親族以外の人に貸していた、または無償で住まわせていた実家について、契約や許可が終わったことまでは確認できたものの、その人が今も住んでいて、この先どう考えればよいのか迷っていませんか。
実家の相続において、「もう終わっているはずだ」という認識だけを頼りに次の手を打つと、住んでいる人との話し合いが止まり、確かめられたはずの事実から遠ざかることがあります。
状況が変わるタイミング、思い込みで動いてしまった例、今のうちに確かめて書いておくことの順に説明します。
契約・許可終了後も第三者が居住のケースだと、今後どんな時に状況が変わるのか
実家を貸していた契約や「住んでいてよい」という許可が終わったのに、その人がまだ住んでいる状態です。今はまだ何も動いていなくても、状況が変わるタイミングは2つあります。一つは、終わった後に住み続けることを新しく認めるか認めないかが分かった時です。もう一つは、いつまで住めるかや出ていく条件、新しい契約が決まった時です。
- 終わった後に「新しく認めるか認めないかが分かった時」
- いつまで住めるかや出ていく条件、新しい契約が「決まった時」
終わった後に「新しく認めるか認めないかが分かった時」
最初のタイミングは、元の契約や許可が終わった後で、住み続けることを新しく認めたのか、認めないと伝えたのかが、事実として分かった時です。しばらく待つという猶予が示されたと分かった時も、同じ見直しのタイミングに当たります。まだ何も伝えられていない場合は、認める・認めない・猶予のどれも分かっていない段階です。その段階の間は、元の契約や許可にあたる資料と、住んでいる人とのやり取りの記録を手元で見ておくと、分かった時にすぐ動けます。
認める・認めない・猶予のどれかが分かったら、そこが見直しのタイミングです。認めたのなら、実家は新しい約束のもとで誰かに使わせている家として、考え直すことになります。認めないのなら、退去に向けた話し合いがこれからの中心になります。猶予なら、いつまで待つのかという期限が次の話題になります。
見直す時は、あなたに分かった日と、認める・認めないが決まった日が別物であることに気をつけてください。名義人が半年前に認めないと伝えていて、あなたが最近その事実を知ったのなら、その半年の間のやり取りも確かめ直す必要があります。半年の間に、別の約束や返事が新しく生まれているかもしれないためです。分かった日と決まった日を混同せずに押さえてから、実家の状態を見直すようにしましょう。
いつまで住めるかや出ていく条件、新しい契約が「決まった時」
もう一つのタイミングは、いつまで住めるかの期限や、出ていくための条件、新しく結び直す契約の内容が決まった時です。あなた自身が名義人として、住んでいる人と話し合って決めることもあります。名義人がほかの家族で、決まっていた内容をあなたが後から知ることもあります。
どちらの形でも、内容が決まったら、そこが見直しのタイミングです。やることは、これまでに集めた記録と、新しく決まった内容を別々に書き留めて、実家の今の状態を見直すことです。元の記録の上へ新しい内容を書き足すと、どの条件がいつから続いているのかを、後から区別できなくなります。原則は一つで、元の記録には上書きしないことです。
まずは決まった中身を要約せず、そのままの言葉で書き留めてください。
【落とし穴】契約・許可終了後も第三者が居住の人で、実際に起こりうるケースを紹介
一つの事実だけを根拠にした思い込みからは、契約・許可・権利の結論を出さないでください。
- 書面がないので終了条件もなかったと思った
- 契約期間が終わったので家財や鍵を処分できると思った
書面がないので終了条件もなかったと思った
書面がないので終了条件もなかったと思った、という落とし穴にハマった例を紹介します。
特定の一つの出来事ではなく、書面がないことを終了の条件もなかったことと取り違えてしまう、起こりやすい形の例です。
実家の持ち主だった親は、2010年代の半ばごろから、知人の夫婦に実家を無償で使わせていました。契約書はなく、「ご主人の資格取得が終わるまで」という趣旨の話が、口頭で交わされていただけでした。
4年ほど後にご主人は資格を取りましたが、夫婦はそのまま住み続けました。実家を引き継いだ家族は、契約書がないのだから終了の条件も決まっていなかったはずだと思い込み、期限の話には触れないまま退去の話し合いを始めました。
話し合いは平行線のまま、1年近くが過ぎました。その間に、当時の話を直接知る人の記憶は薄れ、夫婦との関係もこじれていきました。「資格取得が終わるまで」という話があったのかどうかは、確かめられないままになりました。
家族が失ったのは、終了の条件があったかどうかを確かめる機会そのものでした。
この例から学べることをまとめます。
- 書面がなくても、終了条件の合意はあり得ます
- 口頭の約束も、記憶が新しいうちなら、当時のやり取りと出来事の日付から確かめられます
- 確かめないまま進めると、示せたはずの事実が遠のきます
民法では、契約は書面を作らなくても成立し得るとされています。無償で使わせる約束でも、「いつまで」という合意が口頭で交わされていれば、それが終了の条件として働くことがあります。
書面がないという一点だけを根拠に「条件もなかった」と決めてしまうと、この例のように、時間と、相手との関係と、確かめられたはずの事実を順に失っていきます。書面がないことは、確かめる作業の始まりであって、結論ではありません。口頭の合意がどこまで認められるかは、当時の事実がそろってから、専門家に見てもらいましょう。
参照: e-Gov法令検索「民法」
契約期間が終わったので家財や鍵を処分できると思った
契約期間が終わったので家財や鍵を処分できると思った、という落とし穴にハマった例を紹介します。
特定の一つの出来事ではなく、契約期間の満了という事実だけで手を動かしてしまう、起こりやすい形の例です。
実家は、父の代から親族以外の人に貸されていました。父が亡くなった後、契約書を確かめた家族は、書かれていた期間がすでに終わっていることに気づきました。
期間が終わったのだから契約も終わり、もう住み続ける理由はないはずだと家族は考えました。そこで、住んでいる人の留守中に合鍵で立ち入り、玄関の鍵を替え、残っていた家財を運び出す準備を始めました。
住んでいる人からは、「期間が終わった後も、お父さんに住んでいてよいと言われていた」という話が出ました。鍵を替えられたことへの反発も重なり、退去の話し合いそのものが止まってしまいました。
期間の満了という事実は確かでも、鍵や家財を動かしてよいかどうかは、まだ確かめられていませんでした。
この例から学べることをまとめます。
- 契約期間の満了と、その後の扱いは別の話です
- 終わった後のやり取りを、鍵や家財より先に確かめます
- 鍵や家財に一方的に触れると、話し合いにも事実の確認にも戻りにくくなります
期間が終わった後に、住み続けることを認める話や、新しい約束が口頭で交わされていることがあるためです。建物の賃貸借では、期間が終わった後もそのまま住み続けている場合に、契約が続いたものと扱われることがあると法律で定められており、満了という一つの事実だけで全てが終わるとは限りません。
鍵や家財は、住んでいる人の生活と持ち物に直接触れます。一度動かすと、話し合いへ戻ることが難しくなるだけでなく、部屋や家財の元の状態という、当時の約束を確かめる手がかりも失われます。鍵や家財を動かす前に、元の契約と終了後のやり取りを並べ、進め方は専門家に相談してから判断してください。
参照: e-Gov法令検索「民法」参照: e-Gov法令検索「借地借家法」
今のうちにできること・やっておくとよいこと
今のうちに進められることは、次の5つです。
- 元の契約・許可と終了条件を口頭の合意まで確かめる
- 元の許可を出した人と今の登記上の名義人を確かめる
- 終了後の承認・不承認・猶予と相手の回答を確認する
- 元の合意と終了通知を日付順に並べる
- 鍵・家財・連絡・合意を別々の行に書く
元の契約・許可と終了条件を口頭の合意まで確かめる
最初にやることは、住んでいる人との元の関係が有償の貸し借りだったのか、無償の許可だったのかを確かめることです。あわせて、その関係がどんな条件で終わることになっていたのかを、口頭の合意まで含めて確かめます。契約書のある貸し借りも、口頭だけの許可も、ここから先はまとめて「元の合意」と呼びます。
元の関係の種類によって、終わり方の考え方も、この先確かめる相手も変わります。有償の貸し借りなら、契約書、家賃の振込記録、更新の書類が手がかりになります。無償の許可なら、許可した時の事情と、「いつまで」「何のために」という趣旨で交わされた言葉を、覚えている人から聞き取ってください。
書面が見つからない場合は、当時のやり取りが分かる手紙やメール、家賃や光熱費の振込記録を、日付が分かる形で手元に集めましょう。
集める時は、終了を示す事実も一緒に確かめてください。期間満了の記載、終了を伝えた通知、「いつまで」という条件が満たされた出来事が、それに当たります。集めた資料が法律上どんな契約に当たるのかの評価と、資料を追加で取り寄せる詳しい手順は、集めたものを持って専門家に相談しながら進めてください。
参照: e-Gov法令検索「民法」
元の許可を出した人と今の登記上の名義人を確かめる
二つ目にやることは、元の契約や許可を出した人と、今の登記上の名義人が同じかどうかを確かめることです。
同じなら、住み続けることを認めるかどうかの話は、その人を相手に確かめていけます。違うなら、承認について誰に確かめるのかが変わります。許可を出した親が亡くなり、実家が別の人へ引き継がれているなら、亡くなった親の言葉を確かめるだけでは済まず、いまの名義人がどう考えているのかまで確かめる必要があります。
家族の誰かが、住んでいる人に対して、終了や承認・不承認を伝えていた場合は、その伝えた家族が登記上の名義人だったのかも確かめてください。名義人でない家族が伝えていたのなら、名義人も同じ内容を住んでいる人へ伝えたのかどうかを確かめ直します。伝えた家族がすでに亡くなっているのなら、その人の言葉だけに頼らず、当時の振込や手紙、当時を知る人の記憶と突き合わせて確かめてください。
登記記録から分かるのは、登記上の名義人が誰かというところまでです。名義の調べ方や、名義を引き継ぐ手続の中身へ、この段階で踏み込む必要はありません。ここでは、許可を出した人と名義人が同じかどうかと、違う場合に次へ確かめる相手が誰なのかを、書き留めるところまで進めてください。
終了後の承認・不承認・猶予と相手の回答を確認する
三つ目にやることは、元の契約や許可が終わった後に、住み続けることへの承認・不承認・猶予がどのように伝えられ、相手が何と答えたのかを確かめることです。
終わった後のやり取りしだいで、実家がいまどの状況に当たるのかは変わります。名義人が「このまま住んでよい」と認めたのか、「認めない」と伝えたのか、「次が決まるまでは待つ」と猶予を示したのか、それとも何も伝えていないのかを、一つずつ確かめてください。伝えた側の記憶だけで決めず、住んでいる人が何と答えたのか、家賃や振込の動きがどうだったのかも合わせて確かめます。こうして分かった承認・不承認・猶予は、五つ目に作る表の「合意」または「連絡」の行へ書けます。
住んでいる人から家賃相当の支払いの申し出があった時は、受け取るかどうかを決める前に、申し出があった事実と日付を書き留めてください。これからの伝え方や交渉の進め方は、その記録を持って専門家に相談してから決めるようにしましょう。
元の合意と終了通知を日付順に並べる
四つ目にやることは、ここまでで確かめた元の合意と終了通知を、日付順に一つの表へ並べることです。
資料どうしの前後関係が分かると、どの合意が生きていた時期にどの通知が出たのかを、記憶に頼らずに追えます。並べる時は、確かめた結果として決まっていなかった欄に「定めなし」、まだ調べていない欄に「未確認」、その資料にもともと無い欄に「該当なし」と書き分けてください。この書き分けがあると、次に調べる場所を表の中から拾えます。
例に挙げるのは、親が貸していた実家を家族が引き継ぎ、終了の通知まで済ませた家の記録です。表は1行が資料1点を表し、元の合意と終了通知を区分の欄で示して、日付の分かるものから順に並べます。
| 資料の区分 | 当事者 | 使用範囲 | 期間 | 終了条件 | 日付 | 保管場所 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 元の合意 | 親と住んでいる人 | 建物全体 | 2016年4月から2年 | 期間満了で終了と記載 | 2016年4月 | 実家の金庫の契約書 |
| 元の合意 | 親と住んでいる人 | 建物に加えて庭の物置も使う | 定めなし | 定めなし | 2018年ごろ | 書面なし・引き継いだ家族の聞き取りメモ |
| 終了通知 | 引き継いだ家族から住んでいる人へ | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 2024年10月 | 通知の控え |
| 終了通知 | 親から住んでいる人へ | 該当なし | 該当なし | 該当なし | 未確認 | 口頭のみ・当時を知る人の記憶 |
| 元の合意 | 親と住んでいる人 | 未確認 | 未確認 | 未確認 | 未確認 | 親宛ての手紙の束 |
並べ終えたら、埋まらない欄には「未確認」と書いたまま、次の確認へ進んでください。
鍵・家財・連絡・合意を別々の行に書く
五つ目にやることは、鍵・家財・連絡・合意を、内容の区分ごとに別の行へ書くことです。
鍵の話と家財の話は、同じ電話の中で一度に出てくることがあります。一つの記録へまとめて書くと、どれが決まっていて、どれがまだ決まっていないのかを、後から確かめ直せなくなります。行を別にしておけば、鍵は鍵、家財は家財として、それぞれの状態と次の確認を追えます。
次の表は、1行が一つの出来事を表します。「鍵」「家財」「連絡」「合意」を内容の区分で分け、今の状態と次に確かめることを書きます。「定めなし」「未確認」「該当なし」の書き分けは、前の表と同じです。
| 内容の区分 | 対象物・対象事項 | 相手 | 日付 | 状態 | 根拠になる資料 | 次の確認 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 鍵 | 玄関の鍵と合鍵の本数 | 住んでいる人 | 2025年1月 | 交換していない・合鍵の本数は未確認 | 元の契約書 | 合鍵が何本あるかを次の連絡で聞く |
| 家財 | 1階和室の家具 | 住んでいる人 | 2025年1月 | 動かしていない | 未確認 | 誰の持ち物かを確かめる |
| 連絡 | 退去時期についての電話 | 住んでいる人 | 2025年2月 | 回答は「探している」・期限は決めていない | 終了通知の控え | 次に連絡する日を決める |
| 合意 | 退去までの家財の扱い | 住んでいる人 | 未確認 | まだ話していない | 該当なし | 話す前に専門家に相談する |
| 連絡 | 家賃相当の支払いの申し出 | 住んでいる人 | 2025年2月 | 受け取っていない・返事は保留 | 未確認 | 受け取るかどうかを決める前に専門家に相談する |
表へ書いた内容は、いつ・誰と・何がどうなったのかを後から確かめ直すための手がかりになり、専門家に相談する時にもそのまま持って行けます。
まとめ:「終わっているはず」だけで鍵や家財を動かさない
いちばん重い答えは、元の関係がどう終わり、その後に何が決まったのかを確かめ、「終わっているはずだ」という認識だけで家財や鍵を動かさないことです。
次の一歩は、元の契約や許可と、終了の条件を確かめることです。ここを飛ばすと、実家がいまどの状況に当たるのかを取り違え、確かめる相手も集める資料も間違えたまま進んでしまいます。
まずは、元の契約や許可にあたる資料や、当時のやり取りが分かるものを一つ手に取り、終了の条件がどう決められていたのかを確かめるところから始めてください。
つぐーるでは、契約や許可が終わった後も親族以外の人が住み続けている実家の確かめ方も含めて、実家の将来をこれから考えるあなたに信頼できる情報を提供しています。

