介護や管理のために実家に住む親族以外の人との約束が分からない人が読むガイド

親の実家には、介護や家の管理のために住み始めた親族以外の人がいて、誰が頼みどんな条件で住んでいるのかまでは確かめられていません。

実家を相続する前に、その人が住み始めた時の約束と、今も続いている役割や居住の条件を確かめておく必要があります。

介護や住み込みという呼び方で関係を決めず、誰に何を確かめれば約束の中身が分かるのかを説明します。

役割に伴う居住・条件不明のケースだと、今後どんな時に状況が変わるのか

住んでいる人との関係がはっきりしないままでも、次のどちらかが確かめられた時に、次に確かめる相手と内容が変わります。

  • 頼んだ人や契約、支払や役割の資料が「見つかった時」
  • 今も役割が続いていることと所有者の承認が「確かめられた時」

頼んだ人や契約、支払や役割の資料が「見つかった時」

親の書き置きや契約書の控え、通帳の振込記録など、頼んだ人や条件が読み取れる資料が出てきた時が、住んでいる人との関係を確かめ直すタイミングです。

資料が見つかったら、書かれている名前と日付を写し取り、それまでの受け止めをいったん横に置きます。資料一枚で関係が決まるわけではありません。決まらなくても、次に誰へ何を聞けばよいのかは、その一枚で絞れます。毎月の振込が見つかったなら、そのお金が何の支払だったのかを、受け取っていた人に確かめる番です。無償で住んでよいと書かれた親の書き置きが出てきたなら、その約束が今も続いているのかを、登記上の名義人に確かめます。

あわせて、資料を確かめた日と、資料に書かれた出来事の日は、手元のメモで別々に控えておきます。見つかった資料から誰に何を聞くのかを言葉にして、次の相手に当たってください。

今も役割が続いていることと所有者の承認が「確かめられた時」

もう一つのタイミングは、役割の継続と所有者の承認の両方が確かめられた時です。役割が今も続いているかは住んでいる本人や介護事業者に、今も住み続けてよいと考えているかは登記上の名義人本人に、それぞれ確かめます。住んでいる本人や事業者が「認められているはずです」と話すだけでは、登記上の名義人の考えはまだ確かめられていません。

両方が確かめられたら、これまでに聞いていたことと、新しく確かめた事実を分けて考えます。役割が続き、登記上の名義人も住み続けてよいと答えたなら、次は今の役割と居住の条件を本人と確かめ合う段階です。

確かめた結果が違うこともあります。役割がもう終わっていたなら、今も住み続けている理由を本人に確かめ、役割が終わった後の話し合いが家族の誰かとあったのかを確かめます。登記上の名義人が認めていないと答えたなら、いつから認めていないのか、その考えを住んでいる人へ伝えたことがあるのかを聞きます。どちらの場合も、誰が何と答えたかまで確かめられれば、次に話す相手を絞れます。

【落とし穴】役割に伴う居住・条件不明の人で、実際に起こりうるケースを紹介

介護のためだから無償の許可だろう、住み込みだから雇用契約もあるはずだ、という思い込みのどちらからも、契約・許可・権利の結論は出せません。

  • 介護のため住んだので無償の居住許可だと思った
  • 住み込みと聞いたので雇用契約もあると思った

介護のため住んだので無償の居住許可だと思った

介護のため住んだのだから無償の居住許可だろうと決めてしまう、という落とし穴にハマった例を紹介します。ここに挙げるのは特定の一件ではなく、起こりうる経過を一つにまとめた例です。

親の介護のために、親族ではない人が実家に住み始めます。家族は「介護をしてもらう代わりに、家賃を取らずに住んでもらっている」と受け止め、書面は確かめないままでした。

親が亡くなり、実家をどうするかの話し合いが始まります。家族は、無償の許可で住んでいるなら時期を見て退去をお願いすればよいと考え、その前提で話を進めかけました。

ところが、親の通帳を整理すると、住んでいる人から親への毎月の入金が見つかります。本人に確かめると、「住まわせてもらう代わりに毎月払う約束だった」という答えが返ってきました。無償の許可という前提は、ここで崩れます。

介護のためという事情だけを見て、お金の流れを確かめていなかったことが、前提が崩れた原因です。この例から学べることをまとめます。

  • 住み始めた事情と住む条件を分けて確かめる
  • 通帳のお金の流れを呼び方より先に確かめる
  • 支払の約束の有無を本人にも確かめる

介護のために住んだという事情だけでは、家賃の有無も、住んでよい範囲も、期間も分かりません。お金の流れを確かめると、無償で住んでよいという話だったのか、毎月の支払を伴う約束だったのかを、次に誰へ聞くべきかが絞れます。毎月の支払が見つかった場合にその約束がどう扱われるかの判断は、集めた事実を持って専門家に確かめてください。

住み込みと聞いたので雇用契約もあると思った

住み込みと聞いたのだから雇用契約もあるはずだと決めてしまう、という落とし穴にハマった例を紹介します。これも特定の一件ではなく、起こりうる経過を一つにまとめた例です。

親が生前、「住み込みで家のことを頼んでいる」と家族に話していました。家族は、親が雇い入れて給料を払っているのだと受け止め、親が亡くなった後は雇い主の立場を引き継げば話し合いを進めやすいと考えていました。

相続が始まり、給料の支払記録や雇用契約書を探しても、それらしい資料が見つかりません。本人に確かめると、「給料はもらっていません。庭の手入れと見回りを頼まれ、その代わりに部屋を使わせてもらう話でした」という答えが返ってきました。

雇っているつもりの家族と、部屋を使う代わりに手伝っているつもりの本人とで、同じ「住み込み」の中身が食い違っていました。

「住み込み」という言葉を、雇用契約の証拠のように扱ったことが、食い違いの出発点です。この例から学べることをまとめます。

  • 聞いた呼び方と本人の言い分を突き合わせる
  • 給料や報酬の支払記録を確かめる
  • 指示していた人と払っていた人を分けて確かめる

住み込みという言葉には、雇われて働きながら住む形も、手伝いの代わりに部屋を使う形も、単に同じ家で寝起きしていた形もあります。どの形かによって、話し合う相手も、確かめる資料も変わります。双方の言い分と支払の記録がそろった段階で、どの約束に当たるかの評価を専門家に確かめてください。

今のうちにできること・やっておくとよいこと

今のうちに進められることは四つあります。

  • 頼んだ人・紹介した人・指示した人・お金を払った人を確かめる
  • 役割と住み始めの時期・条件を資料と本人の話で比べる
  • 契約・勤務・通帳・家族連絡の資料を日付順に並べる
  • 役割の事実と住まいの事実を別々の行に書く

頼んだ人・紹介した人・指示した人・お金を払った人を確かめる

頼んだ人、紹介した人、日々の役割を指示した人、お金を払った人は、同じ人だと決めずに一つずつ確かめます。

  • 住んでほしいと頼んだ人
  • 住む人を連れてきた人や間に立った人
  • 日々の介護や作業の中身を指示していた人
  • お金を払っていた人

この四つの立場は、一人に重なることもあれば、親、親族、介護事業者などに分かれることもあります。お金は、払っていた人と一緒に、受け取っていた人がいたのかどうかまで確かめます。誰が頼んだかが分かると、誰の意向で住み始めたのかが見えてきます。紹介した人と指示していた人を分けて確かめると、その人が引き合わせただけなのか、日々の役割も頼んでいたのかを区別できます。親が存命なら、頼んだ経緯を親本人に聞いてください。

「親が全部やっていたはず」とまとめてしまうと、事業者が間に入っていた形や、親族の一人だけが事情を知っていた形を見落とし、どの根拠で住んでいるのかを取り違えます。一人ずつ確かめ終えてから、時期と条件の照合に進んでください。

役割と住み始めの時期・条件を資料と本人の話で比べる

役割が始まった時期、住み始めた時期、その時の条件を、資料と住んでいる本人の話で比べます。あわせて、当時の持ち主と今の登記上の名義人も確かめます。

  • 役割が始まった時期と住み始めた時期
  • 頼んだ当時の持ち主と今の登記上の名義人
  • 住んでよいと決まった範囲と実際に使っている範囲

三つの組のどれかがずれていたら、そのずれを次に確かめることとして書き留めます。役割より先に住み始めていたなら、住む約束は役割とは別にあったかもしれません。頼んだ親が亡くなって登記の名義が替わっていれば、住むことを認めた人と今の登記上の名義人は別です。二人が違うことを見落とすと、誰に今の承認の中身を確かめるのかが決まりません。最後に、今の登記上の名義人本人へ、今も住み続けてよいと考えているかを確かめてください。

契約・勤務・通帳・家族連絡の資料を日付順に並べる

契約書や覚書、勤務の記録、通帳、家族間のメールや手紙は、一つの表に集めて日付順に見比べられるようにします。次の表で手元の資料を整理します。表の1行は、手元で確かめられた資料1点を表します。

資料の種類(契約・勤務・支払・家族連絡)関係者日付確認できること保管場所
契約親と住んでいる人2023年3月10日住み込みで管理を頼むと書いた覚書があること実家の仏間の引き出し
勤務住んでいる人と介護事業者2023年4月1日〜2025年11月5日訪問介護の記録に住んでいる人の名前が出てくること事業者から受け取った写し
支払親の口座と住んでいる人2023年4月25日から毎月25日決まった額の振込が続いていたこと親の通帳と手元の写し
家族連絡親と兄弟・姉妹2023年3月15日介護を頼んだと家族へ伝えるメールがあること親の携帯電話と印刷した紙

どの種類に入るか迷う資料は、その資料から何を確かめられるかで決めます。たとえば勤務の記録に契約の文言が入っていても、確かめられるのが働いた期間と中身なら勤務に入れ、住む条件が書かれた部分は契約として別の行に立てます。資料が実家と手元と携帯電話に散らばったままだと、同じ約束について資料ごとに別の答えが出ても気づけません。一つの表で日付順に見比べられるようにしておくと、支払の記録と契約の記載が食い違った時に、どちらが後の約束かを日付で確かめられます。一覧を作る段階では、原本を動かせない資料は、写しと保管場所を書いておきます。

役割の事実と住まいの事実を別々の行に書く

集めた資料と聞き取りから分かった事実は、役割と住まいに分け、資料の表とは別のもう一つの表へ書きます。表の1行は、確かめられた事実1件を表します。

事実の種類(役割・住まい)内容関係する人期間情報源確かめた日まだ分からないこと
役割週に数日の介護と家の見回りをしていた住んでいる人2023年4月1日〜2025年11月5日本人の話と介護事業者の記録2026年8月10日頼んだ人が誰か
住まい一階の一室に住み台所と風呂を使っている住んでいる人2023年4月1日〜現在現地で確かめた様子2026年8月10日住んでよいと決まった範囲
役割親の入院の後は見回りだけ続いている住んでいる人2025年11月6日〜現在本人の話2026年8月17日続けてほしいと頼んだ人の有無

同じ人について役割と住まいの両方が確かめられた時も、1件ずつ別の行に書きます。一つの欄に混ぜると、介護が終わった事実が、住む条件まで終わったかのように読めてしまいます。別々の行なら、役割は終わったのに住まいは続いているという食い違いが、そのまま見えます。「まだ分からないこと」に言葉が入った行は、次に確かめる相手への質問になります。確かめた日まで埋まった行がそろったら、二つの表を持って専門家に相談してください。

まとめ:住んでいる人との関係は事実から確かめ直す

いちばん重いのは、介護や住み込みという呼び方ではなく、役割と住まいの約束を関係者の話と資料から別々に確かめることです。

最初の一歩は、頼んだ人・紹介した人・指示した人・お金を払った人を確かめることです。この四つの立場を同じ人だと思い込むと、住み始めた理由と役割の条件を取り違え、確かめる相手もずれてしまいます。

現在確認できる資料を一つ選び、誰に何を確かめるかを書き添えることから始めてみてください。つぐーるでは、介護や管理のために実家に住み始めた人との約束の確かめ方も含めて、実家の将来をこれから考えるあなたに信頼できる情報を提供しています。