続分で登記した後の直し方は、2023年4月1日から簡単になりました。法務省の通達で、遺産分割による単独名義への直しは「所有権の更正登記」でよく、取得する人が1人で申請できることになり、登録免許税は登録免許税法の別表で不動産1個につき1,000円です。それでも、協議書と申請書をそろえて法務局へ出す工程は2回に増えます。

母の居住を守る方法には、母名義にするほかに配偶者居住権などの別の手続きもあります。

期限が迫っているからと法定相続分で登記すると、手続きが2回になります。期限は相続人申告登記で守り、名義は協議で決める順番にしましょう。共有名義は「どうしても決められないときの最後の手段」です。

出典: 法務省 通達「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(令和5年4月1日施行関係)」(令和5年3月28日民二第538号・PDF) / e-Gov法令検索「登録免許税法」別表第一

協議書は実家だけを対象に作れる|表示は登記事項証明書どおりに写す

遺産分割協議書は、不動産だけを対象に作れます。

預貯金の分け方がまとまっていなくても、実家だけ先に協議書にして登記を進められます(一部分割)。書き方の要素は次のとおりです。

要素書き方
亡くなった人の表示氏名・死亡日・最後の住所・本籍
不動産の表示登記事項証明書の表題部どおりに写す。土地は「所在・地番・地目・地積」、建物は「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」。郵便が届く住所(住居表示)で書かない
誰が取得するか「下記の不動産は〇〇が単独で取得する」
代償金・換価分割の文言換価分割の見出しに示した文言。該当する場合だけ
記載のない財産の条項「本協議書に記載のない財産は〇〇が取得する」。後から私道の持分などが見つかっても、再協議なしで追加の登記ができる
作成日協議がまとまった日
署名と実印相続人全員が署名し、印鑑証明書と同じ印(実印)を押す。各人の印鑑証明書を1通ずつ添える
複数ページ各ページのつづり目に全員の契印

相続登記に添える印鑑証明書は、発行から3か月を過ぎたものでも使えます。法務局の記載例にも「作成後3か月以内のものでなくても差し支えない」と明記されています。

遠方の相続人がいるときは、同じ内容の協議書を人数分作り、各自が自分の分に署名押印して返送する方式が広く使われています。協議書の案はメールで固めてから紙を送ると、往復が1回で済みます。

協議書の見本です。

遺産分割協議書

被相続人 〇〇〇〇(令和〇年〇月〇日死亡、最後の住所 〇〇市〇〇町〇番地、本籍 〇〇市〇〇町〇番地)の相続人全員は、被相続人の遺産について次のとおり分割することに合意した。

1. 下記の不動産は、相続人 〇〇〇〇 が単独で取得する。2. 本協議書に記載のない財産は、相続人 〇〇〇〇 が取得する。

本協議を証するため、本書を〇通作成し、各相続人が署名押印のうえ各1通を保有する。

令和〇年〇月〇日

住所 〇〇市〇〇町〇番地 氏名 〇〇〇〇(実印)住所 〇〇市〇〇町〇番地 氏名 △△△△(実印)

記【土地】所在 〇〇市〇〇町一丁目 地番 〇番 地目 宅地 地積 〇〇.〇〇㎡【建物】所在 〇〇市〇〇町一丁目〇番地 家屋番号 〇番 種類 居宅 構造 木造かわらぶき2階建 床面積 1階〇〇.〇〇㎡ 2階〇〇.〇〇㎡

出典: 法務局 記載例「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」(PDF) / 法務局「相続による所有権の移転の登記の申請に必要な書類とその入手先等」(PDF)

相続登記の必要書類の集め方と費用の内訳

書類は8種類、費用は登録免許税と数千円〜1万円台の実費です。

集める順番は「戸籍→法定相続情報一覧図→協議書に実印→評価証明書→申請書」が、取り直しが起きにくい順です。戸籍の出生から死亡までの集め方は、姉妹記事「相続人確認に必要な戸籍の集め方」に任せます。

必要書類は8種類|親の戸籍一式・相続人の戸籍と住民票・評価証明書・協議書

遺産分割協議による相続登記の必要書類は、次の8種類です。

書類何のためにどこで取るか費用注意
①登記申請書申請の本体法務局の様式を自分で作る(第4章)無料連絡先の電話番号を書く
②亡くなった親の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)相続人を確定する本籍地の市区町村。直系なら最寄りの窓口で広域交付も可450円・750円範囲と集め方は姉妹記事へ
③亡くなった親の住民票の除票または戸籍の附票(本籍の記載あり)登記簿上の住所と結ぶ最後の住所地/本籍地の市区町村200〜400円程度登記簿上の住所と本籍が同じなら不要
④相続人全員の現在の戸籍協議の当事者が相続人であること各自の本籍地450円親の死亡日以後に発行されたもの
⑤取得する人の住民票新しい所有者の住所住所地の市区町村200〜400円程度本籍・マイナンバーの記載は不要。申請書に住民票コードを書けば省略できる
⑥固定資産評価証明書(最新年度)登録免許税の計算市区町村。東京23区は都税事務所300〜400円程度課税明細書の写しで代えられる法務局もある。管轄に事前確認
⑦遺産分割協議書+相続人全員の印鑑証明書誰が取得するかの証明協議書は自分で作る(第2章)。印鑑証明書は各自の市区町村200〜400円程度印鑑証明書は3か月を過ぎていても可
⑧相続関係説明図(任意)戸籍の原本を返してもらう自分で作る(第4章)無料付けると戸籍のコピーが不要

遺言による場合は、⑦が遺言書(自宅保管なら検認済みのもの、法務局保管なら遺言書情報証明書)に変わり、戸籍は親の死亡の記載がある戸籍と取得者の戸籍でそろいます。法定相続分による場合は、協議書と印鑑証明書が不要です。自分で申請するなら委任状も不要です。

出典: 法務局 記載例「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」(PDF) / 法務局「相続による所有権の移転の登記の申請に必要な書類とその入手先等」(PDF) / 札幌市「戸籍証明の広域交付」

戸籍の束は法定相続情報一覧図で代えられる|無料で銀行の手続きと同時に進む

法定相続情報一覧図を作ると、戸籍の束1組で登記と預金の解約を同時に進められます。

法定相続情報証明制度は、集めた戸籍一式と、自分で作った家系図(法定相続情報一覧図)を法務局に出すと、登記官が内容を確認して認証文付きの写しを必要な通数、無料で交付する制度です。申出先は、親の本籍地・最後の住所地・自分の住所地・実家の所在地のいずれかを管轄する法務局で、郵送でも申し出られます。

写しは、相続登記のほか銀行・証券会社・年金・税務署の手続きで戸籍の束の代わりになります。2024年4月1日以降は、申請書の添付情報欄に「法定相続情報番号」を書けば、写しそのものの添付も省けます。一覧図に相続人の住所を書いておけば、取得者の住民票の添付に代えられます。

相続登記の前に作っておくと、戸籍の不足を登記官が先に確かめてくれる効果もあります。作り方は姉妹記事に任せます。

一覧図を作らない場合でも、原本還付(第4章)を使えば戸籍は戻ります。ただし銀行に先に原本を出すと、登記のために取り直すことになります。登記を先に済ませるか、銀行がコピーで受け付けるかを確かめてから順番を決めましょう。

出典: 法務局「法定相続情報証明制度」について / 法務局「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」

登記簿上の住所と最後の住所が違えば住民票の除票か戸籍の附票でつなぐ

登記簿の所有者欄の住所は、登記をした当時のままです。

30年前に買った家なら引っ越し前の住所のままで、親の最後の住所と違うことがよくあります。法務局は「登記簿上の〇〇」と「戸籍上の亡くなった親」が同じ人だと確かめる必要があるので、住所の移り変わりをつなぐ書類を添えます。

使うのは、住民票の除票(最後の住所地の市区町村)か、戸籍の附票(本籍地の市区町村。その戸籍に入っていた間の住所の履歴が載る)です。附票は「相続登記に使うので、住所の履歴がすべて載る形で」と頼むと、必要な履歴が1通にまとまります。

登記簿上の住所と本籍が同じなら不要です。

除票と附票の除票の保存期間は、2019年6月20日から150年に延びました。ただし、それより前に旧保存期間(5年)を過ぎて廃棄された分は取れず、権利証の写しや上申書などで代えます。どこまで残っているかは市区町村で違い、例えば横浜市は2013年3月31日までに除かれた分を交付していません。何を求めるかは法務局ごとに違います(第5章)。

出典: 横浜市「住民票の除票の写しは、何年前までのものの交付を受けることができますか」 / 横浜市「戸籍の附票の除票の写しは、何年前までのものの交付を受けることができますか」

登録免許税は評価額の0.4%|100万円以下の土地は2027年3月31日まで免税

登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%です。

課税価格(土地と建物の固定資産税評価額の合計。1,000円未満切り捨て)×0.4% = 税額(100円未満切り捨て)

例えば、土地の評価額1,200万円、建物300万円なら、課税価格1,500万円×0.4%=6万円です。持分なら、全体の評価額に持分の割合を掛けた額が課税価格になります。評価額は、評価証明書か課税明細書の「価格(評価額)」欄の数字で、「課税標準額」の欄と取り違えやすいところです。

免税措置が2つあり、どちらも租税特別措置法84条の2の2に基づき、2027年3月31日までの申請が対象です。

免税措置内容実家で当たりやすい場面
評価額100万円以下の土地(同条2項)相続で取得した土地の評価額が100万円以下なら、その土地の登録免許税がかからない。持分なら全体の評価額×持分で判定。建物は対象外前の道路の私道の持分、地方の畑・山林・原野。評価額がない非課税の私道は、法務局が認定した価額で判定する
登記しないまま亡くなった人への登記(同条1項)祖父母から親への土地の相続登記を、親が済ませないまま亡くなった場合、親を名義人にする分(1次相続分)の登録免許税がかからない祖父母名義が残っている実家(第5章)

どちらも、申請書の登録免許税の欄に「租税特別措置法第84条の2の2第〇項により非課税」と書いた場合だけ免税されます。法務局が黙って差し引く仕組みではないので、該当する土地があれば忘れずに書いておきましょう。

経験者の声:私道の持分が免税だったが、条文を書き忘れていた

「土地が2筆で、片方が前の道路の私道の持分でした。評価額が80万円で免税になるのに、申請書に条文を書き忘れていて、窓口で教えてもらって書き足しました」(父の相続・土地2筆と建物を取得した方)

出典: 法務局「登録免許税の計算」(PDF) / 法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」

書類の実費は数千円〜1万円台|評価証明書だけ年度に注意

書類の実費は、合計で数千円〜1万円台に収まります。

手数料は市区町村の条例で決まるので、自治体により多少違います。

書類1通の手数料の目安
戸籍(全部事項証明書)450円
除籍・改製原戸籍750円
住民票・除票・戸籍の附票200〜400円程度
印鑑証明書200〜400円程度
固定資産評価証明書300〜400円程度
登記事項証明書窓口600円(オンライン請求で郵送520円・窓口受取490円。2025年4月1日に500円・480円から改定)

郵送で請求するときは、定額小為替の発行手数料と往復の切手が上乗せになります。

期限があるのは固定資産評価証明書だけで、申請する年度のものが要ります。毎年4月1日に年度が切り替わるので、3月に取って4月以降に申請すると取り直しになります。戸籍(親の死亡後に発行されたもの)・除票・附票・住民票・印鑑証明書は、古くなっても使えます。

出典: 札幌市「戸籍証明の広域交付」 / 法務省「登記手数料について」

登記申請書の作り方と法務局への提出から完了までの流れ

申請書を書く時間は1〜2時間で、相続登記の進め方の中で最も短い工程です。

申請書を書くのは難しそうに見えますが、実際は記載例の名前と日付と地番を差し替える作業に近いです。

法務局の記載例を写して作る|迷いやすいのは原因日付・課税価格・不動産の表示

申請書は、法務局の記載例を写して作ります。

法務局のサイト「不動産登記の申請書様式について」から、「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」「(相続・法定相続)」「(相続・公正証書遺言)」「(相続・自筆証書遺言)」のうち自分の場合の様式と記載例を取ります。記載例は「2026年10月5日より前に申請する場合」と「10月5日以降に申請する場合」の2系統が置かれているので、申請日に合うほうを使います。Wordで打ち込んでも、A4の白紙に黒のボールペンで手書きしても受け付けられます(鉛筆や消せるインクは不可)。迷いやすい5項目を表にします。

項目書き方間違えやすい点
①登記の目的「所有権移転」亡くなった親が持分だけ持っていたなら「〇〇持分全部移転」
②原因「令和〇年〇月〇日相続」=親が亡くなった日遺産分割協議の成立日を書いてしまう誤りが多い
③相続人欄「(被相続人 〇〇)」と書いたうえで、取得する人の住所(住民票どおり)・氏名と認印。氏名のふりがな・生年月日・メールアドレスも書く(2026年4月から)。2026年10月5日以降の申請では「国籍等」の欄に国籍も書き、日本国籍なら相続人の戸籍が国籍の証明を兼ねる。連絡先の電話番号(平日の日中につながる携帯で可)補正の連絡はこの電話番号に来る(第5章)
④課税価格と登録免許税課税価格は評価額の合計(1,000円未満切り捨て)、登録免許税はその0.4%(100円未満切り捨て)。免税の土地があれば「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」と書く(第3章)「課税標準額」を書かない
⑤不動産の表示登記事項証明書の表題部どおり。土地は所在・地番・地目・地積、建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積地番は住居表示と別。登記事項証明書か課税明細書で確かめる。不動産番号(13桁)を書けば表示の一部を省略できる

添付情報の欄には「登記原因証明情報 住所証明情報」と書き、2026年10月5日以降の申請では「国籍を証する情報」も並べます。法定相続情報番号を使うなら、その番号も書きます。

「登記識別情報の通知を希望しません」のチェック欄は、通知を受け取るために空欄のままにしておきましょう。申請書が2枚以上になったら、つづり目に契印します。

出典: 法務局「不動産登記の申請書様式について」 / 法務局 記載例「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」(PDF) / 法務省民事局「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」(PDF)

登録免許税は収入印紙を台紙に貼って納め、戸籍と協議書は原本還付で戻してもらう

登録免許税は収入印紙で納めます。

申請書とは別のA4の白紙(収入印紙貼付台紙)に貼り、申請書と台紙を重ねてホチキスで留め、つづり目に契印します。印紙には消印も割印も不要です。

印紙は郵便局か、多くの法務局内の売場で買えます。免税で税額が0円なら、台紙そのものが不要です。

原本還付は、出した書類の原本を審査後に返してもらう手続きです。戻してほしい書類はコピーを取り、コピーに「原本に相違ありません」と書いて申請人が署名押印し、原本と一緒に出します。請求書を別に作る必要はなく、これだけで済みます。

戸籍については、「相続関係説明図」を付ければコピーなしで原本が戻ります。亡くなった親と相続人の関係を書いた家系図で、様式は自由です。

被相続人 〇〇〇〇 相続関係説明図最後の住所 〇〇市〇〇町〇番地 死亡 令和〇年〇月〇日(被相続人)〇〇〇〇 ─┬─(妻)〇〇〇〇(分割)├─(長男)〇〇〇〇(相続人)住所 〇〇市〇〇町〇番地 出生 昭和〇年〇月〇日└─(長女)〇〇〇〇(分割)

「(分割)」は協議の結果その不動産を取得しなかった人、「(相続人)」は取得した人です。印鑑証明書・住民票・評価証明書・協議書も、コピーを付ければ戻ります。戻った原本は銀行や税務署で使えます。

出典: 法務省民事局「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」(PDF) / 法務局 記載例「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」(PDF)

登記手続案内は予約制で1回20分|下書きを持ち、聞く項目を絞る

法務局の「登記手続案内」は、申請者本人向けの無料の案内窓口です。

完全予約制(電話・窓口・ウェブ予約。予約方法は法務局による)で、1回20分以内が多く、30分とする法務局もあります。

大事なのは、申請書と添付書類の事前審査はしないことです。審査は申請後に登記官が行うので、「これで合っていますか」という聞き方や、協議書の分け方の相談には応じてもらえず、答えが返るのは項目を絞った質問です。「この欄にはどれを書くのか」「この戸籍でそろっているか」「登記簿上の住所と最後の住所が違うとき、何を出すか」と絞れば、その場で答えてもらえます。

持ち物は、登記事項証明書・申請書の下書き・集めた戸籍(または法定相続情報一覧図)・協議書の案・課税明細書です。これをそろえて行けば1回で済みます。司法書士会が法務局内などで開く無料相談も併用できます。

出典: 大阪法務局「登記手続案内をご利用の皆様へ」(PDF) / 津地方法務局「登記手続案内の予約について」(PDF)

提出先は不動産の所在地を管轄する法務局|窓口・郵送・オンラインの使い分け

提出先は、自分の住所地ではなく、実家の所在地を管轄する法務局です。

管轄は法務局のサイト「管轄のご案内」で調べます。土地と建物が別の管轄なら、申請も別になります。提出方法は3つです。

方法こんな人に注意
窓口法務局が近く、平日に動ける人受付票のような控えはもらえない。登記完了予定日を確認して帰る
郵送平日に動けない人、実家が遠い人封筒の表に「不動産登記申請書在中」と書き、書留で送る。完了書類を郵送で受け取るなら、申請書にその旨を書き、宛名を書いた返信用封筒と切手(本人限定受取郵便の料金分)を同封する
オンラインパソコン操作に慣れた人申請用総合ソフトとマイナンバーカード、ICカードリーダーが要り、添付書類は別に郵送か持参になる。初めての人は書面のほうが早い

郵送を使えば、平日に一度も法務局へ行かずに申請から完了まで終えられます。

経験者の声:郵送で出して12日後に書留で届いた

「郵送で出して12日後に、登記完了証と登記識別情報通知が本人限定受取郵便で届きました。法務局へは一度も行かずに済みました」(父の相続・遠方の実家を郵送で登記した方)

出典: 法務省民事局「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」(PDF) / 法務局「不動産の所有者が亡くなった(相続の登記をオンライン申請したい方)」 / 法務省「登記識別情報の通知の方法について」

審査は1〜2週間|登記完了証と登記識別情報通知を受け取って完了

審査は1〜2週間が目安で、混み具合で前後します。

各法務局のサイトに「登記完了予定日」が出ているので、そこで見当がつきます。不備があれば申請書の電話番号に連絡が来ます(対応は第5章)。

完了すると、登記完了証と登記識別情報通知が交付されます。窓口で受け取るなら、申請書に押したものと同じ印鑑を持参します。郵送なら、申請時に同封した返信用封筒で届きます。

登記識別情報通知は、12桁の符号が目隠しシールなどで隠された書面で、売却や担保の設定のときに権利証の代わりとして要ります。再発行はされないので、目隠しを剥がさず、権利証と同じ扱いで保管しておきましょう。

最後に登記事項証明書を1通取り、甲区の所有者欄が自分になっているかを確かめて完了です。登記後に引っ越したり氏名が変わったりしたら、2026年4月1日に施行された住所等変更登記の義務により、変更から2年以内に変更登記が要ります(怠ると5万円以下の過料)。申請書に書いたメールアドレス宛てに法務局が連絡し、本人の了解を得て職権で変更登記をする仕組みも始まっています。

出典: 法務省民事局「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」(PDF) / 名古屋法務局「住所・名前の変更登記に関する手続のご案内【令和8年4月から義務化】」

自分で進めるときにつまずく原因と対処

自分で進めて止まる場面は、症状から引けるように表にまとめました。

司法書士に切り替える判断は、第6章の条件表で決めます。

症状原因次の一手聞く先
法務局から補正の電話が来た誤字・印紙不足・計算違いなど期間内に直す。大きな不足なら取下げて再申請法務局
登記簿上の住所がつながらない除票・附票が廃棄されている権利証の写し・上申書などで代える法務局の登記手続案内
名義が祖父母のまま数次相続相続人の範囲を広げて協議。条件が合えば1件で登記法務局・司法書士
兄弟・姉妹が協議に応じない・連絡が取れない協議が成立しない相続人申告登記で期限を守り、話し合いを続ける弁護士・家庭裁判所
私道や未登記の増築部分を見落とした課税明細書に載らない名寄帳・所有不動産記録証明で確かめる。未登記建物は表題登記から法務局・土地家屋調査士
戸籍が足りないと言われた出生までさかのぼれていない欠けている期間を法務局に聞いて取り足す姉妹記事「相続人確認に必要な戸籍の集め方」
相続人に未成年・判断能力のない人がいる本人が協議に加われない特別代理人・成年後見人の選任家庭裁判所・専門家
平日に動けない窓口に行けない申請・補正・受け取りは郵送で可。戸籍の広域交付だけは窓口が要る姉妹記事

法務局から補正の電話が来た|期間内に直せば申請は生きる

補正は「失敗」ではなく、通常の工程です。

連絡は、申請書に書いた電話番号に法務局からかかってきます(登記所によっては郵送)。知らない固定電話の番号でも出る、留守番電話を確かめる、を申請後2週間は心がけておきましょう。対応は3つに分かれます。

区分どういうときどうなるか
補正誤字、印紙の不足、原本還付の文言の漏れ、課税価格の計算違い、相続関係説明図の誤りなど、すぐ直せる不備登記官が決めた期間内に、窓口か郵送で直す。期間は数日〜2週間程度の例が多い。直せば申請は生きたまま進む
取下げ戸籍の大きな不足、協議書の押印不足、住所がつながらないなど、すぐには直せない不備申請を引っ込めて作り直す。納めた登録免許税は、取下げの日から1年以内なら再使用証明を受けて次の申請に使え(同じ法務局)、使わないなら還付を受けられる
却下補正に応じなかった場合まれ。登録免許税は還付される

期間内に直せないと思ったら、すぐ法務局に電話して取下げにしてもらい、作り直すと登録免許税を次の申請に回せます。

経験者の声:知らない固定電話から3回着信、出たら法務局だった

「知らない固定電話から3回着信があって、出たら法務局でした。課税価格の端数の計算違いで、訂正したものを郵送して済みました」(父の相続・郵送で申請した方)

出典: e-Gov法令検索「登録免許税法」第31条 / 法務省民事局「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」(PDF)

登記簿上の住所がつながらない|権利証の写しと上申書で代える

除票・附票が廃棄で取れないときは、別の書類で住所をつなぎます。

代わりに出す書類の例は、登記済権利証(または登記識別情報通知)の写し、相続人全員の上申書(「登記簿上の〇〇は被相続人と同一人である」旨。印鑑証明書付き)、不在住証明書(登記簿上の住所地の市区町村)、固定資産税の納税通知書などです。権利証があれば上申書を省ける扱いが広まっていますが、何を求めるかは法務局ごとに違います。

順番が大事です。先に書類を集めるのではなく、登記手続案内で「登記簿上の住所と最後の住所がつながらないとき、何を出すか」と聞いてから集めると、集め直しが減ります。

そして、登記済権利証が実家に残っていないかを最初に探します。権利証は、実家の金庫・仏壇の引き出し・書類箱に入っていることが多い書類です。

出典: 法務局 記載例「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」(PDF)

名義が祖父母のまま残っていた|叔父や叔母まで相続人が広がる

祖父母→親→自分と2段の相続(数次相続)になり、協議に加わる人が増えます。

祖父母の相続人である叔父や叔母(亡くなっていればその子)まで協議書に実印をもらうことになります。登記は原則2件(祖父母→親の相続人、親→自分)です。

ただし、中間の相続人が親1人だけだった場合(もともと単独相続、または他の相続人が放棄や分割で親1人が取得した場合)に限り、祖父母から自分へ1件で登記できます。法務局の記載例にも、最終の相続以外の相続で共同相続人数名が権利を取得している場合は1件の申請では登記できない、と書かれています。自分の家が当たるかは、法務局で確かめておきましょう。

費用の面では、祖父母から親への土地の相続登記分(1次相続分)の登録免許税が、2027年3月31日まで免税です(第3章の条文を申請書に書きます)。叔父や叔母の人数が多い、連絡が取れない、という家は、第6章の「頼む価値が高い条件」に当たります。

出典: 法務局 記載例「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割(数次相続))」(PDF) / 法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」

兄弟・姉妹が協議に応じない|相続人申告登記で期限を守り、調停は弁護士へ

協議が成立するまで遺産分割による登記は進められず、期限は相続人申告登記で守ります。

仮の申出で、自分1人でできて、売却には使えない、という3点だけ押さえておきましょう(手続きは姉妹記事へ)。所在が分からない兄弟・姉妹は、戸籍の附票で住所を追います。

話し合いが進まないときの遺産分割調停は、家庭裁判所と弁護士の仕事です。相手との交渉の代理は、司法書士の業務の外です。「法定相続分で登記して逃げる」と第2章の共有名義の弊害が残るので、申告登記で時間を確保して話し合いを続ける、という順番です。

出典: 法務省「相続人申告登記について」

私道や未登記の増築部分を見落とした|所有不動産記録証明で洗い出す

実家の土地と建物だけ登記して、親名義の土地を残す事故は、売却時の調査で発覚します。

残りやすいのは、前の道路の私道の持分(非課税で課税明細書に載らない)、分筆された隣の畑、物置の土地です。確かめ方は、固定資産税の課税明細書→市区町村の名寄帳→法務局の所有不動産記録証明制度の順です。

所有不動産記録証明制度は2026年2月2日に始まり、亡くなった親が登記名義人の不動産を全国分まとめて一覧にできます(書面請求で1通1,600円)。取り方は姉妹記事「実家の相続に必要な資料の集め方」に任せます。

見つかった不動産は、協議書に「記載のない財産は〇〇が取得する」の条項(第2章)があれば、再協議なしで追加の相続登記ができます。

未登記建物(増築部分・物置・古い離れ)は、相続登記の申請書には載せられず、先に表題登記(土地家屋調査士の分野)をして登記簿を作ってから相続登記になります。扱いは法務局か土地家屋調査士に聞いてみてください。

出典: 法務省「所有不動産記録証明制度について」 / 新潟地方法務局「令和8年2月2日スタート!「所有不動産記録証明制度」について」 / 鳥取地方法務局「相続登記申請について」(PDF)

自分で進めるか司法書士に頼むかの判断基準と費用の比べ方

選び方は「自分で」「途中から頼む」「最初から頼む」の3択です。

第1章で書き出した自分の期限と、下の2つの条件表を照らして決めましょう。登録免許税と書類の実費は誰に頼んでも同じで、違うのは報酬の分だけです。

自分で進めやすい条件|相続人が配偶者と子だけで、名義が親本人

次の6つに全部当たれば、自分で終えられる見込みが高い家です。

条件当てはまるか
相続人が配偶者と子だけで、全員が協力的□
不動産が実家の土地と建物の1〜2件で、同じ法務局の管轄□
名義が亡くなった親本人(祖父母名義でない)□
登記簿上の住所が最後の住所と同じか、除票・附票でつながる□
協議がまとまっている(または遺言書がある)□
郵送で動けるか、平日に1〜2日動ける□

浮くのは報酬の分で、実家の片付けや処分の費用に回せます。

頼む価値が高い条件|祖父母名義・住所がつながらない・売却の期日が近い

次の条件に1つでも当たれば、第5章の対処を試す前に見積もりを取る価値があります。

条件当てはまるか
祖父母名義が残っている(数次相続)□
登記簿上の住所がつながらず、上申書などが要る□
相続人が10人を超える・連絡が取れない・海外在住の人がいる□
売却や解体の期日が決まっている□
私道の持分や分筆された土地が多数ある□
相続人に未成年や判断能力のない人がいる□
期限(2027年3月31日など)が数か月以内□

ただし、頼んでも短くならない時間があります。戸籍の収集は、司法書士が職務上請求で取る場合も郵送が中心で(本人・配偶者・直系だけが使える広域交付は、代理人には使えない仕組みです)、相続人全員の実印と印鑑証明書を集める時間も同じです。

短くなるのは、申請書の作成、補正への対応、法務局との往復です。頼んで変わるのは、早さより「手が止まらないこと」といえます。司法書士はオンラインで申請するので、実家が遠方でも地元の司法書士に頼めます。

出典: 札幌市「戸籍証明の広域交付」

報酬の目安は5万〜15万円程度|内訳付きの見積もりを2〜3か所で比べる

司法書士の報酬は自由化されていて、事務所ごとに決めています。

日本司法書士会連合会が2024年3月に行った報酬アンケートでは、「評価額の合計1,000万円の土地1筆と建物1棟、相続人3人のうち1人が取得、戸籍5通の取得と協議書・相続関係説明図の作成込み」という設例で、1,109件の回答の平均が74,888円でした。回答の約85%は5万〜15万円台に収まり、5万〜8万円台だけで約65%、10万円以上も約15%あって、同じ内容でも事務所によって2倍以上の差が出ています。

この設例は戸籍の収集と協議書の作成まで含んだものなので、申請だけを頼めば報酬はこれより下がり、不動産や相続人が多ければ上がります。アンケートの数字は目安で、自分の家の金額は見積もりで確かめます。

報酬が上がる要素は、不動産の数・相続人の数・評価額に比例する料金体系・協議書の作成・戸籍の収集です。見積もりは「報酬/登録免許税/書類の実費/日当・交通費」に分けてもらうと比べやすくなります。「総額」に登録免許税を含めて書く事務所と報酬だけ書く事務所があるので、比べるのは報酬の欄です。

追加料金が出る条件(相続人が増えた・不動産が増えた・協議書の修正)も先に聞いておくと、後から金額が増える心配が減ります。初回相談は無料の事務所が多く、司法書士会の無料相談や法テラスも使えます。

出典: 日本司法書士会連合会「報酬アンケート結果(2024年3月実施)」(PDF)

頼む範囲を絞ると報酬が下がる|集めた戸籍を渡して申請だけ頼む

頼む範囲は3段階あり、範囲が狭いほど報酬は下がります。

範囲内容
①全部戸籍の収集から協議書の作成、申請、完了書類の受け取りまで
②申請だけ戸籍と協議書は自分で用意し、申請書の作成と提出だけを頼む
③途中から第5章のどこかで止まった地点から頼む

依頼時に渡すものは、集めた戸籍の束(または法定相続情報一覧図)・登記事項証明書・課税明細書・協議の内容(誰の名義にするか)・どこで止まったか、です。これがそろっていると、見積もりが下がり、日数も短くなります。途中からの依頼を受ける事務所が多いので、自分で始めた後からでも頼めます。

紹介された司法書士は他と比べてから頼む|交渉と税の計算は別の専門家の仕事

不動産会社が紹介する司法書士に、相続登記まで頼む義務はなく、報酬は他の事務所と比べられます。

実家を売る話を進めると、不動産会社が司法書士を紹介してくれます。その司法書士は売買の決済(買主への所有権移転)を担う人です。相続登記を先に自分で済ませておけば、売却時の司法書士費用は買主負担の所有権移転が中心になります。

司法書士に頼んでも終わらない仕事も、先に知っておくと見積もりの範囲を正しく読めます。

仕事担い手
遺産分割の交渉・調停弁護士
相続税の計算・申告税理士
未登記建物の表題登記土地家屋調査士
親名義の不動産の洗い出し司法書士が引き受けることもあるが、追加料金のことが多い

最後に、「自分で」「途中から頼む」「最初から頼む」のどれかを選び、第1章で書き出した期限に向けて予定を1行にしてみてください。例えば「母の相続→2027年3月31日まで。11月中に協議書と印鑑証明書をそろえ、12月に郵送で申請。止まったら申請だけ頼む」です。

この1行があれば、あとは順番どおりに進むだけです。

経験者の声:紹介された司法書士は12万円、別の事務所は同じ内容で6万円台

「不動産会社に紹介された司法書士の見積もりが相続登記12万円でした。別の事務所に聞いたら同じ内容で6万円台で、そちらに頼みました。断っても売却には影響しませんでした」(父の相続・実家を売却した方)

まとめ:実家の相続登記は4段階で進み、相続人本人が申請できる

相続登記は、名義を決める→書類をそろえる→申請書を作って出す→補正に応じて完了の4段階で、申請するのは不動産を取得する相続人本人です。期限は実家を相続したと知った日から3年、2024年4月1日より前の相続は2027年3月31日までで、過ぎた場合も催告に応じて申請すれば過料の通知は見送られます。

次の一歩は、実家の登記事項証明書を1通取り、登記上の名義人と自分の期限を1行に書き出すことです。これを飛ばして書類を集め始めると、祖父母名義や私道の持分が後から見つかって協議と申請をやり直したり、期限に追われて法定相続分で登記して手続きが2回になったりします。

名義人と期限が分かったら、第6章の2つの条件表で「自分で」「途中から頼む」「最初から頼む」のどれにするかを確かめてみてください。実家と相続の地図帳「つぐーる」では、実家の相続登記の必要書類・期限・自分で進めるか司法書士に頼むかの判断も含めて、相続や実家について悩むあなたに経験に基づいた情報を提供しています。