共有名義の実家の整理方法|全員同意が要る行為と5つの選択肢・失う期限

親が亡くなった実家が兄弟・姉妹の共有名義になり、「全員の同意がないと何もできない」と聞いて、売る話も貸す話も止まったままになっていませんか。

全員の同意が要るのは売る・壊す・建て替えるなどの一部の行為で、修繕や3年以内の賃貸は持分の過半数で、自分の持分の処分は1人で進められます。

共有を続ける・全員で売る・1人にまとめる・自分の持分だけ手放す・裁判所に決めてもらうの5つの選択肢を、同意が揃うか・遺産分割が済んでいるか・現金があるかで絞り、相続から10年や2027年末で失う期限まで確かめられるようにしました。

共有名義の実家で全員の同意が要る行為と、過半数や単独で進められる行為(2023年改正後のルール)

共有名義の実家で最初に解くべき思い込みは、「反対する人が1人いると何もできない」です。

民法は、共有物に対する行為を「変更」「管理」「保存」の3つに分け、それぞれ必要な同意の重さを変えています(民法251条・252条)。2023年4月1日に施行された改正で、過半数で決められる範囲が広がり、返答しない共有者を裁判所の決定で外す仕組みもできました(法務省)。

行為ごとに「誰の同意が要るか」を整理します。

共有者全員の同意が要る行為は売却・解体・建て替え・長期の賃貸

共有者全員の同意が要るのは、実家そのものを処分する行為と、「形状または効用の著しい変更」を伴う行為です(民法251条1項)。

具体的には次の行為が当たります。

  • 実家全体を売ること(持分ではなく、土地と建物を丸ごと売る)
  • 建物を解体すること、建て替えること
  • 間取りを変えるような大規模な改築
  • 抵当権を付けること(実家を担保に借入をする)
  • 長期の賃貸。建物なら3年を超える契約、土地なら5年を超える契約(民法252条4項の期間を超えるもの)

売却に1人でも反対していれば、残りの全員が賛成していても売れません。

このルールは逆方向にも働きます。「兄が勝手に解体業者と話を進めている」というときも、解体は全員の同意が要る行為なので、残りの共有者が同意を出さない限り止まります。

全員同意のルールは、反対する人と、強引に進めようとする人の両方を止めます。

賃貸で注意したいのは、普通の借家契約です。借地借家法が適用される普通の借家契約は、期間が来ても更新されるのが前提で、契約書に「2年」と書いても2年を過ぎて続きます。

そのため全員の同意が要る扱いとされています。過半数で貸したいなら、更新のない「定期借家契約」で3年以内に収める形が使われています。

出典: e-Gov法令検索 民法(251条・252条)、法務省 所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版)概要

持分の過半数で決められる行為は管理方針・軽微な修繕や改修・3年以内の賃貸

実家の「管理に関する事項」は、共有者の持分の価格に従い、その過半数で決められます(民法252条1項)。

誰が鍵を管理するか、管理会社に委託するか、草刈りを業者に頼むか、空き家のまま置くか人に貸すか、といった方針はここに入ります。

2023年4月の改正で、ここに2つの行為が明文で加わりました。

1つ目は「軽微な変更」です。形状または効用の著しい変更を伴わない修繕や改修は、変更ではなく管理として過半数で決められます(民法251条1項かっこ書)。

法務省の資料では、私道の舗装の修復や樹木の伐採が軽微な変更の例として示されています。実家で言えば、外壁の塗り直しや設備の入れ替え、バリアフリーのための手すり設置なども、建物の性格を変えないなら軽微な変更に入ると考えられています(目安)。

2つ目は「短期の賃貸」です。建物なら3年以内、土地なら5年以内の賃借権は、過半数で設定できます(民法252条4項)。

定期借家契約で3年以内に収めれば、反対する共有者の印鑑がなくても貸せます。登記でも、持分の合計が過半数になる共有者だけが申請人になって賃借権の登記ができる扱いが示されています(法務省民事局長通達・2023年3月28日)。

ただし「軽微な変更」の区分けは、まだ揺れています。大規模なリフォームは変更、設備の更新は軽微という大まかな目安はあっても、境目の工事は後から「変更行為だったはずだ」と争われることがあります。

反対する共有者がいる状態で工事をするなら、工事の範囲を先に書面で決め、過半数で決めた記録(書面やメール)を残してから着手しましょう。「過半数で決めたのに、後で妹から文句を言われた」という声は、決定の記録がない場合に起きています。

出典: e-Gov法令検索 民法(251条・252条)、法務省 所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版)概要、法務省 民法等改正に伴う不動産登記事務の取扱いについて(民法改正関係・令和5年3月28日通達)

各共有者が単独でできる行為は応急の修繕などの保存行為と自分の持分の処分

誰の同意もなしに1人でできる行為が2種類あります。

1つ目は「保存行為」です(民法252条5項)。実家の価値を保つための行為で、雨漏りの応急修理、草刈り、施錠や戸締まり、不法に住み着いた人への明け渡し請求などが当たります。

法定相続分のとおりに相続登記を入れることも、相続人の1人が全員分をまとめて申請できる扱いです。共有者全員にとって不利益がない行為として、登記の取り扱いで認められています(ただし、申請できるのは全員分をまとめた登記に限られます)。

2つ目は「自分の持分の処分」です。自分の持分を売る、贈与する、放棄することは、他の共有者の同意なしにできます。

共有者に売ることも、第三者(買取業者など)に売ることもできます。ただし、どこに売るかで手取りが大きく変わり、業者に売った場合は残る共有者に影響が及びます。その損得は「持分の価格の決め方」の章で扱います。

「弟が売却に反対したので、修繕も草刈りも全部止めてしまい、3年で家が傷んだ」という声があります。これは止める必要のなかった行為まで止めていた例です。

反対する共有者がいても、保存行為は自分の判断で進められます。かかった費用は、持分に応じて他の共有者に求めることができます(民法253条1項。詳しくは確認項目の章)。

経験者の声:売る話を「3年だけ貸す」に変えたら動いた

「売る話しかしなかったから、弟はずっと拒否していました。3年の定期借家で貸して固定資産税をまかなう提案に変えたら、弟も乗ってきて、その3年の間に売る方向で話がまとまりました」(弟と2分の1ずつ相続した方)

出典: e-Gov法令検索 民法(252条5項・253条)

過半数は人数ではなく持分の割合で数え、兄弟2人で2分の1ずつなら成立しない

「過半数」は人数ではなく「持分の価格」で数えます(民法252条1項)。

ここで、自分の実家にこのルールが使えるかが分かれます。

共有の形過半数が成立するか
兄弟2人で2分の1ずつ成立しない。どちらか1人では2分の1で、過半数(2分の1を超える)にならない
兄弟3人で3分の1ずつ2人が賛成すれば成立(3分の2)
母が2分の1、子2人が4分の1ずつ母と子1人で成立(4分の3)。子2人だけでは成立しない(2分の1)
遺言や代襲相続で持分が偏っている持分の合計で判定。登記事項証明書の持分を足して確かめる

兄弟2人で2分の1ずつの共有は、永遠に過半数が成立しません。この形では、管理も短期賃貸も実質的に「全員の同意」が要ります。

過半数のルールの恩恵を受けられない構造なので、話し合いが止まったら、次の手は「1人に集約する」か「裁判所で分割する」になります(5つの選択肢の章以降)。

持分が偏っている実家では、思い込みと違うことがあります。「弟の持分は3分の1だと思っていたら、母の持分を弟が相続していて4分の1ではなかった」という声もあります。

過半数の判定は、頭の中の人数ではなく、登記事項証明書に書かれた持分で行いましょう(確かめ方は確認項目の章)。

出典: e-Gov法令検索 民法(252条1項)

住んでいる共有者と返答しない共有者の扱い(特別の影響と裁判所による除外)

過半数で決められる管理事項にも、2つの例外があります。

1つ目は、実家に住んでいる共有者がいる場合です。共有者の誰かが使っていても管理事項は過半数で決められますが、その決定が、共有者間の決定に基づいて使っている共有者に「特別の影響」を及ぼすときは、その人の承諾が要ります(民法252条3項)。

たとえば、兄弟の了解のもとで住んでいる妹を退去させるには、過半数の決定に加えて妹本人の承諾が要ります。「売るために出て行け」は、法的に通らない要求です。

住んでいる共有者との整理は、賃料相当額や費用の精算も絡むので、別記事「共有名義の実家に一人が住む場合の整理」で扱います。

2つ目は、賛成とも反対とも言わない共有者がいる場合です。改正で、相当の期間を定めて賛否を明らかにするよう催告し、それでも期間内に賛否を示さない共有者がいるときは、裁判所の決定を得て、その人を除いた共有者の持分の過半数で管理事項を決められるようになりました(民法252条2項2号)。

「返事をしないことで止める」という手は、管理事項については通用しなくなっています。

ただし、この裁判所の決定で決められるのは「管理に関する事項」だけです。売却や解体のような変更行為は対象外です。

売りたいのに返答がない相手には、1人への集約か、共有物分割請求で進めることになります。連絡そのものが取れない(住所も分からない)共有者がいる場合は別の裁判の仕組みがあり、裁判所の手続きの章で扱います。

出典: e-Gov法令検索 民法(252条2項・3項)、法務省 民法等改正に伴う不動産登記事務の取扱いについて(民法改正関係・令和5年3月28日通達)

整理を始める前の確認項目は遺産共有か物権共有か・持分割合・費用の負担者

整理の入口と相手は、「登記の状態」で決まります。

遺産分割が済んでいるかで、使える手続きも裁判所も変わります。共有者が誰で持分がいくつかで、過半数の成否と相手の数が決まります。費用を誰が払ってきたかは、交渉の材料になります。

同意のルールを自分の実家に当てはめるために、書類で確かめることを4つに絞りました。書類の取り方そのものは別記事(「実家の名義の調べ方」「相続人確認に必要な戸籍の集め方」)に任せ、「何を見るか」だけを書きます。

登記事項証明書で名義人と持分割合を確かめる(親名義のまま・法定相続分・協議後の3通り)

最初に取るのは、実家の土地と建物それぞれの登記事項証明書(全部事項証明書)です。

法務局で誰でも取れます。見るのは「権利部(甲区)」の最後の所有者欄で、名義人・持分・登記の原因(相続、遺産分割、贈与など)・登記の日付の4つです。

共有名義の実家の登記は、次の3通りのどれかになっています。

登記の状態中身共有者は誰か
親の名義のまま相続登記が済んでいない。法律上は相続人全員が法定相続分で共有している戸籍で確かめた相続人全員
法定相続分で共有登記済み相続人の1人が全員分を申請したことが多い。遺産分割はまだ登記に書かれた相続人
遺産分割協議の後に共有で登記済み話し合いで「兄弟で共有にする」と決めて登記した協議で決めた人

土地と建物で名義が割れている実家もあります。土地は亡くなった父の名義のまま、建物は生前に建て替えた兄の名義、ということがあります。

土地だけの共有と建物だけの共有では整理の相手も選択肢も変わるので、必ず両方を取っておきましょう。

共有者がすでに亡くなっている場合、その人の持分は、その相続人(配偶者と子)に移っています。「兄弟で共有だと思っていたら、登記は亡くなった父のままで、相続人は母も入れて4人だった」という声があります。

相手の数を間違えると、選択肢の前提が崩れます。登記と戸籍で共有者を確定させてから、過半数を数えましょう。

遺産共有か物権共有かを遺産分割協議書の有無で見分けると、家庭裁判所か地方裁判所かが決まる

次に確かめるのは、遺産分割協議書(または家庭裁判所の調停調書・審判書)があるかです。

これで、実家の共有が「遺産共有」か「物権共有」かが決まります。

  • 協議書がない(親名義のまま、または法定相続分で登記しただけ)=遺産共有。遺産分割がまだ終わっていない状態
  • 協議書があり、その内容で共有の登記をした=物権共有。遺産分割は終わり、通常の共有になった状態

この区別で変わるのは、話し合いで決まらなかったときの行き先です。遺産共有を解消する手続きは「遺産分割」で、家庭裁判所の調停・審判です。物権共有を解消する手続きは「共有物分割」で、地方裁判所に請求します。

遺産分割が必要な実家について共有物分割を求めても、原則として受け付けられない扱いです(民法258条の2第1項)。入口を間違えると、時間を失います。

もう1つ、相続人に有利な違いがあります。遺産共有のうちは、遺産分割で「実家は長男が取得し、長男が他の兄弟に代償金を払う」(代償分割)という形で1人にまとめる方法が残っています。

この形なら、登記にかかる登録免許税は相続の税率(固定資産税評価額の0.4%)で済み、兄弟間の売買で発生する譲渡所得税や不動産取得税もかからずに済みます(詳しくは持分の価格の章)。物権共有になった後で1人にまとめるには持分の売買か贈与に限られ、税の負担が変わります。

「法定相続分で登記してしまったから、もう代償分割にはできない」と思っている方がいます。これは2023年4月1日から変わりました。

法定相続分で登記した後に遺産分割がまとまった場合、持分を取得する相続人が単独で「更正登記」を申請し、遺産分割の内容に直せます(法務省民事局長通達・2023年3月28日)。遺産分割協議書と、持分を手放す相続人の印鑑証明書は要りますが、取り返しはつきます。

法定相続分の登記は1人でできる分、安易にやると共有を固定したように見えます。それでも協議書がなければ遺産共有のままで、代償分割の方法は残っています。

出典: e-Gov法令検索 民法(258条の2)、法務省 民法等改正に伴う不動産登記事務の取扱いについて(令和5年4月1日施行関係・令和5年3月28日通達)、国税庁 No.7191 登録免許税の税額表

固定資産税・修繕費を誰が払ってきたかの記録を揃え、立替分の求償と使用料の交渉材料にする

3つ目は、お金の記録です。

共有名義の固定資産税は、市区町村が共有者の代表者1人に納税通知書を送る形で課税します。持分ごとに分けて課税してもらう扱いは用意されていない、というのが市区町村の案内です(鹿児島市など)。

法律上は共有者全員が連帯して納める義務を負いますが(地方税法10条の2)、共有者の内部では、持分に応じて負担するのが原則です(民法253条1項)。代表者が1人で払い続けていたなら、他の共有者の持分の分は「立て替え」で、求めることができます。

揃えるものは次のとおりです。

  • 固定資産税の納税通知書と課税明細書(代表者は誰か、年税額、土地と建物の評価額)
  • 固定資産税・火災保険・修繕・草刈り・光熱費の基本料金の領収書と振込記録
  • 誰がいつ何を払ったかの一覧(メールやメッセージのやり取りも残す)

民法253条には、あまり知られていない2項があります。共有者が1年以内に負担の義務を果たさないとき、他の共有者は相当の償金を払ってその人の持分を取得できる、という規定です。

実際にこの規定で持分を取るには裁判が要り、手間がかかります。それでも、「払わない人の持分を買い取る根拠」が法律にあることは、話し合いの材料になります。

実家に住んでいる共有者がいる場合は、使用料の問題もあります。共有物を使う共有者は、別段の合意がない限り、自分の持分を超える使用の対価を他の共有者に償還する義務があります(民法249条2項)。

ただし、「無料で住んでいい」という合意があった場合や、長く黙認していた場合は、使用貸借(無償の貸し借り)と見られて請求が認められにくくなります。求償も使用料も、権利を行使できると知ってから5年で時効にかかります(民法166条1項)。

精算の進め方は別記事「共有名義の実家に一人が住む場合の整理」に任せます。記録があってはじめて、交渉の席に着けます。

「10年間固定資産税を1人で払ってきたのに、売るときに代金は均等に分けると言われた」という声は、記録を揃えていれば結果が違ったはずの例です。

出典: e-Gov法令検索 民法(166条・249条・253条)、e-Gov法令検索 地方税法(10条の2)、鹿児島市 共有名義の固定資産税に関するFAQ

相続開始からの年数と共有者の現状を確かめる(10年の節目・連絡の可否・判断能力)

最後に、時間と相手の状態を確かめます。ここでは「数える」だけで、何を失うかは放置するデメリットの章で扱います。

まず、相続開始日(親の死亡日)から何年たったかです。節目は3つあります。

  • 相続開始から10年(遺産分割の特別受益・寄与分の期限)
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日(空き家の3,000万円特別控除の期限)
  • 相続を知ってから3年(相続登記の義務の期限。2024年4月1日より前の相続は2027年3月31日まで)

親の死亡日を1行書き出し、この3つを並べてみてください。

次に、共有者ごとの状態です。連絡が取れるか、連絡は取れるが返答がないか、住所も分からないか。認知症の兆候があるか。海外に住んでいるか。

これで裁判所の手続きの要否が決まります。返答がないだけなら催告と裁判所の決定で管理事項は進められ、住所が分からないなら持分取得の裁判、判断能力がなければ成年後見、海外在住は所在不明ではなく書類の工夫で対応できます。

あわせて、登記事項証明書の「権利部(乙区)」で抵当権などの担保が残っていないかも見ておきましょう。親の借入が残っていると、売却や集約の前に抵当権の抹消が要り、段取りが1つ増えます。

経験者の声:確認を飛ばして相手の数を間違えた

「兄と2人で話を進めていたら、父の名義のままだったので母の持分もあり、さらに亡くなった姉の分は姉の夫と子に移っていました。相手が2人ではなく5人だと分かってから、やり直しになりました」(父名義の実家を兄弟で整理した方)

出典: 法務省 遺産分割に関する民法改正の概要、国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例、法務省 相続登記の申請義務化に関するQ&A

共有名義の実家を整理する5つの選択肢(共有維持・全体売却・1人に集約・持分だけ処分・裁判)の比較

同意のルールと自分の実家の状態を確かめた結果で、5つの選択肢を絞ります。

先に言っておくと、相談先によって勧められる選択肢はだいたい決まっています。不動産会社は全体売却(仲介手数料が出る)、持分買取業者は持分だけの売却、弁護士は裁判、司法書士は集約の登記を勧めやすい立場です。

どれも間違いではなく、自分の実家で成立する選択肢を先に知ってから相談に行く方が、話が早く進みます。

5つの選択肢を必要な同意・手取り・税・期間・共有者との関係で比べる

選択肢必要な同意手取りの目安主な税期間の目安共有者との関係
共有を維持する管理は過半数、変更は全員売らないので現金は入らない。費用は持分で負担固定資産税が続く期限を決めて持つ取り決めがあれば保てる
全員で売却して分ける全員最も高い(市場価格×持分)譲渡所得税。空き家特例が各自に使える可能性売り出しから数か月〜合意できれば後腐れが少ない
1人に集約する遺産共有なら相続人全員の協議、物権共有なら売る人と買う人市場価格×持分が基本(持分の価格の章)代償分割なら登録免許税0.4%のみ。持分売買なら譲渡所得税・不動産取得税・登録免許税協議がまとまれば1〜2か月価格で揉めなければ保てる
自分の持分だけ処分する自分だけ共有者に売れば市場価格×持分。業者なら半分以下になる例が多い譲渡所得税。放棄は受け取る側に贈与税業者なら数週間業者に売ると残る共有者との関係は壊れやすい
裁判所で分割する不要(1人で申し立てられる)賠償分割なら鑑定額、競売なら市場価格より安い譲渡所得税半年〜数年対立が固定しやすい

絞り方は単純です。全員の同意が揃うなら全体売却か1人への集約が先で、持分だけの処分や裁判は、同意が揃わないときの手段です。

揃わないなら、選択肢は集約(反対する人の持分を買う、または自分の持分を共有者に売る)、持分だけの処分、裁判の3つです。

手取りの順序はおおむね「遺産共有のうちの代償分割≧全体売却>共有者への持分売却>業者への持分売却」です。裁判は高く売る手段ではなく、競売という最悪の結果を全員が知るための背景として働きます。

土地を分筆して現物で分ける「現物分割」も法律上の選択肢ですが、1区画の戸建ての実家では分けると価値が落ちるため成立しにくく、表から外しています。

共有を維持するのは、期限と管理の取り決めを前提にした一時的な選択肢

共有を続けることは、条件付きで選択肢になります。

おすすめできるのは、相場の回復を待ちたい、親の一方がまだ存命で実家を使っている、数年後に誰かが住む予定がある、という場合です。

ただし、維持と放置は違います。維持を選ぶなら、次の3つを決めておきましょう。

  • 管理の方針(空き家のまま置くか、過半数で3年以内の定期借家に出すか、軽微な修繕はどこまでするか)
  • 費用の分担(固定資産税・保険・修繕を誰がいくら負担し、立替分をいつ精算するか)
  • 再検討日(いつまでに、売るか集約するかを決め直すか)

期限のない維持は、放置するデメリットの章で書く損失にそのままつながります。「とりあえず共有にして5年たったら、弟が亡くなって、話す相手が甥になった」という声があります。

共有は、時間がたつほど相手が増え、使える特例が減る構造です。維持を選ぶなら、再検討日を紙に書いて全員で持つことが条件です。

全員で売却して代金を分けると、手取りが最も高く、空き家特例も各自に使える

全員が同意できるなら、実家を第三者に売って代金を持分割合で分けるのが、手取りの最も高い選択肢です。

遺産共有のうちなら、遺産分割協議書に「換価分割」として書き、代表者1人の名義で登記して売ることもできます。

税の面では、相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除(国税庁 No.3306)を使える可能性があります。昭和56年5月31日以前に建てられた家で、亡くなった親が1人で住んでいて、相続から売却まで誰も住まず貸さず、2027年12月31日までに売る、といった要件があります。

共有名義でも売主ごとに判定されるので、兄弟それぞれが使えます。ただし相続人が3人以上の場合は1人あたり2,000万円に下がり、売却代金1億円以下の判定は他の相続人の分も合算します(期限とともに放置するデメリットの章で詳しく書きます)。

おすすめなのは、誰も住む予定がなく、反対している共有者が「条件次第では売ってもいい」と言っている場合です。

反対の理由が「安く売られそう」「進め方が勝手」なら、査定を複数社から取り、代金の分け方と費用の精算を先に書面にすると解けることがあります。売却の手順(査定・媒介契約・決済の段取り)は別記事「共有名義の実家を売却する方法」に任せます。

出典: 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

1人に集約するには、遺産共有なら代償分割、物権共有なら持分の買取

住みたい人、残したい人がいる実家では、その人に名義を集めると、共有の整理が1回で終わります。

集め方は、遺産共有か物権共有かの判定で2つに分かれます。

遺産共有(遺産分割がまだ)なら、「代償分割」です。遺産分割協議で実家を1人が取得すると決め、その人が他の相続人に代償金を払います。

登記は相続を原因とするので、登録免許税は0.4%です。代償金を受け取る側に譲渡所得税はかからず、取得する側の不動産取得税も非課税です(相続による取得のため)。

物権共有(協議書で共有にして登記済み)なら、「持分の売買」です。他の共有者の持分を買い取り、売買を原因として登記します。

売る側には譲渡所得税、買う側には不動産取得税と売買の税率の登録免許税がかかります。親族間の売買は金融機関の住宅ローンが使いにくいとされ、現金か分割払いで用意することになります。

どちらも、集める側に代償金や買取代金を払う現金が要ります。価格の決め方と、代償分割と持分売買でどれだけ税が変わるかは、持分の価格の章に書きます。

覚えておきたいのは、「相続のときに代償分割にしておけば、兄も自分も税を払わずに済んだと後で知った」という声もあることです。遺産共有のうちに動くかで、同じ結果でも税が違います。

出典: 国税庁 No.7191 登録免許税の税額表、千葉県 不動産取得税

自分の持分だけを処分するときの共有者への売却・業者への売却・放棄の違い

話し合いがどうしても進まず、自分だけ抜けたいときの選択肢です。自分の持分の処分は誰の同意もなしにできますが、渡し先で結果が大きく変わります。

渡し先手取り残る共有者への影響
共有者(兄弟)に売る市場価格×持分が基本共有者が1人に近づき、整理が進む
買取業者に売る市場価格×持分の半分以下になる例が多い(目安)業者が共有者になり、残りの持分の買取打診や共有物分割請求が来る
放棄する0円持分は他の共有者全員に持分割合で移り、受け取る側に贈与税がかかる扱い

業者への売却は、早く現金化できる正当な選択肢です。ただし手取りは最も低く、その後の共有物分割請求で残る兄弟が競売に巻き込まれる流れになりやすいといえます。

「業者に持分を売ったら妹から絶縁された。手取りも半分だった」という声は、この構造から来ています(価格の仕組みと見分け方は持分の価格の章)。

放棄は「タダで抜ければ楽」と思われがちですが、放棄した持分は他の共有者全員に持分割合で帰属します(民法255条)。特定の1人に渡す形は選べず、受け取った側は持分を贈与で取得したものとして扱われ、贈与税の対象になります(相続税法基本通達9-12)。

「放棄すれば楽だと思ったら、受け取る姉に贈与税がかかると言われて止めた」という声のとおり、相手にとって負担になる場合もあります。

出典: e-Gov法令検索 民法(255条)、国税庁 相続税法基本通達 9-12(共有持分の放棄)

裁判所で分割するのは高く売る手段ではなく交渉の背景として使う

話し合いで決まらないとき、共有を終わらせる方法を裁判所に決めてもらう選択肢です。遺産共有なら家庭裁判所の遺産分割調停・審判、物権共有なら地方裁判所への共有物分割請求で、どちらも1人で申し立てられます。

結果は、1人が実家を取得して他の共有者に代償金を払う「賠償分割」か、実家を競売にかけて代金を分ける「競売」のどちらかに落ち着くことが多いとされています。賠償分割の金額は鑑定で決まり、競売は市場価格より安くなるのが通常です。

つまり、裁判で高く売れることはありません。それでも裁判が役に立つのは、「このまま決まらなければ競売で全員が損をする」という結果を、反対している共有者が具体的に知るからです。

「訴訟を起こすと弁護士から通知してもらったら、弟が全体売却に同意した」という声もあります。

おすすめなのは、反対する共有者が条件を出しても応じない場合や、連絡が取れない共有者がいる場合です。手続きの中身、費用と期間、連絡が取れない共有者・認知症の共有者がいる場合の別の手続きは、裁判所の手続きの章で書きます。

出典: e-Gov法令検索 民法(258条)

持分の価格の決め方と、兄弟に集約する場合と業者に持分だけ売る場合の手取りの違い

「1人に集約する」と「自分の持分だけを処分する」は、どちらも「持分にいくらの値段を付けるか」で損得が決まります。ここではその価格と税だけを深掘りします。

持分の価格は「実家全体の時価×持分割合」が出発点で、兄弟の間ではそこから引かないのが普通です。業者に売ると、半分以下に減るのが通例です。

兄弟の間では、安すぎると贈与税の問題になります。遺産共有のうちに代償分割で集約すれば、譲渡所得税も不動産取得税もかからずに済みます。

評価額の計算そのものは別記事「実家の価格・評価額の違い」に任せます。

持分の価格は実勢価格×持分割合が出発点で、路線価は約8割・固定資産税評価額は約7割の目安

実家の値段を測る物差しは4つあります。

物差し誰が出すか時価に対する水準の目安
査定価格(実勢価格)不動産会社。複数社に頼む時価そのもの(会社ごとに幅がある)
不動産鑑定評価額不動産鑑定士。費用がかかる時価(裁判や税務で最も通りやすい)
路線価(相続税評価額)国税庁が毎年公表地価公示価格の80%程度を目途(国税庁)
固定資産税評価額市区町村。課税明細書に載っている地価公示価格の7割を目途(固定資産評価基準)

兄弟の間で持分を売り買いするときの出発点は、「実家全体の時価×持分割合」です。時価は複数社の査定で押さえ、兄弟の意見が割れるなら鑑定を入れると決着がつきます。

大事なのは、兄弟に売るときに持分だからという理由で値引きしないことです。持分の減価(後で書く「半分以下」)は、見知らぬ第三者が持分だけを買うときに、使えない・売れないリスクを織り込んで起きる話です。

兄弟が持分を買えば実家全体を1人のものにできるので、減価する理由が消えます。兄弟から「業者の査定ではこの値段だ」と持ち出されても、断ってよい場面です。

古い建物は査定で0円になりがちですが、扱いは前提で変わります。買う側が解体して土地を使うなら0円で筋が通りますが、買う側がそのまま住むなら、建物には住める価値があります。

「古い建物を0円にして買ったが、住むなら価値があったと後で揉めた」という声があるので、解体前提か居住前提かを先に決めておきましょう。

決め方の順序は、複数社の査定→鑑定の要否の判断→兄弟間の合意書(価格・支払期日・費用の負担)→司法書士と税理士への事前確認、です。税の確認は最後ではなく、合意書を作る前に入れておくと手戻りを防げます。

出典: 国税庁 令和3年分の路線価等の補正について、船橋市 固定資産税評価額と地価公示価格の関係(FAQ)

兄弟間で安すぎる価格は贈与税の対象で、目安は相続税評価額以上(時価の2分の1ではない)

兄弟の間で持分を安く売り買いすると、税務署から「差額は贈与」と見られます。相続税法7条は、著しく低い価額の対価で財産を譲り受けた場合、時価と対価の差額を、譲った人からの贈与とみなすと定めています。

ここで広く誤解されている目安があります。「時価の2分の1未満でなければ大丈夫」という話です。

国税庁のタックスアンサー(No.4423)は、個人間の譲渡で「著しく低い価額」に当たるかは個々の事案で判定するとし、法人に資産を移すときの「時価の2分の1に満たない金額」という基準とは異なる、とはっきり書いています。2分の1は所得税の法人向けの基準で、兄弟間の贈与税の判定には使えない数字です。

代わりに目安になるのが裁判例です。東京地裁の2007年8月23日判決は、親族間で相続税評価額(路線価水準)と同水準かそれ以上の対価で土地を譲渡した場合は、原則として「著しく低い価額」に当たらないと判断し、贈与税の課税処分を取り消しました(税務通信の報道。納税者勝訴で確定したとされています)。

この判決を踏まえると、兄弟間の目安は次のようになります。

  • 固定資産税評価額(時価の7割水準)をそのまま持分価格にするのは危険。「固定資産税評価額で弟の持分を買ったら、税務署から贈与の指摘を受けた」という声があります
  • 路線価(相続税評価額)以上なら原則として安全とされる。ただし売る側は時価より2割ほど安く手放している
  • 時価(査定・鑑定)で売り買いすれば、贈与の問題はほぼ起きない

逆に高すぎる価格も問題で、時価を大きく超える対価は、差額が売る側への利益と見られる可能性があります(相続税法9条)。

分割払いにするときは、期日と利息を契約書に書いておきましょう。利息なしの長期分割は、贈与と見られる余地が残ります。

親族間の売買は住宅ローンが使いにくいとされているので、資金計画は先に立てる必要があります。

出典: e-Gov法令検索 相続税法(7条・9条)、国税庁 No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき

共有者間の売買にかかる譲渡所得税・不動産取得税・登録免許税と、空き家特例が使えない理由

持分の売買では、売る側と買う側の両方に税がかかります。合意する前に、双方の手取りと負担を同じ紙に書き出しておきましょう。

売る側の譲渡所得税。売った価格から取得費と譲渡費用を引いた利益に、所得税と住民税がかかります。相続した実家の取得費は、親が買ったときの代金を引き継ぎます(国税庁 No.3270)。

親の購入代金が分からないと、売った価格の5%を取得費とする扱いになり(国税庁 No.3258)、利益が大きく出て税が重くなります。親の契約書や領収書を探しておくことが、そのまま節税になります。

空き家の3,000万円特別控除が使えるか。この特例は「特別の関係がある人」への売却には使えない決まりです。特別の関係には親子・夫婦のほか、生計を一にする親族や、売った後にその家で同居する親族が含まれます(国税庁 No.3306)。

生計が別の兄弟は、この文言だけ見れば当たらないように読めますが、特例には別の壁があります。家を残したまま売る場合は、売却時に耐震基準を満たすか、翌年2月15日までに耐震改修か取壊しをすることが条件です。

昭和56年以前に建てられた実家を兄弟がそのまま住むために買う場面では、この条件をほぼ満たせないといえます。結果として、兄弟への持分売却でこの特例を使えるのは例外的で、「使えない前提」で手取りを計算しておくのが安全です。

要件に当たりそうなら、税理士に確認してみてください。

買う側の不動産取得税と登録免許税。不動産取得税は、2027年3月31日までの取得なら土地・住宅とも3%で、宅地は評価額を2分の1にして計算します(千葉県など各都道府県の案内)。登録免許税は、売買を原因とする土地の移転登記が1.5%(2029年3月31日までの軽減税率)、建物は2%です(国税庁 No.7191)。

相続を原因とする0.4%と比べると、同じ持分を移すのに数倍の差になります。これに司法書士の報酬が加わります。

出典: 国税庁 No.3270 相続や贈与によって取得した資産の取得費、国税庁 No.3258 取得費が分からないとき、国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例、千葉県 不動産取得税、国税庁 No.7191 登録免許税の税額表

遺産共有のうちなら代償分割で譲渡税も取得税もかからず、持分売買と差が出る

遺産共有か物権共有かを確かめた結果が、ここで最も大きな差になります。

遺産分割がまだなら、持分の売買ではなく「代償分割」で集約できます。遺産分割協議書に「実家は長男が取得し、代償金として二男に○円、長女に○円を支払う」と書き、相続を原因として登記します。

このとき、税は次のようになります。

  • 登録免許税は相続の0.4%(売買の1.5%・2%ではない)
  • 代償金を受け取る兄弟に譲渡所得税はかからない
  • 実家を取得する人に不動産取得税はかからない(相続による取得は非課税)

代償分割も持分売買も、「1人が実家を持ち、他の兄弟が現金を受け取る」という結果は同じです。違うのは、遺産分割の中で行うか、遺産分割が終わった後に行うかです。

雑誌の相続事例(サライ)に、兄弟3人で実家を共有相続し、後から1人が兄2人の持分を買い取った例があります。価格は固定資産税評価額を参考にし、建物は0円としました。

結果、売った兄には譲渡税、買った側には不動産取得税がかかりました。監修した専門家は「相続時に1人が相続して兄2人に代償金を払っていれば、譲渡税も取得税もかからず、登記費用も5分の1で済んだ」と振り返っています。

「とりあえず共有」の代償が、そのまま税の差になった例です。

法定相続分で登記してしまった実家でも、協議書がなければ遺産共有のままです。2023年4月以降は、遺産分割がまとまれば取得する相続人の単独申請で更正登記に直せるので、代償分割の方法は残っています。

「相続のときに代償分割にしていれば、兄も自分も税を払わずに済んだと司法書士に言われた」という声は、物権共有になってから聞くことになる言葉です。遺産共有のうちに動けば、聞かずに済みます。

出典: 国税庁 No.7191 登録免許税の税額表、千葉県 不動産取得税、法務省 民法等改正に伴う不動産登記事務の取扱いについて(令和5年4月1日施行関係・令和5年3月28日通達)

業者に持分だけ売るときの価格が市場価格×持分の1/2〜1/3になる構造

持分買取業者は、共有者の同意なしに持分だけを買ってくれます。急いで現金が要る人には正当な選択肢ですが、価格の仕組みは知っておく必要があります。

業者は、買った持分をそのまま持っていても使い道がなく、残りの持分を他の共有者から買い取って全体を取得し、転売して利益を出すか、共有物分割請求で競売に持ち込んで回収するのが前提です。

その手間・時間・リスクを織り込むので、買取価格は「市場価格×持分割合」の30〜50%程度とする業者の解説があります(目安)。大手住宅情報サイトの解説でも「相場の半分以下で売却した事例も多い」とされています。

安くなるのは業者が悪いからではなく、持分だけを買う側の構造上の理由です。

売った後に、残る共有者に何が起きるかも知っておきましょう。業者は他の共有者に持分の売却を働きかけ、実家に住んでいる共有者には賃料を、過去にさかのぼって請求することがあります。

応じなければ共有物分割請求を裁判所に申し立て、競売になれば市場価格より安い代金を分けることになります(手続きの中身は裁判所の手続きの章)。

業者を選ぶときの見分け方は次のとおりです。

  • 「今売らないと売れなくなる」「持分に価値はない」と不安をあおって急がせる
  • 査定が1社だけで、価格の根拠(全体の時価と減価率)を示さない
  • 契約の解除条件、追加費用、登記と代金支払いの順序が契約書で不明

複数の業者から見積もりを取り、根拠を示す会社を選ぶだけで、価格はかなり変わります。

手放すなら業者より先に共有者へ同じ価格で打診し、手取りと関係を守る

自分の持分を手放すと決めたなら、業者に売る前に、同じ価格で共有者に打診しておきましょう。

理由は単純で、共有者は持分を買えば実家全体を1人のものにできるので、業者より高く買う理由があるからです。業者の査定が「市場価格×持分の3分の1」なら、共有者にとっては、その2倍の価格でも業者が入ってくるより安い買い物になります。

打診は口頭ではなく文書にし、価格と回答期限を示しておきましょう。「○月○日までに返答がなければ、同じ価格で第三者(買取業者)に売ります」と書くことで、相手は放置できなくなります。

共有者に先に知らせることは、法的な義務ではなく、自分を守る手順です。知らせずに業者に売ると、残る共有者は見知らぬ会社と共有になり、その後の分割請求と競売で全員が損をする流れになりやすいからです。

順序を守ることは、自分の手取りと兄弟との関係の両方を守ります。

経験者の声:業者の査定額で先に姉に打診したら、姉が買い取った

「業者の査定は実勢の3分の1でした。その金額を書いて、期限付きで姉に打診したら、姉が同じ金額で買い取ると言ってきました。業者に売るより関係は残り、姉も安く全体を持てたので、お互いに損はなかったと思います」(姉と2分の1ずつ相続した方)

話し合いで決まらないときの裁判所の手続き(共有物分割請求・所在不明の共有者の持分取得・認知症の後見)

裁判所が決めるのは、共有を終わらせる方法です。

相手が「反対している」のか「連絡が取れない」のか「判断能力がない」のかで、使う手続きが変わります。

いずれも時間と現金(供託金・代償金・報酬)が要ります。費用と期間は裁判所の案内をもとにした目安で、個別の額は申立先で確かめる前提です。

相手の状態(反対する・連絡が取れない・判断能力がない)で手続きが決まる

相手の状態使う手続き裁判所
反対している(連絡は取れる)物権共有なら共有物分割請求。遺産共有なら遺産分割調停・審判地方裁判所/家庭裁判所
返答しない(連絡先は分かる)管理事項は催告と裁判所の決定。売却は上の分割請求へ地方裁判所/家庭裁判所
住所も分からない(所在等不明)所在等不明共有者の持分取得の裁判、または持分譲渡権限付与の裁判不動産所在地の地方裁判所
認知症などで判断能力がない成年後見の申立て。売却には後見人と家庭裁判所の許可本人の住所地の家庭裁判所

海外に住んでいる共有者は、所在不明とは別の扱いです。日本の印鑑証明書の代わりに、現地の日本領事館で取るサイン証明や在留証明で売買や遺産分割の書類を整えられるので、連絡が取れるなら裁判なしで進められます。

どの裁判所に行くかは、「遺産共有か物権共有か」で決まります。遺産分割がまだの実家で共有物分割を地方裁判所に申し立てても、原則として進まない扱いです(民法258条の2第1項)。

例外として、相続開始から10年を過ぎた遺産共有の持分は、共有物分割の中で一緒に処理できるようになりました(同条2項。詳しくは放置するデメリットの章)。

出典: e-Gov法令検索 民法(258条の2・262条の2・262条の3)

共有物分割請求の結果は賠償分割か競売で、多くは鑑定の前後で和解に落ちる

共有物分割請求は、共有者の間で協議が調わないとき、または協議ができないときに、分割を裁判所に求める手続きです(民法258条1項)。訴える前に協議を申し入れた事実が要るので、内容証明などで申し入れの記録を残してから進める流れです。

裁判所が命じる分割の方法は、2023年の改正で条文に順位が書かれました(民法258条2項・3項)。

  1. 現物分割(土地を分ける)
  2. 賠償分割(1人が全部を取得し、他の共有者に代償金を払う)
  3. 上の2つができないか、分けると価格が著しく下がるときに競売

戸建ての実家では現物分割が難しいので、実質は賠償分割か競売です。

賠償分割になるには、取得する人に代償金を払う能力があること、実家の価格が適正に評価されていることが前提で、価格は裁判所の鑑定で決まるのが通常です。代償金の額を巡って、双方が鑑定の数字を争う場面がこの手続きの中心になります。

現金のない人の「自分が取得する」という主張は、通らないのが通常です。

競売は、買い手が業者中心で、落札価格は市場価格を下回るのが通常です。代金は持分で分けるので、全員が損をします。

そのため判決まで行く例は多くなく、鑑定の前後で「全員で売る」「1人が鑑定額で買い取る」という和解に落ちることが多いとされています。「競売になれば全員が損だと説明されて、妹も買取価格で折れた」という声は、この着地です。

費用と期間の目安は次のとおりです。

項目目安
訴状に貼る印紙訴額に応じて決まる。訴額は原告の持分の価額が目安で、1,000万円なら5万円、3,000万円なら11万円(民事訴訟費用等に関する法律の別表第一)
鑑定費用裁判所の鑑定を入れると数十万円の単位で、当事者が予納する
弁護士費用法律事務所の解説では着手金22万円程度から、報酬は得られた利益の10〜20%程度
期間半年から1年以上。鑑定や和解の交渉が入ると、さらに延びることがある

遺産共有の場合は、家庭裁判所の遺産分割調停から始まります。申立手数料は被相続人1人につき収入印紙1,200円で、相手方の住所地の家庭裁判所に申し立てます(家庭裁判所の案内)。

調停で決まらなければ審判に移り、裁判所が分割方法を決めます。遺産分割では、介護や生前贈与(寄与分・特別受益)を反映した具体的な相続分で分けられますが、相続開始から10年を過ぎると、その主張ができなくなります(放置するデメリットの章)。

経験者の声:弁護士からの通知だけで弟が同意した

「訴訟を起こすつもりだと弁護士から通知してもらった時点で、弟が全体売却に同意しました。裁判で勝つためではなく、競売になればお互い損だと弟に分かってもらうための依頼でした」(弟と2分の1ずつ相続した方)

出典: e-Gov法令検索 民法(258条)、e-Gov法令検索 民事訴訟費用等に関する法律(別表第一)、名古屋家庭裁判所 遺産分割調停

連絡が取れない共有者の持分を取得する裁判は公告と時価相当の供託が要る

共有者の住所が分からないときは、まず戸籍の附票や住民票の除票で住所をたどることになります(探し方は別記事「相続人確認に必要な戸籍の集め方」へ)。それでも分からない場合、2023年4月から、裁判所で持分を動かせる2つの手続きができました。

1つ目は「所在等不明共有者の持分取得の裁判」です(民法262条の2)。申立人が、裁判所の定める時価相当額を供託し、所在不明の共有者の持分を取得します。

2つ目は「持分譲渡権限付与の裁判」です(民法262条の3)。所在不明の共有者の持分も含めて実家全体を第三者に売る権限を申立人に与え、売却代金のうち不明者の持分相当額を供託します。

自分が持分を取得する現金がなくても、全体を売る形なら代金から供託できるのが2つ目の利点です。

大阪地方裁判所の案内(2026年4月版)から、手続きの要点を挙げます。

項目要点
申立先不動産の所在地を管轄する地方裁判所
申立手数料対象となる持分1個につき収入印紙1,000円。これに連絡用の郵便切手と、官報公告の費用の予納金(最低でも7,847円)がかかる
流れ裁判所が官報で公告し、3か月以上の異議届出期間を置く→裁判所が供託金額を定める→申立人が供託→持分取得の裁判→確定後に申立人が自分で登記を申請する
添付資料登記事項証明書、固定資産税評価証明書、持分の時価の根拠(不動産鑑定士の鑑定書か、算定根拠を書いた不動産業者の査定書)、所在を探した経過の報告書など
条件所在不明の共有者の持分が遺産分割の必要な相続財産に属する場合は、相続開始から10年を経過していることが要る(民法262条の2第3項)

最大の負担は供託金です。時価相当額を現金で用意するので、「兄の持分を取得する裁判で、供託金を用意するのが一番大変だった」という声があります。

現金がなければ、持分譲渡権限付与の裁判で全体を売る方法を検討してみてください。

従来の手段である不在者財産管理人(家庭裁判所に申立て、収入印紙800円)も使えます。管理人が不明者の代わりに遺産分割や売却に加わりますが、管理人の報酬や予納金がかかり、管理は不在者が見つかるなどして終わるまで続きます。

実家の持分だけを片付けたい場合は、2023年からの持分取得・譲渡権限付与の裁判の方が、手続きが実家に限定される分だけ見通しが立ちやすいといえます。

出典: e-Gov法令検索 民法(262条の2・262条の3)、大阪地方裁判所 所在等不明共有者の持分の取得の裁判の申立てについてのQ&A、裁判所 不在者財産管理人選任

認知症の共有者がいる場合は成年後見で、後見人は安売りや放棄に同意しない

共有者の1人に認知症などで判断能力がない場合、その人が結んだ売買契約や遺産分割の合意は無効になるおそれがあります。この状態で実家を売る、または集約するには、家庭裁判所に成年後見人を選んでもらい、後見人が本人の代わりに契約します。

手続きの目安は次のとおりです(家庭裁判所の案内)。

手続き目安
後見開始の申立て本人の住所地の家庭裁判所に、申立手数料として収入印紙800円と後見登記の手数料2,600円。本人の判断能力について鑑定が必要になると、鑑定費用を申立人が負担することがある
居住用不動産の処分許可後見人が本人の住んでいた(または住む予定の)家を売る、貸す、取り壊すには、家庭裁判所の許可が別に要る(申立手数料は収入印紙800円)。許可なく処分すると無効

知っておきたいのは、後見人は「本人の利益」を基準に動くという点です。他の共有者が「安い価格で買いたい」「持分を放棄してほしい」と頼んでも、本人に不利な処分には後見人も家庭裁判所も応じない仕組みです。

「母の後見人が持分の放棄に同意してくれず、結局時価で買い取る形になった」という声は、この仕組みのとおりの結果です。

後見は本人が亡くなるまで続き、弁護士や司法書士などの専門職が後見人になると報酬もかかります。東京家庭裁判所が示している目安では、基本報酬が月額2万円程度で、管理する財産が多いと増えます(目安)。

判断能力が完全には失われていない段階なら、本人の意思を確認したうえで本人が契約できる場合があります。司法書士が本人に面談して意思を確かめる方法があり、軽度であれば売却や遺産分割に本人が加われることもあります。

逆に言えば、共有者に認知症の兆候が見えた時点で、話し合いを先延ばしにするほど選択肢が減ります。判断能力があるうちに動くことが、相手にとっても自分にとっても負担の少ない進め方です。

出典: 裁判所 後見開始、裁判所 居住用不動産の処分についての許可、前橋家庭裁判所 成年後見に関するFAQ

共有のまま放置するデメリットは相続開始10年で寄与分が消える・空き家特例は2027年末まで・次の相続で共有者が増える

確認項目の章で数えた「相続開始からの年数」を、ここで損失に変換します。共有の放置が損だというのは感情論ではなく、期限で損失が確定する話です。

相続開始から10年で、介護や生前贈与の主張が消えます。空き家の3,000万円特別控除は、2027年末と相続後3年の年末で切れます。次の相続で、相手が兄弟から甥や義理の家族に変わります。

期限を全員で共有し、そこから再検討日を決めれば、「共有維持」は放置ではなくなります。

相続開始から10年で寄与分と特別受益の主張ができなくなり、損する人と得する人が入れ替わる

2023年4月1日に施行された民法904条の3により、相続開始から10年を経過した後の遺産分割には、特別受益(生前贈与の持ち戻し)と寄与分(介護や財産の維持への貢献)の規定が適用されなくなりました。

10年を過ぎると、誰が介護をしたか、誰が生前に援助を受けたかに関係なく、法定相続分(または遺言の指定相続分)で分けることになります。例外は、10年を過ぎる前に家庭裁判所に遺産分割を申し立てていた場合などです(法務省)。

2023年4月1日より前に始まった相続にも適用され、その場合の期限は「相続開始から10年」と「施行から5年=2028年3月31日」のどちらか遅い方です(改正法附則3条)。たとえば2015年に亡くなった親の遺産分割は、2025年ではなく2028年3月31日が期限になります。

この期限で、損する人と得する人が入れ替わります。

  • 親を介護してきた人、実家を管理し固定資産税を払ってきた人は、10年を過ぎると寄与分を主張できず、法定相続分どおりになる。損をする人
  • 生前に家の購入資金や事業資金をもらっていた人は、10年を過ぎると持ち戻しを免れ、法定相続分をそのまま受け取れる。得をする人

つまり、共有者の中に「待てば得をする人」がいる構造です。話し合いが進まない理由が、相手の性格ではなく、この期限にあることもあります。

「母の介護を10年した分を主張しようとしたら、10年を過ぎていて法定相続分になった」という声は、この条文の施行後に増えています。介護や管理をしてきた人ほど、10年より前に遺産分割を申し立てる理由があります。

同じ10年で、もう1つ変わることがあります。相続開始から10年を過ぎた遺産共有の持分は、共有物分割の裁判で一括して処理できるようになります(民法258条の2第2項)。

反対して遺産分割を止めてきた人も、10年後は地方裁判所に訴えられる立場になります。手続きは裁判所の手続きの章のとおりです。

出典: e-Gov法令検索 民法(904条の3・258条の2・附則3条)、法務省 遺産分割に関する民法改正の概要

空き家の3,000万円特別控除は2027年末と相続後3年の年末が期限で、3人以上は2,000万円・貸すと対象外

相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除(国税庁 No.3306)には、2つの期限があります。

  • 2027年12月31日までに売ること
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること

両方を満たす必要があるので、たとえば2023年に親が亡くなった実家なら2026年12月31日、2025年に亡くなった実家なら2027年12月31日が期限です。どちらが先に来るかを、確認項目の章で数えた年数から確かめておきましょう。

共有名義の実家に直結する要件が3つあります。

  1. 相続人が3人以上の場合、控除は1人あたり2,000万円です(2024年1月1日以後の売却)。「兄弟3人なので1人3,000万円のつもりで計算していたら、2,000万円と言われた」という声があります
  2. 売却代金が1億円以下の判定は、他の相続人が売った分も合算して行います。全員で売るときは合計額で見ます
  3. 相続のときから売るときまで、事業・貸付・居住のどれにも使っていないことが条件です。相続後に一度でも貸すか住むと、対象から外れます

3つ目は、「共有維持」と正面からぶつかります。維持の間に固定資産税をまかなおうと3年以内の定期借家で貸すと、この特例を使う資格が消えます。

「貸せば固定費が浮くと思って3年貸したら、空き家特例が使えなくなった」という声のとおりです。貸す前に、この控除の額(1人数百万円の税の差になり得ます)と家賃収入を比べてみてください。

期限の直前に動くのも危険です。特例を使うには、市区町村から「被相続人居住用家屋等確認書」を取り、家を残して売るなら耐震基準の確認か改修、壊して売るなら解体の手配が要ります。

年末の駆け込みでは、確認書の発行や工事が間に合わないことがあります。要件の詳細は別記事に任せますが、共有者全員で売る合意は、期限の半年前には固めておく必要があります。

出典: 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

次の相続で共有者が増え、相手が兄弟から甥や義理の家族に変わる

共有を続けている間に共有者の1人が亡くなると、その人の持分は配偶者と子に相続されます(数次相続)。兄弟3人の共有が、兄の妻と子2人を加えた5人の共有になる、ということです。

これが整理を難しくする理由は3つあります。

  • 面識のない相手と同意を取ることになる。全員で売るには全員の実印と印鑑証明書が要り、1人でも欠けると決済できない
  • 相続人を確定するための戸籍の収集範囲が広がり、調べる時間と費用が増える
  • 相続人が多く、意見がまとまりにくい実家は、不動産会社が扱いを敬遠しやすい

「弟が亡くなり、話す相手が弟の妻と大学生の甥になった」という声があります。兄弟なら「親の家をどうするか」という共通の思い出で話せますが、甥や義理の家族にとっては、実家は思い入れのない財産です。

売りたい人にとっても残したい人にとっても、相手が増える前の方が話はまとまります。

時間は、判断能力の面でも影響します。共有者が高齢なら、年数とともに認知症を発症する可能性が上がり、成年後見が要る相手になります。

後見人は本人の利益にならない安売りや放棄に応じないので、集約の価格は時価になり、期間も延びます。「今の相手のうちに決める」ことは、感情ではなく損得の話です。

立て替えた固定資産税や修繕費は時効で請求できなくなり、建物の劣化も手取りを減らす

揃えた記録にも、期限があります。立て替えた固定資産税や修繕費を他の共有者に求める権利も、住んでいる共有者に使用料相当額を求める権利も、権利を行使できると知ったときから5年で時効にかかります(民法166条1項)。

10年分を立て替えていても、古い分から順に請求できなくなっていきます。「10年立て替えた固定資産税のうち、古い分は時効で請求できないと言われた」という声は、このとおりです。

立替分を精算する約束は、年数がたつ前に書面にしておくか、整理の交渉に早めに乗せる必要があります。

建物の劣化も手取りを減らします。誰も住まない家は傷みが早く、売るときの修繕費や解体費が増え、その分が売却価格から引かれます。

古い建物は廃材やアスベストの処理で解体費が上がる傾向もあります。「売らずに持っていた分だけ高く売れる」という期待とは逆に、空き家の実家の価値は減っていきます。

相続登記の義務も、期限の表に入れておきましょう。相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に相続登記をしないと、10万円以下の過料の対象になります(2024年4月1日施行。それより前の相続は2027年3月31日まで)。

申請の手順は別記事「実家の相続登記の進め方」に任せます。

出典: e-Gov法令検索 民法(166条)、e-Gov法令検索 不動産登記法(76条の2・164条)、法務省 相続登記の申請義務化に関するQ&A

期限から再検討日を決め、共有維持を放置にしない取り決めをする

ここまでに出てきた期限を、1つの表にまとめます。親の死亡日を入れて自分の実家の日付に書き換え、共有者全員で共有しておきましょう。

期限何が起きるか誰が損をするか
相続開始から10年(2023年4月より前の相続は2028年3月31日との遅い方)寄与分・特別受益の主張ができなくなり、法定相続分で固定。遺産共有も共有物分割で訴えられる介護・管理をしてきた人
2027年12月31日、かつ相続開始から3年を経過する年の12月31日空き家の3,000万円(3人以上は2,000万円)特別控除が使えなくなる全員で売る予定の全員
相続を知ってから3年(2024年4月より前の相続は2027年3月31日)相続登記の義務違反で10万円以下の過料の対象登記をしていない全員
立て替えや使用料を知ってから5年立替分・使用料相当額の請求権が古い分から時効で消える払ってきた人、住んでいない人

再検討日の決め方は、「最も近い期限の半年前」です。空き家特例の期限が2026年12月31日なら、2026年6月末が再検討日になります。

そこまでに決めることは3つです。

  1. 管理の方針と費用の分担(共有維持の取り決め)
  2. 再検討日に、全体売却か集約かを決めること
  3. そこで決まらなかった場合の次の手(代償分割の申し出、持分の共有者への打診、分割請求)

「決めない」と「期限付きで持つ」は、見た目は同じ共有でも中身が違います。前者は、10年で主張が消え、特例が切れ、相手が増えるのを待つ状態です。

後者は、期限までは共有を続けると全員で決めたうえで、期限に向けて材料(書類と記録、価格の根拠)を揃えている状態です。

まずできることは、親の死亡日から上の表を自分の日付に直し、共有者に送ることです。そこから整理が動き始めます。

経験者の声:期限の表を送ったら、反対していた兄が会う日を決めた

「空き家特例の期限と10年の期限を1枚の表にして兄に送ったら、それまで『まだいい』と言っていた兄から、会う日を決めようと返事が来ました。感情で言い合っていたときは動かなかったのに、日付が入ると違いました」(兄と2分の1ずつ相続した方)

まとめ:共有名義の実家は「全員の同意が要る行為」を見極め、遺産分割が済まないうちに1人へまとめるか全員で売る

共有名義の実家で全員の同意が要るのは、売却・解体・建て替え・長期の賃貸に限られ、修繕や3年以内の賃貸は持分の過半数で、応急の修繕や自分の持分の処分は1人で進められます。「反対する人がいると何もできない」という思い込みを外すと、止める必要のなかった行為から動き始められます。

次の一歩は、土地と建物の登記事項証明書と遺産分割協議書の有無を確かめ、遺産共有か物権共有かを見分けることです。ここを飛ばすと、代償分割で税をかけずに1人へまとめる方法が残っているのに持分の売買で譲渡所得税と不動産取得税を払ったり、家庭裁判所と地方裁判所の入口を間違えて時間を失ったりします。

親の死亡日から、相続開始10年・空き家特例の2027年末と相続後3年の年末・相続登記の3年の期限を自分の日付に直し、共有者全員で確かめてみてください。実家と相続の地図帳「つぐーる」では、共有名義の実家の整理方法や持分の価格の決め方も含めて、相続や実家について悩むあなたに経験に基づいた情報を提供しています。