亡くなった人名義の実家に自分の世帯だけで住む人が読むガイド

親のいない実家に自分の世帯だけが住み、土地か建物に亡くなった人の名義が残っている状態です。

住み続けたいという希望だけで結論を出さず、相続関係、家の評価と資金、相続登記の期限を分けて確認します。確認済みの点と、結論を保留する点を区別するためです。

土地と建物の名義人が生きている場合や、誰の名義かも分からない場合は前提が異なります。あなたが亡くなった人の名義を確認できている場合に絞ります。

亡くなった人の名義が残っていることだけを理由に、直ちに売却や退去を決める必要はありません。ただし、相続登記の期限が分からないときの相談先は法務局か司法書士です。名義人の後にも死亡した相続人がいる場合は司法書士か弁護士へ、別の相続人から売却の話が出て調整が難しい場合は弁護士へ、手元の資料を持参します。

親のいない実家に自分の世帯だけが住み、亡くなった人の名義が残っているケースだと、今後どんな時に状況が変わるのか

今の暮らしが変わっていなくても、相続人の死亡、遺産分割の開始、売却の具体化によって、確認する相手が変わり、取得資金や住み替え条件を確かめる必要が生じます。

  • 別の相続人が亡くれると住み続ける条件を話す相手が増える
  • 遺産分割の話が始まると自分の世帯の取得資金が問われる
  • 売却が具体化すると自分の世帯の住み替え準備も要る

別の相続関係者が亡くなった時

未整理の相続で権利を承継している相続人が亡くなると、新たな相続が発生し、居住を続ける条件について確認する相手が増えることがあります。

亡くなった名義人から現在までを一度に捉えると、途中の死亡によって確認すべき相続人が変わったことを見落としやすくなります。名義人の死亡後に相続人が亡くなった場合は、その死亡ごとの相続関係も確認対象です。

最初から全員を確定できなくても、亡くなった人を日付順に並べ、それぞれについて分かる親族名を記録できます。住み続けたいと伝える相手を漏らさないために、名義人から現在までに亡くなった人を一人ずつ確認します。

参照: 大阪法務局「長期間相続登記がされていないことの通知(お知らせ)」について

遺産分割の話が始まった時

自分の世帯が家を取得して住み続けたい場合は、居住希望に加えて、家の評価と用意できる資金が判断材料になります。

遺産の分け方には、現物を分ける方法、売却代金を分ける方法、一人が取得してほかの相続人へ金銭を支払う方法などがあります。一人が家を取得する方法では、ほかの相続人へ支払う資金も判断材料です。

家の評価額と支払える金額に差があっても、直ちに売却だけに絞る必要はありません。差額を確認したうえで、家を取得する案と売却する案を相続人と話し合います。

出典: 京都家庭裁判所「遺産分割調停」

売却が具体化した時

相続人の間で売却が現実的な選択肢になったら、自分の世帯がいつ、どこへ移れるかも確かめる必要があります。

売却代金をどう分けるかと、住んでいる世帯がいつ退去するかは別の問題です。名義を整理して売れる状態になっても、転居先、引っ越し費用、通勤・通学を続けられる場所を探す期間が決まっていなければ、引渡し時期を具体的に決めるための材料が足りません。

売却が具体的な選択肢になった段階で、自分の世帯に必要な猶予と費用を関係者へ伝え、売却時期を話し合います。ただし、売却の話が出ていない段階で転居先まで決める必要はありません。

【落とし穴】親のいない実家に自分の世帯だけが住み、亡くなった人の名義が残っている人で、実際に起こりうるケースを紹介

住んでいる事実だけでは、誰が相続するかも住み続ける条件も決まりません。売る予定がなくても、相続登記の期限は別に確認が要ります。

  • 住む自分がそのまま相続できると思った
  • 住みたいと言えば売却されないと思った
  • 住み続けている間は相続登記の期限が動かないと思った

住む自分がそのまま相続できると思った

居住している事実から家を取得する人まで決まると思い込む例です。

「私だけがこの家に住んでいるので、名義もそのまま自分へ移ると思っていました。」

居住者と相続関係者を分けて確かめます。この例から学べることをまとめます。

  • 亡くなった名義人を確認する
  • 相続関係者を資料から確かめる
  • 居住希望と取得を分ける

実家に住み、介護や修繕費の負担をしていても、それだけで自分が家を取得すると決めることはできません。

たとえば、親の近くで暮らしてきた人が「自分がこの家を引き継ぐ」と考えていても、親の死亡後には別居する兄弟・姉妹を含めて相続関係を確かめる必要があります。居住や負担の事実と、遺言や相続関係に基づいて誰が取得するかは、同じ問いではありません。

居住の経緯だけで取得者を決めると、別の相続人が分かった時点で取得者の検討をやり直すことになります。遺言の有無と相続人を確認してから住み続けたい希望を伝えれば、自分が取得できるとの思い込みを避けられます。

住みたいと言えば売却されないと思った

居住希望だけで家の扱いが決まると思い込む例です。

「住み続けたいと伝えれば、ほかの相続人も売却を求めないと思っていました。」

希望と取得に必要な資金は別々に話します。この例から学べることをまとめます。

  • 相続関係者ごとの希望を聞く
  • 家の評価資料をそろえる
  • 用意できる資金を確かめる

自分の世帯に居住を続ける希望があっても、家を取得するための金銭調整ができなければ、売却は選択肢に残ります。

住んでいる人が取得を希望し、別居する相続人が自分の取り分を金銭で受け取りたいという場面では、希望だけを伝えても取得案を実行できるか判断できません。家の評価と用意できる資金も必要です。

住みたい期間と取得希望を記録し、家の評価額と用意できる資金を同じ資料に載せます。希望と実行条件を一緒に示せば、家を残す案と売却する案を同じ材料で比べられます。

出典: 京都家庭裁判所「遺産分割調停」

住み続けている間は相続登記の期限が動かないと思った

住んでいる間は登記の確認を後回しにできると思い込む例です。

「家を売らずに住み続けるので、相続登記の期限はまだ始まらないと思っていました。」

居住の継続と登記の期限は別に確かめます。この例から学べることをまとめます。

  • 名義人が亡くなった日を確認する
  • 相続を知った日を記録する
  • 個別の期限は法務局か司法書士へ聞く

当面売る予定がなくても、相続登記の申請義務と期限は別に確認しなければなりません。

相続登記の申請義務化は2024年(令和6年)4月1日に始まりました。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内という期限があり、制度開始前の相続にも経過措置がありますが、居住や売却予定の有無は期限が止まる理由にはなりません。

後回しにすると、売却や融資が必要になったときに、相続人、資料、期限を同時に確認することになります。自分の場合の期限を推測せず、相続開始日や取得を知った日など、判定に要る日付を先に整理します。

出典: 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

今のうちにできること・やっておくとよいこと

住み続ける案に必要な事実を、次の四つに分けて確認します。

  • 自分の住まいである土地と建物の死亡名義を別々に確認する
  • 自分の世帯以外にいる相続人を死亡のたびに確かめる
  • 住む希望と家を得る資金を分けて確かめる
  • 住み続ける間にも相続登記の期限確認に要る日付を整理する

土地・建物の死亡名義と相続関係を確かめる

土地と建物を分け、現在の登記名義人と、どの人の死亡から相続の整理を始めるかを確認します。

一つの家に見えても、土地と建物は別に登記されています。土地が亡くなった祖父名義、建物が亡くなった親名義という場合もあるため、「実家は親名義」と一括りにすると、確認すべき相続を見落とすおそれがあります。

固定資産税の通知書や古い権利証は手掛かりになりますが、現在の登記内容を示す資料としては登記事項証明書を確認します。土地と建物の証明書を分けて揃え、名義人、持分、抵当権が分からない欄は未確認と記録すれば、相談先にどの欄を確認したいか伝えられます。

死亡ごとに、自分の世帯以外の相続関係者も確かめます。

名義人から現在までに亡くなった人を日付順に並べ、それぞれの遺言と相続人を確認します。

名義人の相続人も亡くなっている場合は、死亡した人ごとに相続関係と遺言の有無を確認します。手元や親族への確認で見つからなくても、遺言の有無は「未確認」と記録します。

自分の世帯外にいる相続人が分かれば、居住希望を伝える相手を特定できます。死亡が二回以上ある場合や、親族関係・遺言が未確認の場合は、分かる死亡日と親族名を司法書士や弁護士へ伝えて相談します。

参照: 大阪法務局「長期間相続登記がされていないことの通知(お知らせ)」について

自分の世帯の居住希望と取得資金を分ける

住み続けたいかという希望と、家を取得する場合に用意できる資金は、別の問いとして確かめます。

自分の世帯が家を取得し、別の相続人へ金銭を支払う方法を検討するには、家の評価額と支払余力が必要です。世帯員の居住希望は、資金とは別に確認します。

出典: 京都家庭裁判所「遺産分割調停」

相続登記の期限確認に必要な日付を並べる

名義人が亡くなった日、不動産を相続したと知った日、遺産分割が成立した日を確認し、自分に当てはまる期限を法務局や司法書士へ確認できるようにします。

日付意味
相続開始日それぞれの被相続人が亡くなった日。亡くなった名義人の相続なら、その名義人の死亡日
不動産を相続したと知った日自分が相続人であり、その不動産を相続で取得したと知った日
遺産分割成立日協議などで、その不動産を取得する人が決まった日

書類で確かめられない日付は「未確認」と記録してください。

相続による取得を知った日から3年以内という期限に加え、遺産分割が成立した場合にも、その内容に応じた登記を申請する期限があります。制度開始前の相続は、2027年(令和9年)3月31日までの経過措置も関係しますが、知った時期などで個別の期限が変わり得ます。

日付が分からない欄は「未確認」と記し、法務局や司法書士へ個別の期限を確認します。期限までに遺産分割がまとまらない場合は相続人申告登記を使えることがありますが、誰がどの権利を取得したかを示す登記ではなく、売却などの前には別に相続登記が要ります。

参照: 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」

参照: 法務省「相続人申告登記について」

相続人ごとの希望と未決事項を一枚に書く

世帯員ごとに、いつまで住みたいか、家を取得して住み続けたいか、売却する場合にどの程度の転居猶予が要るかを記録します。

同じ家に住む家族でも、通勤、通学、介護などの事情によって希望が異なることがあります。「家族全員が住み続けたい」とまとめず、一人ずつ確認すれば、世帯内で一致していることと未決事項を分けられます。

世帯員居住・取得の希望売却時に必要な猶予保留する事項と理由再検討のきっかけ見直し日
例:本人3年は住みたい・取得したい6か月資金額・評価(評価資料が未確認のため)評価資料が揃った時記入
例:配偶者転居も検討転居先が決まるまで転居先・通勤条件(勤務地が未確定のため)勤務地が決まった時記入

世帯内の表が埋まり、相続人の確認が終わったら、確認できた相続人へ一致点を伝えます。相続人が未確定なら相続関係の確認を先に進め、まだ決めない事項には「保留」と記して、理由、再検討のきっかけ、見直す日を残します。

家の評価額と用意できる資金も同じ時点で比べます。

一つの評価資料につき一行を使い、家の評価額と自分の世帯が無理なく用意できる取得資金を、同じ行へ記録します。最初は売却査定を一つ取得して比較用の仮の金額とし、相続人間で評価方法が一致しなければ確定額として扱いません。

取得案の検討には、評価額と用意できる資金の両方が必要です。取得資金は、生活費として残す預貯金を除いた自己資金と、金融機関に確認した借入可能額に分けます。未確認の借入見込額は含めず、異なる目的の評価額も分けて扱います。

評価資料評価の目的評価額使える自己資金確認済みの借入可能額差額確認日
例:不動産会社の査定売却を検討するため記入記入未確認または記入評価額から二つの資金を引く記入

用意できる取得資金が評価額を下回る場合は、その差を不足額として記録します。差額が出ても売却だけに絞らず、同じ評価額を前提に取得案と売却案を比べます。

死亡ごとの相続資料と連絡先は一緒に保管します。

相続関係を確かめる資料と、その資料を持つ人や相続人の連絡先を、死亡した人ごとにまとめます。

家ごとに資料を一束にすると、どの死亡について何が足りないか分かりにくくなります。死亡した人と資料の組み合わせごとに行を立て、資料を持つ人と相続人を対応させると、次に確認する相手が見えます。

死亡した人死亡日資料名相続人相続人の連絡先資料保有者資料保有者の連絡先確認状態最終確認日
例:祖父記入戸籍記入記入自分自分の連絡先確認済み記入
例:祖父記入遺言確認中未確認親族名または未確認記入または未確認未確認記入

一人の死亡者に資料や関係者が複数あるときは行を増やし、連絡が取れない人や見つからない資料は「未確認」と記します。誰に何を確認するかを分けられるため、同じ確認を繰り返さずに済みます。

土地と建物の登記内容は別々に書きます。

土地と建物を別の行にし、次の表の項目を記録します。

土地が複数の筆に分かれていたり、母屋とは別に登記された建物があったりする場合は、それぞれ一行を使います。同じ土地や建物に名義人が複数いる場合は、名義人ごとに行を分けます。登記事項証明書の名義人と、その人の死亡後に未整理となっている相続を対応させるためです。

対象登記上の名義人持分名義人の死亡日抵当権確認日未確認事項
土地記入記入記入記入記入記入
建物記入記入記入記入記入記入

証明書の読み方が分からない欄は、自己判断で空欄にせず「読み方を確認」と記します。その一枚を相談先へ持参すれば、どの不動産のどの名義から確認するかを具体的に伝えられます。

参照: 法務局「登記事項証明書(土地・建物)、地図・図面証明書を取得したい方」

まとめ:住み続ける希望を相続人と取得資金の確認につなげる

自分の世帯だけが住んでいても、家を取得する人は自動では決まりません。現在の相続人、家の評価、取得に使える資金が分かって初めて、住み続ける案を具体的に相談できます。

最初に土地と建物の登記事項証明書を揃え、亡くなった名義人を別々に確認してください。ここを飛ばすと、誰のどの名義から相続の整理を始めるのか決められません。

売却か居住継続かをまだ決めない場合も、土地と建物の名義確認から始めましょう。つぐーるでは、亡くなった人の名義から相続人・取得資金・登記期限を確かめる考え方も含めて、実家の将来をこれから考えるあなたに信頼できる情報を提供しています。