査定や建て替えの相談で「セットバックが必要です」と言われても、何cm下がり、どれだけの土地が使えなくなるのかまでは説明されないことがあります。
セットバックは、道の幅4mを確保するために建て替えなどのときに建物や塀を道から下げることで、下がる幅は今の道幅と、役所が基準にする中心線の位置で決まります。
業者の概算と役所で確かめた幅が数十cm違うこともあるため、後退の要否・下がる幅・使えなくなる土地・売却への影響を先に押さえておくと、査定の減額の根拠を自分でも確かめられます。
実家にセットバックが必要になる条件
セットバックの要否は、前面道路が建築基準法42条2項の道路(以下「2項道路」)に指定されているかでほぼ決まり、実際に下がるのは建て替えなど建物を建てるときです。
敷地が都市計画区域の外にあれば、そもそも対象外になります。
前面道路が幅4m未満の2項道路のとき
2項道路とは、幅4m未満の古い道のうち、建築基準法の道路として扱うと役所が指定した道です。
指定の対象になるのは、次の条件をすべて満たす道です。
- 建築基準法の道路の規定が適用された時点ですでにあった
- その時点で、道に沿って建物が建ち並んでいた
- 幅が4m未満だった
- 特定行政庁(建築確認の権限を持つ市区町村や都道府県)が指定した
規定が適用された時点は、多くの市街地では建築基準法が施行された1950年11月23日です。その後に都市計画区域に入った地域では、区域に編入された時点が基準になります。
2項道路では、道の中心線から2mの線が道路の境界線とみなされます。建て替えのたびに両側の敷地が少しずつ下がり、いずれ幅4mの道にしていく仕組みです。
判定の決め手は、見た目の幅でも登記の地目でもなく、役所の指定です。
- 公道か私道かを問わず、指定されることがある
- 登記の地目が「公衆用道路」でも、建築基準法上の道路の種別は別に決まる
- 見た目は4m以上ある道でも、2項道路として幅4m扱いになっている場合がある
たとえば横浜市は、現況の道幅が4m以上あっても、公道部分の幅が4m未満なら2項道路になる場合があると案内しています。アスファルトの端から端まで4mあっても、後退の要否は役所の指定で確かめる必要があります。
なお、幅4m未満で2項道路に指定されていない道は、セットバックではなく、そもそも建物を建てられるかという接道の問題になります。この場合は、再建築の可否として別に確かめておきましょう。
出典: e-Gov法令検索「建築基準法」42条/横浜市「2項道路とは」/横浜市「道路Q&A」/目黒区「建築基準法上の道路種別」
建て替えや増築で建築確認を受けるとき
道路の境界線から下がることが求められるのは、新築・建て替え・増築など、建築確認を受けて建物を建てるときです。
2項道路に面していても、親が住んできた家や今ある塀は、建て替えまでそのまま使い続けられます。
ただし、売却では事情が変わります。買主の多くは将来の建て替えを前提に土地を評価するため、後退で使えなくなる土地の分が、売る側の価格にも響きます。
リフォームの扱いにも注意が要ります。2025年4月に施行された建築基準法の改正で、木造2階建ての住宅などは、大規模な修繕や模様替えにも建築確認が必要になりました。
国土交通省の案内では、階段の架け替えや屋根の全面的な改修などが例に挙がっています。一方、キッチン・トイレ・浴室などの水回りの工事や、手すり・スロープの設置は、この手続きが不要とされています。
国土交通省は、建築確認を受ける際に今の法律に合っていない箇所があれば、別に直す工事が必要になる場合があるとも案内しています。
「リフォームだから道路は関係ない」と決めつけず、工事の内容が決まった段階で役所の建築指導の窓口に聞いておくと、後から工事の範囲が広がるのを防げます。
出典: e-Gov法令検索「建築基準法」6条/国土交通省「木造戸建ての大規模なリフォームに関する建築確認手続について」/国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し」
都市計画区域の外では対象外
2項道路や接道の規定は、都市計画区域と準都市計画区域の内側だけで適用されます(建築基準法41条の2)。
地方の実家で敷地が都市計画区域の外にあれば、そもそもセットバックの対象外です。山あいの集落や郊外の農村部では、区域の外にある土地も見られます。
区域の内外は、市区町村の都市計画課に地番を伝えて聞くか、自治体が公開している都市計画図で確かめられます。
セットバックで下がる幅の決まり方
下がる幅は、どの線から測るかで決まります。
原則は道の中心線から2mですが、向かい側の状況と、中心線をどこに取るかで大きく変わります。角地では、隅切りで空ける面積が上乗せされることもあります。
道路の中心線から2m下がる両側後退
2項道路では、道の両側の敷地が、それぞれ中心線から2mの位置まで下がります(建築基準法42条2項)。
両側で分け合うので、自分の敷地が下がる幅は「4mと今の道幅の差の半分」です。たとえば道幅が3mなら、4mとの差1mの半分、50cmになります。
| 今の道幅 | 自分の敷地が下がる幅 |
|---|---|
| 3.6m | 20cm |
| 3.0m | 50cm |
| 2.7m | 65cm |
| 2.0m | 1m |
つまり、「2m削られる」のは道の中心線からの距離の話で、自分の敷地が失う幅はその一部です。
ただし、特定行政庁が幅6mを基準とする区域に指定した地域では、中心線から3mが原則です。反対に、土地の状況でやむを得ない場合には、中心線から1.35m以上2m未満の範囲で距離を別に指定できる決まりもあります(同法42条3項)。
実家の前の道にどちらかの扱いがあるかは、役所の建築指導の窓口で確かめられます。
後退する面積は、原則として「間口×自分の敷地が下がる幅」で見積もれます。ただ、道が曲がっていたり幅がそろっていなかったりすると、敷地の両端で下がる幅が変わります。
| 例示の仮定値 | 数値 |
|---|---|
| 間口 | 10m |
| 片方の端で下がる幅 | 40cm |
| もう片方の端で下がる幅 | 60cm |
| 後退する面積(台形として計算) | (0.4m+0.6m)÷2×10m=5㎡ |
道の前の一か所だけで測った幅を間口に掛けると、面積がずれることがあります。
向かいが川やがけなら境界から4m下がる一方後退
向かい側が川・水路・がけ・線路などで、そちらに後退を求められない場合は、自分の敷地だけで下がります。
このときの基準は中心線ではなく、川やがけに接する道の境界線です。そこから4mの位置まで下がるため、両側後退の倍の幅になることがあります。
| 例示の仮定値(道幅3m) | 自分の敷地が下がる幅 |
|---|---|
| 両側後退 | 50cm |
| 一方後退 | 1m |
水路が向かいにある場合の扱いには、自治体ごとに細かい基準があります。横浜市は、水路の幅によって2項道路の中心の位置が変わり、水路の幅が2mを超える場合などに一方後退になると案内しています。
実家の前の道がどちらにあたるかは、所在地の自治体の「狭あい道路」の手引きや窓口で確かめておきましょう。
出典: e-Gov法令検索「建築基準法」42条/横浜市「道路Q&A」
基準の中心線は今の道の真ん中とは限らない
下がる幅の見積もりで、もっとも食い違いが出やすいのが中心線の位置です。
後退の基準になる中心線は、2項道路に指定された当時の道の中心や、自治体が過去の協議や近隣の後退の記録をもとに定めた位置です。今のアスファルトの真ん中とは、ずれていることがあります。
横浜市の案内では、公道は原則として公道の中心、私道は原則として基準時の元の道の中心とされています。私道の中心には、土地の境目の中心を取るなど、いくつかの考え方があるとも書かれています。
ずれが出やすいのは、向かいの家がすでに後退して、道が広がっている場合です。
| 例示の仮定値 | 数値 |
|---|---|
| 元の道幅 | 3.0m |
| 向かいの家が後退した幅 | 50cm |
| 今の見た目の道幅 | 3.5m |
| 見た目の道幅から計算した自分の後退幅 | 25cm |
| 元の道の中心から測った自分の後退幅 | 50cm |
今の道幅3.5mから「(4m-3.5m)÷2=25cm」と計算すると、実際より25cm少なく見積もることになります。
熊本市は、向かい側の開発で道の幅が4m以上確保されていても、2項道路の境界はそのまま残り、元の道の中心線から2mの後退が必要だと案内しています。向かいが後退済みの道では、見た目の道幅から計算した幅をそのまま使わないようにしましょう。
不動産会社や知人から聞く「50cmくらい」という幅は、今の道幅から計算した概算であることがあり、目安としては役立ちます。
役所で基準の中心線を確かめると幅が変わることもあるため、査定や建て替えの計画に使う前に確かめておくと、後から計画を組み直さずに済みます。
後退する位置を測るには、道路と敷地の境界(官民境界)が確定している必要があります。東京都港区では、2項道路に接する敷地で新築・増築をする場合、確認申請の前に中心線の判定協議が必要で、決定までおおむね1〜1.5か月かかると案内しています。
出典: 横浜市「道路Q&A」/熊本市「開発行為の区域に接する建築基準法第42条第2項道路の後退方法に注意しましょう」/港区「2項道路中心線の判定協議」
角地で上乗せされる隅切り
実家が二つの道の交わる角にある場合は、セットバックに加えて「隅切り」を求められることがあります。
隅切りとは、交差点の見通しをよくするために、敷地の角を三角形に空けておくことです。条例や指導基準で求める自治体があり、後退と重なると使えなくなる面積がさらに増えます。
代表的な例が東京都建築安全条例2条です。
- 幅がそれぞれ6m未満の道路が交わる角の敷地が対象
- 角を頂点に、底辺2mの二等辺三角形の部分を道路のように整備する
- 道の交わる角度が120度以上なら対象外
角が直角なら、この三角形は底辺2m・高さ1mで、面積は1㎡です。
寸法や要否、後退とどう組み合わせて測るかは、自治体の条例や指導基準で違います。角地の実家では、後退の幅とあわせて隅切りの要否も同じ窓口で聞いておくと、使えなくなる面積をまとめて把握できます。
セットバックで道路扱いになる土地の利用制限
後退する位置より道路側の土地は、自分の名義のまま道路として扱われ、建物を建てることも、私的に物を置いて使うこともできなくなります。
名義は残る一方、固定資産税を非課税にするには所有者からの申告が必要です。
建物・門・塀・擁壁は建てられない
道路として扱われる部分に建てることが禁じられているのは、建物と、敷地を造るための擁壁です(建築基準法44条)。
道路の上に突き出す形で建てることも禁止されています。ここでいう建物には、建物に付いている門や塀も含まれます(同法2条1号)。
道路側に建てられないものは、次のとおりです。
- 家の本体
- 門・門柱・塀
- 敷地を支える擁壁
- ひさし・出窓・バルコニーなど、道路の上に突き出す部分
今ある塀や門は、建て替えまでそのまま残せます。ただし、古くなった塀だけを造り直す場合も、新しい塀は後退する位置の内側に建てる必要があります。
道路と敷地に高低差があり、擁壁で土を支えている実家では、擁壁が後退する範囲にかかると造り直しの工事が大きくなります。建て替えや売却の見積もりで擁壁の扱いが話題になったら、後退する位置との関係を確かめておきましょう。
駐車スペースや花壇にも使えない
道路として扱われる部分は、通行に使われることが前提です。
建物を建てない場合でも、次のような日常の使い方が制限されます。
- 車やバイクを止める
- 自転車置き場にする
- 物置やエアコンの室外機を置く
- 花壇をつくる、植木鉢やプランターを並べる
- 自動販売機を置く
練馬区は、後退した土地は道路なので、植栽・植木鉢・自動販売機などを置くことも、駐車場・駐輪場として使うこともできないと案内しています。ほかの自治体の狭あい道路の案内でも、後退した土地に物を置かないよう求めるのが一般的です。
建て替えのときに後退した帯が、いつの間にか駐車スペースや鉢植え置き場になっている実家もあります。売却の前に片付けておくと、買主から指摘を受けずに済み、固定資産税の非課税の申告にも進みやすくなります。
所有権は残るが固定資産税の非課税には申告が必要
道路として扱われても、自治体に寄付したり分筆したりしない限り、登記上は自分の土地のままです。
登記の名義も登記簿の面積も、後退の前と同じです。
見落とされやすいのが固定資産税です。後退した土地は自動では非課税にならず、所有者が申告し、要件を満たすと認められてはじめて非課税になります。
東京23区では、都税事務所が次の点を確かめて非課税の可否を判断します。
- 道路と敷地の境が、塀・縁石・目地などではっきり区切られている
- 植木や室外機、自動車、自転車などを置いておらず、通行を妨げる物がない
- 一般の通行を禁止する表示や門扉、車止めがない
年内(12月末まで)に申告して要件を満たすと確認されると、翌年4月からの年度の固定資産税・都市計画税が非課税になります。塀やプランターで囲ったままだと、申告しても課税が続きます。
実は、親が建て替えのときに後退を済ませていても、申告をしていなければ、後退した土地にも税金がかかり続けている場合があります。相続を機に、課税明細書の面積と後退の状況を照らし合わせておくと、払わなくてよい税金に気づけることがあります。
要件や申告の方法は市町村ごとに決まっているため、実家のある市町村の税務課(東京23区は都税事務所)で確かめられます。
後退した土地について、次のような制度を設けている自治体もあります。
- 後退した土地の寄付の受け入れ
- 自治体に道路として使ってもらう承諾(無償使用や地上権の設定など)
- 分筆のための測量費や、塀・門の撤去費の助成
練馬区の例では、塀などの撤去や移設の費用に対し、合計150万円と実際に支払った額の少ないほうを上限に助成しています(擁壁の撤去・新設は200万円)。
助成は、撤去工事などの契約を結ぶ日までに申請する決まりです。工事を頼む前に制度の有無を調べておくと、使える助成を逃さずに済みます。
また練馬区では、宅地建物取引業者は助成の対象外とされています。こうした自治体で不動産会社に直接買い取ってもらうと、その会社は助成を使えないため、塀の撤去費の見込みが買取価格に反映されることがあります。
制度の有無は建築指導課や狭あい道路の担当窓口で、税の扱いは税務課で聞いておきましょう。
出典: 東京都主税局「道路非課税の申告をお願いしています」/東京都主税局「道路に対する非課税のご案内」/練馬区「狭あい道路の解消について」
セットバックによる敷地面積と売却価格への影響
後退した土地は建て替えのときの面積の計算から外れ、売却でも後退後の面積で見られます。
一方で登記簿の面積はそのままなので、売る側はこの食い違いに気づきにくくなります。売りに出すときは、広告と重要事項説明でも後退が必要な土地であることを示すよう求められます。
建ぺい率と容積率の計算に使える敷地が減る
後退した土地は、建ぺい率や容積率を計算するときの敷地面積から外れます(建築基準法施行令2条1項1号)。
建ぺい率は敷地に対する建物の広さの割合、容積率は敷地に対する延べ床面積の割合です。敷地面積が減ると、どちらの上限も小さくなります。
| 例示の仮定値 | 後退を考えない場合 | 後退後 |
|---|---|---|
| 間口×後退幅 | ― | 10m×50cm=5㎡ |
| 計算に使える敷地面積 | 100㎡ | 95㎡ |
| 建築面積の上限(建ぺい率60%) | 60㎡ | 57㎡ |
さらに、前面道路の幅が12m未満の土地では、容積率に「道路の幅×法定の係数」という上限もかかります(同法52条2項)。住居系の地域では、この係数は原則として10分の4です。
2項道路では、中心線から2mの線が道路の境界線とみなされるため(同法42条2項)、みなした境界線の間の幅は4mになります。横浜市も、2項道路の幅は設計の際に4mになると案内しています。
この4mを容積率の式に当てはめると、住居系の地域では4m×10分の4=160%が上限になり、都市計画で指定された容積率より低くなることがあります。
| 例示の仮定値(第一種住居地域・指定容積率200%) | 後退を考えない場合 | 後退後 |
|---|---|---|
| 敷地面積 | 100㎡ | 95㎡ |
| 使える容積率 | 200% | 160% |
| 延べ床面積の上限 | 200㎡ | 152㎡ |
この例では、敷地が5%減っただけなのに、建てられる延べ床面積は約4分の3になります。敷地の減少と、道幅による容積率の上限が重なるためです。
数値は例示で、実際の上限は用途地域や自治体の指定のほか、前面道路の幅をどこで測るかによっても変わります。建て替えを考えるなら、建築士や役所の窓口で実家の条件をもとに計算してもらうと、建てられる広さを先に見積もれます。
出典: e-Gov法令検索「建築基準法施行令」2条/e-Gov法令検索「建築基準法」42条・52条/横浜市「道路Q&A」
売却査定は登記簿の面積でなく後退後の面積で決まる
登記簿の土地の面積は分筆しない限りそのままですが、買主は建て替えたときに使える後退後の面積をもとに価格を考えます。
買主が価格を考えるときに見込む主な費用は、次のとおりです。
- 後退で使えなくなる面積の分
- 後退する位置の外に残る塀や門の撤去費
- 境界の確定や測量の費用
影響の出方は、誰に売るかでも変わります。すぐ建て替える前提の買主ほど後退の影響を大きく見込み、今の家をリフォームして住む前提の買主は、建て替えまでの間の影響を小さく見ることがあります。
査定では、「セットバックがあるので」の一言で減額の説明が終わることもあります。売る側が先に後退の面積と境界の状況を確かめておくと、何㎡分の減額なのかを数字で話し合えます。
役所で確かめた面積は、不動産会社にとっても買主に説明しやすい材料になります。根拠の薄い概算で必要以上に下がるのを防げるので、売る側が準備しておく価値は大きいといえます。
査定書を受け取ったら、次の点を担当者に聞いてみてください。
- 後退する面積を何㎡として計算したか
- 後退幅は今の道幅からの概算か、役所で確かめた幅か
- 単価を掛けた面積は、登記簿の面積か、後退後の面積か
- 塀や門の撤去費、測量費をいくらと見込んだか
複数の会社の査定額が違うときも、この4点をそろえて並べると、どこで差が出たのかが見えてきます。
なお、相続税の評価では、後退が必要な部分を通常の評価額から70%差し引いて、つまり3割で評価する扱いがあります(財産評価基本通達24-6)。これは税の計算上の扱いで、市場での価格の下がり方とは切り離して考える必要があります。
相続税の計算に使う場合は、税理士に確かめておきましょう。
出典: 国税庁「No.4604 路線価方式による宅地の評価」/国税庁「財産評価基本通達 24-6」
売却広告と重要事項説明で求められる表示
後退が必要な土地を売りに出すときは、広告にもその旨を書くことが求められます。
不動産の広告のルール(不動産の表示に関する公正競争規約の施行規則7条)では、2項道路の後退が必要な部分を含む土地は、その旨を表示することになっています。後退が必要な部分の面積がおおむね10%以上なら、その面積もあわせて表示します。
たとえば敷地100㎡のうち後退が10㎡なら、面積まで広告に載ります。売る側が面積を把握していないと、広告の準備の段階で調べ直すことになります。
売買契約の前には、不動産会社が買主に重要事項説明を行います。建築基準法に基づく制限は説明の対象で(宅地建物取引業法35条1項2号)、前面道路の種別や後退の必要もこの中で説明されます。
気をつけたいのは、「親が建て替えたときに後退は済ませたはず」という思い込みのまま売ることです。引き渡した後に後退が済んでいなかったと分かると、買主とのトラブルにつながります。
後退が済んでいることは、役所に残る後退の協議の記録や、現地の後退杭(道路との境を示す杭)で確かめられます。
出典: 不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」/e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」35条
実家のセットバックを確認する手順
遠方に住んでいても、手元の書類・自治体の地図サイト・現地の様子で見当を付けてから窓口へ行けば、役所での確認が1回で済みやすくなります。
それぞれの項目を、どの段階で、どこに確かめるかは次のとおりです。
| 確かめる項目 | 確認する段階 | 確認先 |
|---|---|---|
| 2項道路の指定 | 書類・地図サイト→窓口 | 建築指導課 |
| 都市計画区域の内外 | 地図サイト→窓口 | 都市計画課 |
| 下がる幅・一方後退・隅切り | 現地→窓口 | 建築指導課 |
| 基準の中心線と官民境界 | 窓口→測量 | 建築指導課・道路管理課 |
| 後退が済んでいるか | 書類・現地→窓口 | 建築指導課 |
| 後退した土地の非課税 | 書類→窓口 | 税務課(東京23区は都税事務所) |
| 後退する面積 | 測量・協議 | 土地家屋調査士・建築指導課 |
手元の書類で道路の種別と後退の有無を探す
道路の種別と後退の手がかりは、実家に残っている書類から探し始めると、役所での確認の手間を抑えられます。
| 書類 | 見る箇所 |
|---|---|
| 建築確認済証と確認申請の図面 | 配置図の前面道路の幅・種類、後退する位置の書き込み |
| 親が実家を買ったときの重要事項説明書 | 前面道路の種別、セットバックの有無と面積の欄 |
| 固定資産税の課税明細書 | 非課税の面積の記載、課税される面積と登記簿の面積の差 |
| 自治体との協議書や寄付の書類 | 後退の協議や道路の整備をしたときの控え |
今の建築確認の手続きでは、配置図に敷地が接する道路の位置・幅・種類を書くことになっています(建築基準法施行規則1条の3)。親が家を建てたときの図面にも、道路の幅や後退する位置が書かれていることがあります。
課税明細書に非課税の面積が載っていれば、後退した土地の申告が済んでいる手がかりになります。逆に、登記簿の面積がまるごと課税されていれば、後退済みでも申告していない可能性があります。
自治体の地図サイトで指定道路図を見る
役所は、指定した道路の種類や位置を記した「指定道路図」と「指定道路調書」を作り、閲覧できるようにしています(建築基準法施行規則10条の2・11条の3)。
この指定道路図を、インターネットの地図サイトで公開している自治体もあります。横浜市では、地図サイトで道路をクリックすると、建築基準法の道路の種別が表示されます。
地図サイトは、次の順に見ていくと実家の前の道の種別を確かめられます。
- 実家の場所を地番か住所で探す
- 実家の前の道に付いている色や記号を見る
- 凡例で、その道が2項道路(「42条2項」などと書かれる)にあたるかを確かめる
ただし、ネットの表示だけで確定させるのは早すぎます。横浜市も、道路の種別は状況の変化で変わることがあり、まだ判定していない道路もあると案内しています。
色の付いていない道や、表示が分かりにくい道は、窓口で聞く項目として控えておきましょう。
出典: e-Gov法令検索「建築基準法施行規則」10条の2・11条の3/横浜市「建築基準法の道路について」
現地で近所の後退の跡を確かめる
実家に行けるときは、道の様子を写真に残しておくと、窓口での説明が早く進みます。
現地で見ておきたい箇所は、次のとおりです。
- 道路との境を示すプレートや杭(後退杭・境界標)
- 建て替えた家だけが道から下がり、塀の位置が凸凹になっている箇所
- 側溝や縁石の位置と、道の端との関係
- 向かいの川・水路・がけ・線路の有無
- 角を三角形に空けている近所の家(実家が角地の場合)
近所で建て替えた家が下がっている幅は、後退する位置の手がかりになります。ただ、向かいの家が後退済みだと、見た目の道の中心と基準の中心線がずれていることがあります。
現地では見当を付けるところまでにして、幅は窓口で確かめるようにしましょう。
出典: 熊本市「開発行為の区域に接する建築基準法第42条第2項道路の後退方法に注意しましょう」
建築指導課と道路管理課で後退線と幅を聞く
後退する位置と幅は建築指導課、道路の幅と官民境界は道路管理課が主に扱います。
| 窓口 | 確かめる項目 |
|---|---|
| 建築指導課 | 道路の種別、後退する位置の決め方、過去の後退の協議の記録、狭あい道路の助成 |
| 道路管理課 | 道路台帳、認定された道路の幅、官民境界の確定の状況 |
| 税務課 | 後退した土地の固定資産税の非課税 |
窓口の名前は自治体ごとに違うため、「建築基準法の道路を扱う課」「市道の台帳を扱う課」のように役割で探すと見つかります。
道路の種別は、遠方に住んでいても来庁して聞くのが基本と考えておきましょう。横浜市は、誤りがあったときの影響が大きいとして、道路の種別の問い合わせを電話では受け付けない運用にしています。
一方、東京都港区のように、中心線の判定協議の書類を郵送で受け付けている自治体もあります。実家の近くに行く日程が限られるなら、自治体のホームページで受付の方法を先に確かめておくと、移動の回数を減らせます。
持って行くと話が早いものは、次のとおりです。
- 地番(住居表示の住所とは別。登記事項証明書や固定資産税の通知書で分かる)
- 公図
- 地積測量図(あれば。実家と向かいの土地の分)
- 現地の写真
公図・地積測量図・登記事項証明書は、法務局で取得できます。
窓口では「セットバックは必要ですか」と聞くより、次のように具体的に聞くほうが答えが返ってきやすくなります。
- 実家の前の道は、建築基準法の何項の道路ですか
- 後退の基準になる中心線は、どこですか
- 一方後退にあたりますか
- 隅切りは必要ですか
- 近所で後退の協議をした記録はありますか
- 道路と敷地の境界は確定していますか
近所の家の建築計画概要書を閲覧するのも有効です。建築計画概要書は、建築確認を受けた建物の概要を記した書類で、役所で閲覧できます(建築基準法施行規則11条の3)。
概要書を見ると、近所の家がどの位置まで後退して建てたかが分かり、基準の中心線の手がかりになります。古い年代の概要書がどこまで残っているかは、自治体によって違います。
出典: 横浜市「建築基準法の道路について」/港区「2項道路中心線の判定協議」/e-Gov法令検索「建築基準法施行規則」11条の3
測量と狭あい協議で後退線と面積を確定させる
正確な後退面積は、土地家屋調査士による測量と、自治体との狭あい道路の協議で確定します。
狭あい道路の協議とは、後退する位置や後退した土地の整備方法を、役所と決める手続きです。練馬区のように、建て替えの予定がなくても協議できると案内している自治体もあります。
売却や建て替えの前にここまで進めておくと、後退の面積を図面で示せます。ただし、売却の進め方によっては、買主が測量や協議を進める場合もあります。
どこまで自分で進めるかは、測量の費用と売却の時期を見比べながら、不動産会社と相談して決めるとよいでしょう。
確かめた結果は、次のように1枚にまとめておくと便利です。
- 前面道路の種別(2項道路か)
- 自分の敷地が下がる幅と、基準にした位置
- 一方後退・隅切りの有無
- 後退する面積(概算か、測量で確定したものか)
- 後退が済んでいるか
- 後退した土地の固定資産税が非課税になっているか
同じ1枚を不動産会社や建築士に見せれば、全員が同じ前提で相談に乗れます。複数の会社に査定を頼むときも、前提がそろうので金額を比べやすくなります。
まとめ:2項道路の指定と基準の中心線を役所で確かめる
セットバックで下がる幅は、今の道の真ん中ではなく役所が基準にする中心線から測るため、向かいが後退済みの道では、見た目の道幅で計算した幅より大きくなることがあります。
地番と公図をそろえて、建築指導課で道路の種別と基準の中心線を聞いておきましょう。この確認を飛ばして概算の幅のまま査定や建て替えの計画を進めると、何㎡分の減額なのかを説明できず、後から売り出し価格や間取りを組み直すことがあります。
後退の幅が分かったら、後退した土地の固定資産税が非課税になっているかも、課税明細書で見ておくとよいでしょう。実家と相続の地図帳「つぐーる」では、実家のセットバックの確かめ方や売却への影響も含めて、相続や実家について悩むあなたに経験に基づいた情報を提供しています。
