親族ではない人が昔の許可のまま家賃なしで実家に住み続けていて、今の所有者は住み続けることを認めていない、この先どうすればよいのか決めかねていませんか。
実家の相続において、家賃なしで人に住んでもらっている実家のことは、家賃がないという一点だけでは決められません。まず元の許可の中身と今の所有者の意向を確かめ、次に伝えたことと相手の答えを確かめます。それでも折り合えない時は、専門家に相談します。
この記事では、この状況が今後どんな時に変わるのか、そして無償の住まいについて二つの思い込みだけで決めると何を見落とすのかを説明します。元の許可がどう始まったのかを思い返しながら、読み進めてください。
無償居住・現在の所有者が継続不承認のケースだと、今後どんな時に状況が変わるのか
見直しのきっかけになるのは、次の二つの出来事です。
- 今の所有者が「いつまでなら住んでよいと新たに認めた時」
- 話し合って「出ていく条件か新しい許可が決まった時」
今の所有者が「いつまでなら住んでよいと新たに認めた時」
今の所有者が「いつまでなら住んでよい」と期限を付けて新たに認めた時は、その時点で状況が変わります。認めていない状態を前提にした確かめ方を続けず、新しく認めた事実を起点にし直します。
この時にするのは、誰が・いつ・どんな期限と条件で認めたのかを書き留めることです。昔の許可と新しい許可は、日付を分けて別の行に控えます。記録が混ざると、現在確かめるべき条件がどれなのか分からなくなるためです。
書き留める日付は二つあります。今の所有者が新しく認めた日と、その内容を書き留めた日です。期限は認めた日から数える一方、書き留めた日は後から記録を見直す時の手がかりで、役割が違います。一つの日付にまとめると期限をいつから数えるのかが分からなくなるため、別々に書きます。
以後の話し合いは、この新しい期限と条件を前提に進みます。
話し合って「出ていく条件か新しい許可が決まった時」
住んでいる人と話し合い、出ていく条件か新しい許可のどちらかが決まった時も、状況は変わります。この時に確かめ直すのは、これまでの前提のどこが置き換わったのかです。
いつまで住むのか、どんな条件で出ていくのか、新しい許可として何を認めたのかを、決まった言葉のとおりに確かめます。決まっていない点が残っていれば、そこは元の許可のままなのか、改めて決めることにしたのかまで、相手との間で確かめます。
決まった中身と決まっていない点の区別が付いてはじめて、次に何を話し合うのかを決められます。
【落とし穴】無償居住・現在の所有者が継続不承認の人で、実際に起こりうるケースを紹介
家賃がないことも、口頭で不承認を伝えたことも、その事実だけでは契約・許可・権利の結論を出す材料になりません。元の許可の中身と、その後に交わしたやり取りを一つずつ確かめる必要があります。
- 家賃がないのでいつでも退去させられると思った
- 口頭で不承認を伝えれば確認は終わると思った
家賃がないのでいつでも退去させられると思った
一つ目の落とし穴は、「家賃をもらっていない以上、いつでも出てもらえるはずだ」という思い込みです。
ここでは、確認を飛ばすと何が起きるかを架空の例でたどります。
親の代からの知人が、家賃なしで実家に住んでいました。家を引き継いだ子は、家賃を取っていない以上すぐに出てもらえるはずだと考えて、退去を求めました。ところが相手は「親から期限を決めずに住んでよいと言われた」と答えました。子の手元には当時の書面がなく、何のために、いつまで住む約束だったのかを確かめないまま、話し合いの前提が食い違いました。
家賃を取っていないという一点だけでは、いつ約束が終わるのかを判断できませんでした。
この例から学べることをまとめます。
- 家賃がないことだけを理由に、退去の結論を先に出さない
- 元の許可がいつ・誰から・どんな条件で始まったのかを確かめる
- 無償の貸し借りにも、法律上の決まりと終わり方の考え方がある
ただで物を貸し借りする約束は、民法では使用貸借と呼ばれ、その決まりは民法の593条から続く条文に置かれています。終わり方の考え方は、決め方によって次の三つに分かれます。期間を決めていた場合は、その期間が満了した時に終わるとされています。期間を決めずに、使う目的だけを決めていた場合は、その目的に従った使用を終えた時に終わります。期間も目的も決めていなかった場合は、貸した側がいつでも契約を解除できると定められています。
ただし、これらの定めが当てはまるのは、住まいの貸し借りが使用貸借に当たる場合の話です。当たるかどうかは住み始めた経緯や当時の条件で変わるため、ここでは決められず、いつでも解除できるとも、できないとも言い切れません。
うちは期限を決めていない、という場合に次に確かめるのは、何のために住むことを認めたのかという点です。目的を決めていたかどうかで、終わり方の考え方が分かれるためです。経緯と条件を確かめたうえで、相手と意見が食い違う時は、その内容を持って契約や許可の確認に詳しい専門家に相談してください。
参照: e-Gov法令検索「民法」
口頭で不承認を伝えれば確認は終わると思った
もう一つの落とし穴は、「出てほしいと口で伝えた以上、こちらの確認は済んだ」という思い込みです。
こちらも、記録がないまま時間が過ぎた架空の例です。
所有者は、顔を合わせるたびに「出てほしい」と口頭で伝えていました。それでも住んでいる人は動かず、そのまま何年も過ぎました。所有者自身が先に家を出て、家の費用だけを払い続けた時期もあります。所有者が亡くなった後、対応は子が引き受けることになりましたが、いつ何を伝え、相手が何と答えたのかを確かめられる記録は、ほとんど残っていませんでした。
伝え続けてはいたのに、後から確かめられるものはほとんど積み上がっていなかったのです。
この例から学べることをまとめます。
- 伝えた日付と内容、相手の答えを、その都度書き留める
- 生前に交わした言葉も、記録にしてあれば後の話し合いで確かめられる
- 答えがなかった時も、その事実と連絡方法を書いておく
伝えたという事実だけでは、確認は終わりません。伝えた内容が紙やメールで確かめられれば、後の話し合いの材料になります。口頭で伝えるときも、いつ・誰が・何を伝え、相手がどう答えたのかをその都度書き留めてください。相手が理由や事情を話した場合は、言い換えず、聞いた内容のまま書きます。
今のうちにできること・やっておくとよいこと
今のうちに進められるのは、いまの状態を確かめることと、後から事実と答えを確かめ直せる記録を作ることです。
- 元の許可の中身と今の所有者の意向を確かめる
- 相手の答え・提案と合意できた事項を確かめる
- 家族側の窓口と連絡先を一つの表に書く
- 提案・回答・合意・対立中を別々の行に書く
元の許可の中身と今の所有者の意向を確かめる
最初に確かめるのは、元の許可の中身と、今の所有者の意向です。この二つがそろうと、いま何が決まっていて何が決まっていないのかがはっきりします。
確かめる項目は次のとおりです。
- 元の許可を、いつ・誰が・誰に認めたのか
- 期限や条件を決めていたか
- 何のために住むことを認めたのか
- 今の所有者は、いつまでに・どうしてほしいと考えているのか
この四つのうち、すぐに答えが出ない項目については、書面やメール、生前の言葉のメモといった裏づけを探します。答えが埋まらない項目が残っても構いません。どこが埋まらないのかが分かれば、次に誰へ何を尋ねるのかを決められます。
相手の答え・提案と合意できた事項を確かめる
許可と意向を確かめたら、次は相手の答えです。こちらの求めに相手が何と答えたのか、相手からの提案があるのかを聞き取ります。
答えは、承知か拒否かだけではありません。事情の訴えや条件付きの申し出も答えのうちで、どれも確かめる対象になります。そのうえで、すでに合意できた事項があるか、どの点がまだ折り合っていないのかを確かめます。折り合っていない点まで言葉にできると、話し合いで扱う中身がはっきりします。
答えそのものが確かめられない時、たとえば連絡を受け取ってもらえない時は、無理に確かめ続ける必要はありません。その場合は、それまでに確かめられた元の許可と意向の内容を持って、契約や許可の確認に詳しい専門家に相談してください。
家族側の窓口と連絡先を一つの表に書く
やり取りを本格的に始める前に、話題ごとに家族側の窓口を一人に決め、相手の連絡先と一緒に一覧の表へ記録します。窓口が一人に決まっていないと、同じ質問に人ごとに違う答えが返り、どれを正式な答えとして扱うのかが決まらなくなるためです。
次は、長女を窓口にした家の記入例です。表の1行は、一つの連絡の窓口を表します。
| 話すこと | 家族側の窓口 | 相手 | 連絡方法 | 連絡を始めた日 |
|---|---|---|---|---|
| 退去や新しい許可 | 長女 | 住んでいる本人 | 電話 | 2026年8月20日 |
| 日程や書類の受け渡し | 長女 | 本人に代わって連絡する人 | メール | 2026年8月22日 |
この一覧があると、過去のやり取りを確かめ直す時に、それが誰と誰の間の話だったのかを行ごとにたどれます。窓口を替えた時は古い行を書き換えず、新しい窓口と連絡を始めた日を次の行に加えます。
提案・回答・合意・対立中を別々の行に書く
確かめた内容とこれからのやり取りは、話の状態と日付を付けて一つの表に書きます。口頭で伝えてきた分も、思い出せる範囲でさかのぼって書き起こします。
次は、同じ家で話し合いを進めた場合の記入例です。表の1行は、一往復のやり取りか、一つの決まり事を表します。
| 話の状態 | 発信者 | 受信者 | 日付 | 話したこと | 次に確かめること |
|---|---|---|---|---|---|
| 提案 | 長女 | 住んでいる本人 | 2026年8月20日 | 2026年11月末までに退去する案 | 8月25日に返事を聞く |
| 回答 | 住んでいる本人 | 長女 | 2026年8月25日 | 期限の延長を希望 | 希望する期限を聞く |
| 合意 | 長女と住んでいる本人 | 長女と住んでいる本人 | 2026年9月10日 | 2027年1月末までに退去 | 12月に進み具合を確かめる |
| 対立中 | 長女 | 住んでいる本人 | 2026年9月12日 | 家財をどちらが運ぶかで折り合っていない | 9月20日に改めて話す |
答えが無かったやり取りも、回答の行として、答えが無かった事実を内容の欄に書きます。この表があると、記憶が食い違った時に、いつ・どちらが・何を伝えたのかを行で確かめられます。この一覧が受け持つのは、何が決まって何が決まっていないのかを、日付と一緒に確かめられるようにしておくことです。決めること自体は相手との話し合いの仕事で、表はその結果を書き写す場所です。
記録を付けても対立中の行が動かない時は、窓口の一覧とこの表をそのまま持って、契約や許可の確認に詳しい専門家に相談してください。二つの表を見せれば、経過を最初から話し直さずに済みます。
まとめ:無償だからと急がず確かめた事実で決める
家賃がないことは、すぐに結論を出してよい理由にはなりません。確かめられた事実で決めて、折り合わない時は記録ごと専門家に渡してください。
次の一歩は、元の許可の中身と今の所有者の意向を確かめることです。ここを飛ばすと、相手と何について話し合っているのかが定まらないまま、やり取りだけが積み重なっていきます。
まずは、手元で確かめられるものを一つ選び、確かめた日付と一緒に書き留めることから始めてください。つぐーるでは、家賃なしで住み続ける人を今の所有者が認めていない時の確かめ方も含めて、実家の将来をこれから考えるあなたに信頼できる情報を提供しています。

