家賃なしで親族以外の人が住む実家を所有者も認めている人が読むガイド

親族ではない人が家賃なしで実家に住み、所有者も住み続けてよいと認めているなら、急いで何かを変える理由は見当たらないでしょう。

けれど、その実家もいつかは相続の場面を迎え、認めている人が替わる日が来ます。どこまで使ってよいのか、費用を誰が持つのかといった約束が紙やメールに書かれていなければ、本人に聞けるうちに確かめる必要があります。

この記事では、状況が変わるのはどんな時か、実際に起こりうる思い込みの例、そして認めている本人に今のうちに確かめておけることと、その記録の書き方をお伝えします。

無償居住・現在の所有者も承認のケースだと、今後どんな時に状況が変わるのか

状況が変わるのは、所有者が亡くなるか替わって認める人が変わった時と、一緒に住む人や費用や使う場所が増えたり減ったりした時の2つです。

  • 所有者が亡くなるか替わって「認める人が変わった時」
  • 一緒に住む人や費用や使う場所が「増えたり減ったりした時」

所有者が亡くなるか替わって「認める人が変わった時」

所有者が亡くなるか替わって認める人が変わった時は、新しい所有者に今までと同じ内容で住み続けてよいかを確かめます。この住まいは所有者の承認が前提なので、相手が替われば改めて聞く必要があります。

その時にやることは、新しく所有者になった人が誰かを確かめ、その人に、住まいを同じ内容で続けてよいかをあらためて聞くことです。前の所有者が認めていた事実は記録として使えますが、その記録は、新しい所有者がどう考えるかまでは教えてくれません。前の承認がそのまま続くのかどうかも、もとの約束の中身によって変わるため、ここでは決められません。決められない部分があるからこそ、新しい相手の答えを記録し、新しく確かめた日付を添えます

認めていた所有者が亡くなり、相続の整理がまだ終わっていない間は、認める人が決まっていない状態です。整理がついて新しい所有者が決まったら、同じ確認をやり直し、確かめた日を添えてください。

一緒に住む人や費用や使う場所が「増えたり減ったりした時」

一緒に住む人や費用や使う場所が増えたり減ったりした時は、変わった部分を所有者が認めているか確かめます。たとえば、住んでいる人の家族が加わったり出ていったりする、これまで話に出なかった修繕費をどちらかが払う、庭や物置を新しく使い始めたりやめたりする、といった変化です。

その時にやることは、変わった部分について所有者が知っているか、認めているかを確かめることです。そのうえで、これまでの記録は書き換えず、新しく確かめた内容を新しい日付と一緒に次の行へ書き足します。前の記録を上書きすると、いつ何が変わったのかが消えます。

承認は、その時の相手と使い方を前提にした言葉です。前提が動いたのに言葉だけ元のままだと、認められた状態と実際の状態が少しずつ分かれていき、後からどちらが約束だったのかを誰も言えなくなります。変化のたびに1行足しておくと、どこがいつ変わったのかを、後から誰でも同じ形で読み返せます。

【落とし穴】無償居住・現在の所有者も承認の人で、実際に起こりうるケースを紹介

次の2つの思い込みは、どちらも、それだけで契約や許可や権利の結論を出せるものではありません。

  • 現在の所有者が認めているので条件確認は不要と思った
  • 家賃がないので費用負担もないと思った

現在の所有者が認めているので条件確認は不要と思った

所有者が認めているのだから条件の確認は要らない、という落とし穴にハマった例を紹介します。

これから書くのは、認めた範囲を確かめないと何が起きるかを示す架空の例です。

父は、空き家になった実家を、長年付き合いのある知人に「空けておくのももったいないから、住んでいいよ」と口頭で伝えました。家族もその話を聞いていて、父が認めているのならと、それ以上は誰も確かめませんでした。

数年がたつうちに、知人は庭の物置を作業場として使い始め、二階の一室を荷物置きに変えていました。家賃のやり取りがないため、住まいについて話す機会は一度もないまま、時間だけが過ぎていきました。

ある年、家族が実家の今後を話し合おうとして、初めて食い違いが見つかりました。父は「母屋に住んでいいと言っただけ」と考えており、知人は「敷地ごと自由に使ってよいと聞いた」と考えていました。どちらも自分の理解を疑っておらず、突き合わせられる記録はどこにもありませんでした。

認めている事実は本物なのに、認めた範囲を確かめられる材料が、この家にはありませんでした。

この例から学べることをまとめます。

  • 認めた事実と認めた範囲は別のもの
  • 口頭だけの承認は確かめる手がかりが残らない
  • 確かめる相手は認めた本人

食い違いが生まれるのは、誰かが約束を破るからではありません。ひとことの承認は、そのあと何年も続く暮らしの全部を言い表せるほど細かくできていないだけです。しかも家賃のない住まいには、毎月の支払いのような、取り決めを思い出す機会がありません。言葉にされなかった部分は、それぞれの側の「たぶんこうだろう」で埋まっていきます。

所有者にどこまでを認めているのかを確かめると、あいまいだった部分が日付つきの言葉に変わります。食い違いが見つかっても、今はまだ、認めた本人がどういうつもりだったのかを聞ける状態にあります。この住まいがどの契約に当たり、その約束がどこまで認められるのかは、ここでは決められません。ただ、民法にも、ただで物を貸し借りする契約について、期間や目的を決めていたかどうかで終わり方が変わるという定めがあるように、何を決めていたのかという事実は、後で判断する人の材料になります。確かめても埋まらない食い違いや、住み続ける権利があるかどうかの判断が要る場合は、確かめた内容と日付を持って、弁護士などの専門家に相談してください。

参照: e-Gov法令検索「民法」

家賃がないので費用負担もないと思った

家賃を取っていないのだから費用の負担も発生しない、という落とし穴にハマった例を紹介します。

これも、費用を決めないまま支払いが続いた架空の例です。

家賃を取らないと決めた時から、この家ではお金の話そのものが出なくなりました。固定資産税は所有者である父がそれまでどおり納め、水道光熱費は住んでいる知人が払っていました。誰かが決めたわけではなく、請求書を受け取った側が払う形で落ち着いていました。

ある冬、給湯器が壊れました。知人は、家の設備なのだから持ち主が直すものと考え、父は、使っている人が直すものと考えていました。結論が出ないまま、その場は知人が交換の費用を立て替えました。

その後も、雨どいの修理や庭木の手入れのたびに同じことが繰り返されました。領収書は残っているのに、どれが誰の負担なのかは決まっておらず、立て替えた金額だけが年々積み上がっていきました。

家賃がないことは、費用の話が済んでいることを意味していませんでした。

この例から学べることをまとめます。

  • 家賃のなさと費用の取り決めのなさは別の話
  • 突発の修繕費ほど負担が決まっていない
  • 立て替えは金額と日付と払った人まで書いておく

この例では、毎月の費用を請求書を受け取った側が払っています。一方、給湯器の交換のようなたまにしか起きない出費は、誰が負担するか未確認です。費用ごとに払った人と日付を書けば、すでに負担した費用と、まだ分担を決めていない費用を区別できます。

こうした出費を最終的にどちらが負担することになるのかは、ここでは決められません。民法には、ただで物を借りた人はその物の通常の必要費を負担するという定めがありますが、目の前の住まいがその契約に当たるのか、どの出費がその費目に入るのかは、定めだけでは決まらないからです。一方で、どの費用を誰が払ってきたのか、どれが決まっていないのかは、今の時点でも事実として確かめられます。その事実がそろっていれば、負担の線をどう引くかを決める場面が来たときに、決める人へ渡せる材料になります。立て替えの精算で意見が分かれた場合は、支払いの記録を持って専門家に相談してください。

参照: e-Gov法令検索「民法」

今のうちにできること・やっておくとよいこと

今のうちに進められることは、次の4つです。

  • 認めている所有者と登記上の名義人を確かめる
  • 期間・費用・同居人・終了条件を一つずつ聞く
  • 認めた内容を確かめた日と一緒に一覧へ書く
  • 実際の費用と使う場所を別の表に書く

認めている所有者と登記上の名義人を確かめる

最初の一歩は、認めている所有者本人に、承認しているかどうかと、どこまでを認めているのかという承認範囲を、直接確かめることです。この後のすべての記録は、誰の言葉を確かめたのかを土台にするため、家族づての伝聞では代わりになりません。

本人に確かめる項目を並べます。

  • 今も住み続けてよいと考えているか
  • 認めている相手は住んでいる本人だけか
  • 建物のどこまで使ってよいとしているか
  • 庭や物置や駐車場まで含んでいるか

あわせて、認めている人と登記上の名義人が同じかどうかも確認します。登記事項証明書を取ると、土地と建物それぞれの登記上の名義人が分かります。相続登記が済んでいない家では、証明書に載っている名義人だけで現在の権利関係を決められない場合があります。そのため、登記上は誰か、認めているのは誰かを分けて書き留めます。確かめた結果、認めていないという答えが返ってきた場合や、誰が認めたのか分からなくなっている場合は、記録の整理より先に、住まいを続けるかどうかの話し合いが必要な段階です。その段階に入ったら、確かめられた事実と日付を持って、専門家に相談してください。

参照: 法務省「不動産登記のABC」

期間・費用・同居人・終了条件を一つずつ聞く

承認範囲が確かめられたら、次はその中身を、期間・費用・同居人・終了条件の4つに分けて確かめます。ひとまとめの「いいよ」を、答えられる単位までほどいていきます。

分けて聞く内容は次の4つです。

  • いつまで住んでよいと考えているか
  • どの費用を誰が負担する想定か
  • 一緒に住む人が増える時はどうするか
  • どうなったら住まいを終えるのか

分けて聞くのは、まとめて聞くと「いいよ、任せるよ」で終わってしまい、結局どれも確かめられないからです。一つずつ聞けば、決まっている部分と決まっていない部分の線がはっきりします。答えが「決めていない」でも構いません。決めていないと分かったこと自体が、この先の話し合いの出発点になる事実です。全部を一度に聞き切る必要はないので、話せる機会ごとに一つずつ埋めていきましょう。これで、どこまで決まっていて、何が未確認なのかを見分けられます。

認めた内容を確かめた日と一緒に一覧へ書く

確かめた承認は、確認した日と一緒に一覧へ書きます。この表に書くのは、所有者が認めたと確かめられた承認の中身そのもので、記憶や会話のままにせず、誰が読んでも同じ内容になる形へ移します。

表の1行は、一つの承認内容です。誰が一緒に住むことを認めているかという同居人の取り決めも、承認範囲の一行として書きます。所有者が父である家を例に、埋め方まで書いています。

所有者対象認めた内容期間確かめた日もとにした資料
母屋母屋に住む決めていない2026年8月20日父との電話を書き留めたメモ
駐車場車1台分を停める決めていない2026年8月20日同じ電話のメモ
同居人本人の配偶者も一緒に住む決めていない2026年8月20日同じ電話のメモ

確認日の列には、権利が動いた日ではなく、あなたが確かめた日を書きます。所有者が替わった日や住み始めた日と混ざると、どの時点の承認かが後から読めなくなるためです。もとにした資料は、手紙でも、メールでも、会話を書き留めたメモでも構いません。日付と相手が分かる形にして、資料そのものも一緒に保管します。一つの行で書き切れない承認が出てきたら、行を分けて足してください。

実際の費用と使う場所を別の表に書く

費用の負担と使う場所の範囲は、承認の一覧とは別の表にします。承認の一覧には確かめた時点の所有者の言葉を書き、年単位で動く費用と使い方は別に並べたほうが変化を追えるからです。この表に書くのは、実際に払っている費用と、実際に使っている場所です。実際に使っている場所は、承認が確かめられているかどうかにかかわらず、区分を「使用範囲」として書きます。承認がまだ確かめられていない場所は、それがそのまま所有者へ次に確かめる項目になります。

この表の1行は、費用の一項目、または使う場所の一区画です。

対象負担する人・使う人金額・範囲開始日終了条件確かめた日
固定資産税納税通知書の金額2019年4月決めていない2026年8月20日
水道光熱費住んでいる本人毎月の請求額2019年4月退去する月まで2026年8月20日
給湯器などの修繕費決めていない決めていない決めていない決めていない2026年8月20日
母屋住んでいる本人全室2019年4月決めていない2026年8月20日
庭の一部住んでいる本人家庭菜園として使う2022年6月決めていない2026年8月20日

「決めていない」と書ける形にしてあるのは、空欄と区別するためです。空欄はまだ調べていないだけで、決めていないは確かめた結果です。決めていないと書いた行は、そのまま所有者へ次に確かめる項目の一覧になります。誰がいつ何を確かめたのかが1枚に並んでいれば、家族で話し合う場面でも、専門家の判断を仰ぐ場面でも、そのまま出発点として使えます。書いた内容がそのまま合意や権利になるわけではありませんが、日付のそろった事実は、この先の判断を支える材料になります。

まとめ:平穏なうちに承認の中身を言葉にする

この家のためにいちばん大きな備えになるのは、うまく続いている今のうちに、所有者が認めている中身を、承認範囲・期間・費用・同居人・終了条件へ分けて記録しておくことです。食い違いが表に出てから集め直そうとしても、認めた本人に確かめられるとは限らないからです。

次の一歩は、認めている所有者本人に、承認しているかどうかと、どこまでを認めているのかを確かめることです。ここを飛ばして手元の記録だけを整えると、認めた本人の考えと違う内容が、確認済みの形で残ってしまいます。

まずは、手元にある資料を一つ選び、誰に確かめた内容で、いつ確かめたのかを書き添えるところから始めてみてください。つぐーるでは、親族以外の人が家賃なしで住み続ける実家の承認の整理も含めて、実家の将来をこれから考えるあなたに信頼できる情報を提供しています。