実家の耐震性の確認方法|建てた時期の調べ方と売る・住む・貸す別の診断の要否

古い実家を売るか、住み続けるか、人に貸すかを考えるとき、「この家は大きな地震に耐えられるのか」「耐震診断は受けないといけないのか」という疑問が出てきます。

耐震性のおおよその目安は建築確認を受けた日で分かり、その日付は手元の書類か役所の記録で確かめられます。

診断が要るかは売る・住む・貸すのどれを選ぶかで変わり、耐震診断の補助は契約より前に申し込まないと受けられず、一度貸すと相続した空き家の税の特例が使えなくなるなど、知らないと損をしやすい点もあります。

建築時期と資料から実家の耐震性の目安を確かめる方法

耐震性の目安は、完成した日ではなく、建築確認を受けた日で分かります。

その日付は、手元の書類か役所の記録で確かめられます。分かった年代によって、使う自己チェック表、自治体の補助の対象、税の特例や買主の住宅ローン控除の扱いが変わります。

耐震性の目安は建築確認日で3つの年代に分かれる

木造の戸建ては、建築確認を受けた日(建築確認日)によって、耐震の基準が3つの年代に分かれます。

建築確認とは、工事の前に「この設計が建築基準法に合っているか」を役所などが審査する手続きです。家はこの審査を受けた時点のルールで設計されるため、基準の新旧は着工日や完成日ではなく、建築確認日で考えます。

国土交通省も、不動産の取引で旧耐震の建物にあたるかを判断するときは、確認済証に書かれた交付日をもとにするとしています(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。

区分(建築確認日)基準の中身目安
① 1981年5月31日以前旧耐震基準。1981年6月に必要な壁の量などが強化される前のルール大地震で倒れる割合が高い年代。専門家の診断の優先度が最も高い
② 1981年6月1日〜2000年5月31日新耐震基準。ただし木造の柱とはりのつなぎ目の金物、壁の配置のバランス、地盤に合わせた基礎のルールは、2000年の改正で具体的に定められる前新耐震でも一度確かめておきたい年代。日本建築防災協会は「新耐震木造住宅検証法」での確認を勧めている
③ 2000年6月1日以降今の木造のルール(つなぎ目の金物・壁のバランス・基礎の仕様が具体的に定められた後)劣化や大きな改造がなければ、優先度は低め

新耐震基準は、震度5強程度の揺れではほとんど傷まず、震度6強から7程度の大地震でも人の命にかかわる倒壊をしないことを目標にした基準です(内閣府「防災白書」)。

年代による差は、実際の地震の被害にも表れました。国土交通省が2024年の能登半島地震の木造建物の被害をまとめた資料では、被害の大きかった輪島市・珠洲市・穴水町の市街地で、倒壊・崩壊した建物の割合は次のとおりでした。

建てた時期倒壊・崩壊した割合
1981年以前19.4%
1981〜2000年5.4%
2000年以降0.7%

ただし、年代で決まるのは危険の有無ではなく、どこまで調べるかです。

旧耐震でも、過去に耐震補強をした家はあります。反対に新耐震でも、土台の腐れや、1階に窓が多く壁が少ない間取りのせいで弱くなっている家もあります。

出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」/内閣府「平成19年版 防災白書」/国土交通省「令和6年能登半島地震の建築物構造被害について」/国土交通省「新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法について」

建築確認日は確認済証と検査済証で確かめる

建築確認日をいちばん正確に確かめられる書類は「確認済証」です。

古い家では「確認通知書」という名前で残っていることが多く、確認を受けた年月日と確認番号が書かれています。確認番号は役所の記録を探すときの手がかりにもなるので、見つかったら控えておきましょう。

もう1つの書類が「検査済証」です。工事後の完了検査に合格したことを示す書類で、図面どおりに建てられたことの裏づけになります。

古い家では、検査済証がそもそも交付されていない例があります。国土交通省の資料によると、建築確認の件数に対して検査済証が交付された割合(完了検査率)は、1998年度でも約4割でした。

現在の約9割と比べると、当時は完了検査を受けないまま使われ始めた家が多かったと分かります。検査済証がないことと、家に問題があることは別の話で、耐震性はこのあと紹介する自己チェックや診断で確かめられます。

実家で書類を探すときは、次のような場所を当たってみてください。

  • 建てたときの工務店や設計事務所の名前が入った封筒
  • 設計図面と一緒に綴じたファイルや、住宅ローンの書類の束
  • 仏壇の引き出し、金庫、押入れや納戸の書類箱

出典: 国土交通省「建築確認検査制度の概要」/国土交通省「効率的かつ実効性ある確認検査制度等のあり方の検討」

書類が見つからないときは役所で建築確認の記録を取り寄せる

確認済証や検査済証が見つからないときは、役所で建築確認の記録を証明してもらえる場合があります。

確認済証や検査済証は再発行されないため(福岡県の案内など)、なくしたときはこの証明が代わりの手がかりになります。窓口は市区町村の建築指導課などで、小さな町村では都道府県の土木事務所などが受け付けていることもあります。

取り寄せられるのは、主に次の2つです。

書類中身
台帳記載事項証明書役所の台帳に残っている確認年月日・確認番号、検査済証の交付の有無などを証明する書類
建築計画概要書建物の概要や配置図をまとめた書類。閲覧や写しの交付ができる自治体がある

請求するときは、建物を特定する手がかりが必要です。確認番号が分からなくても、次の情報で探してもらえる場合があります(新宿区・杉並区の案内)。

  • 所在地(住居表示と、登記上の地番)
  • 建築主の氏名(建てた当時の親や祖父母の名前)
  • おおよその建築年月日、構造、階数

手数料は1件数百円程度で、新宿区・杉並区・名古屋市は1件300円、福岡県は400円としています。

注意したいのは、古い年代の記録が残っていない自治体や、古い年代を証明の対象外にしている自治体があることです。新宿区は昭和25年12月以降の台帳があるとしています。一方、名古屋市は2026年7月から、証明の対象を平成4年4月1日以降に確認申請された建物としています。

つまり旧耐震の時代の実家は、自治体によってはこの証明の対象から外れます。

出向く前に電話で「この年代の記録はあるか」「誰が請求できるか」を聞いておくと、無駄足を防げます。名古屋市のように、請求できる人を建築主や所有者としている自治体もあるため、名義が親のままなら、相続人として請求するときに必要な書類もあわせて聞いておきましょう。

出典: 福岡県「建築確認等台帳記載事項証明について」/新宿区「台帳記載事項証明発行のご案内」/杉並区「建築確認台帳記載事項証明書」/名古屋市「建築確認台帳記載事項証明書の形式変更」

登記簿や固定資産税の建築年だけで判断しない

登記簿や固定資産税の書類に書かれた建築年は、建築確認日とは別の日付です。

登記簿(登記事項証明書)に書かれる新築の日付は、完成して登記した時点の日付です。建築確認から工事、完成、登記までには数か月から1年以上かかることがあり、1981年の後半から1982年に登記された家は、旧耐震のルールで建築確認を受けていた可能性があります。

国土交通省も、確認済証などがない場合、住まいとして使う建物(マンションなどを除く)は、表題登記の日付が昭和56年(1981年)12月31日以前なら旧耐震の建物として説明の対象にするとしています。建築確認日と登記日の間に半年ほどのずれがありうる、という前提での扱いです。固定資産税の課税台帳に書かれた建築年月日も、同じ扱いです。

固定資産税の課税明細書や名寄帳(市区町村が持つ、その人の不動産の一覧)の建築年も、建築確認日とは別物です。ただ、手元に届く書類なので、最初の手がかりには使えます。

不動産会社の査定書や広告にある「築年」も、どの日付を指しているのかを一度確かめておきましょう。

さらにややこしいのは、制度によって見る日付が違うことです。

制度見る日付
買主の住宅ローン控除昭和57年(1982年)1月1日以後に建築された家なら、耐震の要件を満たすものとして扱われる。確定申告では登記事項証明書で示す(国税庁タックスアンサーNo.1211-3)
相続した空き家を売ったときの3,000万円控除昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家が対象(国税庁タックスアンサーNo.3306)
自治体の耐震診断の補助「着工」の日で区切る例がある(日高市は昭和56年5月31日以前に着工、横浜市は平成12年5月31日以前に新築工事に着手)

たとえば、1981年の春に建築確認を受けて1982年1月に登記された家は、建築の基準では旧耐震です。それでも住宅ローン控除では、証明書なしで耐震の要件を満たす扱いになります。

反対に、1981年の夏に新耐震で建築確認を受け、その年のうちに登記された家は、新耐震なのにローン控除では証明書が必要です。確認日・登記日・課税台帳の日付は混ぜずに、それぞれ控えておきましょう。

経験者の声:査定書の「築年」と確認日が違った

「査定書には1982年築とあって新耐震だと思い込んでいました。押入れの書類箱から出てきた確認通知書の日付は1981年の春でした。売り方を相談する前に分かってよかったです。」(旧耐震の実家を相続した方)

出典: 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」/国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」/国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」/日高市「木造住宅耐震診断補助制度」/横浜市「木造住宅の無料耐震診断」

増改築や耐震補強の履歴と図面の有無も確かめる

建てた時期と同じくらい大事なのが、その後に増築や補強をした履歴です。

まず増築です。増築した部分はもとの家と建てた年代が違い、登記されていない増築もあります。増築のときに建築確認などの手続きをしたかで、扱いが変わります。

たとえば、後で紹介する「誰でもできるわが家の耐震診断」では、手続きを省いた増築や、2回以上くり返した増築は点数が下がります。横浜市の無料耐震診断では、平成12年6月以降の増築部分が延べ面積の半分を超えると対象外になります。

次に、耐震補強の工事記録や、過去に自治体の耐震診断を受けたときの報告書です。見つかれば、専門家の診断をやり直さずに済む場合や、診断の材料に使える場合があります。

旧耐震の家を売るときは、診断の記録があれば買主への重要事項説明でその内容が説明されるので、売り方を決める材料にもなります。

図面の有無も確かめておきましょう。間取りが分かる平面図や、建築確認のときの図面があると、専門家の診断がスムーズに進みます。横浜市は、図面がなくても診断はできるものの、結果と実際の耐震性に差が出やすくなると案内しています。

親が元気なうちに次のことを聞いてメモに残しておくと、書類が見つからないときの手がかりになります。

  • いつ、どこの会社(工務店・ハウスメーカー)が建てたか
  • 増築・リフォーム・耐震補強をした時期と、その範囲
  • 雨漏りやシロアリの跡など、気になったことがあるか

ハウスメーカーが建てた家なら、その会社が図面の控えを持っていることがあり、問い合わせてみる価値があります。

兄弟・姉妹で「築何年」の認識がずれたままだと、売る・住む・貸すの話し合いが行き違いやすくなります。集めた日付と書類のコピーをそろえて、家族で共有しておくと話が早く進みます。

出典: 日本建築防災協会「誰でもできるわが家の耐震診断」(上越市掲載)/横浜市「木造住宅の無料耐震診断」/国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」

自分でできる耐震チェックの方法

専門家にお金を払う前に、費用ゼロのチェック表で、専門家に頼む必要があるかを絞り込めます。

使うチェック表は、建築確認日で分かった年代によって次のように変わります。

家の年代と構造使うチェック表
旧耐震を含む、2階建て以下の木造誰でもできるわが家の耐震診断
1981年6月〜2000年5月に建てた在来軸組構法の木造新耐震木造住宅検証法(所有者等による検証)

どちらも一般財団法人日本建築防災協会が作ったもので、自治体の窓口やWebサイトでも手に入ります。在来軸組構法とは、柱とはりを組み、筋かい(壁の中に斜めに入れる補強材)などで支える、日本で昔から一般的な木造の建て方です。

旧耐震の木造は「誰でもできるわが家の耐震診断」で目安をつける

旧耐震の実家なら、まず「誰でもできるわが家の耐震診断」の10項目で、弱いところの目安をつけられます。

国土交通省住宅局の監修で日本建築防災協会が作った、住んでいる人や持ち主向けのチェック表です。対象は1〜2階建ての一戸建ての木造住宅で、在来軸組構法とツーバイフォー工法(枠組壁工法)の家に使え、店舗や事務所を兼ねた住宅も含まれます。

旧耐震に限らず使えます。次の10項目のうち、当てはまれば1点、当てはまらない・よく分からないときは0点です。

項目1点になる状態
建てた時期1981年6月以降に建てた
大きな災害の経験床下・床上浸水、火災、車の突入事故、大地震、崖の上の隣地の崩落などに遭ったことがない
増築増築していない。または建築確認など必要な手続きをして増築した
傷み具合と補修傷んだところがない。または傷んだところはその都度直している
建物の平面の形1階の形が長方形に近い(L字・T字など複雑な形ではない)
大きな吹き抜け一辺が4m以上の大きな吹き抜けがない
1階と2階の壁面の一致2階の外壁の真下に1階の壁がある。または平屋
壁の配置のバランス1階の外壁の東西南北どの面にも壁がある
屋根葺材と壁の多さ瓦など重い屋根でも1階に壁が多い。またはスレート・鉄板など軽い屋根
基礎の種類鉄筋コンクリートの布基礎・ベタ基礎・杭基礎

平面の形は、約91cm以下の出っ張りや出窓、バルコニーを無視して大まかに見ます。壁の配置でいう「壁」は、幅が約91cm以上の壁を指します。基礎は、柱が石の上に載っているだけの玉石基礎などの場合は0点になります。

合計点による判定は次のとおりです。

合計点判定
10点ひとまず安心ですが、念のため専門家に診てもらいましょう
8〜9点専門家に診てもらいましょう
7点以下心配ですので、早めに専門家に診てもらいましょう

満点でも「念のため専門家に」と書かれている点に目を向けてみてください。このチェックは家の弱いところに気づき、専門家の診断につなげるためのもので、点数がよくても安全を確かめるには専門家の診断が必要です。

地盤のことも、この診断の対象外です。紙のリーフレットは自治体の窓口で配られているほか、多くの自治体のWebサイトにも載っています。

出典: 日本建築防災協会「誰でもできるわが家の耐震診断」(上越市掲載)

1981年6月〜2000年5月の木造は所有者向けの検証法でチェックする

1981年6月から2000年5月に建てた木造は、「新耐震木造住宅検証法」の所有者等による検証でチェックできます。

この年代は新耐震基準ですが、柱とはりのつなぎ目のルールなどが今よりあいまいでした。2016年の熊本地震の被害の分析で、この年代の在来軸組構法の住宅にも対策が必要とされ、2017年にこの検証法が作られました。

対象になるのは、次の3つをすべて満たす家です。

  • 1981年6月から2000年5月までの間に建てた
  • 在来軸組構法で、基礎がコンクリート造
  • 平屋か2階建てで、すべての階が木造

所有者等による検証では、次の4つを確かめます(名古屋市など愛知県内の自治体が配るチェックシートより)。

確かめること見方
① 平面と立面の形が整形か上から見た形も横から見た形も、比較的整っているか
② 柱とはりのつなぎ目に接合金物が使われているか天井裏や床下をのぞいて確かめる
③ 1階の外壁4面それぞれで、窓やドアのない壁の長さの割合が0.3以上か長さ8mの面なら、窓やドアのない壁が合わせて2.4m以上あるか
④ 劣化の状態(5点満点)外壁・屋根・基礎・床・浴室の5つを1点か0点で採点

④の劣化は、部位ごとに次の状態なら1点です。

部位1点になる状態
外壁ひび割れ、はがれ、水が染みた跡、こけ、腐れなどがない
屋根瓦やスレートが割れておらず、棟や軒がまっすぐ
基礎ひび割れがない
床傾きや、大きなたわみ・揺れがない
浴室ユニットバスかリフォーム済み(タイル貼りなどの昔ながらの浴室は0点)

外壁・屋根・基礎・床は、傷みがあっても定期的に手入れをしてきた場合(床はリフォームした場合)も1点です。

判定は、①〜③がすべて「はい」で④が4点以上なら「一応倒壊しない(地盤は考慮していない)」です。1つでも「いいえ」があるか④が3点以下なら「専門家による検証が必要」となり、①〜③で「よく分からない」と答えた項目は「いいえ」と同じ扱いです。

自治体によっては、この結果を無料耐震診断の最初の段階に使っています。世田谷区は、まずこの方法で簡易的に検証し、「一応倒壊しない」となれば診断は終わり、そうでなければ専門家の一般診断に進むとしています。

なお、ツーバイフォーやプレハブ(工場で部材を作る住宅)は、最初から細かい技術基準で建てられているため、この検証法の対象外です。気になる場合は、建てた会社の窓口や専門家に相談してみてください。

出典: 国土交通省「新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法について」/名古屋市「新耐震木造住宅検証法による所有者チェックシート」/世田谷区「木造住宅耐震改修訪問相談制度」

外回りと床下・小屋裏で劣化と接合金物を見る

チェック表を埋めるときは、外回り・室内・床下・小屋裏の順に見ていくと見落としを防げます。

場所ごとに見るところは次のとおりです。

外回り

  • 基礎にひび割れがないか
  • 外壁にひび、はがれ、水が染みた跡、こけがないか
  • 屋根の棟(てっぺん)や軒先が波打っていないか、瓦やスレートが割れていないか

室内

  • 床に傾きやたわみがないか、歩くとふわふわしないか
  • ドアやふすまの開け閉めが渋くなっていないか
  • 天井や壁に雨染みがないか
  • タイル貼りの浴室の周りの床が、ぶかぶかしていないか

床下(台所の床下収納などの点検口から、懐中電灯でのぞく)

  • 土台(基礎の上に載る木材)が腐っていないか
  • シロアリが通った土のトンネル(蟻道)がないか
  • 金物が見えるか

小屋裏(押入れの天井の点検口から、のぞく)

  • 柱とはりのつなぎ目に金物があるか
  • 雨漏りの跡がないか

間取りの弱点

  • 1階に窓が多く、壁が少ない面がある
  • 1階が車庫や店舗になっていて、壁が少ない
  • 2階の壁の真下に、1階の壁がない
  • 重い瓦屋根なのに、1階の壁が少ない

実家が遠くて何度も行けないなら、帰省のときに写真を撮っておくと、チェック表の記入にも専門家への相談にも使えます。撮っておきたいのは、外回りの4面、基礎、地上から見える範囲の屋根、床下と小屋裏の点検口からの様子、気になる箇所です。

空き家の期間が長いと、人が住んでいる家より傷みに気づきにくくなります。前回の写真と並べると、前に見たときからの変化を見つけやすくなります。

床下にもぐる、屋根に上るといった危ない作業は避け、点検口から懐中電灯でのぞいて見える範囲にとどめておきましょう。

出典: 名古屋市「新耐震木造住宅検証法による所有者チェックシート」/日本建築防災協会「誰でもできるわが家の耐震診断」(上越市掲載)

自分でのチェックの限界と専門家に頼む目安

自分でのチェックで分かるのは、専門家に頼むべきかの目安までです。

家の強さを数値(評点)で出したり、「耐震性あり」と判定したりするのは、専門家の診断の役割です。特に気をつけたいのは、証明が必要な場面では自己チェックの結果を使えないことです。

  • 買主の住宅ローン控除に使う「耐震基準適合証明書」は、建築士事務所に所属する建築士などが発行する
  • 相続した空き家の3,000万円控除で耐震基準を満たすことを示すには、耐震基準適合証明書などが必要
  • 地震保険の耐震診断割引は、地方公共団体などによる耐震診断や耐震改修の結果、基準を満たすと確認できた場合に受けられる

つまり、自分のチェックで「一応倒壊しない」と出ても、売るときに「耐震性あり」と伝える根拠にするには、専門家の証明が必要です。

ほかにも、次の2つの限界があります。

  • どちらのチェックも地盤を考慮していない
  • 「よく分からない」と答えた項目は0点や「いいえ」になるため、結果は悪めに出る

分からない項目が多くて点数が低く出たときは、そのこと自体が専門家に見てもらう理由になります。専門家に頼む目安は、次のどれかに当てはまる場合です。

  • 「わが家の耐震診断」で9点以下、または検証法で「専門家による検証が必要」と出た
  • 「よく分からない」項目が多い
  • 売る・住む・貸すのどれかで、証明書が必要になりそう

チェックの結果と撮った写真は、自治体の窓口や建築士に相談するときの材料になるので、捨てずに取っておきましょう。

経験者の声:「よく分からない」が多いこと自体が答えだった

「チェック表をやってみたら『よく分からない』ばかりで、点数が低く出ました。最初は慌てましたが、自分では判断できないと分かったことで、市の無料診断を申し込む踏ん切りがつきました。」(遠方の実家を管理している方)

出典: 国土交通省「住宅ローン減税Q&A」/国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」/財務省「地震保険制度の概要」

専門家に耐震診断を頼むときの流れ

専門家への耐震診断は、市区町村の窓口に相談し、補助の申込みを済ませてから契約と調査に進みます。

全体の順番は次のとおりです。

窓口に相談 → 補助の申込み → 診断の種類を決める → 現地調査 → 報告書と結果説明

木造の戸建ての耐震診断は、市区町村の制度を使えば無料や少額で受けられる場合があります。たとえば横浜市は無料、青森県の制度では所有者の負担は1万1,000円からです。

気をつけたいのは、補助を取りこぼさないことと、目的に合わない診断を受けて二度手間にならないことの2つです。

相談先は市区町村の耐震化の窓口から当たる

最初の相談先は、実家がある市区町村の耐震化の担当(建築指導課や住宅課など)です。

補助の制度、登録された診断士の派遣、手続きの流れをまとめて教えてもらえます。使うのは、自分が住んでいる市区町村ではなく、実家のある市区町村の制度です。

電話では、次の5つを確かめておきましょう。

  • 対象になる建築年代
  • 空き家でも使えるか
  • 申し込める人と必要な書類
  • 対象になる構造
  • 受付期間

対象の建築年代は、昭和56年5月31日以前に限る自治体と、平成12年5月31日以前まで広げている自治体があります。日高市は昭和56年5月31日以前に着工した住宅、横浜市や青森県は平成12年5月31日以前の住宅まで対象にしています。

いちばん差が出やすいのは、空き家でも使えるかです。横浜市は「住宅として使用されていた空家」も対象にしています。

一方、山武市は、市の住民基本台帳に記録されていて、自ら住んで所有している人か、住んでいて所有者の承諾を得ている人を対象にしています。このように住んでいることを条件にする自治体では、遠くに住む相続人が空き家の実家で使えないことがあります。

申し込める人について、横浜市は所有者が申し込み、所有者が複数いる場合は代表者1人が申し込んで、ほかの所有者全員の同意が必要としています。名義が親のままの場合や、兄弟・姉妹で共有名義にしている場合に何が要るかも聞いておくと、申込みの段階で手続きが止まるのを防げます。

構造では、横浜市は在来軸組構法の木造が対象で、プレハブやツーバイフォーは対象外です。受付期間は、山武市の場合、補助を受けたい年度の12月末までです。

補助の対象外だった場合や、補助を使わずに頼みたい場合も、まずは同じ窓口に相談してみてください。東京都のように、耐震診断を行う事務所を登録して公表している自治体もあります。

補助の申込みでは所有者を確認されるため、名義の整理も早めに進めておきましょう。相続登記は2024年4月1日から義務になり、相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に申請が必要です。それより前に起きた相続も対象で、2027年3月31日までに登記が必要です(法務省)。

出典: 横浜市「木造住宅の無料耐震診断」/日高市「木造住宅耐震診断補助制度」/山武市「木造住宅耐震診断補助制度のご案内」/青森県「青森県木造住宅耐震診断推進事業」/東京都耐震ポータルサイト「木造住宅の耐震診断事務所の登録・公表」/法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

補助は契約と診断の前に申し込む

補助を使うなら、建築士との契約や診断の前に、補助の申込み(交付申請)を済ませておく必要があります。

先に契約や診断をすると、補助の対象外になることがあります。山武市は、交付決定の通知の前に契約や耐震診断をした場合は補助を受けられないと定めています。日高市も、補助金の交付決定の後に耐震診断をするよう案内しています。

補助の受け方には、大きく2つの型があります。

費用補助型(自分で建築士に頼み、かかった費用の一部が戻る。日高市・山武市など)

  1. 交付申請(見積書、建物の図面、確認済証などを付ける)
  2. 交付決定の通知を受ける
  3. 建築士と契約し、診断を受ける
  4. 完了の報告(領収書や診断結果報告書の写しを出す)
  5. 補助金を請求し、受け取る

診断員派遣型(自治体が診断員を派遣する。青森県の制度など)

  1. 市区町村に申し込む
  2. 市区町村が診断員に依頼する
  3. 診断員が現地調査をして診断する
  4. 結果の報告を受ける(自己負担がある場合は支払う)

派遣型は、自分で建築士を探して契約する手間を省けます。

補助を予算の範囲内で出すと定めている自治体があり(日高市など)、受付の期限もあるので、年度の早い時期に申し込むと予算切れにかかりにくくなります。同じ補助を以前に受けていないことを条件にする自治体もあるため(山武市)、親が昔この補助を使っていないかも確かめておきましょう。

出典: 山武市「木造住宅耐震診断補助金交付要綱」/日高市「木造住宅耐震診断補助制度」/青森県「青森県木造住宅耐震診断推進事業」

一般診断と精密診断は目的で使い分ける

売る・住む・貸すの方針を決める段階なら一般診断法、補強工事をする前提なら精密診断法も候補になります。

木造住宅の耐震診断には、日本建築防災協会の「木造住宅の耐震診断と補強方法」に定められた、主に2つの方法があります。

一般診断法は、壁や天井をはがさずに、天井裏・床下・室内から目で見て調べる方法です(世田谷区の案内)。図面も使い、見えない部分は想定した条件で計算します。

補強が必要かを判定するための方法で、横浜市の無料診断や世田谷区の診断など、自治体の制度でもよく使われます。方針を決める段階なら、多くの場合はこの方法で判断できます。

精密診断法は、事前に建物を詳しく調べ、地震のときにかかる力と家の耐える力を細かく計算する方法です。静岡県は、一般診断法より費用はやや高くなるものの、精度が上がり、結果として耐震改修の費用を抑えられる場合もあるとし、改修の前後の耐震性を評価するときは精密診断法を勧めています。

もう1つ知っておきたいのが、証明書を誰が出せるかです。旧耐震の家を建物付きで売るとき、買主の住宅ローン控除に「耐震基準適合証明書」が必要になる場合があります。

この証明書を作れるのは、建築士事務所に所属する建築士、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人です(国土交通省「住宅ローン減税Q&A」)。自治体の無料診断の結果が、そのまま証明書になる場合と、ならない場合があります。

住宅ローン控除で使う証明書は、家の引渡しの前2年以内に調査が終わっている必要もあります。売る予定があるのに別の目的で早く診断を受けると、証明のためにもう一度調査が要ることがあります。

依頼するときは、診断の目的を次の3点で伝えておくと、二度手間を防げます。

  • 売る・住む・貸すのどれを考えているか
  • 売る場合、買主のために証明書が必要になりそうか
  • 補強工事まで考えているか

出典: 世田谷区「木造住宅耐震改修訪問相談制度」/静岡県「木造住宅の耐震改修事業(補強計画一体型)」/国土交通省「住宅ローン減税Q&A」/横浜市「木造住宅の無料耐震診断」

診断費用の目安と補助で下がる自己負担

診断費用は延べ面積や図面の有無で変わり、補助を使えば自己負担を大きく下げられます。

補助を使わない場合の目安として、青森県の資料では、木造住宅の耐震診断の費用を延べ面積200㎡以下で14万7,000円としています。延べ面積が大きくなるほど割り増しになり、350㎡超400㎡以下では23万2,000円です。

補助の型ごとに、自己負担の例を並べます。いずれも各自治体の公表資料からで、年度で変わるため、申し込む前に確かめておきましょう。

補助の型例自己負担の目安
無料診断型横浜市(平成12年5月31日以前に着手した2階建て以下の在来軸組構法の木造)0円
診断員派遣型青森県の制度(国・県・市町村が13万6,000円を補助)1万1,000円〜(延べ面積200㎡以下の場合)
費用補助型日高市は費用の2分の1以内・上限5万円、山武市は費用の3分の2以内・上限6万円日高市の例で、診断費用13万円なら補助5万円・自己負担8万円

自治体によっては、図面だけで行う無料の簡易診断を別に用意していることもあります。日高市は、図面をもとにした木造住宅の無料簡易耐震診断を実施し、補助つきの診断の前に受けることを勧めています。

ただし現地調査はしないため、日高市も正確な診断には現地調査が必要としています。さらに、この無料簡易診断の結果だけでは耐震改修工事の補助金は出せないので、専門家による耐震診断を受けるよう案内しています。

補強まで考えるなら、簡易診断のあとに専門家の診断まで受けておくと、改修の補助の申請に進めます。

図面の有無は、費用と精度にも影響します。図面があると調査がスムーズに進み、結果も実際の家に近くなります。

補強の設計や補強工事に補助を出す自治体には、「耐震診断を受けていること」を前提にしている例があります。たとえば日高市の耐震改修の補助では、申請のときに診断結果報告書の写しを出すので、診断を補助の制度に沿って受けておくと、その報告書を改修の補助の申請に使えます。

出典: 青森県「青森県木造住宅耐震診断推進事業」/横浜市「木造住宅の無料耐震診断」/日高市「木造住宅耐震診断補助制度」/山武市「木造住宅耐震診断補助制度のご案内」/日高市「木造住宅耐震改修補助制度」

調査当日までに図面と立会いを準備する

調査当日までに書類をそろえ、点検口の周りを片付けて、立ち会う人を決めておきましょう。

用意しておきたいものは次のとおりです。

  • 確認済証(確認通知書)、検査済証、図面、台帳記載事項証明書など、集めた書類
  • 増改築や補強の時期をまとめたメモ
  • 自己チェックの結果と写真
  • 床下と押入れの天井の点検口の周りの片付け
  • 照明が使える状態(空き家で電気を止めている場合は事前に確認)
  • 立ち会う人と鍵の受け渡し

点検口が家財でふさがっていると、その部分は見られず、想定した条件で計算されるため、実際の家と違う結果になりやすくなります。遠方の実家なら、兄弟・姉妹の誰が立ち会うかを先に決めておくと、日程の調整が進めやすくなります。

横浜市の無料耐震診断の場合、現地調査は2〜3時間ほどで、立会いが必要です。診断士は家の中に入り、押入れなどから筋かいの入り方を確かめます。報告書は、診断日からおよそ3週間後に郵送されます(混み合う時期はもっとかかります)。

補助の申込みから交付決定までの期間も加えると、結果が手元に届くまでには時間がかかります。売却の予定があるなら、売り出したい時期から日数を数えて、早めに申し込んでおきましょう。

出典: 横浜市「木造住宅の無料耐震診断」

診断結果の評点の読み方

診断の結果は「上部構造評点」という数字で示され、1.0以上なら「一応倒壊しない」と判定されます。

上部構造評点は、家の地上部分が大地震の揺れにどれだけ耐えられるかを表す点数です。評点ごとの判定は次のとおりです(岡山市の案内より)。

上部構造評点判定
1.5以上倒壊しない
1.0以上1.5未満一応倒壊しない
0.7以上1.0未満倒壊する可能性がある
0.7未満倒壊する可能性が高い

読むときに押さえたい点は、次の5つです。

判定は大地震を想定しています。 この判定は、震度6強から7に達する程度の大地震に対する安全性を示しています。

1.0未満でも、すぐ住めない・売れないという意味とは違います。 国の耐震診断結果の公表制度では、どの判定の建物も、違法に建てられたものや劣化を放っておいたものでなければ、震度5強程度の地震では倒壊するおそれはないとされています(京都府の公表資料の説明より)。ただし0.7を境に危険の度合いは違い、0.7未満なら早めの対策を考えたい水準です。

判定には、いちばん低い評点を使います。 評点は階ごと、方向(東西・南北)ごとに出ます。報告書で、どの階・どの方向が弱いのかも見ておきましょう。

結果説明の場は、目的に合わせて質問できる機会です。 「売るなら、この結果をどう伝えればよいか」「住むなら、どこを補強すると効果が大きいか」「貸すなら、補強の費用はどのくらいになりそうか」など、売る・住む・貸すの判断につながる質問を用意しておくと、説明の時間を有効に使えます。

補強工事を誰に頼むかは、所有者が決められます。 診断を頼んだ相手に補強工事まで頼む義務はなく、補強の提案を受けたら、自治体の改修補助の条件を確かめ、ほかの事業者の見積りと比べてから選べます。

報告書は家族全員で共有しておきましょう。横浜市も、申込者は診断結果をほかの所有者や居住者に知らせることとしています。

経験者の声:契約を急ぐと補助が出ないところだった

「建築士さんとの日程を先に決めかけたところで、市から『交付決定の前に契約すると補助の対象外になる』と言われ、慌てて順番を直しました。電話で最初に聞いておいて本当によかったです。」(相続した空き家の耐震診断を受けた方)

出典: 岡山市「民間建築物の耐震診断・改修の実施結果について」/京都府「耐震診断結果の見方」/横浜市「木造住宅の無料耐震診断」

売る・住む・貸す別に耐震診断が必要になる条件

耐震診断の要否は、建てた年代、売る・住む・貸すのどれを選ぶか、売るならその売り方の3つで決まります。

早見表で、実家の年代の行を探してみてください。

建築年代(建築確認日の区分)売る(古家付き土地・解体前提)売る(建物付き)住む貸す
① 1981年5月31日以前(旧耐震)不要なことが多い。ただし相続空き家の3,000万円控除を使うなら、取り壊しなどの段取りが要る買主の住宅ローン控除や相続空き家の特例で、証明や改修が要る場面がある診断を勧める。補強の補助と組み合わせる貸す前に診断を勧める
② 1981年6月〜2000年5月(木造)不要なことが多い自己チェックの結果次第。登記の日付が1981年中なら、買主のローン控除に証明書が要る自己チェックの結果次第で診断自己チェックの結果次第で診断
③ 2000年6月以降不要劣化がなければ優先度は低い劣化がなければ優先度は低い劣化がなければ優先度は低い

売るときの耐震診断は義務ではなく、売り方で要否が分かれる

まず押さえたいのは、売主にも不動産会社にも、耐震診断を受ける法律上の義務はないことです。

不動産会社(宅地建物取引業者)は、売買の契約の前に買主へ重要事項説明をします。宅地建物取引業法35条と同法施行規則16条の4の3第5号により、昭和56年6月1日より前に新築の工事に着手した建物では、建築士などによる耐震診断を受けていれば、その内容を説明することになっています。

ただし国土交通省は、不動産会社が売主や所有者に診断の記録の有無を問い合わせ、ないと確認できれば調査の義務を果たしたことになるとしています。この説明義務は、耐震診断の実施そのものを不動産会社に義務づけるものではないとも示しています(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。

逆にいえば、診断を受けた記録があれば、結果が悪くても買主に伝わります。売る前提で診断を受けるなら、結果を開示することと、その結果を価格や条件の話し合いにどう使うかを、セットで考えておきましょう。

記録があるのに伝えずに売れば、あとで買主との争いの原因になるおそれがあります。

では、診断を受けたほうがよいのはどんなときでしょうか。分かれ目は売り方です。

旧耐震の木造の実家は、建物にほとんど値段がつかず、「古家付き土地」として土地の値段で取引されることがよくあります。国土交通省も2014年の指針で、中古の木造戸建ての評価では、家の状態にかかわらず築20〜25年で建物の価値をゼロとみなすことが一般的だと指摘しています。

この売り方や、解体を前提にする買主が相手なら、診断や補強にお金をかけても売値に上乗せされにくく、診断は不要なことが多いでしょう。反対に、建物を使ってもらう前提で売るなら、診断の結果は買主の安心材料になります。

建物付きで売る場合は、買主の住宅ローン控除や相続した空き家の3,000万円控除で、証明や改修が必要になる場面もあります。売り方の方針を不動産会社と相談するときに、診断の要否もあわせて確かめておくと、むだな出費を防げます。

出典: e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」/国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」/国土交通省「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」

旧耐震を建物付きで売るなら買主の住宅ローン控除に証明書が関わる

昭和57年(1982年)より前に建築された家を建物付きで売ると、買主が住宅ローン控除を使うには耐震の証明が必要になります。

中古住宅の買主が住宅ローン控除を使うには、家が耐震の基準を満たしていることが要件です(国税庁タックスアンサーNo.1211-3)。昭和57年(1982年)1月1日以後に建築された家なら、それだけで要件を満たします。確定申告では登記事項証明書で示すので、ここでは登記の日付が基準になります。

それより前に建築された家では、次のどれかが必要です。どれも、家を取得する日の前2年以内のものに限られます。

  • 耐震基準適合証明書(建築士などが発行。取得の日前2年以内に、証明のための調査が終わっているもの)
  • 建設住宅性能評価書(耐震等級が1・2・3のいずれかと評価されたもの)
  • 既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書(中古住宅の欠陥に備える保険に入っている証明)

ここで大事なのは、耐震基準適合証明書は、通常は売主が申請するものだということです。国土交通省の住宅ローン減税Q&Aは、引渡しの前2年以内に調査が終わっている必要があるため、通常は売主が申請することが想定されるとしています。

つまり、買主がこの方法で控除を使えるかは、原則として売主の協力にかかっています。

木造の場合、証明を受けるには、一般的に診断の評点が各階とも1.0以上であることが目安になり(横浜市の税の案内)、足りなければ補強工事が必要です。診断や補強の費用を誰が負担するかは売主と買主の話し合いで決め、契約書に書いておきましょう。

なお、買主が家を取得した後に耐震改修をして控除を受ける方法もあります。この場合は、取得の日までに耐震改修の申請をし、取得から6か月以内に住み始めるまでに、基準を満たしたことの証明を受けることが必要です(国税庁タックスアンサーNo.1211-5)。

控除を使えるかは、買主の資金計画や購入の判断に影響します。建物付きで売るなら、売り出す前に不動産会社と「証明書を用意するか」を決めておくと、買主との話が進めやすくなります。

出典: 国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」/国税庁「No.1211-5 要耐震改修住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」/国土交通省「住宅ローン減税Q&A」/横浜市「耐震改修をすると利用できるお得な制度〜賃貸住宅編〜」

相続した空き家の3,000万円控除は耐震改修か取り壊しが条件になる

相続した旧耐震の実家を売るとき、売却益(譲渡所得)から最高3,000万円を差し引ける特例を使うには、耐震改修か取り壊しが必要です。

この特例は「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」といいます(国税庁タックスアンサーNo.3306)。旧耐震の実家で、耐震が税金にいちばん大きく関わる場面です。

耐震に関わる主な要件は次のとおりです。

  • 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家であること
  • 区分所有建物の登記がされている建物(マンションなど)でないこと
  • 相続が始まる直前に、亡くなった人以外に住んでいる人がいなかったこと

亡くなった人が老人ホームなどに入っていた場合も、一定の要件を満たせば、入所の直前まで住んでいた家が対象になります。細かい条件は、税務署で確かめておきましょう。

耐震の要件の満たし方は、次の3通りです。

方法耐震の要件の満たし方期限・条件
① 売主が耐震改修してから、建物付きで売る売るときに、家が耐震基準を満たしている相続の時から売る時まで、事業・貸付・居住に使っていないこと
② 売主が家を取り壊してから、土地を売る家を取り壊す取り壊した後に土地を売る
③ 建物付きで売り、買主が耐震改修か取り壊しをする売った年の翌年2月15日までに、耐震基準を満たすか、取り壊す令和6年(2024年)1月1日以後の売却に限る

③は、売主が解体費を先に出さずに済む売り方です。ただし買主が期限までに改修か取り壊しをすることが条件になるため、契約書でしっかり取り決めておく必要があります。

そのほかの主な要件も、短く並べます。

  • 売ったのが平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日までの間であること
  • 相続が始まった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • 売った代金が1億円以下であること
  • 令和6年1月1日以後の売却で、相続人が3人以上いる場合は、控除の上限が1人2,000万円になる

旧耐震の実家を何もせずに古家付き土地として売ると、この特例が使えない場合があります。③の取り決めもないまま建物付きで売った場合も、要件から外れます。

期限や金額は税制改正で変わることがあるので、売り方を決める前に、実際に使えるかを税務署か税理士に確かめておくと、売ったあとで特例が使えなかったという事態を防げます。

出典: 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

自分や親が住むなら旧耐震は診断と補強の補助を組み合わせる

毎日寝起きする家なので、住む場合は売る・貸すよりも診断の優先度が高くなります。

旧耐震なら、診断を受けることを勧めます。1981〜2000年の木造なら、まず自己チェックをして、その結果で判断するとよいでしょう。

自治体の支援は、診断・補強設計・補強工事の順に用意されていることがよくあります(東京都の案内も、この3段階で説明しています)。補強工事の補助には、診断を受けていることを前提にする例があるため(日高市など)、診断も補助の制度に沿って受けておきましょう。

リフォームの予定があるなら、補強を同時に行うと、壁や床をはがす工事を一度で済ませられ、別々に工事をするより手間も費用も抑えやすくなります。

家全体の補強が難しい場合は、寝室などに置く耐震シェルターや防災ベッドに補助を出す自治体もあります。たとえば名古屋市は、昭和56年5月31日以前に着工した木造住宅で、市の無料耐震診断の判定値が1.0未満の場合に、費用の2分の1以内(上限30万円)を補助しています。

ただし名古屋市は、耐震シェルターの設置は耐震改修に当たらないため、耐震改修の証明書は発行されないとしています。シェルターの補助は、次に挙げる耐震改修の税の優遇とは別の制度と考えておくと混乱を防げます。

耐震改修をすると、税金や保険料が安くなる制度もあります。

所得税の控除は、昭和56年5月31日以前に建てた自分の住む家を、今の耐震基準に合うように改修した場合に、工事の標準的な費用をもとに計算した額を所得税から差し引く制度です。令和10年(2028年)12月31日までに改修したものが対象です(国税庁タックスアンサーNo.1222)。

固定資産税の減額は、昭和57年1月1日以前からある住宅を今の耐震基準に合うように改修し、工事費が1戸あたり50万円を超える場合に、翌年度の固定資産税(120㎡相当分まで)を2分の1にする制度です。令和13年(2031年)3月31日までに改修したものが対象で(地方税法附則15条の9)、名古屋市などの案内では工事完了から3か月以内の申告が必要です。

この2つの期限は、以前は所得税の控除が令和7年(2025年)12月31日まで、固定資産税の減額が令和8年(2026年)3月31日までとされていました。2026年4月1日に施行された税制改正で、それぞれ上の期限まで延びています。

地震保険の耐震診断割引では、地方公共団体などによる耐震診断や耐震改修の結果、昭和56年6月1日に施行された耐震基準を満たす建物の保険料が10%割り引かれます(財務省)。旧耐震の家は「建築年割引」が使えないため、保険料を下げるにはこの割引を使うことになります。

税の優遇は、適用の期限が税制改正で動きます。実際に使えるかと最新の期限は、市区町村や税務署で確かめておきましょう。

大がかりなリフォームを考えている場合は、もう1つ注意点があります。2025年4月の建築基準法の改正で、木造2階建ての家などで「大規模なリフォーム」をする場合は、工事の前に建築確認の手続きが必要になりました。

大規模なリフォームとは、壁・柱・床・はり・屋根・階段のどれか1種類以上について、半分を超える範囲を改修することなどを指します。キッチン・トイレ・浴室などの水回りのリフォームや、手すりの設置は手続き不要です(国土交通省)。

補強と大がかりなリフォームを組み合わせるなら、計画の段階で建築士に相談しておくと、手続きの漏れを防げます。

出典: 東京都耐震ポータルサイト「戸建住宅の耐震化」/日高市「木造住宅耐震改修補助制度」/名古屋市「耐震シェルター・防災ベッドの設置助成」/国税庁「No.1222 耐震改修工事をした場合(住宅耐震改修特別控除)」/e-Gov法令検索「地方税法」/名古屋市「耐震改修が行われた住宅に対する固定資産税の減額」/財務省「地震保険制度の概要」/国土交通省「建築基準法改正 大規模なリフォームについて」

貸すなら所有者の責任を踏まえて貸す前に診断する

旧耐震の実家を貸すなら、診断を受け、必要なら補強してから貸すと、所有者としての責任に備えられます。

実家を人に貸すと、入居者が住む建物の持ち主として重い責任を負います。

民法717条は、建物などに欠陥があって他人に損害を与えたとき、まず占有者(実際に使っている人)が賠償の責任を負い、占有者が必要な注意をしていた場合は所有者が賠償しなければならないと定めています。所有者には「注意していれば責任を免れる」という定めが置かれていない点が、占有者と違います。

地震で家が壊れて入居者が被害を受けた場合も、建物に欠陥があったかが問われ、貸主である所有者が責任を負う可能性があります。

借りる人にも、耐震診断の情報は伝わります。賃貸の重要事項説明でも、昭和56年6月1日より前に新築の工事に着手した建物で耐震診断を受けていれば、その内容を説明することになっています(宅地建物取引業法施行規則16条の4の3、国土交通省の解釈・運用の考え方)。

補強の費用が家賃収入に見合わないなら、貸さずに売る場合と比べてみてください。

その比較で見落としやすいのが、相続した空き家の3,000万円控除との関係です。この特例は、相続の時から売る時まで、家を貸したり事業に使ったりしていないことが条件です(国税庁タックスアンサーNo.3306)。

つまり、一度貸すと、あとで売るときにこの特例が使えなくなります。「とりあえず貸して、いずれ売る」と考えているなら、貸す前に税務署か税理士に確かめておきましょう。

貸主には、建物の修繕の義務もあります。民法606条は、貸主は貸している物の使用に必要な修繕をする義務を負うと定めています。地震で傷んだところの修繕費も見込んでおくと、家賃との収支を比べやすくなります。

補強した場合の優遇は、住む場合と少し違います。

  • 地震保険の耐震診断割引(10%)は、貸している住宅にも使える
  • 固定資産税の減額は、横浜市の案内によると、自分が住んでいない賃貸住宅のオーナーも対象
  • 所得税の控除は自分が住む家が対象なので、貸す家では使えない

建物の欠陥による責任の有無は、個別の事情で決まります。不安がある場合は、弁護士などの専門家に相談してみてください。

経験者の声:貸す前に特例の条件を知っておけばよかった

「家賃で固定資産税をまかなえればと、とりあえず貸すつもりでした。貸すと相続空き家の特例が使えなくなると知ったのは、話がだいぶ進んでからです。いずれ売るかもしれないなら、先に税務署で確かめるべきでした。」(相続した実家を貸すか迷った方)

出典: e-Gov法令検索「民法」/e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」/国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」/国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」/財務省「地震保険制度の概要」/横浜市「耐震改修をすると利用できるお得な制度〜賃貸住宅編〜」

まとめ:耐震性は建築確認日で目安をつけ、診断の要否は売る・住む・貸すで決まる

実家の耐震性の目安は、登記や査定書の築年ではなく建築確認日で決まり、1981年5月31日以前に建築確認を受けた旧耐震の家は、専門家の診断の優先度がいちばん高い年代です。

次の一歩は、確認済証(確認通知書)を探し、見つからなければ役所で建築確認の記録を取り寄せて、建築確認日を確かめることです。これを飛ばして査定書の築年で判断すると、旧耐震の家を新耐震と思い込み、相続した空き家の3,000万円控除に必要な耐震改修や取り壊しの段取りを逃すことがあります。

日付が分かったら、実家のある市区町村の耐震化の窓口に、補助の対象になる年代と空き家でも使えるかを電話で聞いてみてください。実家と相続の地図帳「つぐーる」では、実家の耐震性の確かめ方と売る・住む・貸す別の耐震診断の要否も含めて、相続や実家について悩むあなたに経験に基づいた情報を提供しています。