親族ではない人が家賃なしで住んでいる実家について、誰がいつどこまで認めたのかを、すぐには答えられないのではないでしょうか。
実家の相続では、その人が住んだままの家を引き継ぎます。当時を知る資料が出てきた時や、家の名義になっている人が考えを口にした時に、あなたが許可の中身を確かめることになります。
この記事では、住んだ年数や付き合いの深さで約束の中身を決めつけずに、最初に認めた人と当時の取り決めを資料と関係者の言葉から確かめ直す進め方をお伝えします。
無償居住・許可者と条件不明のケースだと、今後どんな時に状況が変わるのか
許可した人や住み始めた時期や支払の記録が見つかった時と、登記上の名義人(今その家の名義になっている人)が認めるか認めないかを示した時に、確かめる相手と進め方が変わります。
- 許可した人や住み始めた時期や支払の記録が「見つかった時」
- 登記上の名義人が「認めるか認めないかを示した時」
許可した人や住み始めた時期や支払の記録が「見つかった時」
家の片づけや相続の手続きの途中で、古い通帳や手紙のような当時を知る手がかりが出てくる時があります。
手がかりが出てきたら、許可の中身が分からないという状態のどこが埋まったのかを見てください。名前が読めれば認めた人の候補が、日付が読めれば資料が作られた時期が分かります。家族の記憶と資料の日付が食い違った時は、どちらも書き留め、資料の日付が何を示すのかを分けて確かめてください。
年数の長さや家族との近さをいくら思い返しても、認めた人と時期は埋まりません。埋まった事実からは、次に誰に聞くかが決まります。
登記上の名義人が「認めるか認めないかを示した時」
登記上の名義人が、住み続けてよいかどうかの考えを口にした時が、もう1つの合図です。親が健在で名義も親のままなら、返事を出すのはその親です。相続で名義が替わった後に、新しく名義人になった人と住人の間で話が始まるという形もあります。
その返事は今の名義人の考えであって、最初に住んでよいと言った人の考えとは別のものです。認めた人と今の名義人が、別人になっていることもあります。返事を聞いたら、いつ誰から聞いたのかと一緒に書き留めてください。
書き留めた返事で、これから話をする相手が決まります。認めるという返事なら、どこまでを認めるのかを、その名義人に1つずつ確かめていきます。認めないという返事なら、当時の取り決めを示せる資料を探すことが先です。探しても出てこない時は、いつ何を探して見つからなかったのかも書き留めてください。見つからなかったという記録も、後の相談で見せられるものになります。
【落とし穴】無償居住・許可者と条件不明の人で、実際に起こりうるケースを紹介
長く住んでいることも、家のために何かをしてきたことも、どういう約束だったのかまでは決めません。
- 長く住んでいるので期限のない許可だと思った
- 介護や家の手伝いをしたので居住条件も決まっていたと思った
長く住んでいるので期限のない許可だと思った
住んでいる年数の長さで許可の中身を決めてしまうという落とし穴にハマった、架空の例を紹介します。
父が亡くなり、実家の名義は長男が引き継ぎました。実家には父の友人が20年以上、家賃を払わずに住んでいます。長男は、20年も住んでいるのだから期限を決めていない約束なのだろうと考え、そのままにしました。
半年後、住人から屋根の修理をしてほしいと連絡が入りました。誰がどこまで費用を持つ話だったのかを確かめようとしましたが、父が書いたものは見つかりませんでした。住人は「好きなだけいてよいと言われた」と話し、母は「数年のつもりだと聞いていた」と話しました。どちらが当時の話なのかを決められないまま、話は止まりました。
20年が過ぎても、いつまで住んでよい約束だったのかは分からないままでした。この例から学べることをまとめます。
- 住んだ年数は約束の中身を教えてくれません
- 期限の有無は当時の言葉と資料でしか確かめられません
- 取り決めが分からない費用の負担は、家族と住人だけでは決められません
民法は、無償で家を貸し借りする取り決めの終わり方が、期間や使う目的を決めていたかどうかで変わると定めています。分かれ目は住んだ年数ではなく、住み始めた時に何を話したかにあります。認めた人がすでに亡くなっている時は、その人が当時のことを誰かに話していないか、書いたものが残っていないかを探してください。
その先で家がどう扱われるかは、当時の話の中身と今の事情で変わります。そのため、屋根の修理のような費用の話は、確かめた中身を持って、契約と権利にくわしい弁護士などへ相談する形になります。
参照: e-Gov法令検索「民法」
介護や家の手伝いをしたので居住条件も決まっていたと思った
手伝いをしてもらった事実から住まいの条件まで決まっていたと思い込むという落とし穴にハマった、架空の例を紹介します。
母が一人で暮らしていた実家に、近所に住んでいた知人が移り住み、買い物と通院の付き添いを引き受けました。家賃のやり取りはありません。母が施設へ移り、実家の名義は子へ替わりました。子は、介護を手伝ってもらった恩があるので、しばらくそのままにしようと考えました。
一年後、家の使い方を相談したところ、住人は「介護をする代わりに住んでよいと言われた」と話しました。子は、母の好意で置いていただけだと聞いていました。介護が終わった後にどうするかは、どちらの側にも決めた記憶がありませんでした。
同じ暮らしを見てきたはずの二人の間で、聞いていた話がまったく違っていました。この例から学べることをまとめます。
- 恩があることと条件が決まっていることは別の話です
- 手伝いが家賃の代わりだったのかは手伝った事実からは分かりません
- 誰も決めていなかったことは、今も決まっていません
手伝った事実だけでは、住む条件まで分かりません。その手伝いが家賃の代わりのつもりだったのか、お互いの好意だったのかで、この後の話し合いの進め方が変わります。当時の言葉や資料を突き合わせて確かめます。
認めた本人に聞けるなら、住んでよいと言った時に手伝いの話が出ていたかどうかを、本人から聞いてください。聞けない時は、当時一緒に暮らしていた家族の記憶と、その頃のやり取りが分かる手紙や連絡の記録を集めてください。集めた言葉と記録は、消さずに手元にまとめておいてください。
今のうちにできること・やっておくとよいこと
今のうちに進められることは4つあり、上から順に取り組みます。
- 最初に居住を認めた人と開始経緯を確かめる
- 登記上の名義人と支払・使用範囲・期間・終了条件を照合する
- 通帳・郵便物・鍵・家族連絡を集める
- 資料で分かる事実と人から聞いた話を別々に書く
最初に居住を認めた人と開始経緯を確かめる
最初に住んでよいと言ったのが誰なのかを、確かめて絞り込みます。認めた人が複数いる家では、その全員を挙げてください。認めたのが親なのか、親の兄弟・姉妹なのか、すでに亡くなっている前の名義人なのかで、聞く相手も聞く内容も変わります。認めた人が絞れないうちは、誰に何を聞けばよいかが決まりません。
家族への聞き取りでは、次の3つを確かめます。
- 住んでよいと言ったのが誰か
- いつからその話になったか
- お金や手伝いの負担がその時にあったか
認めた本人に聞ける時は、その人から、覚えている言葉のまま聞き取ってください。聞けない時は、当時一緒に暮らしていた家族や、その時期に実家へ出入りしていた親族から、同じ3つを聞き取ります。言い換えて書き取ると、聞き手の解釈が混ざります。
住人に直接連絡する前に、登記上の名義人が誰かを家族が確かめてください。名義人が誰かは、法務局で登記事項証明書を取れば分かります。家族側の窓口を一人に決め、誰が何を聞くかをそろえてから住人へ連絡します。住人と連絡が取れない時や、家族の間で言い分が割れている時は、その時点で確認を止めて、契約と権利にくわしい弁護士などへ相談してください。
参照: 法務省「不動産登記のABC」
登記上の名義人と支払・使用範囲・期間・終了条件を照合する
聞き取った当時の話は、登記上の名義人が聞いている話と1つずつ突き合わせます。名義人があなた以外なら本人に確かめ、すでにあなたが名義人なら、自分の記憶と手元の資料を同じ形で書き出してください。
次の4つについて、あなたが聞き取った話と同じ話を名義人も聞いているかを突き合わせます。
- 家賃や手伝いのやり取り
- 建物や庭や車庫の使ってよい範囲
- いつまでという期間
- 居住を終える条件
4つを一度に聞くと、どの質問への答えか分からなくなることがあります。1つずつ順に確かめて、話が合っているかどうかと、今はどこまで認めるつもりなのかを、その場で書き取ってください。名義人が「知らない」と答えた時も、日付と一緒に書き取ります。知らないという返事も、次に誰に聞くかを決める材料になるからです。
当時を知らない名義人の返事は、記録の上では本人回答です。資料が裏づける事実とは別のものとして扱ってください。
通帳・郵便物・鍵・家族連絡を集める
通帳や郵便物のような身近な資料は、今のうちに一覧にまとめておきます。次は架空の家の記入例です。資料の種類ごとに1行を使い、同じ種類の資料が2つ以上ある時は行を増やしてください。
| 資料 | 対象 | 日付 | 確かめられる事実 | 分からない条件 | 保管場所 |
|---|---|---|---|---|---|
| 預金通帳 | 父の口座への毎月3万円の入金 | 2023年4月〜2024年3月 | 毎月同じ額の入金が続いた | その入金が何の支払だったか | 原本は金庫、写しは確認用ファイル |
| 公共料金の検針票 | 電気の契約者 | 2024年6月 | 住人の名前で契約されている | 誰の了解で契約者を替えたか | 写しは確認用ファイル |
| 鍵 | 実家の合鍵2本 | 2022年9月ごろ | 住人と父が1本ずつ持っていた | 合鍵を渡した時の取り決め | 家族が回収した1本は金庫 |
| 家族のやり取り | 父から長女へのメール | 2022年8月15日 | 住人が翌月から入居する予定だった | 期間や費用をどう決めたか | 印刷して確認用ファイル |
集めた段階で分かるのは、資料が示す事実までです。その先の判断がつくまでは、古い通帳や検針票も捨てずに手元に置いてください。処分するかどうかは、確認が終わってから決めます。
原本の保管場所を動かさず、写しを1つのファイルにまとめると、家族が同じものを見ながら話せます。住人の手元にある資料を見せてもらう時は、家族側の窓口から目的を伝えて頼みます。
資料で分かる事実と人から聞いた話を別々に書く
書き取った内容は、資料で裏づけた事実と、本人からの回答と、伝聞の3つに分けます。次は架空の記入例で、表の1行は確かめた事柄1つにあたります。
| 書く欄 | 内容 | 情報源・回答者 | 確かめた日 | 裏づけ | 次に確かめること |
|---|---|---|---|---|---|
| 資料で分かる事実 | 住人の名前で電気が契約されている | 2024年6月の検針票 | 2026年8月20日 | 検針票 | 契約者を替えた経緯を住人に聞く |
| 本人の回答 | 期間の話をした覚えはない | 認めた本人 | 2026年8月21日 | 資料待ち | 当時の手紙やメールを探す |
| 人から聞いた話 | 期限を決めていなかったらしい | 当時を知る親族 | 2026年8月22日 | なし | どの場面で聞いたかを確かめる |
3つに分けておくと、後から見た時に、どれが裏づけのある話でどれがまだ確かめていない話かが分かります。伝聞の行も消さないでください。誰から聞いたかが書いてあれば、次に確かめる相手が決まります。
確かめても埋まらなかった欄は、空欄のまま置いてください。誰に聞いて分からなかったのかまで書いてあれば、その一覧はそのまま相談の材料になります。埋まらないからといって、住人に出てもらうかどうかを今すぐ決める必要はありません。登記上の名義人が考えを示した時や、新しい資料が出てきた時に、この一覧へ戻って確かめ直してください。
この表に書いたからといって、住人との間で何かが決まるわけではありません。住人との話をどう進めるかは、この一覧と集めた資料を弁護士などへ見せて、確かめてから決めてください。
まとめ:年数ではなく最初の言葉から住まいの約束を組み立て直す
住んでいる年数や家族との付き合いの深さから、いつまで住んでよい約束なのかを決めないようにしましょう。最初に認めた人が誰で、その時に何を話したのかを、資料と本人の言葉からたどり直してください。
最初の一歩は、住んでよいと言ったのが誰なのかを確かめて絞ることです。この一歩を飛ばして先に住人に聞きに行くと、集めた返事が誰との約束の話なのか分からなくなります。
聞いた話は、手元にある資料を1つ選んで、誰から受け取ったのかと確かめた日を書き添える形で書き留めてみてください。つぐーるでは、家賃のない住まいの許可を誰がどんな話で認めたのかを確かめ直す進め方も含めて、実家の将来をこれから考えるあなたに信頼できる情報を提供しています。

