制度情報は2026年10月時点で確認しています
あなたの実家は、今どんな状況か
あなたの親が亡くなって相続が始まり、まだ3か月たっていない。実家に関わる手続きはこれから、または始めたところということですね。
亡くなってすぐの時期は、葬儀のあとも役所や金融機関への連絡が続き、家のことまで手が回らないまま日がたつことは珍しくありません。家をどうするかで相続人の意見が分かれるのは、多くの場合、財産の全体が見えてからです。
この時期に大事なのは、「相続するかしないかを決める期限の中にいる」ということです。相続では家や預金だけでなく、借金も相続の対象になります。親が知人の借金の保証人になっていたことが亡くなったあとで分かるなど、家族が知らなかった借金が見つかることもあります。
相続しないこと(相続放棄)を選ぶなら、自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申し出る必要があります。何もしないまま期限が過ぎると、借金も含めて相続したことになります。
だから今の段階で大切なのは、家を誰がもらうかの結論を急がないことと、相続するかしないかの期限までに、借金や遺言を確かめることです。「家のことを早く決めないと」と思っていても、家の話は材料がそろってからの方がまとまりやすくなります。
今のうちにやっておきたいこと

相続が始まってから3か月以内の今は、相続するかしないかを決める期限の中にいます。この期限のあとにも、要る場合は4か月(亡くなった親の所得税の申告)、10か月(相続税がかかる場合の申告)と期限が続きます。
やっておきたいのは、家をどうするかを決めることではなく、決めるための材料を期限までにそろえることです。
借金も含めて、親の財産を書き出す
相続放棄をするかどうかを3か月以内に決めるためです。借金の方が多ければ相続しない選択があり、それを決めるには、財産と借金の両方を書き出して比べる必要があります。
通帳、届いている郵便物(請求書、督促状、カード会社からの手紙)、ローンや保証の契約書、固定資産税の通知を見ます。預金、家、借金を1枚の紙に書き出し、金額が分からないものも「不明」として残しておきます。分からないものを消してしまうと、借金が多いのか少ないのかの判断ができなくなります。
調べても3か月で判断がつかないときは、期限の前に家庭裁判所へ申し立てれば、期間を延ばしてもらえることがあります。財産と借金のどちらが多いか分からないときに、財産の範囲で借金を払う「限定承認」という方法もあります。ただし限定承認は、相続人全員でする必要があります。
遺言書があるか確かめる
遺言があれば、家を誰がもらうかを考える出発点が変わるからです。
まず、自宅の重要書類の置き場所(金庫、仏壇の引き出し、通帳をしまっていた場所)を見ます。公証役場で作った遺言(公正証書遺言)は、公証役場で検索してもらえます。法務局に預けられた遺言書は、「遺言書保管事実証明書」を請求して、預けられているかどうかを確かめられます。
自宅などで見つかった遺言書は、公正証書遺言と法務局に預けたものを除いて、家庭裁判所の「遺言書の検認」(相続人に遺言書があることと中身を知らせ、その時点の状態を記録する手続き)が必要です。
封がしてあるものは自分で開けず、検認の申し立てをして家庭裁判所で開けてもらいます。検認は、遺言が有効かどうかを決める手続きではありません。
家の名義を確かめる
この家が誰の財産として相続されるのか、名義変更の手続きに誰が関わるのかが、登記上の名義人で決まるからです。親の家だと思っていても、登記を見ると別の人の名前が入っていることがあります。
法務局で、土地と建物それぞれの「登記事項証明書」(土地や建物の名義人などが書かれた証明書)を取り、名義人と持分(名義人それぞれが持っている割合)を見ます。
誰でも取れ、オンラインでも請求できます。固定資産税の通知も手がかりになりますが、宛名が登記上の名義人と一致しないことがあるので、登記で確かめます。
亡くなった親1人の名義なら、その親の相続として手続きを進めます。両親の共有名義や、ほかの人の名前が入っていれば、亡くなった親の名義の分だけが今回の相続の対象です。祖父母など前に亡くなった人の名義のままなら、その人の相続から整理する必要があり、関わる人が増えることがあるので、司法書士に相談します。
相続税がかかりそうかと、申告の期限を知る
相続税の申告が要るかどうかで、10か月までにやることが大きく変わるからです。申告が要るなら、財産の評価や書類の準備に時間がかかります。
財産のおおよそが分かったら、相続税の「基礎控除」(相続税がかからない上限の金額)と比べてみます。超えそうなら、相続税がかかる可能性があります。
具体的には、まず相続税の基礎控除は次のように計算します。
基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 相続人の数
相続人の数は、法律で決まる相続人の数です。相続放棄をした人がいても、この人数は変わりません。例えば、相続人が2人なら、基礎控除は4,200万円です。
基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 2人
= 4,200万円
それに対して、例えば実家の評価額が2,500万円、預金が2,000万円なら、財産の合計は4,500万円です(借金や葬式の費用があれば差し引きます)。
基礎控除(例 4,200万円) < 財産(例 4,500万円)
→ 超えた300万円は基礎控除を超えた金額であって、納める相続税の額ではありません
※この数字は特例などを適用する前の概算で、相談が必要かどうかの目安です
このケースでは相続する財産が基礎控除を超えるので、相続税がかかる可能性があるのです。
相続税の申告と納税は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。相続人の間で分け方が決まっていなくても、この期限は延びません。分け方が決まっていないときの申告は、法律で決まる取り分で計算して出し、分け方が決まったあとに直すことになります。
相続税がかかりそうなときに知っておきたいのが、土地の評価額を最大8割減らせる「小規模宅地等の特例」です。亡くなった親と同居していたあなたが家をもらって住み続ければ使える可能性があり、離れて暮らしていたあなたがもらう場合は、原則として使えません。
10か月の申告期限までに分け方が決まっていないとその時点では使えないなど、細かい条件は税理士に確認しましょう。
また、亡くなった親の所得税の申告が要るかを確かめましょう。年金だけで暮らしていた人など、要らない場合もあります。要るなら、相続人が4か月以内に「準確定申告」(亡くなった人の所得税の申告)をします。
いま決めなくていいことは?

期限があるのは手続きの方で、家を誰がもらうか(遺産の分け方)には、法律上の期限がありません。財産と借金、遺言の有無が分かるまでは、家の結論を急ぐ必要はありません。
そのうえで、「いま決めなくていいこと」には2つの種類があります。
ひとつは、あなた一人では決められないこと。もうひとつは、財産の全体が分かってから決めることです。
あなた一人では決められないこと
相続人全員で決めることで、あなた一人が先に決めても効力のないことがあります。
- 誰が家をもらうか
- 家を売るか残すか
- 家と預金などの分け方・代償金
遺言で家の行き先が決まっていなければ、遺産の分け方が決まるまで、家は相続人全員のものとして扱われます。
あなた一人の考えで「売る」「自分がもらう」と決めても効力はなく、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決めます。家をもらう人がほかの相続人にお金を払う「代償金」が要るかどうかも、この話し合いの中で決めることです。
財産の全体が分かってから決めること
あなたが自分で決めることも、相続人の間で決めることも、今決めるには材料が足りないものがあります。
- 相続するかしないか
- 介護や生活費の負担をどう扱うか
- 誰がこの家に住むか
相続するかしないかは、相続人それぞれが自分で決めることです。3か月以内に決めることですが、今すぐ決めることではありません。財産と借金を書き出し、どちらが多いかが見えてから決めます。
亡くなった親の介護や生活費を誰かが負担していた場合、それをお金に換算して清算するかどうかも、負担の内訳が分かってから考えることです。今の段階で金額の話を始めると、事実の確認より先に感情のぶつかり合いになりやすくなります。
亡くなった親と一緒に住んでいた人がいれば、その人が住み続けるかどうかも、今決める必要はありません。住み続けるかどうかと、家を誰がもらうかは別の話です。
【落とし穴】やらない方がいい行動
次の4つは、一度やると、相続放棄ができなくなったり、家族の信頼を壊してしまったりする可能性があります。良かれと思って行動して後悔する人もいるため、注意しましょう。
- 相続放棄をするか決める前に、親の預金を使ったり、家や家財を売ったり捨てたりする
- 家族に「実家はいらない」と言っただけで、相続放棄をしたつもりになる
- ほかの相続人に知らせずに、家の査定や売却の相談を進める
- 遺品の片づけで、通帳や郵便物、契約書をまとめて捨てる
相続財産を処分すると、相続したもの(単純承認)とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。雨漏りを直すなど財産を守るための行為は別に扱われますが、迷ったら手をつける前に確かめましょう。
相続放棄は家庭裁判所に申し出る手続きで、家族に「いらない」と言っても効力はありません。また、家だけを選んで放棄することはできず、放棄すると預金も含めて相続しないことになります。
査定や売却の相談を黙って進めると、ほかの相続人には「売る気でいる」と映ってしまいます。家の評価額のおおよその目安は固定資産税の通知で分かるので、今の段階で査定は要りません。
通帳や郵便物、契約書は、借金や財産を知る手がかりです。片づけでまとめて捨てると、相続するかしないかを決める材料を失います。
あなたは将来的にどうするのが良いか
この先、要る場合は4か月の準確定申告と10か月の相続税の申告、家をもらった人の名義変更の登記と期限のある手続きが続き、その間に相続人の間で分け方を話し合います。
それぞれの場面で何が起きやすく、どう動けばよいかをまとめました。
専門家に相談するタイミング
借金が多そう、または3か月で判断がつかない → 弁護士か司法書士
相続放棄も、期間を延ばす申し立ても、家庭裁判所の手続きです。書き出した財産と借金の一覧を持って相談すれば、相続放棄するか、期間を延ばすかの判断を手伝ってもらえます。
相続税がかかりそう → 税理士
財産のおおよそと、誰が家をもらいそうかを伝えれば、誰がもらうと税金がどうなるか、小規模宅地等の特例が使えるかを教えてもらえます。
遺言が見つかった、または名義が祖父母など前に亡くなった人のままだった → 司法書士
検認のあとの名義変更や、祖父母など前の相続から整理が要る登記を頼めます。
相続人の意見が割れている → 弁護士
まず、話し合いの進め方を相談します。まとまらなければ、家庭裁判所の調停(調停委員が間に入る話し合い)という方法もあります。
期限の前に確かめるタイミング
3か月が近づいた
財産と借金の一覧を見て、相続するか、相続放棄するか、期間を延ばす申し立てをするかを決めます。
4か月が近づいた
亡くなった親に所得税の申告が要るかを確かめます。要るなら、相続人が準確定申告をします。
10か月が近づいた
分け方が決まっていなくても、相続税の申告が要るなら期限までに出します。
分け方が決まったら
遺産分割協議書を作った → 相続登記
家をもらった人には、取得を知った日から3年以内に相続登記(名義変更の登記)をする義務があります。
家に誰も住まなくなる
空き家の管理を誰がするか、固定資産税を誰が払うかを、相続人の間で決めます。管理の手間と費用が見えると、売るか残すかの判断材料になります。
根拠にした制度・手続き
- 相続放棄の期限(3か月) — 裁判所「相続の放棄の申述」
- 限定承認 — 裁判所「相続の限定承認の申述」
- 単純承認(相続したものとみなされる場合) — e-Gov法令検索「民法」第921条
- 遺言書の検認 — 裁判所「遺言書の検認」
- 遺言書保管事実証明書 — 法務省「相続人等の手続(自筆証書遺言書保管制度)」
- 公正証書遺言 — 日本公証人連合会「遺言」
- 登記事項証明書 — 法務局「登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です」
- 相続登記の義務(3年) — 法務省「相続登記の申請義務化について」
- 準確定申告(4か月) — 国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」
- 相続税の申告期限(10か月) — 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
- 分け方が決まっていないときの申告 — 国税庁「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」
- 相続税の基礎控除 — 国税庁「No.4152 相続税の計算」
- 小規模宅地等の特例 — 国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」

