制度情報は2026年10月時点で確認しています
あなたの実家は、今どんな状況か
あなたは、親が亡くなって実家の相続がすでに済んでいて、その相続人ということですね。
相続が済んだあとも、実家をどうするかが決まらないまま年月がたつ家は珍しくありません。ただ、相続のあとも家族の意見が分かれやすい状況です。誰の名義になったのか、誰がこの家で暮らすのか、固定資産税や修繕の費用を誰が払うのか。相続の手続きが終わっても、この3つをめぐる家族の話は続きます。
この状況で大事なのは、「相続が済んだ」と言っても、終わっている手続きは家ごとに違うということです。家をどう分けるかを決めること、名義を変える登記、相続税の申告(必要な場合)は、それぞれ別の手続きです。
家族の話し合いがついていても、登記は亡くなった親の名義のまま、ということがあります。登記が親の名義のままなら、売る前に相続登記が必要になります。
今の段階で大切なのは、家を売る・壊す・貸すを急いで決めないことと、まず書類で今の状態を確かめることです。「早く片づけたい」と思っていても、名義と費用の状態を知るのが先です。
今のうちにやっておきたいこと

相続の手続きの期限は、多くの場合過ぎていますが、期限がいつだったかはそれぞれの状況によって異なるため、確認が必要です。今は、家をこれからどう使うかを決める準備をする時期です。
ただし、名義を変える相続登記と、家を売るときの税の特例には、まだ過ぎていない期限が残っていることがあります。期限を過ぎると、過料(罰として払うお金)の対象になる可能性があったり、税の特例が使えなくなったりします。
やっておくべきことは、今の名義と手続きの状態を確かめ、残っている期限を押さえたうえで、家の使い方と費用の分担を決められるようにしておくことです。
どの手続きが済んでいるかを書類で確かめる
残っている手続きを、期限を過ぎる前に見つけるためです。
まず、土地と建物それぞれの登記事項証明書(登記上の名義人が書かれた書類)を取り、名義人と、それぞれが持つ割合(持分)を見ます。登記事項証明書は法務局で請求でき、名義人本人でなくても取れます。固定資産税の通知が届いているから名義は変わっている、とは判断せず、登記事項証明書で確かめてください。
登記が亡くなった親の名義のままなら、相続登記をする義務があり、正当な理由なく登記をしないと10万円以下の過料の対象になる可能性があります。
期限は家を取得したと知った日から3年以内で、知ったのが2024年4月1日より前なら2027年3月31日までです。家の分け方がまだ決まっていないなら、「相続人申告登記」(自分が相続人だと法務局に申し出る手続き)で、ひとまずこの義務を果たせます。
あわせて、遺産分割協議書(分け方を書いた書面)、遺言(亡くなった親が財産の行き先を書き残した書面)、相続税の申告書の控えがどこにあるかも確かめます。
相続税の申告が必要だったのに出していないなら、期限を過ぎていても早めに税理士に相談しましょう。遅れた分に上乗せされる税(加算税や延滞税)がかかる場合があります。
誰が家を取得したかで、決められる人を確かめる
決める立場にない人が話を進めても、家を売る・貸す・壊すは実現しないためです。
名義が亡くなった親のままなら、決めるのは分け方で家を取得した人で、分け方が決まっていなければ相続人全員です。相続登記が済んでいて、名義人があなた1人なら、決めるのはあなたです。ほかの相続人1人の名義なら、決めるのはその人です。
共有名義の家の決め方は民法で決まっています。家全体を売る、貸す、取り壊す、建て替えるには、原則として共有者全員の同意が必要です。家を誰がどう使うかなど、日々の管理に当たることは、持分の過半数で決めます。
売る可能性があるなら、税の特例の期限を確かめる
家を売るときに税金を軽くできる特例には、相続のあとから数える期限があるためです。
ひとつは「空き家を売ったときの特例」で、亡くなった親が1人で住んでいた家などを売るとき、売った利益から最大3,000万円を差し引けます。
1981年5月31日以前に建てた家であることが条件で、相続のあとに貸したり誰かが住んだりすると使えません。この特例は、2027年12月31日までに売る必要があります。
もうひとつは「取得費加算の特例」で、相続税を払った人が家を売ると、払った相続税の一部を売った利益から差し引けます。2つの特例は同じ家で一緒には使えないので、どちらかを選びます。
具体的には、それぞれの特例を使うための売る期限は次のとおりです。
空き家を売ったときの特例
→ 相続があった日から3年がたつ年の年末まで
取得費加算の特例
→ 相続税の申告期限の翌日から3年以内
期限が来る前に、そして貸す・住む・壊すのどれかを始める前に、税理士に相談しましょう。細かい条件も、そこで確かめられます。
住む人・費用・管理の担当をそろえる
相続のあとの負担が、1人に偏らないようにするためです。
今その家に住んでいる人がいれば、この先も住み続けたいかを聞きます。空き家なら、見回りや換気を誰がするかを決めます。
固定資産税、火災保険、修繕の費用を、今、誰が払っているかを一覧にします。そのうえで、家を取得した人(共有名義なら共有者)と、この先の分担を話します。
払った人が家の権利を多く持てるわけではありません。でも、領収書や振込の記録が残っていれば、売ったお金を分けるときや次の相続のときに、負担をどう扱うかを話す材料になります。
いま決めなくていいことは?

相続が済んだ今も、実家を売るか持ち続けるかを急いで決める必要はありません。名義と費用の状態が分からないまま結論を出すと、あとで前提ごと変わる可能性があるからです。
そのうえで、「いま決めなくていいこと」には2つの種類があります。
ひとつは、家を取得した人が決めることで、あなたが取得していなければ先回りしなくてよいこと。もうひとつは、いずれ決めることになるけれど、今はまだ判断材料が足りないことです。
家を取得した人が決めること
家を取得した人が決めることで、あなたが取得していなければ先回りしなくてよい事があります。
- 家を売るか、貸すか、壊すか
- 誰がこの家で暮らすか
- 次に誰に家を渡すか
家のことを決めるのは、相続で家を取得した人です。取得したのがあなた以外なら、あなたが先に話をまとめても、法律上の効力はありません。
家を取得したのがあなた1人でも、その家に住んでいる人がいれば、売る・貸すはその人の暮らしに関わります。1人で急いで決めず、住んでいる人の希望を聞いてからにしましょう。
次に誰に家を渡すかは、家を取得した人が遺言で決められることです。ほかの人が「次は自分がもらう」と決めても、効力はありません。
材料が揃ってから決めること
判断材料が揃ってから決めるべきことで、今決めても前提が変わりやすいものもあります。
- 売るか、持ち続けるか
- 共有名義をやめるか
- 費用の分担を変えるか
- 建て替えるか、手を入れるか
売るか持ち続けるかは、売れる値段の見通し、1年にかかる維持費、税の特例が使えるかが分かってから決めることです。
共有名義をやめるか(誰か1人の名義にまとめる、売ってお金を分けるなど)は、共有者それぞれの希望と、かかる費用が分かってから考えることです。今の段階で金額の話から入ると、事実の確認より先に感情のぶつかり合いになりやすくなります。
費用の分担を変えるかも同じです。今、誰がいくら払っているかが分かる前に分担を言い出すと、払っている人は、払っていない人から口を出されたと受け取ることがあります。
建て替えや大きな改修は、誰がこの家で暮らすか、誰が持ち続けるかが決まる前にすると、かけたお金の扱いで揉める原因になります。
【落とし穴】やらない方がいい行動
次の4つは、一度やると家族の信頼を壊してしまう可能性があります。良かれと思って行動して後悔する人もいるため、注意しましょう。
- 住んでいる人や共有名義の相手に知らせずに、不動産会社に売却や解体の相談をする
- 固定資産税や修繕の費用を、話し合わないまま1人に払わせ続ける(または1人で払い続ける)
- ほかの共有者に話さずに、自分の持分だけを売る話を進める
- 相続のときに決めた分け方への不満を、話し合いの場を作らずに今になって言い出す
売却や解体の相談を黙って進めると、住んでいる人や共有者には「売る気でいる」と映ってしまいます。相談するなら、先に家を取得した人と住んでいる人に伝えてからにしましょう。
費用の負担が1人に偏ったままだと、売るときや次の相続のときに、「ずっと自分が払ってきた」という不満が一気に出ることがあります。あなたが1人で払い続けているなら、黙って払い続けるのではなく、記録を残して家を取得した人や共有者に伝えてください。
自分の持分だけを家族以外に売ると、その人が共有者になります。そのあとは、家を売るか貸すかを、その人と話し合うことになります。
あなたは将来的にどうするのが良いか
相続が済んだ実家では、この先、住んでいた人の転居、家の傷み、そして家を取得した人や共有者の次の相続と、家の行き先を左右する出来事が起こります。
それぞれの場面で何が起きやすく、どう動けばよいかをまとめました。
専門家に相談するタイミング
名義が亡くなった親のままだった → 司法書士
相続登記か、分け方が決まっていないなら相続人申告登記を頼めます。必要な書類と期限も、ここで確認できます。
売ることを考え始めた → 税理士
空き家を売ったときの特例と取得費加算の特例のどちらが使えるか、期限はいつかを教えてもらえます。売った翌年には確定申告が必要です。
家族の意見が割れている → 弁護士
争うためだけでなく、話し合いの進め方を相談する役としても頼れます。
状況を確かめ直すタイミング
住んでいた人が転居や施設への入所で家を離れる
家が空き家になります。見回りや換気、費用の担当を決め直し、空き家のまま持ち続けるか、売るか貸すかを家を取得した人と話します。
家に大きな修理が必要になる
屋根や水回りなど数百万円かかる修理は、「誰が払うか」の問題になります。
家を取得した人が払えるか、共有名義なら持分どおりに分けるのか、修理せずに手放す選択はあるか。住み続けたいかの答えが変わるきっかけになるので、確認し直します。
使う予定のない土地を手放したくなった
相続で取得した土地は、「相続土地国庫帰属制度」で国に引き取ってもらえる場合があります。ただし、建物がある土地は申請できません。家を壊してから申請するかを含め、壊す前に法務局に相談しましょう。
次の相続が起きる前に
家を取得した人が、次に誰に渡すかを決めた → 公正証書遺言
家を取得した人(あなたか、ほかの相続人)が、次に誰に家を渡すかを遺言で残しておくと、次の相続のときに話し合うことが少なくて済みます。遺言は公正証書遺言にすると確実です。
共有名義のまま次の相続が起きると、亡くなった共有者の相続人が加わり、話し合う人が増えます。共有名義なら、共有者それぞれが遺言を残すか、共有名義をやめるかを、次の相続が起きる前に話しておきましょう。
根拠にした制度・手続き
- 相続登記の義務(3年) — 法務省「相続登記の申請義務化について」
- 相続人申告登記 — 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」
- 登記事項証明書 — 法務省「不動産登記のABC」
- 共有名義の家の決め方(民法第251条・第252条) — e-Gov法令検索「民法」
- 空き家を売ったときの特例 — 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
- 取得費加算の特例 — 国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
- 相続税の申告期限(10か月) — 国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」
- 相続土地国庫帰属制度 — 法務省「相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件」
- 公正証書遺言 — 日本公証人連合会「遺言」

