親の物忘れが進み、施設の費用を実家の売却で賄いたいと思ったとき、親名義のままで家族が何をしてよいのかは、親の理解力がどの段階にあるかで決まります。
家族全員が同意しても本人の意思の代わりにはならず、理解が失われていれば後見人と家庭裁判所の許可が要る一方で、認知症の診断があっても本人が売れる場合や、そもそも売らずに施設費用を出せる場合が残っています。
本人がまだ自分でできること、家族が代われること、後見と許可が要ることの3つに分けて、確かめる順番と相談先まで整理します。
親がまだ自分で実家を売れる条件|意思能力の判断基準と確かめ方
認知症の診断があっても、取引の時点でその内容を理解できていれば、本人が自分で実家を売れます。
反対に、その理解力が失われていれば、家族は代わりに契約できず、後見の段階に入ります。「家族が代わりに契約できるのか」という疑問への答えは、親がこの境目のどちら側にいるかで決まります。
意思能力がない契約と委任状が無効になる理由
民法3条の2は、意思能力を欠く状態でした法律行為を無効と定めています。
大事なのは「取消し」ではなく「無効」である点です。取消しは後から追認して有効にできますが、無効は家族全員が後から「有効にしたい」と望んでも、最初から効力がないままです。
委任状も同じ考え方です。委任は本人と家族の間の契約なので、本人に委任する能力が残っている間に書いたものに限って有効です。
判断能力を失った後に家族が書かせた委任状は、委任の契約そのものが無効になります。兄弟・姉妹の全員が同意していても、委任状の効力は本人の能力だけで決まります。
無効な売買を進めてしまうと、後から他の兄弟・姉妹や買主に覆される恐れがあります。登記が済んでいても無効は無効なので、代金を返したうえで名義を戻す争いになり得ます。
もう一つ、親を守る側の知識です。判断能力の低下に乗じて著しく不利な条件で結ばせた契約は、公序良俗に反するとして無効とされた裁判例があります。本人が売れる状態でも、価格が相場から大きく外れていないかは家族が見ておく必要があります。
認知症の診断や検査の点数で意思能力が決まらない基準
意思能力は診断名で一律に決まらず、個々の法律行為ごとに、その行為の結果を理解し判断できていたかで判断されます。
日用品の買い物なら理解できても、不動産の売買は理解できない、ということが起こり得るからです。
実家の売買で求められるのは、おおまかに言えば「どの家を、誰に、いくらで売り、代金をどうして、売った後どこに住むか」を理解できる程度です。うなずいて「売っていいよ」と言えるだけでは不十分で、これらを本人の言葉で説明できるかが見られます。
長谷川式認知症スケールやMMSEの点数は、成年後見制度用の診断書に記入欄がある項目ですが(厚生労働省の診断書様式)、それ自体は意思能力の有無を決める基準とは別の数字です。
後から争いになった場合も、カルテ、介護記録、医師の意見書などを合わせて総合的に判断されます。点数が低いから即無効、高いから必ず有効、という単純な決まり方とは違うのです。
売買契約と決済の両方で意思能力が求められる時点
意思能力は、売買契約を結ぶときと、残代金を受け取って家を引き渡す決済のときの両方で求められます。
契約の時点では理解できていたのに、数か月後の決済の日に本人が質問に答えられず、取引が止まった例があります。
このため、契約から決済までの期間をできるだけ短く組む工夫が役立ちます。買主が住宅ローンを組む場合のローン特約の期間を短くする、現金で買う買主を優先する、決済日を前倒しにする、といった組み方です。
不動産会社に親の状態を伝え、期間を短くできる買主を探してもらいましょう。
主治医の所見と司法書士の事前意思確認で先に確かめる方法
本人の理解力は、不動産会社・司法書士・主治医がそれぞれの場面で本人に直接確かめます。
不動産会社は媒介契約の前に本人と面談し、売却の理由を本人の言葉で言えるかを見ます。決済のときは司法書士が本人に直接、氏名や生年月日のほか、売る家、相手、価格、代金の使い道を聞きます。家族が横から答えてしまうと、確認の意味がなくなります。
司法書士に止められたとしても、家族が疑われたわけではなく、司法書士には無効な売買を登記しない義務があるためです。確認できなければ進められない立場なので、「止められた」は「後見の段階に入った」と読み替えられます。
先に確かめる方法は2つあります。
- 主治医に「売却の内容を理解できる状態か」を相談する
- 契約前に司法書士に面談してもらう(事前の意思確認)
診断書は契約の直前に取ります。半年前の診断書では契約時点の能力の証明にならず、直前の日付が要るからです。司法書士の事前の意思確認は不動産会社を通じて手配でき、費用は事務所によって異なります。
買主が住宅ローンを組む場合は、金融機関の本人確認も加わります。親の事情を隠して進めると決済で止まって買主に損害が出る恐れがあるので、不動産会社に最初から伝えておくほうが、結果として早く進みます。
| 売り方 | 意思能力の状態 | 誰が確認するか | 詳しく読む章 |
|---|---|---|---|
| 本人が売る | 売買の内容を理解し、自分の言葉で説明できる | 主治医・不動産会社・司法書士 | 本人が売れる条件(この章) |
| 家族が委任を受けて売る | 本人に委任する能力が残っている(委任の時点と決済の時点の両方) | 司法書士(委任状と本人の意思) | 本人が売れる条件(この章) |
| 後見・保佐・補助で売る | 理解が不十分、または失われている | 家庭裁判所(診断書の段階で類型が決まる) | 後見の前に確かめる選択肢、後見人の売却許可の条件、後見の期間・費用 |
後見開始の申立てをする前に確かめる選択肢|保佐・補助・任意後見・家族信託
後見開始の申立ては最後の手段で、その前に確かめることは2つあります。
1つは親の判断能力の段階、つまり診断書でどの類型に当たるかです。もう1つは、親が以前に任意後見契約や家族信託を結んでいなかったかです。この2つが分かれば、後見より軽い制度で済むかが決まります。
診断書の判断能力の段階で分かれる後見・保佐・補助
法定後見には後見・保佐・補助の3つの類型があり、どれになるかを左右するのが成年後見制度用の診断書です。
この様式には、医師が判断能力の程度を4段階でチェックする欄があります。自ら認知・判断・意思疎通ができる、支援を受けなければ難しい場合がある(補助相当)、支援を受けなければできない(保佐相当)、支援を受けてもできない(後見相当)の4つです(厚生労働省の診断書様式)。
家庭裁判所は、原則としてこの欄に沿って類型を決めます。申立人が保佐を希望しても、診断書が後見相当なら後見になります。逆に言えば、医師がどの段階に印を付けたかを先に見れば、どの制度になるかの見当が付きます。
保佐や補助になれば、本人の権限が残ります。本人が自分でできることを残しながら、実家の売却のような特定の行為に限って代理してもらう形が取れるのです。
なお、2026年に成立した改正法で類型は補助に一本化される予定ですが、今申し立てる人には現行法の3類型が適用されます(改正の内容は後見の期間・費用の章で整理します)。
出典: 厚生労働省 成年後見制度用診断書の様式/厚生労働省掲載 最高裁判所事務総局家庭局「成年後見制度における診断書作成の手引・本人情報シート作成の手引」
保佐・補助で実家を売るための代理権付与の申立て
保佐人・補助人が実家を売るには、「〇〇所在の不動産の売却」のように特定の法律行為について代理権を付ける審判が別に要ります。
最初から実家を売る権限が付いているわけではなく、家庭裁判所への申立てが必要です(民法876条の4・876条の9)。この申立ては、保佐・補助の開始の申立てと同時に出すのが通常です。後から別に出すと審判が二度になり、その分時間がかかります。
ここで大事な条件が、本人の同意です。本人以外が代理権付与を申し立てるには本人の同意が要ります(民法876条の4第2項・876条の9第2項)。補助開始そのものを本人以外が申し立てる場合も同じです。
つまり、兄弟・姉妹の誰かが単独で勝手に進められない構造になっています。親の同意を取りに行く前に兄弟・姉妹に共有しておくと、後の「勝手にやった」を避けられます。
もう一つ、代理権が付いた保佐人・補助人が実家を売る場合も、居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が要ります(民法876条の5第2項・876条の10第1項で859条の3を準用)。軽い制度でも許可は省けず、許可の条件は後見人の売却許可の章と同じです。
出典: e-Gov法令検索 民法(第876条の4・第876条の5・第876条の9・第876条の10)/裁判所 補助開始
親が結んでいた任意後見契約の調べ方と発効の手順
親が元気なころに公証役場で任意後見契約を結んでいたのに家族が知らず、法定後見を申し立ててしまう例があります。
先に調べる方法は2つです。
- 自宅の書類から公正証書の控えを探す
- 東京法務局後見登録課に登記事項証明書を請求する(本人のほか4親等内の親族が請求できる)
契約が見つかったら、代理権目録に「不動産の管理・処分」が入っているかを読みます。任意後見人が実家を売る権限は、目録にこの項目が入っている場合に限られます。
任意後見契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任して初めて効力が生じます(任意後見契約法4条)。本人・配偶者・4親等内の親族・任意後見受任者が、家庭裁判所に監督人の選任を申し立てます。本人以外が申し立てる場合は本人の同意が要り、診断書も必要です。
発効前の受任者に代理権はなく、子が受任者でも、契約書を根拠に実家を売れるのは発効後です。
登記された任意後見契約があるときは、本人の利益のため特に必要があるときに限って法定後見が開始されます(任意後見契約法10条)。つまり任意後見が優先されます。
任意後見で実家を売るときの手順は、法定後見と1点違います。任意後見人には民法859条の3の居住用不動産の処分許可の規定が適用されず、任意後見契約法7条4項の準用対象からも外れています。
その代わり、代理権目録の範囲で、任意後見監督人の監督の下に売ります(同法7条1項)。「裁判所の許可は要らないが、監督人の目は入る」と整理できます。
監督人は司法書士や弁護士などの専門職が選ばれ、報酬は本人の財産から出ます。解説では月1万〜3万円程度とされますが、家庭裁判所が決めるので目安です。任意後見人には本人がした契約を取り消す権限がない点も、法定後見との違いです。
出典: e-Gov法令検索 任意後見契約に関する法律/裁判所 任意後見監督人選任/福岡家庭裁判所 任意後見監督人選任の申立てをされる方へ/法務省 成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A
家族信託を今から組める条件と費用
家族信託は、親が委託者として実家を子(受託者)に託し、受託者が管理や売却を行う仕組みです。
信託した実家の売却は受託者が家庭裁判所の許可なしに行え、名義は信託登記で受託者に移り、代金は信託口口座で管理します。
ただし、契約の時点で本人の意思能力が要ります。すでに失われていれば組めず、軽度で契約内容を理解できる段階なら組める場合があります。公証人が本人に面談して確認します。ここでも本人が売れる条件の章の基準、つまり本人が内容を自分の言葉で説明できるかが実際の境目になります。
費用は、公正証書の作成や信託登記などの実費で35万〜80万円、仕組みづくりを頼む専門家のコンサルティング料で10万〜80万円が目安とされます(事業者により大きく異なります)。信託の中身の組み立ては専門家の仕事なので、組めそうな段階なら早めに相談しておきましょう。
| 保佐・補助+代理権 | 任意後見 | 家族信託 | 後見開始 | |
|---|---|---|---|---|
| 使える判断能力の段階 | 診断書で補助相当・保佐相当 | 契約済みで、判断能力が低下した段階 | 契約時に内容を理解できる軽度の段階 | 診断書で後見相当 |
| 実家を売る権限 | 代理権付与の審判で付く(本人の同意が要る) | 代理権目録に処分が入っていれば任意後見人 | 受託者 | 後見人 |
| 家庭裁判所の許可 | 要る(居住用不動産) | 要らない(監督人の監督下) | 要らない | 要る(居住用不動産) |
| 監督 | 家庭裁判所 | 任意後見監督人 | なし | 家庭裁判所 |
| 費用の目安 | 申立て費用+報酬(後見の期間・費用の章) | 監督人報酬が月1万〜3万円程度 | 実費35万〜80万円+コンサル10万〜80万円 | 申立て費用+報酬(後見の期間・費用の章) |
後見人が実家を売る許可が家庭裁判所から出る条件|売却の必要性と相当性
後見人は本人に代わって財産を処分する権限を持ちますが、実家のような居住用不動産は、家庭裁判所が「本人のために売る必要があるか」「本人が損をしない売り方か」を別に審査します。
家族の都合は理由になりません。
現行法では後見を一度始めると本人が亡くなるまで続くため、この条件は後見を始める前に知っておく価値があります(後見の期間・費用の章)。「後見人を立てたのに許可が出ず、報酬だけ続く」という状態を避けるために、先に条件を当てはめてみてください。
対象は法定後見、つまり後見人と、代理権が付与された保佐人・補助人です。任意後見は後見の前に確かめる選択肢の章で整理したとおり、この許可の対象外です。
施設入所中でも許可が要る居住用不動産と処分の範囲
民法859条の3は、後見人が本人の居住用の建物や敷地を売却・賃貸・賃貸借の解除・抵当権の設定などするには家庭裁判所の許可が要ると定めています。
許可のない処分は無効です。
「居住用」は、現に住んでいる家に限らず、入院や施設入所中で将来住む可能性がある家、入所前に住んでいた家も対象です。住民票ではなく生活の実態で判断され、施設入所から長い時間がたっていても、居住用の性質は直ちには失われないとされます。
「もう戻れないから居住用ではない」という理屈は通りにくいと考えておくと安全です。
処分の範囲も売却に限られず、賃貸に出す、借り手との契約を解除する、抵当権を付ける、建物を取り壊すといった、これらに準ずる処分が含まれます。親が住んでいなかった貸家や空き地は許可の対象外ですが、後見監督人が付いていればその同意が要る場合があります。
出典: e-Gov法令検索 民法(第859条の3)/大阪家庭裁判所 居住用不動産処分許可の申立てについて
売却の必要性が認められる預貯金と生活費の状況
許可の基準は「売却の必要性」と「売却内容の相当性」の2つで、必要性が認められやすいのは、預貯金が不足し、生活費や療養費のために売らざるを得ない場合です。
預貯金に余裕があると、「今が高く売れる」「将来値下がりする」「空き家の管理が大変」といった理由は決め手になりにくくなります。家族にとっては合理的な理由でも、本人の生活に直結しないからです。見られるのは、売らないことで本人の生活や心身に具体的な不利益が生じるかです。
申立ての準備として、「売りたい理由」と並べて、親の預貯金残高、年金の額、施設費用の月額と入居一時金、その差し引きの不足額を数字で示せると、必要性の説明がしやすくなります。
預金で施設費用を賄える状態なら、売却の必要性は弱いと見られます。預金から施設費用を払う手段は、売らずに施設費用を出す手段の章で扱います。
売却内容の相当性で見られる価格・買主・代金の保管
相当性は、本人が損をしない売り方かを見る基準です。
価格の妥当性は、不動産会社の査定書と固定資産評価証明書で示します。査定書は1社より複数社あるほうが説明しやすくなります。相場より明らかに低い価格、たとえば親族への格安売却は、相当性で落ちます。
買主が後見人である子やその配偶者、親族の場合は、本人と後見人の利益が対立する利益相反になります。特別代理人の選任や後見監督人の関与が要るので、家族内で買い取る案は手続きが増えると見ておくと安全です。
売却代金の保管先は本人名義の口座に限られ、家族の口座への入金は認められない運用です。
出典: 大阪家庭裁判所 居住用不動産処分許可の申立てについて
本人の意向と親族の反対が判断に与える影響
家庭裁判所が見る判断材料として解説で挙げられるのは、①売却の必要性、②本人の生活・看護の状況と本人の意向、③売却条件、④売却後の代金の保管、⑤親族の処分に対する態度です。大阪家庭裁判所の案内でも、処分の必要性を説明する資料と、査定価格より低く売るときはその理由の説明書を求めています。
本人の意思を確認できる状態なら、本人の意思が尊重されます。本人が売却に反対なら、特別な必要性がない限り慎重に判断されます。住まいを失うことによる心理的な影響も見られます。
親族の態度も材料になります。反対する兄弟・姉妹がいると通りにくいので、申立ての前に同意書を集めておきましょう。親族の意向を聞かれた段階で手続きが止まった、という声もあります。
出典: 大阪家庭裁判所 居住用不動産処分許可の申立てについて
売却相手と金額が決まってから申し立てる手順と必要書類
申立ての時期は「売却を検討している段階」ではなく、売却相手と金額が決まってからです(福岡家庭裁判所の説明)。
流れは次のとおりです。
- 不動産会社に「後見人による売却で家庭裁判所の許可が要る」と伝えて査定を頼む。この時点で、後見案件に慣れた会社かが分かる
- 買主を探し、家庭裁判所の許可を停止条件とする売買契約を結ぶ。許可が出なければ白紙になること、手付金の扱い、期限を契約書に入れ、決済が許可待ちになると買主に先に説明する
- 後見開始の審判をした家庭裁判所に、許可の申立てをする
申立人は成年後見人(保佐人・補助人は代理権付与済みに限る)、手数料は収入印紙800円と郵便料です(裁判所の案内)。
書類は申立書、売買契約書案の写し、固定資産評価証明書、不動産会社の査定書、登記事項証明書、買主の住民票、監督人がいればその同意書です。裁判所によって細目が違うので、管轄の家庭裁判所の一覧で確認しておきましょう。
許可までの期間は、解説では2週間から1か月程度とされますが、実例では2か月かかったものもあり、裁判所によって異なります。申立て後に価格や買主が変わると再申立てになり得るので、契約条件を申立て時の書類と一致させ、進行中の変更を避けると、再申立てを防げます。
出典: 裁判所 成年被後見人(被保佐人、被補助人)の居住用不動産の処分についての許可/福岡家庭裁判所後見センター 居住用不動産処分の許可の申立てについて/静岡家庭裁判所 後見等関係事件用 収入印紙・郵便切手・標準的な添付書類の一覧
| 許可が出やすい事情 | 許可が出にくい事情 |
|---|---|
| 預貯金が不足し、施設費用や生活費を賄えない | 預貯金に余裕があり、施設費用を払えている |
| 本人が売却に同意している | 本人が反対している |
| 複数社の査定で相場に沿った価格 | 相場より明らかに低い価格・親族への格安売却 |
| 兄弟・姉妹の同意書がそろっている | 反対する親族がいる |
| 代金を本人名義の口座で保管する | 「今が高く売れる」「管理が大変」だけが理由 |
成年後見を始める前に確認する項目|期間・費用・後見人の選任・終了
後見は、始めたら取り下げられず、本人が亡くなるまで続き、後見人を家族が選べず、報酬が本人の財産から出続ける制度です(現行法)。
申し立てる前に、この4点を受け入れられるかと、期間と期限から見た申立ての時期を確かめておきましょう。
申立てから審判までの期間と鑑定の実施率
最高裁判所の「成年後見関係事件の概況(令和7年1月〜12月)」では、申立てから審判までの審理期間は2か月以内が71.1%、4か月以内が93.8%です。
ただしこれは書類がそろって申し立ててからの期間です。戸籍・住民票・登記されていないことの証明書・財産の資料を集めるのに1か月ほど別にかかり、審判の後は確定と登記に数週間かかります。後見人が売却に動けるのは、準備を始めてから3〜4か月後と見込めます。
鑑定を心配する声がありますが、2025年に鑑定が行われたのは3.4%です。費用は10万円以下が85.8%、5万円以下が43.7%でした(最高裁判所)。「鑑定で10万円以上かかる」のは一部の例です。
診断書は成年後見制度用の様式で、かかりつけの主治医が書けます。精神科以外の医師でも構わず、発行後3か月以内のものが要ります。
申立ての動機として「不動産の処分」を挙げたのは36.3%です(最高裁判所)。実家を売るための申立ては全体の3分の1を超え、裁判所も慣れています。
期限の目安は1つあります。本人が住まなくなった家を売るときの3,000万円特別控除は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件です(国税庁)。「住まなくなった日」は住民票の移動日ではなく、実際に施設へ移った日です。
後見開始の3〜4か月に、買主探しと売却許可の期間を足すと半年前後かかるため、この期限が近い場合は早めに動く必要があります。税の計算そのものは税理士や税務署に確認してみてください。
出典: 最高裁判所 成年後見関係事件の概況(令和7年1月〜12月)/国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例
申立ての費用と申立て後に取り下げられない制限
裁判所に納める費用は、収入印紙800円(保佐・補助で代理権付与を同時に申し立てる場合は別に800円ずつ)、登記手数料2,600円、郵便料です。
これに診断書料と、鑑定になった場合の鑑定費用が加わります。申立書類の作成を司法書士に頼むと10万〜20万円、弁護士で20万〜30万円程度が目安です(事務所により異なります)。費用は原則として申立人の負担で、本人の財産から出すには家庭裁判所の判断が要ります。
助成は2つあります。市区町村の成年後見制度利用支援事業は、非課税世帯などの低所得者が中心で、親族申立てが対象になるかは自治体によって違います。法テラスの民事法律扶助は、申立ての実費と専門職の報酬を立て替える制度で、後見人の報酬は対象外です。
取下げの制限は、申立ての前に必ず知っておく点です。後見開始の申立ては、審判の前であっても家庭裁判所の許可がなければ取り下げられません(家事事件手続法121条)。「候補者の子が通らなかったらやめる」という進め方は、この制限で閉ざされます。
申し立てた時点で、知らない専門職が親の財産を管理する未来を受け入れる覚悟が要ります。
出典: 裁判所 保佐開始/e-Gov法令検索 家事事件手続法(第121条)/厚生労働省 成年後見制度利用支援事業の適切な実施について(事務連絡)
家庭裁判所が後見人を選ぶ基準と親族が選ばれる割合
後見人は家庭裁判所が職権で選び、申立書の候補者に拘束されずに決めます(民法843条)。
考慮されるのは、本人の心身・生活・財産の状況、候補者の職業・経歴・本人との利害関係、本人の意見などです。
2025年に親族が後見人等に選ばれたのは16.4%で、83.6%は親族以外でした。内訳は司法書士11,966件、弁護士8,903件、社会福祉士7,280件などです。
親族が候補者として申立書に記載された事件は19.7%でした(最高裁判所)。「子が後見人になって実家を売る」前提で申し立てると、このずれに後から気づくことになります。
親族が選ばれにくい事情は、本人の財産が多い、親族の間に争いがある、候補者が本人と金銭の貸し借りをしている、などです。
選ばれやすくする工夫は3つです。
- 兄弟・姉妹全員の同意書をそろえる
- 財産目録と収支予定表を整える
- 財産が多いときは後見制度支援信託や支援預金を受け入れる
それでも財産が多かったり争いがあったりすれば専門職になります。
申立人の内訳は本人24.8%、市区町村長23.7%、子18.5%です(最高裁判所)。親族がいない、または申し立てられないときは、市区町村長が申し立てる方法があります。
出典: e-Gov法令検索 民法(第843条)/最高裁判所 成年後見関係事件の概況(令和7年1月〜12月)
後見人の報酬と本人の財産の使い道の制限
後見人の報酬は、家庭裁判所が本人の財産の中から相当な額を決め、本人が亡くなるまで続きます(民法862条)。
解説では基本報酬が月2万円、管理する財産が1,000万円を超えると月3万〜4万円、5,000万円を超えると月5万〜6万円が目安とされます。実家の売却のような特別な事務があった年は、基本報酬の50%以内で付加報酬が付きます。
親族の後見人も請求でき、監督人が付けばその報酬も加わります。
後見人の役割は本人の財産を維持することで、財産の運用、生前贈与、相続税対策、実家の名義を子に移すことは役割の外です。親の財産を家族の生活費に使うことも同じです。年に1回、家庭裁判所に収支を報告します。
家族が立て替えた費用を精算するにも、領収書などの根拠が要ります(売らずに施設費用を出す手段の章)。「後見人になれば親のお金を自由に使える」は逆で、使い道を最も厳しく見られる立場になります。
出典: e-Gov法令検索 民法(第862条)/横浜家庭裁判所 成年後見人等の報酬額のめやす
現行法で終了できる時期と2026年改正で変わる利用期間
現行法では、後見が終わるのは本人が亡くなったとき、または判断能力が回復して審判が取り消されたときです(民法10条)。
後見人が辞任するには正当な事由と家庭裁判所の許可が要ります。実家を売り終わっても、後見は続きます。
ここから先は、改正で変わる予定の点です。2026年6月17日に成立し、6月24日に公布された「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)は、後見と保佐の制度を廃止して補助に一元化し、本人にとって必要な範囲で利用できる制度に改めます(法務省)。
必要な期間だけ使って終えられる仕組みや、任意後見との併用も改正の柱とされています。施行は公布の日から2年6か月を超えない範囲で政令が定める日で、2026年10月の時点では未定です。
施行時にすでに後見が始まっている人の扱い(経過措置)は、政令や法務省の案内で示される内容を確認する必要があります。
今申し立てる人には現行法が適用されます。施設費用が預金で賄えていて売却許可も出にくい、3,000万円控除の期限も遠い、といった急がない事情があるなら、施行を待つ判断もあり得ます。逆に施設費用が不足していて売らざるを得ないなら、現行法で進めることになります。
出典: e-Gov法令検索 民法(第10条)/法務省 「民法等の一部を改正する法律」(成年後見及び遺言の制度の見直し)について
| 項目 | 現行法 | 2026年改正後(予定) |
|---|---|---|
| 期間 | 審理は2か月以内71.1%・4か月以内93.8%(2025年) | 施行後の運用で決まる |
| 費用 | 収入印紙800円+登記手数料2,600円+郵便料+診断書料(専門職に頼むと10万〜30万円程度) | 施行後の政令・運用で決まる |
| 誰が後見人になるか | 家庭裁判所が選ぶ(親族は16.4%) | 家庭裁判所が選ぶ |
| 報酬 | 本人の財産から、本人が亡くなるまで | 本人の財産から、利用している期間 |
| できないこと | 運用・贈与・名義移転・家族の生活費 | 施行後の案内で確認 |
| 終わる時期 | 本人の死亡か判断能力の回復 | 必要がなくなれば終了できる |
実家を売らずに施設費用を出す手段と家族ができる管理の範囲
「本人の口座から本人のための支払い」と「家の現状を保つ事実行為」は、後見なしでも家族ができます。
「本人の財産を減らす・変える処分」は、後見人と家庭裁判所の許可が要ります。預金で施設費用を賄えるなら、売却の必要性は弱くなります。売るか売らないかを決める前に、ここで挙げる手段で払えるかを先に確かめてみてください。
全銀協の考え方で銀行が親族の払い出しに応じる条件
全国銀行協会は2021年2月18日に「金融取引の代理等に関する考え方」を公表しました。
原則は「家族といえども預金者の預金を払い出すことはできない」で、認知判断能力が低下した場合は成年後見制度の利用を求めるのが基本です。
そのうえで、後見制度を利用していない場合の「極めて限定的な対応」として、認知判断能力を失う前なら本人が支払っていたであろう本人の医療費などの支払い手続きを親族が代わりにする行為のように、本人の利益に適合することが明らかな場合に限って親族の払い出しに応じる、とされています。
施設の入居費用もこの考え方の範囲です。投資信託の解約も同じ考え方の対象とされています。
銀行が本人の状態を確認する方法として挙げられているのは、本人との面談、診断書、担当医からの聞き取り、複数の行員による面談、医療・介護費の証拠です。
窓口に持ち込むのは次の3点です。
- 診断書(または担当医の所見)
- 施設の契約書と請求書
- 振込先を施設にした振込依頼書
親族の口座に移すのではなく施設へ直接振り込む形にすると、「本人の利益に適合することが明らか」を示しやすくなります。
窓口で断られたら、本店の相談窓口や高齢者取引を担当する部署に回してもらいます。この考え方は法律ではないので、銀行ごとに運用が違います。複数の銀行に口座があれば、対応してくれた銀行から使えます。後見人が選任された後は、後見人からの依頼に限って応じる運用です。
出典: 全国銀行協会 金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方について
判断能力があるうちに作る代理人カードと施設費用の口座振替
親の判断能力がまだ残っている段階なら、今のうちに作れる仕組みがあります。
代理人指定届や代理人カードは、本人の判断能力があるうちに本人が同行して作ります。信託銀行などには、あらかじめ指定した家族が判断能力の低下後に払い出せる予約型の代理人サービスもあります。
施設費用の支払いを本人口座の口座振替にしておくと、判断能力が落ちた後も引き落としは続きます。年金も本人口座に入り続けるので、「年金で施設費用の大半を払い、不足分だけ銀行に相談する」形が組めます。
口座振替は施設との契約時に設定するので、入所の手続きの段階で本人口座を指定しておきましょう。
任意後見契約とセットで財産管理委任契約(移行型)を結んでいれば、監督人の選任前でも受任者が銀行取引できます(全国銀行協会の考え方の脚注)。契約の有無は、任意後見契約の調べ方の項の方法で確かめられます。
出典: 全国銀行協会 金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方について
後見なしで家族ができる納税・火災保険・立替の精算
固定資産税の納税義務者は、1月1日時点の所有者である本人のままで、家族が本人のために納めることはできます。
納税通知書を家族宛に送ってもらうには送付先の申出書を出しますが、様式と本人の署名の要否は自治体で異なります。市外に住む家族なら納税管理人の届出です。
本人が署名できないときの扱いは、税務課に直接確認してみてください。市区町村に施設入所と家族の連絡先を伝えておくと、通知が届かずに延滞する事態を避けられます。
火災保険は、住まなくなった時点で保険会社に告知します。住宅物件から一般物件の扱いに変わり保険料は上がりますが、告知せずに火事になると補償されない恐れがあります。
無保険のまま延焼させると、重大な過失として損害賠償を負う可能性もあります。契約の変更を家族ができるかは保険会社の判断です。
見回り、換気、通水、草刈りは家族ができます。自治体のシルバー人材センターや空き家管理サービスに、家族名義で委託することもできます。雨漏りや倒壊の危険を避けるための応急修繕は、本人の財産への急迫の危害を避けるための緊急事務管理(民法698条)として行えます。
家族が立て替えた施設費用・税金・修繕費は、領収書と日付・用途の一覧を残しておくと、本人の財産からの精算を求められます。本人のために必要な費用を立て替えた場合、事務管理の有益費の償還(民法702条)がその根拠です。
後見人が付いた後も、相続のときも、この記録が根拠になります。兄弟・姉妹から「親のお金を使い込んだ」と疑われないための防波堤でもあります。
出典: e-Gov法令検索 民法(第698条・第702条)/鹿児島市 固定資産税の納税通知書を家族あてに送付することはできますか/京都市 京都市外に居住されている方へ(納税管理人)
家族だけではできない賃貸・解体・家財処分
賃貸に出す、取り壊す、大規模なリフォームをする、名義を変える、抵当権を付ける。これらは本人の財産を減らしたり変えたりする処分です。
本人の意思能力がなければ家族は行えず、後見人が付いた後も居住用不動産なら家庭裁判所の許可が要ります(後見人の売却許可の章)。
家財も本人の所有物なので、本人の同意がない処分は家族でも根拠を欠きます。片付けは、施設に持ち込む、別の場所で保管する、写真で残す、までにとどめておくと、後の争いを避けられます。
放置した空き家が管理不全空家に認定される基準と固定資産税への影響
空家等対策特別措置法は、放置すれば特定空家になる恐れがある家を「管理不全空家」とし、市区町村が指導し、改善されなければ勧告できると定めています(同法13条)。
2023年12月13日に施行された改正で、勧告を受けた管理不全空家の敷地は住宅用地特例の対象から外れ、土地の固定資産税が上がります(国土交通省の改正資料)。上がり幅は土地の規模などで異なり、自治体の案内では「約4倍」とする例があります(静岡市)。
さらに状態が悪ければ、特定空家として勧告・命令・代執行に進みます(同法22条)。指導は、庭木が道路にはみ出している、窓が割れているといった近隣の苦情から始まることが多く、勧告の前に対処すれば税の影響は避けられます。見回りと草刈りは、この段階に進ませないための最低限の管理です。
出典: e-Gov法令検索 空家等対策の推進に関する特別措置法/国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報/国土交通省住宅局 空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律の施行について/静岡市 空き家の固定資産税・都市計画税
| 家族ができる(後見なし) | 家族だけではできない(後見人+許可。後見人の売却許可の章) | |
|---|---|---|
| 支払い | 施設費用の口座振替・本人の医療費や施設費の払い出しの相談・固定資産税の納付・火災保険料の支払い | 本人の預金を家族の口座へ移す |
| 管理 | 見回り・換気・通水・草刈り・応急修繕・管理サービスへの委託 | 賃貸・解体・大規模リフォーム・名義変更・抵当権の設定・家財の処分 |
相談先の順番|地域包括支援センターから家庭裁判所まで
入口は、親を日頃支援している福祉の窓口です。
そこから市区町村の中核機関、専門職、家庭裁判所の順に進むと、本人情報シート・診断書・候補者・書類が一度でそろい、無料の支援を使い切れます。銀行・税務課・火災保険は後見を待たずに並行して動けます(売らずに施設費用を出す手段の章)。
相談に行く前に揃える預貯金・施設費用・査定と契約の有無
次のものをそろえて持っていくと、1回の相談で「後見が要るか」「売れるか」の判断が返ってきます。
- 親の預貯金残高と年金の額
- 施設費用の月額と入居一時金
- 実家の登記事項証明書と、後見案件に慣れた不動産会社の査定書
- 主治医の診断名と所見
- 親が結んだ契約の有無(任意後見・家族信託・財産管理委任・銀行の代理人届)
- 兄弟・姉妹の意向(同意書の役割は後見の期間・費用の章)
最初の窓口になる地域包括支援センターと本人情報シート
65歳以上の親の相談の入口は地域包括支援センターです。
市区町村の高齢者福祉課や担当のケアマネジャーでも相談できます。
最初に福祉の窓口へ行く理由は、本人情報シートにあります。本人情報シートは家族には書けず、職務上の立場で日頃から本人を支援している福祉関係者が作成し、原本を診断書を書く医師に渡す運用です(厚生労働省の作成の手引・各家庭裁判所の案内)。
診断書は発行後3か月以内に限って使えるので、候補者と書類がそろう直前に取るように時期を合わせておくと、取り直しを防げます。
出典: 厚生労働省 成年後見はやわかり「成年後見制度について聞きたいときは?」/厚生労働省掲載 最高裁判所事務総局家庭局「成年後見制度における診断書作成の手引・本人情報シート作成の手引」/福岡家庭裁判所 任意後見監督人選任の申立てをされる方へ
申立て支援と費用助成を担う市区町村の中核機関
市区町村には、成年後見制度の利用を支援する中核機関があります。
権利擁護センター、成年後見センター、社会福祉協議会など名称は自治体で異なります。2025年4月1日時点で1,340市町村(77.0%)に整備されています(厚生労働省「令和7年度成年後見制度利用促進施策に係る取組状況調査結果」)。
役割は、後見が本当に必要かの整理、申立て書類の作成支援、専門職の紹介、利用支援事業の助成と市区町村長申立ての窓口です。
銀行の払い出しや代理人届で済むなら、後見を勧めない整理もしてくれます。ここで書類を自分で作れれば、専門職に頼む10万〜20万円が浮きます(後見の期間・費用の章)。
出典: 厚生労働省 令和7年度成年後見制度利用促進施策に係る取組状況調査結果(概要版)
司法書士・弁護士・法テラス・公証役場に頼める範囲
司法書士は、申立て書類の作成と登記を担い、事前の意思確認から処分許可の申立てまで一貫して頼めるかを最初に確認しておきましょう。
司法書士の団体であるリーガルサポートが窓口になります。依頼するときは「目的は実家の売却、候補者は子」と最初に伝えておくと、話が早く進みます。
弁護士は、親族の間に争いがある、訴訟が絡む場合の相談先です。
法テラスには3つの使い方があります。民事法律扶助は、資力の基準を満たす人の申立て費用の立替です。65歳以上などを対象にした出張相談もあります。
もう1つが特定援助対象者法律相談援助で、本人が認知機能の低下で自分から相談に行けないときに、ケアマネジャーなど支援者からの連絡で弁護士・司法書士が自宅や施設へ出向く制度です。2018年に始まり、資力を問わずに使えます(法務省)。
公証役場では、親が結んでいた任意後見契約の控えと代理権目録の確認ができ、軽度なら今から任意後見契約や財産管理委任契約を結ぶ相談ができます。相談は無料です。登記での確認方法は任意後見契約の調べ方の項のとおりです。
出典: 法務省 法テラスで新たな援助が始まりました(平成30年1月24日)/法務省 「総合法律支援法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」について
家庭裁判所の手続案内と後見ポータルサイトの書式
申立先は本人の住所地の家庭裁判所です。
施設に住民票を移していればその地になります。本庁と支部で流れが違うことがあるので、管轄を先に調べておきましょう。
家庭裁判所の後見センターなどでは、予約制で手続案内を無料で受けられます。説明動画と申立てセットの交付、書き方の説明があります。
書式は後見ポータルサイトから取れますが、裁判所は手続案内を受けてから使うよう求めています。手続案内には兄弟・姉妹が同席できるので、節目の相談は二人以上で行くと後の合意が早くなります。
出典: 裁判所 後見ポータルサイト/和歌山家庭裁判所 成年後見制度(後見・保佐・補助)/神戸家庭裁判所 成年後見制度(後見・保佐・補助)
| 窓口 | 頼めること | 費用 | 行く順番 |
|---|---|---|---|
| 地域包括支援センター | 相談の入口・本人情報シートの作成・中核機関の紹介 | 無料 | 1 |
| 中核機関 | 後見の要否の整理・申立て書類の作成支援・専門職の紹介・助成の案内 | 無料 | 2 |
| 司法書士・弁護士 | 書類作成・登記・意思確認・処分許可の申立て(弁護士は争いがある場合) | 10万〜30万円程度(事務所による) | 3(必要なとき) |
| 法テラス | 費用の立替・出張相談・支援者からの連絡による出張相談 | 立替は返済あり・相談は無料 | 3(資力や本人の状態に応じて) |
| 公証役場 | 任意後見契約の確認・今から結ぶ契約の相談 | 相談は無料 | 任意後見契約の調べ方で必要なとき |
| 家庭裁判所 | 手続案内・申立てセットの交付・申立ての受付 | 収入印紙800円+登記手数料2,600円+郵便料 | 4 |
まとめ:実家の手続きは親の理解力で分かれ、後見は売らずに払う手段を確かめてから
家族全員が同意しても本人の意思能力の代わりにはならず、親が売買の内容を理解できなければ、実家を売るには後見人と家庭裁判所の許可が要ります。そして現行法の後見は、実家を売り終えても本人が亡くなるまで続き、報酬が本人の財産から出続けます。
後見開始の申立ての前に、親の預貯金残高と年金の額、施設費用の月額を並べて不足額を数字で出し、銀行に施設への直接振込を相談しておきましょう。これを飛ばして後見を始めると、預金で施設費用を賄えている場合は売却の許可が出にくく、後見人の報酬だけが続くことになります。
親が任意後見契約や家族信託を結んでいなかったか、診断書で補助・保佐・後見のどれに当たるかを、地域包括支援センターと市区町村の中核機関で確かめてみてください。実家と相続の地図帳「つぐーる」では、親の判断能力が低下したときの実家の売却や管理の手続きも含めて、相続や実家について悩むあなたに経験に基づいた情報を提供しています。

