実家の名義の調べ方|登記事項証明書の取り方と名義人・持分の読み方

「この家、本当に父の名義なのだろうか」と気になり始めたとき、答えは実家の引き出しではなく、法務局の登記簿にあります。

登記簿は誰でも、理由を書かず、所有者に知られることなく取れて、閲覧なら140円で名義と持分まで分かります。

地番の調べ方から証明書の読み方、調べると見つかりやすい5つの問題まで、実際に実家の登記簿を取った経験者の声も交えてまとめました。

実家の名義を確認できる窓口と書類

実家の土地と建物が誰の名義かは、法務局の登記簿を見ると分かります。

手がかりになる書類は3つあります。

  • 法務局の登記簿(登記事項証明書)
  • 市区町村の固定資産税の書類(納税通知書・課税明細書・名寄帳)
  • 実家の引き出しに眠っている権利証(登記済証・登記識別情報通知)

名義の答えになるのは、このうち登記簿に限られます。残りの2つは「どこにどんな不動産があるか」を知る手がかりとして使います。

役割の違いを先に知っておくと、権利証や納税通知書の宛名を見て名義を思い込む失敗を避けられます。

法務局の登記簿が名義の正式な記録になる

土地や建物の所有者は、法務局が管理する登記簿に記録されています。

登記簿には「いつ、誰が、どんな理由で所有者になったか」が時系列で残っています。紙で取り寄せたものが「登記事項証明書」で、昔の言い方の「登記簿謄本」と中身は同じです。

調べる前に知っておきたい事実が3つあります。

1つ目は、登記簿は誰でも取れることです。所有者本人や家族でなくても請求でき、理由の記入も身分証も印鑑も不要です。手数料は窓口で1通600円、オンラインで請求すればもう少し安くなります。

2つ目は、取ったことが所有者に通知されないことです。子どもが親の実家の登記簿を取っても、親には何の連絡も行かずに済みます。「親にはまだ切り出せないが、名義だけは先に知っておきたい」という段階でも、気兼ねなく調べられます。

3つ目は、親の記憶より登記簿のほうが正しいことです。親が「この家は自分の名義だ」と言い切っていても、土地だけ祖父の名義のままだった、兄弟・姉妹と共有名義になっていた、という食い違いが出てくる実家もあります。

親が嘘をついているのではなく、何十年も前の手続きの記憶があいまいになっていると考えられます。親の言葉で納得せず、登記簿で確かめる価値はここにあります。

もうひとつの前提として、土地と建物は登記の上では別々の不動産です。登記簿も土地用と建物用に分かれていて、名義が別々になっている実家もあります。

「土地は祖父、建物は父」「土地は親、建物は子」という組み合わせは実家でよくあります。名義を調べるときは、土地と建物の両方を確認すると取りこぼしを防げます。

出典: 法務省 不動産登記のABC、盛岡地方法務局 土地・建物の登記事項証明書

固定資産税の書類は所在と評価額の手がかりになる

固定資産税の納税通知書と課税明細書は、実家の所在地番と評価額を知る出発点になります。

毎年春に市区町村から届く納税通知書には、課税明細書が同封されています。そこに、その人が税金を払っている土地・建物の所在地番や家屋番号、評価額が一覧で載っています。

「どの市区町村に、どの地番の、いくらぐらいの不動産があるか」が分かるので、地番調べの出発点として優秀な書類です。

ただし、名義の証明には使えない書類でもあります。宛名が「所有者」ではなく「納税義務者」だからです。

たとえば土地が父と叔父の共有名義だった場合、納税通知書は共有者の代表者1人(多くは父)にだけ届きます。届くのは父宛ての1通で、叔父の名前はどこにも載らない形です。

これを見て「父の単独名義だ」と思い込むのが、固定資産税の書類で起きやすい勘違いです。宛名は「代表して税金を払っている人」で、所有者全員を示す欄とは違うと覚えておきましょう。

もう一点、固定資産税の書類は市区町村の課税台帳に基づいて作られていて、法務局の登記簿とは別の記録です。登記が古いままでも市区町村が実態に合わせて課税していることがあり、両者が一致しない例もあります。

名義の最終確認は登記簿で行い、固定資産税の書類は「所在と評価額の手がかり」と役割を分けておくと迷わずに済みます。

出典: 西宮市 固定資産税通知の送付先について

手元の権利証は取得当時の名義しか示さない

実家から出てくる権利証が示すのは、その登記をした当時の名義人だけです。

仏壇の引き出しや金庫から出てくる「権利証」は、正式には登記済証と呼ばれる書類です。2005年の不動産登記法の改正以降は、登記済証に代わって「登記識別情報通知」が渡されるようになりました。どちらも、見つけると「名義が分かった」と安心しがちな書類です。

権利証は、登記が完了したときに法務局から名義人に渡されます。その後に相続や贈与で名義が変わっても、古い権利証は古いまま手元に残ります。

祖父名義の権利証が出てきても、その後に父へ名義が移っている実家もあります。逆に、父名義の権利証が見当たらないだけで、登記簿を取れば父の名義と分かる実家もあります。

また、権利証を失くしても名義は変わりません。権利証は「名義を変えるときに本人であることを示す道具」で、名義そのものとは別だからです。

「権利証が見つからないから名義を調べられない」と思っている方もいますが、名義を調べるだけなら権利証がなくても進められます。

権利証の使いどころは、地番や家屋番号を拾う手がかりにすることです。所在・地番・家屋番号が書かれているので、地番調べで役立ちます。そのうえで、今の名義は登記簿で確かめておきましょう。

出典: 法務省 新不動産登記法Q&A

実家の地番・家屋番号を調べる方法

登記簿を取るには、住所ではなく土地の「地番」と建物の「家屋番号」が要ります。

法務局は、人の名前から不動産を探せない仕組みです。土地は地番、建物は家屋番号で管理されていて、この番号が分からないと請求書も書けないのです。

ややこしいのは、ふだん使う住所(住居表示。「〇丁目〇番〇号」の形)と地番が別物だという点です。住居表示は郵便や住まいを示す番号で、地番は土地を区別する番号です。

同じ住所の中に複数の地番があることも普通にあります。住所をそのまま請求書に書くと、法務局では「この住所では探せません」と返されます。

つまり、実家の名義調べの実質の第一歩は、地番と家屋番号を確定することです。方法は4つあり、課税明細書が手元にあれば数分で済みます。

  • 固定資産税の課税明細書から地番と家屋番号を拾う
  • 法務局に電話して住所から地番を照会する
  • 名寄帳で実家を構成する土地と建物を漏らさず拾う
  • 所有不動産記録証明書で名義人の氏名から全国の登記を探す

固定資産税の課税明細書から地番と家屋番号を拾う

いちばん早いのは、固定資産税の課税明細書を見ることです。

毎年4〜6月ごろに届く納税通知書に同封されていて、土地なら「所在・地番・地目・地積・評価額」、建物なら「所在・家屋番号・種類・構造・床面積・評価額」が一覧で載っています。

ここに書いてある地番と家屋番号を、そのまま登記簿の請求に使えます。

親が元気なら「固定資産税の紙を見せて」と頼めば済みます。親が入院中だったり、すでに亡くなっていたりすると、書類の場所から探すことになります。

経験者の声:通帳から市区町村を絞れた

「机の引き出しにも仏壇の引き出しにもなく、最後に見つけた手がかりは通帳でした。引き落としの記録に『固定資産税』と市区町村名の行があって、そこから市役所で書類を取り直せました」(父の相続で書類を探した方)納税通知書そのものが見つからなくても、通帳の記録だけで市区町村までは絞れます。

課税明細書で注意したいのは、載っているのが「その市区町村にある、その人が納税義務者になっている不動産」だけだという点です。別の市区町村にある土地や、共有名義で代表者が別の人になっている土地は、載らない仕組みです。

非課税の私道も載らない例があります。課税明細書に載っている分が実家の全部とは限らないため、名寄帳とあわせて使うと漏れを防げます。

法務局に電話して住所から地番を照会する

課税明細書も権利証も手元にないときは、実家の所在地を管轄する法務局に問い合わせると、地番の調べ方を案内してもらえます。

法務局の窓口には、住宅地図の上に地番を重ねた「ブルーマップ」や公図が備え付けてあり、住所から地番を探せます。ブルーマップは大きな図書館にも置いてありますが、発行されているのは都市部に限られます。

管轄と連絡先は法務局のホームページで調べられます。先に電話で調べ方を聞いておくと、窓口での二度手間を減らせます。

もうひとつの手段が、登記情報提供サービス(民事法務協会のサイト)にある「地番検索サービス」です。住宅地図を使って、住所からおおよその地番を無料で引けます。

どの手段でも、調べた地番が本当に実家の土地かは、登記簿を取ったあとに表題部(所在・地積など)で照合すると安心です。照合の仕方は、表題部の読み方のところにまとめました。

出典: 千葉地方法務局 不動産登記事項証明書の請求方法について、法務省 登記情報提供サービスにおける「地番検索サービス」について

名寄帳で実家を構成する土地と建物を漏らさず拾う

実家の土地と建物を漏れなく拾うには、市区町村の「名寄帳(なよせちょう)」を取るのが近道です。

実家は「宅地1筆+建物1棟」で収まるとは限らず、前面道路の私道の持分、裏の畑、離れ、物置、隣接する空き地など、複数の地番と家屋番号に分かれている例がよくあります。

実家の名義調べでいちばん多い抜けは、宅地1筆だけ登記簿を取って「名義は確認した」と思ってしまうことです。

名寄帳は、市区町村が持つ固定資産課税台帳を所有者ごとにまとめた一覧です。その市区町村内でその人が持っている土地・建物がすべて並びます。

納税通知書には出てこない非課税の私道や、評価額が小さすぎて課税されていない土地も、名寄帳には載ります。経験者からは「父の名寄帳を取ったら、聞いたこともない山林と道路の持分が出てきて驚いた」という声も聞きます。

名寄帳は、不動産がある市区町村の税務課(東京23区は都税事務所)で取れます。手数料は自治体によりますが数百円程度で、1年度1通ごとに300円としている自治体もあります。

窓口に行く前に確認したい条件は次のとおりです。

  • 親が存命で同居している場合は、本人確認書類だけで取れる自治体が多いです。同一世帯の親族を納税義務者と同じ扱いにしているためです。
  • 親が存命で別居している場合は、親の委任状が必要です。
  • 親が亡くなった後は、相続人であることを示す戸籍(親の死亡と自分との関係が分かるもの)が必要です。
  • 名寄帳は市区町村ごとの管理なので、別の市区町村に不動産があれば、そちらでも別に取ることになります。

細かい条件は自治体ごとに違うので、行く前にホームページか電話で確認すると二度手間を防げます。

名寄帳を取ったら、載っている地番と家屋番号をすべて書き出して、それぞれの登記簿を取っておきましょう。宅地以外の小さな筆ほど、名義が祖父のままになっている例が多いからです。

出典: 鹿児島市 土地・家屋の名寄(なよせ)の写しが必要なのですが。、東京都主税局 【土地・家屋】相続人・受遺者|固定資産に関する証明等(23区内)

所有不動産記録証明書で名義人の氏名から全国の登記を探す

2026年2月2日から、名義人の氏名と住所で全国の登記を横断して探せる「所有不動産記録証明制度」が始まりました。

これまで法務局は名前から不動産を探せない仕組みでした。この制度を使うと、全国の法務局の登記記録を横断して「この人が所有者として登記されている不動産の一覧」を証明書として受け取れます。

請求できるのは、名義人本人、その相続人などの承継人、そしてこれらの人の代理人です。全国どこの法務局でも、オンラインでも請求できます。

手数料は、検索条件1件につき1通あたり、書面請求で1,600円、オンライン請求で窓口受取1,470円・郵送受取1,500円です。

便利な制度ですが、法務省のページに書かれている限界もあります。実家調べの目線で並べます。

  • 登記上の氏名・住所と検索条件が一致した不動産だけが抽出されます。親が引っ越し後に住所変更の登記をしていなければ、登記簿は昔の住所のままで、今の住所で探しても空振りになります。
  • 氏名は前方一致、住所は市区町村までの一致または末尾5文字の一致で検索するため、同姓同名の別人の不動産が混ざることがあります。
  • 対象は所有権の登記がある不動産に限られます。古い実家に多い未登記建物や、保存登記がない表題部だけの建物は対象外です。登記簿がコンピュータ化されていない不動産も抽出されません。
  • 該当する不動産がなかった場合も「該当なし」の証明書が出て、手数料はそのままかかります。
  • 交付までの日数は法務局ごとに違います。法務省は、制度開始当初は2週間程度かかる場合があると案内しているので、急ぐなら請求先に日数を聞いておきましょう。

使い分けの目安はこうです。実家の市区町村が分かっているなら、数百円の名寄帳で済みます。

「親が複数の県に土地を持っているらしいが、どこにあるか分からない」「親の実家の土地が遠方の県にあるらしい」というときに、この証明書の出番です。

請求するなら、親の過去の住所(本籍や住民票の除票で分かる旧住所)を検索条件に加えると、取りこぼしが減ります。

出典: 法務省 所有不動産記録証明制度について、新潟地方法務局 令和8年2月2日スタート!「所有不動産記録証明制度」について

登記事項証明書を取得する方法

地番と家屋番号が分かれば、登記簿は法務局の窓口・オンライン請求・閲覧サービスの3つの手段で取れます。

選ぶ基準は「証明書という紙が必要か、名義が見られれば済むか」です。

手段費用(1件あたり)受け取り方かかる時間
法務局の窓口で請求600円その場で紙の証明書空いていれば10〜20分程度
オンライン請求(登記・供託オンライン申請システム)窓口受取490円/郵送受取520円法務局で受け取るか郵送郵送なら数日〜1週間程度
登記情報提供サービス(民事法務協会)で閲覧所有者事項140円/全部事項330円PDFを画面で見る・保存即時

※手数料は2026年10月時点の法務省・民事法務協会の公式ページの金額です。登記事項証明書の手数料は2025年4月1日から適用されている金額で、閲覧サービスの料金は改定されることがあります。利用前に公式ページで確認すると安心です。※閲覧サービスは内容を見るための仕組みで、法務局が発行する証明書とは別の扱いになります。

名義を知りたいだけなら、いちばん下の閲覧サービスの「所有者事項」140円が最安・最速です。親族との話し合いや手続きで証明書の提出を求められたら、上の2つで紙の証明書が要ります。

法務局の窓口で請求する

法務局の窓口は、全国どこでも使えます。

実家が遠方にあっても、自分の最寄りの法務局で管轄外の不動産の登記事項証明書を請求できます。「現地に一度も行かずに、自宅近くの法務局で実家の登記簿を全部取れた」という経験者の声もあります。

窓口では「登記事項証明書交付請求書」という用紙に、不動産の所在と地番(建物なら家屋番号)、証明書の種類、通数を書き、600円分の収入印紙を貼って出します。収入印紙は法務局の中で買えます。

身分証も印鑑も不要で、請求の理由を書く欄もない用紙です。

経験者の声:住居表示を書いて取り直した

「請求書の地番の欄に、住居表示の『〇丁目〇番〇号』をそのまま書いてしまい、窓口で『この住所では探せません』と言われて書き直しました」(初めて法務局の窓口で請求した方)法務局が探せるのは地番だけです。課税明細書や名寄帳の地番を、そのまま書き写しておきましょう。

土地と建物は別の不動産なので、請求書には土地と建物を別々に書き、手数料も別々にかかります。土地が3筆、建物が1棟なら4件分です。

混んでいなければ10〜20分ほどで受け取れますが、月末や年度末は待ち時間が長くなります。

出典: 盛岡地方法務局 土地・建物の登記事項証明書、法務省 登記手数料について

オンライン請求で自宅に郵送してもらう

法務局に行く時間が取れない人は、法務省の「登記・供託オンライン申請システム」から請求できます。

以前は「かんたん証明書請求」と呼ばれていたメニューで、現在は「かんたん登記・供託申請」という名前に変わっています。電子証明書は不要で、申請者情報の登録(メールアドレスなどの登録)をすれば使えます。

費用は、法務局の窓口で受け取るなら490円、自宅に郵送してもらうなら520円で、窓口で直接請求する600円より安くなります。手数料はインターネットバンキングやペイジー対応のATMで納めます。

郵送受取なら、遠方の実家の登記簿が自宅に届きます。実家の近くにも最寄りの法務局にも行かずに済むのが利点です。

利用時間は、公式サイトの案内では平日8時30分〜23時、休日8時30分〜18時(年末年始を除く)です。以前は平日の8時30分〜21時までで、土日祝日は使えない仕組みでした。

郵送受取の場合、届くまでに数日から1週間ほどかかります。急ぎなら、オンラインで請求しておいて最寄りの法務局で受け取る方法(490円)が、費用も時間も有利です。

出典: 法務省 登記・供託オンライン申請システム、法務省 登記手数料について

登記情報提供サービスで閲覧だけ済ませる

「紙の証明書はいらない、誰の名義かを今すぐ知りたい」という人には、一般財団法人民事法務協会の「登記情報提供サービス」がおすすめです。

法務局の登記記録と同じ内容を、インターネット上でPDFとして閲覧できるサービスです。

事前の利用申込をせずに使える「一時利用」があり、メールアドレスを登録して期限付きのIDを受け取り、クレジットカードの即時決済で請求します。

登記情報を請求できるのは初回ログインをした当日中だけなので、まとめて調べる日を決めて使うとよいでしょう。

料金は、所有者事項(登記上の名義人の住所・氏名・持分だけ)が140円、全部事項(登記記録の全部)が330円です。

名義を知るだけなら所有者事項で済みます。実家の土地が3筆、建物が1棟でも、合計560円で全部の名義が分かる計算です。

このサービスには、紙の証明書より有利な点がもうひとつあります。前面道路の私道のように共有者が何十人もいる土地は、全部事項を取ると何ページにもなり、紙では読むのも大変です。

先に140円の所有者事項で「誰と誰の共有名義か」の当たりを付けてから、必要な分だけ全部事項を取ると無駄を省けます。

利用時間は平日8時30分〜23時、土日祝日8時30分〜18時で、年末年始は休みです。閲覧した画面は保存や印刷ができるので、親族間の話し合いの資料としては十分です。

ただし証明書としての効力はないので、役所や金融機関から登記事項証明書の提出を求められたときは、法務局の証明書を取り直すことになります。

出典: 民事法務協会 登記情報提供サービス サービス概要、民事法務協会 登記情報提供サービス 一時利用 申込

全部事項証明書を選ぶ理由

法務局の証明書を請求するときは、現在事項ではなく「全部事項証明書」を選ぶと、実家の名義の来歴まで分かります。

種類を選ぶ欄には主に「全部事項証明書」と「現在事項証明書」の2つがあり、現在事項は「今有効な登記だけ」、全部事項は「過去の抹消済みの登記も含めた全部」です。迷ったら全部事項を選んでおきましょう。

理由は、手数料が同じ600円なのに、全部事項のほうが情報が多いからです。過去の所有者の変遷(祖父から父へいつ相続されたか)と、抹消済みの抵当権(昔の住宅ローンが完済されているか)まで載ります。

現在事項を選ぶと、この来歴の部分が丸ごと省かれます。

登記情報提供サービスで閲覧する場合も同じです。名義だけなら所有者事項で済み、「いつから親の名義なのか」「祖父の相続はちゃんと済んでいるのか」まで見たいなら全部事項(330円)で確かめられます。

最後に、請求の単位について2点補足します。土地と建物は別々に請求するのが基本です。

分譲マンションの場合は、建物の登記に「敷地権」として土地の持分が載っているので、建物の登記簿を1通取れば土地の持分まで分かる例がほとんどです。

一戸建ての実家なら「土地の筆の数+建物の棟数」の分だけ請求する、と覚えておくと迷わずに済みます。

出典: 法務省 登記手数料について、民事法務協会 登記情報提供サービス サービス概要

登記事項証明書で名義と持分を読み取る方法

登記事項証明書は「表題部→甲区の一番下→持分の分数→下線→原因欄」の順で読むと、名義と持分を間違えずに読み取れます。

証明書は上から「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」の順に並んでいます。表題部はその不動産が何か(所在・広さなど)、甲区は所有者(名義)、乙区は抵当権などの所有権以外の権利です。

登記事項証明書を読む順序
  1. 表題部で、実家の土地・建物と一致しているか照合する
  2. 甲区の一番下の行を見る
  3. 持分の分数を読む
  4. 下線の有無を見る
  5. 原因欄で来歴を読む

見本として、架空の土地の登記事項証明書を表にしました。氏名・住所・地番はすべて架空です。

見本(土地)の表題部

所在A市B町
地番地目地積(㎡)原因及びその日付
100番1宅地165.28100番から分筆(昭和50年3月1日)

見本(土地)の権利部(甲区)所有権に関する事項

順位番号登記の目的受付年月日・受付番号権利者その他の事項
1所有権移転昭和50年3月10日 第1234号原因 昭和50年3月1日売買<br>所有者 A市B町100番地1<br>山田一郎(仮名)
2所有権移転平成20年6月5日 第5678号原因 平成20年1月15日相続<br>共有者 A市B町100番地1<br>持分2分の1 山田太郎(仮名)<br>C市D町2番地<br>持分2分の1 山田次郎(仮名)
3山田次郎持分全部移転平成25年9月1日 第9012号原因 平成25年8月20日贈与<br>所有者 A市B町100番地1<br>持分2分の1 山田太郎(仮名)

※実物では、抹消された記載(この見本なら順位番号1の所有者と、順位番号2の山田次郎の持分)に下線が引かれます。※建物の表題部は、所在・家屋番号・種類(居宅など)・構造(木造瓦葺2階建など)・床面積の欄になります。甲区の形は土地と同じです。

表題部で実家の土地と建物に一致しているか照合する

最初に見るのは、名義ではなく表題部です。

取った証明書が本当に実家の土地・建物のものか、ここで確認します。隣の筆や別の棟の証明書を取ってしまう取り違えは、意外なほどよく起きます。

照合する欄は次のとおりです。

  • 土地は「所在」「地番」「地目(宅地・畑・山林など)」「地積(面積)」
  • 建物は「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」

これらを、課税明細書や名寄帳の記載と突き合わせます。地番が合っていても地積が課税明細書とまったく違うなら、分筆や合筆があった可能性があり、別の筆を取っている疑いがあります。

見本では「100番1」が「100番から分筆」されたことが原因欄に書かれていて、昔は「100番」というひとつの土地だったことが分かります。

建物の場合は、床面積が課税明細書より小さいことがあります。増築した部分が登記されていないサインで、見つかりやすい問題の「建物や増築した建物が登記されていない」につながります。

表題部の段階で「あれ?」と思ったことは、メモしておきましょう。

出典: 法務省 不動産登記のABC

甲区の一番下の所有者が登記上の名義人になる

権利部(甲区)の一番下の順位番号に書かれている人が、登記上の名義人です。

甲区は所有権の記録で、所有者が変わるたびに順位番号1、2、3と下に増えていきます。登記簿は上から読むと古い名義人から出てくるので、名義を知りたいときは一番下から読んでみてください。

経験者の声:一番上の祖父の名前に青くなった

「初めて登記簿を取ったら、甲区の一番上に祖父の名前があって、まだ祖父の名義なのかと青くなりました。よく見ると祖父の記載には下線が引かれていて、一番下の行は父でした」(父の相続で初めて登記簿を取った方)

見本では、順位番号1が山田一郎(仮名)、順位番号2で山田太郎と山田次郎(いずれも仮名)の共有名義、順位番号3で山田次郎の持分が山田太郎に移っています。登記上の名義人は山田太郎(仮名)です。

名義人の住所も「権利者その他の事項」に載ります。この住所は登記をした当時の住所で、引っ越し後に本人が変更登記をしない限り昔のまま残ります。

住所が今の住所と違っていたら、名義とは別に「登記上の住所や氏名が古いままになっている」問題に当たります。

出典: 法務省 不動産登記のABC

持分の分数で共有者ごとの割合を読む

「権利者その他の事項」に「共有者 持分2分の1 〇〇」のように分数が付いていれば、その不動産は共有名義です。

分数が誰にも付いておらず「所有者 〇〇」とだけ書かれていれば、単独所有です。

持分を読むときの注意点が3つあります。

ひとつ目は、同じ人の持分が複数の行に分かれていることがある点です。見本の山田太郎(仮名)は、順位番号2で2分の1、順位番号3で2分の1を取得していて、合計すると1分の1(全部)です。

登記簿には合計が書かれないので、同じ名義人の持分を自分で足して読みます。持分が「2分の1」と「4分の1」に分かれていれば合計4分の3、というように分母をそろえて計算すると合計が出ます。

ふたつ目は、分譲マンションの土地の持分の読み方です。マンションは建物の表題部に「敷地権の割合」(10000分の123のような分数)という欄があり、これが土地に対する持分です。

甲区には土地の持分が載らないので、表題部の敷地権の割合を見てみてください。

三つ目は、共有名義が分かったときの意味です。共有名義の不動産は、売却や解体、担保に入れることに、共有者全員の同意が必要になります。

持分が10分の1でも、その人の同意なしには進められません。持分の分数と共有者の名前を見つけたら、「この人たち全員の合意が必要な不動産」と読み替えておきましょう。

下線が引かれた記載は抹消済みの過去の記録になる

登記事項証明書で文字に下線が引かれている箇所は、「抹消された記載」です。

現在は効力がない過去の記録で、昔の所有者の名前や、消えた持分、完済して抹消された抵当権などに下線が付きます。

全部事項証明書には、この抹消済みの記載がそのまま残っています。下線を見落とすと「祖父の名義がまだ残っている」「叔父との共有名義だ」と読み違えます。

逆に、祖父の名前に下線がなく、その下に新しい所有者の行がなければ、本当に祖父名義のままだという意味です。

下線のある記載は「過去の履歴」として役に立ちます。誰から誰へ、どんな順で名義が移ってきたかが分かるので、親族間で「この土地は本来おじさんのものだったはずだ」という話が出たときに、登記簿の履歴で確かめられます。

原因欄で名義が移った時期と理由を読む

「権利者その他の事項」の先頭にある「原因」を読むと、実家の名義がどういう経緯で今の形になったかが分かります。

原因には「昭和50年3月1日売買」「平成20年1月15日相続」「平成25年8月20日贈与」のように、名義が移った理由と日付が書かれています。

実家調べで特に見てほしいのは、次の2点です。

  • 「相続」の日付が、亡くなった人の死亡日と一致しているか。祖父の死亡日より何年も後に相続登記がされていれば、その間は祖父名義のまま放置されていたことが分かります。祖父が亡くなったはずなのに「相続」の登記自体がなければ、相続登記が済んでいない状態です。
  • 「贈与」で兄弟・姉妹や親族に持分が移っていないか。親が生前に特定の子へ持分を贈与していると、原因欄に「贈与」として残ります。相続のときに初めて知ると親族間の火種になるので、早めに把握しておくと話し合いの準備ができます。

甲区には、所有権の移転以外の記載が出ることもあります。「差押」「仮差押」「仮登記」といった言葉があれば、名義とは別の問題(税金の滞納や、売買の予約など)を抱えているサインです。

見つけたら、名義の確認とは分けて専門家に相談してみてください。

最後に、証明書の末尾には「これは登記記録に記録されている事項の全部を証明した書面である」という文とともに証明日が書かれています。

親族の手元から古い謄本が出てきたときは、その証明日以降に名義が変わっている可能性があるので、話し合いの前に取り直しておきましょう。

実家の名義を調べると見つかりやすい問題

実家の登記簿を取ると、「名義が親ではなかった」「親だけではなかった」「登記がそもそもなかった」という問題がよく見つかります。

これらは調べたから見つかったのであって、調べなければ売却の直前や相続の期限の間際に発覚します。早く知るほど、話し合いの時間も選択肢も残ります。

見つかることの多い問題を5つ、「登記簿のどこに出るか」「何が止まるか」「放置するとどうなるか」の順で短くまとめます。

  • 祖父母の名義のまま相続登記が済んでいない
  • 登記上の住所や氏名が古いままになっている
  • 建物や増築した建物が登記されていない
  • 前面道路の私道持分が別の名義で残っている
  • 完済した住宅ローンの抵当権が残っている

祖父母の名義のまま相続登記が済んでいない

甲区の一番下が祖父や祖母の名前で、下線が引かれていない状態です。

親の代の相続登記がされないまま、親も高齢になっているパターンです。宅地は親の名義でも、隣の畑や裏の山林だけ祖父名義のまま、ということが実家では特によくあります。

止まるのは、売却・解体・担保設定のすべてです。祖父の相続人は、祖父の子全員とその代襲相続人になるので、叔父や叔母、すでに亡くなっていればその子どもまで関係者が広がり、十数人になることもあります。

経験者の声:隣の畑が祖父名義だった

「宅地は父の名義でしたが、隣の畑だけが祖父の名義のままで、叔父・叔母とその子ども全員の判子を集めることになりました。会ったこともないいとこに手紙を書くところから始めました」(父の相続で実家を引き継いだ方)こうなると、手続きを始める前の連絡だけで時間も気力もかかります。

放置した場合のルールも変わりました。2024年4月1日から相続登記は義務になり、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に登記をしないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になります。

2024年4月1日より前に発生した相続についても対象で、2027年3月31日までに登記が必要です。

すぐに遺産分割の話し合いがまとまらない場合は、「相続人申告登記」という制度があります。自分が登記簿上の所有者の相続人であることを法務局に申し出る手続きで、相続人それぞれが申し出ができ、これで登記の義務は果たしたことになります。

ただし、あくまで期限内に義務を果たすための手段で、売却や担保設定の前には相続登記が要ります。

出典: 法務省 相続登記の申請義務化特設ページ、鹿児島地方法務局 相続登記のご案内

登記上の住所や氏名が古いままになっている

甲区の名義人の住所が親の昔の住所だったり、氏名が結婚前の旧姓のままだったりする状態です。

名義自体は親なので一見問題なさそうですが、売却のときには「登記簿の人と今の親が同一人物である」ことを示すために、先に住所や氏名の変更登記をする必要があります。

住所を何度も移していると、つながりを示す書類を集めるだけで時間がかかります。

もうひとつの影響が、所有不動産記録証明書です。登記上の住所と検索条件が一致した不動産だけが抽出されるので、住所が古いままだと「今の住所で探したのに出てこない」ということが起きます。

ルールの面でも、2026年4月1日から住所や氏名の変更登記が義務になりました。変更から2年以内に登記しないと、正当な理由がない限り5万円以下の過料の対象です。

2026年4月1日より前の変更も対象で、2028年3月31日までに登記が必要です。登記簿の住所が今の住所と違っていたら、名義の確認とあわせて親に伝えておきましょう。

出典: 法務省 住所等変更登記の義務化について、法務省 所有不動産記録証明制度について

建物や増築した建物が登記されていない

課税明細書や名寄帳には載っているのに、法務局で家屋番号を指定して請求すると「該当なし」と返ってくる状態です。

古い実家、増築した部分、離れ、物置、車庫などに多く、市区町村は実態を見て課税しているのに、法務局には記録がないという食い違いが起きています。

「登記簿の床面積が課税明細書より小さい」ケースも、増築部分が未登記であるサインです。

未登記のままだと、売買、相続登記、担保設定がそのままでは進みません。

相手方や金融機関から「まず登記を済ませるように」と言われ、土地家屋調査士に依頼して表題登記(建物の物理的な情報を初めて登記すること)から始めることになります。

そのうえで所有権保存登記をして、ようやく名義が登記簿に載ります。

未登記建物は、名義を「調べる」段階では登記簿に何も出てこないので、見落としやすい問題です。課税明細書や名寄帳にある家屋番号と、法務局で取れた建物の数が合っているかを数えてみてください。合わなければ、どれかが未登記です。

前面道路の私道持分が別の名義で残っている

分譲地に建った実家に多い問題です。

宅地の名義は父に変わっているのに、前面道路の私道の持分だけ祖父の名義のまま、あるいはそもそも実家に私道の持分がない、という状態です。私道は非課税のことが多く、納税通知書に出てこないので、親も存在を忘れています。

経験者からは「私道の1筆だけが曾祖父の名義のままで、分譲した当時の所有者まで遡ることになった」という声も聞きます。

私道の持分は、建て替えや売却の場面で問題になります。前面道路が私道の場合、再建築の許可や上下水道の工事で私道所有者の承諾が必要になることがあります。

持分がないか祖父名義のままだと、承諾を取る相手や手続きの前提から整え直すことになります。

買い手や金融機関は私道の持分の有無を確認するので、売却の直前に発覚すると話が止まります。

見つけ方は名寄帳です。非課税の私道も名寄帳には載るので、宅地以外に小さな地番があれば、それが私道の可能性があります。

名寄帳に出てこない場合は、法務局で宅地の公図(地図または地図に準ずる図面。窓口で1通500円)を取ってみてください。公図には土地の区画と地番が描かれているので、宅地に接する道路の筆に地番が振られていれば、その地番の登記簿を取ると所有者が分かります。分譲時の資料(売買契約書・分譲図面)も手がかりになります。

私道の登記簿は共有者が何十人もいることがあるので、所有者事項の閲覧で先に当たりを付けると無駄を省けます。

出典: 盛岡地方法務局 土地・建物の地図・図面など

完済した住宅ローンの抵当権が残っている

権利部(乙区)に古い抵当権が、下線なしで残っている状態です。

親が何十年も前に完済した住宅ローンでも、抹消の登記は自動では行われず、名義人が自分で申請しないと登記簿に残り続けます。「完済したから終わり」と思って抹消を忘れている実家もあります。

抵当権が残っていても、所有権(名義)はそのままです。名義を調べる目的なら、甲区だけ見れば答えは出ます。

ただし売却のときには、買い手は抵当権が付いたままの不動産を避けるので、先に抹消登記が必要になります。抹消には金融機関から受け取る書類が必要で、その金融機関が合併や消滅をしていると、書類を揃えるだけで時間がかかります。

乙区に抵当権の記載があり、下線が引かれていなければ「登記簿上はまだ残っている」という意味です。

完済しているはずなら、親の手元に金融機関から受け取った抹消用の書類(解除証書や弁済証書といった登記原因証明情報、委任状など)が残っていないか探してみてください。見つかれば、名義の確認とあわせて早めに片づけられます。

出典: 法務局 住宅ローン等を完済した(抵当権抹消の登記をオンライン申請したい方)

まとめ:実家の名義は登記簿の甲区の一番下で確かめる

実家の名義は、親の言葉でも権利証でも納税通知書でもなく、法務局の登記簿の甲区の一番下に書かれた人で決まります。登記簿は誰でも取れ、閲覧なら所有者事項140円で名義と持分まで分かります。

次の一歩は、固定資産税の課税明細書か名寄帳で地番と家屋番号を全部書き出し、土地と建物の両方の登記簿を取ることです。宅地1筆だけで済ませると、祖父名義のままの畑や私道の持分が相続や売却の直前に見つかり、親族全員の判子集めから始めることになります。

名義が分かったら、次は登記上の住所が今の住所と合っているか、乙区に古い抵当権が残っていないかを確かめてみてください。実家と相続の地図帳「つぐーる」では、実家の名義の調べ方や登記事項証明書の読み方も含めて、相続や実家について悩むあなたに経験に基づいた情報を提供しています。